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【相続税】小規模宅地の特例の当初申告要件
税金の申告にあたって、納税者にとって有利になる制度の適用を受けるための意思表示を、当初の申告(期限内申告、期限後申告)において行われなければならないものがあります。これを「当初申告要件」といいます。
小規模宅地等の特例には、この当初申告要件があります。また、修正申告であっても認められていますが、更正の請求は原則として認められていません。
・期限内申告書(相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10月以内) | 措法69の4⑦ |
・期限後申告書 | |
・修正申告書 |
■期限後申告書の例
・相続税の申告義務がないと思って申告しなかったが、税務調査で新たに財産が見つかった。
・小規模宅地等の特例の適用すれば納税額がゼロだったので、申告しなかった。
■修正申告書の例
・配偶者が居住用住宅を相続したが、配偶者の税額軽減(国税庁HP 👈クリック)を使うことによって配偶者に税額が生じなかったため小規模宅地の特例を適用しなかったが、評価誤り又は新たに財産が見つかり税額が生じることになった。
■更正の請求の例(不可)
・小規模宅地等の特例を受け相続税の申告をした後、もっと有利な土地の選択があることが判明したとしても、特例適用宅地等を変更する選択替えは認められていません。
この小規模宅地等の特例は、対象となる宅地について申告期限までに分割されていなければ適用がありません。
ただし、対象となる宅地が未分割であっても、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することによって、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合には、特例の適用を受けることができます。
この場合、分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求を行うことができます。
さらに、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日において相続等に関する訴えが提起されているなど一定のやむを得ない事情がある場合には、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出することができます。
この申請につき所轄税務署長の承認を受けた場合には、判決の確定の日など一定の日の翌日から4か月以内に分割されたときに、これらの特例の適用を受けることができます。
この場合も、分割が行われた日の翌日から4か月以内までに更正の請求を行うことができます。
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【相続税】小規模宅地の特例における事業の範囲
小規模宅地等の特例制度の趣旨は、相続人等の生活基盤となるべきものはその処分に相当の制約や困難が伴うからとされています。
制度の対象となるのは、事業用の宅地と居住用の宅地で一定の面積まででとされています。
さらに事業用の宅地は、製造業・小売・サービス業といった不動産貸付業以外の事業のための宅地と不動産貸付業のための宅地に区分されています。
この区分は、おそらく処分の制約や困難の度合いからきているのではないかと思います。
平成30年度の税制改正で、不動産貸付業について相続税負担を過度に軽減する事案に対処するため、相続開始前3年以内に貸し付けを開始した不動産については、対象から除外されていますが、いわゆる事業的規模で貸付を行っている場合はこの除外の適用がないとされています。
これらを一つの条文(措法69の4)で規定しているため、事業の範囲だけでも次のとおり4つあり、理解しづらいものとなっています。
1.対象となる宅地について
小規模宅地等の特例の対象となるのは、被相続人等※の事業及び準事業(事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの)の用に供されていた宅地等※※です。
※被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族をいいます。 |
措法69の4①本文 措令40の2① |
準事業も対象となっていますので、事業規模は問わずこの特例の対象となりますが、不動産の貸付けについては「相当の対価を得て継続的に行うも」とされていますので、使用貸借により貸し付けられている宅地等は対象になりません。
使用貸借とは宅地等を無償で貸し付けている場合のことで、借地借家法の適用を受けることができません。なお、固定資産税等の実費負担程度の場合は使用貸借の範囲と考えられています。
2.特定事業用宅地等の対象となる宅地の範囲
特定事業用宅地等(400㎡まで80%減額)の対象となるのは、被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除く。)の用に供されていた宅地等です。 | 措法69の4③一、三 措令40の2⑦ |
3.貸付事業用宅地等の対象となる宅地の範囲
貸付事業用宅地等(200㎡まで50%減額)の対象となるのは、被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業に限る。以下「貸付事業」という。)の用に供されていた宅地等です。
ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、下記4.の事業的規模の宅地等の場合を除いて対象とはなりません。 |
措法69の4③四 措令40の2⑦ |
4.事業的規模の宅地等
事業的規模の宅地等とは、特定貸付事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業)をいいます。
(注)準事業(事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの)が除かれている点にご留意ください。 |
措法69の4③四 措令40の2⑲ |
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【相続税】特定同族会社事業用宅地の小規模宅地等の特例
相続財産に土地等がある場合には、まずは小規模宅地等の特例が使えないか検討します。
小規模宅地等の特例というと、特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)、特定事業用宅地等(400㎡まで80%減額)を思い浮かべます。
もし、面積に余裕がある場合は、貸付事業用宅地等(200㎡まで50%減額)適用がないか検討します。
この他にも法人組織で事業(不動産賃貸業を除く)を行っている場合は、特定同族会社事業用宅地等(400㎡まで80%減額)の適用があるかどうかも確認しておかなければなりません。
(詳しくは国税庁HP 👈クリック)
この特定同族会社事業用宅地等の特例は、相続開始の直前から相続税の申告期限まで法人の事業の用※に供されていなければならないのですが、被相続人の土地等に係る建物の所有者が誰であるかに注意が必要です。
土地等 | 建物 | 貸付状況 | |
① | 被相続人 | 特定同族会社 | ・特定同族会社に宅地等を相当の対価を得て貸し付け(無償は不可) |
② | 被相続人 | 被相続人 | ・特定同族会社に建物を相当の対価を得て貸し付け(無償は不可) |
③ | 被相続人 | 被相続人の生計一親族 | ・生計一親族へ土地を無償貸付 ・生計一親族は特定同族会社に建物を相当の対価を得て貸し付け(無償は不可) |
※不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業(事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの)を除きます。
また、特定同族会社には次の要件があります。
法人役員要件 | 相続等で土地等を取得した者がその法人の役員(法人税法に定める役員)であること。 |
所有株数要件 | 相続開始の直前において被相続人及び被相続人の親族等が法人の発行済株式の総数又は出資の総額の50%超を有していること。 |
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【相続税】小規模宅地等が混在する場合
土地等の上に1棟の建物がある場合で、その用途が事業用、居住用、同族会社事業用、賃貸事業用のいくつかと混在する場合があります。
例えば、被相続人が土地とその上に1棟の建物を所有していた場合で、建物の1階は同族会社事業用、2階は賃貸事業用として使用していたとします。
この場合は、所定の要件のもと前者は特定同族会社事業用宅地等(400㎡まで80%減額)、後者は貸付事業用宅地等(200㎡まで50%減額)となります。
土地・建物の相続人が1人なら次のとおり、減額割合が大きい特定同族会社事業用宅地等から適用し、残った面積を貸付事業用宅地等を適用することになります。
(例)
敷地400㎡・相続税評価40,000,000円、建物1階300㎡・2階300㎡、乙は同族会社A社の株式を60%保有している役員とします。
この建物の1階はA社(日用品雑貨小売業)の店舗として貸し付け、2階は甲とは資本関係のないB社に貸し付けているとします。
この場合の小規模宅地等の有利な選択は次のとおりです。
敷地400㎡×1/2=200㎡(1階部分) | 特定同族会社事業用宅地等 | 200㎡※ |
敷地400㎡×1/2=200㎡(2階部分) | 貸付事業用宅地等 | 100㎡※ |
※特定同族会社事業用宅地等200㎡ + 貸付事業用宅地等100㎡×2 ≦ 400㎡ ∴OK
⬅ 国税庁HP 👈限度面積参照
この土地・建物を兄(乙)・弟(丙)の二人が2分の1ずつ共有で相続した場合はどうなるでしょうか。なお、弟(丙)はA社の役員ではないとします。
仮に、兄(乙)が1階部分、弟(丙)が2階部分を相続したと考えることができるのなら、上記と同じく200㎡までが特定同族会社事業用宅地等80%減額でき、限度面積の残り100㎡が貸付事業用宅地等として50%減額となるのですが、残念ながらそのようには取り扱われません。
この場合共有なので、1階部分、2階部分それぞれを兄(乙)・弟(丙)が2分の1ずつ相続すると考えます。(国税庁HP 👈左記にこの事例がありますのでご参照くだだい。)
その結果、小規模宅地等の有利な選択は次のようになります。
敷地400㎡×1/2=200㎡ (1階部分) |
乙相続200㎡×1/2=100㎡ | 特定同族会社事業用宅地等 |
丙相続200㎡×1/2=100㎡ | 貸付事業用宅地等 | |
敷地400㎡×1/2=200㎡ (2階部分) |
乙相続200㎡×1/2=100㎡ | 貸付事業用宅地等 |
丙相続200㎡×1/2=100㎡ | 貸付事業用宅地等 |
※特定同族会社事業用宅地等100㎡ + 貸付事業用宅地等150㎡×2 ≦ 400㎡ ∴OK
⬅ 国税庁HP 👈限度面積参照
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【相続税】特定居住用宅地等(老人ホームに入居していた場合)
特定居住用宅地等の特例は、原則として相続開始直前の居住状況により、その適用の有無が判定されます。
しかしながら、老人人口の増加に伴い介護等の問題から自宅での生活を断念し老人ホームに入居していたため、相続開始直前では自宅に居住していない場合も少なくありません。
ところで老人ホームに入居した場合における特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)の適用ですが、平成25年度の税制改正前までは、次の要件がありました。
・相続人がいつでも生活できるようその建物の維持管理が行われていたこと。
・老人ホームに入居するために所有権や終身利用権を取得したものではないこと。
特別養護老人ホームへの入居を希望しつつも入居できなかったため、やむを得ず終身利用権を取得し有料老人ホームに入居した場合などもあることから、同年の税制改正でこれらの要件は撤廃されました。
現行法では次のようになっています。
1.居住用宅地等
居住の用(下記2.老人ホーム等に入居している場合を含む。)に供されていた宅地等 | 措法69の4本文 |
2.老人ホーム等に入居している場合
次の事由により、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかつた(下記3.他の用途に供されている場合を除く。)被相続人の居住の用に供されていた宅地等
一 介護保険法に規定する要介護認定又は要支援認定を受けていた被相続人で次に掲げる住居又は施設に入居又は入所をしていたこと。 二 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する障害支援区分の認定を受けていた被相続人が障害者支援施設(施設入所支援が行われるものに限る。)又は共同生活援助を行う住居に入所又は入居をしていたこと。 |
措令40の2② |
なお、要介護認定又は要支援認定や障害支援区分の認定は、老人ホーム入居時に認定を受けていなくても、相続の開始の直前において認定を受けていればよい取扱になっています。
(措基通69の4-7の3 要介護認定等の判定時期)
3.他の用途に供されている場合
事業の用又は被相続人等(下記4.生計一にしていた親族を含む。)以外の者の居住の用とする。 | 措令40の2③ |
4.生計一にしていた親族
被相続人と老人ホーム等へ入居又は入所の直前において生計を一にし、かつ、被相続人の住宅に引き続き居住している被相続人の親族を含む。 | 措令40の2③ |
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【コラム】適用額の制限が見直し
税金の申告にあたって、納税者にとって有利になる制度の適用を受けるための意思表示を、当初の申告(期限内申告、期限後申告)において行われなければならないものがあります。これを「当初申告要件」といいます。
この当初申告要件の多くは、平成23年の12月の税制改正において廃止されましたが、併せて控除額の制限※も廃止されています。
※益金不算入額や損金算入額,税額控除額を当初申告である確定申告書等に記載された金額を限度とすることをいいます。
主なものは次のとおりです。
・ | 受取配当等の益金不算入 | 法法23⑧ |
・ | 国等に対する寄附金、指定寄附金及び特定公益増進法人に対する寄附金の損金算入 | 法法37⑨ |
・ | 所得税額控除 | 法法68④ |
例えば所得税額控除は、改正前と改正後では次のようになっています。
改 正 前 | 改 正 後 |
③第1項(注:所得税額控除)の規定は、確定申告書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。 | ④第1項(注:所得税額控除)の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。 |
当初申告要件の廃止は,交際費を除き基本的に法人税法上の制度に限られています。
一方、租税特別措置法では適用額の制限が見直がなされ、一定の緩和がされています。
例えば、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除( 措法42の4 )では次のようになりました。
⑩・・・、確定申告書等(これらの規定により控除を受ける金額を増加させる修正申告書又は更正請求書を提出する場合には、当該修正申告書又は更正請求書を含む。)にこれらの規定による控除の対象となる試験研究費の額又は特別試験研究費の額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、これらの規定により控除される金額の計算の基礎となる試験研究費の額又は特別試験研究費の額は、確定申告書等に添付された書類に記載された試験研究費の額又は特別試験研究費の額を限度とする。 |
つまり、税務調査等で追加の法人税額が生じた場合に連動して控除限度額(例えば、法人税額の20%)が増えたような場合には、修正申告や更正の請求により控除額の増加を認めるというものです。
それ以外の、例えば調査の過程で試験研究の額が増加したとしても、確定申告書等に添付された書類に記載された試験研究費の額をベースに計算されるので控除額が増加することはありません。また、当初申告で試験研究費の額などの添付書類がない場合には適用はないことになります。
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【コラム】当初申告要件が存置した規定
税金の申告にあたって、納税者にとって有利になる制度の適用を受けるための意思表示を、当初の申告(期限内申告、期限後申告)において行われなければならないものがあります。これを「当初申告要件」といいます。
この当初申告要件の多くは、平成23年の12月の税制改正において廃止されましたが、そのまま残った規定もあります。
主な規定は次のとおりです。
・ | 小規模宅地等の特例(相続税関係) | 措法69条の4⑦ | |
・ | 相続時精算課税制度(相続税関係) | 相法21条の9② | |
・ | 居住用財産の譲渡の3,000万円の特別控除(所得税関係) | 措法35⑪ | |
・ | 住宅借入金等特別控除(所得税関係) | 措法41㉛ | |
・ | 研究開発税制(法人税関係、所得税関係) | 措法42条の4⑩他 | |
・ | 所得拡大税制(法人税関係、所得税関係) | 措法42条の12の5⑤他 |
例えば、小規模宅地等の特例を見てみると次のような規定になっています。
⑦ ・・・相続税法第27条(注:期限内申告書)・・・の規定による申告書(これらの申告書に係る期限後申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書を含む。・・・)に第1項の規定(注:小規模宅地等の特例)の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。 |
これにより、小規模宅地等の特例は、当初申告(期限内申告書、期限後申告書)において認めれるということになります。
なお、これらの申告書に係る修正申告書ですが、稀なケースかも知れませんが例えば、当初申告で小規模宅地等の申告が漏れていて、税務調査で修正申告が必要になったような場合などが考えられます。
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【コラム】当初申告要件の廃止
税金の申告にあたって、納税者にとって有利になる制度の適用を受けるための意思表示を、当初の申告(期限内申告、期限後申告)において行われなければならないものがあります。これを「当初申告要件」といいます。
この当初申告要件の多くは、次のとおり平成23年12月の税制改正において廃止されました。
当初申告時に選択した場合に限り適用が可能な「当初申告要件」がある措置について、次のいずれにも該当しない措置については、「当初申告要件」が廃止され、更正の請求範囲が拡大されました。
・ インセンティブ措置
・ 利用するかしないかで、有利にも不利にもなる操作可能な措置
次の措置については、上記のいずれにも該当しないことから、「当初申告要件」が廃止されました。(財務省HPより)
この改正により、確定申告で適用を受けなかった場合でも、修正申告や更正の請求において新たに制度の適用を受けることができます。
当初申告要件が廃止された主なものは次のとおりです。
・ | 受取配当等の益金不算入 | 法法23⑧ |
・ | 外国子会社から受ける配当等の益金不算入 | 法法23の2⑤ |
・ | 国等に対する寄附金,指定寄附金及び特定公益増進法人等に対する寄附金の損金算入 | 法法37⑨ |
・ | 所得税額控除 | 法法68④ |
・ | 外国税額控除 | 法法69⑮⑯ |
・ | 公益社団法人又は公益財団法人の寄附金の損金算入限度額の特例 | 法令73の2 ② |
・ | 適格合併等による欠損金の引継ぎにおける譲渡等損失額の損金不算入の対象外となる資産の特例 | 法令112 ⑥三ロ |
・ | 交際費課税における中小企業者の定額控除限度額の損金算入の特例 | 措法61の4⑤ |
この他、所得税や相続税・贈与税の規定にも対象となるものがあります。
詳しくは国税庁HP 👈(クリック)をご参照ください。
例えば、受取配当金の益金不算入では次のように改正されました。
改 正 前 | 改 正 後 |
⑦ 第1項の規定は、確定申告書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細の記載がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により益金の額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。 | ⑧ 第1項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により益金の額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。 |
この改正により、当初申告で受取配当金の計算に誤りがあったとしても、更正の請求で申告の是正ができるようになりました。
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【コラム】期限内申告要件
税金の申告にあたって、納税者にとって有利になる制度の適用を受けるための意思表示を、申告期限内の申告で行われなければならないものと、当初の申告において行われなければならないものがあります。
前者を”期限内申告要件”といい、後者を”当初申告要件”といいます。
ちょっと見には同じもののようですが、後者には期限内申告の他に期限後申告も含まれています。
いずれの場合も原則として、更正の請求や修正申告で新たに制度を適用させることはできません。
期限内申告要件のある特例には次のものがあります。
■青色申告65万円控除(所得税関係)
青色申告者の特典の一つで、所得金額から最高65万円又は10万円を控除するという制度です。
この制度の適用を受けるための要件の一つに、次の期限内申告要件があります。
・・・明細書の添付があり、かつ、当該確定申告書をその提出期限までに提出した場合に限り、適用する。(措法25の2) |
■相続時精算課税制度(相続税関係)
この制度を選択すると、 贈与時に2,500万円までの特別控除が認められています。
ただし、贈与者が死亡して相続が発生した場合には、この特例により贈与した財産を相続財産に加算して相続税額を計算するという制度です。
つまり、生前の贈与は相続時に相続税に取り込まれて精算されるという制度です。
なお、一旦相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税に戻ることはできません。
この制度の適用を受けるための要件の一つに、次の期限内申告要件があります。
前項(注:相続時精算課税制度)の規定の適用を受けようとする者は、・・・、第28条第1項(注:その年の翌年2月1日から3月15日までの申告期限)の期間内に・・・届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 |
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【所得税・相続税】住所地と国外転出課税
所得税法と相続税法では、住所地が異なる場合があるという話です。
両者はほとんど同じなのですが、子供が海外留学をしている場合などは、所得税法では日本に住所がないものとして扱われますが、相続税法では日本に住所があるものと扱われます。(下記赤字の部分です。)
所得税法では、居住者か否かで納税義務と課税財産の範囲を定めています。
この場合の居住者ですが、「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。」としとしています。
さらに住所については、次の場合には日本に住所があると推定するとしています。(所令14)
・日本において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。 ・日本国籍があって、日本に家族がいて、日本での職業や資産内容によって、継続して1年以上居住するものと推測するに足りる事実があること。 |
逆に、次の場合には日本に住所がないと推定するとしています。(所令15)
・国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。 ・外国籍を有するなどしていて、国内に家族がいなくて、外国での職業や資産内容によって、再び帰国して日本で住むと推測するに足りる事実がないこと。 |
相続税法では、日本に住所があるか否かで、相続税の納税義務と課税財産の範囲を定めています。
この場合の住所ですが、「法に規定する住所とは各人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定する。」としています。(相基通1の3・1の4共-5)
ただし、相続税法では所得税法とやや趣がちがって、たとえ海外に居住していても、そのことだけで直ちに住所が海外にあるとはしていません。
日本の国籍を有している者で、相続等により財産を取得した時に日本を住んでいなくても、つぎの場合は日本に住所があるとして扱うとしています。(相基通1の3・1の4共-6 )
・学術、技芸の習得のため留学している者で日本にいる者の扶養親族となっている者 ・国外において勤務その他の人的役務の提供をする者で、国外における人的役務の提供がおおむね1年以内であると見込まれる者(配偶者その他生計を一にする親族でその者と同居している者を含む。) |
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