延納・物納

相続税を一括で納められない時には延納・物納制度が利用できます

相続税は、原則として納付期限までに金銭で一括して納付しなければなりません。

しかし相続財産のなかには不動産や非上場株式など、評価額が高くても換金性に乏しいものが多く含まれ、金銭で一括納付することが困難な場合があるものです。

そこで相続税では例外的に延納・物納という制度が用意されています。
延納は相続税の年賦払いをいい、物納はお金の代わりに相続財産で税金を支払うことをいいます。

相続税の延納には難しい要件があります

相続税の延納をするためには、金銭で一括納付することが困難な額を限度とすること、担保を提供すること、などの一定の要件すべてを満たす必要があります。

金銭納付が困難な額は、相続人固有の預金も含めて判定し、生活費は3か月分、運転資金は1か月分しか認めてもらえません。
その算式は次のとおりですが、延納・物納申請にあたっては、金銭納付困難理由書を作成することになります。

金銭納付困難額=納付すべき相続税額-金銭納付可能額(※1)
(※1)相続した現金・預金等+相続人固有の現金・預金+換金が容易な財産等3ヵ月分の生活費-1ヵ月分の事業運転資金

換金が容易な財産等
・評価が容易であり、かつ、市場性のある財産で速やかに売却等の処分をすることができるもの
・納期限又は納付すべき日において確実に取り立てることができると認められる債権
・積立金・保険等の金融資産で容易に契約が解除でき、かつ、解約等による負担が少ないもの
(例)
○その他の有価証券等
出資証券、抵当証券、倉庫証券、貨物引換証、船荷証券、商品券等
○ 預貯金以外の債権で確実な取立てが可能と認められるもの
退職金、貸付金・未収金等
○ゴルフ会員権等の権利で取引市場が形成されているもの
○養老保険、財産形成貯蓄、生命保険などで解約等による負担が少ないもの

相続税の物納にはさらに難しい要件があります

相続税の物納をするためには、延納によっても金銭で納付することが困難であることが必要で、さらにその納付を困難とする金額が限度とされています。

物納できる財産は相続税の課税対象となったものに限られ、次のように優先順位が決められていますので、必ずしも納税者が希望する財産を物納できるわけではありません。

第1順位 国債、地方債、不動産、船舶
第2順位 社債、株式、証券投資信託または貸付信託の受益証券
第3順位 動産

また、物納に充てることができる財産は、「管理処分不適格財産に該当しないものであること」とされていて、例えば不動産だと担保がついていたり、境界に争いがあるものは等は物納を認めてもらえません。

相続税の延納・物納の利用は結構難しいです

金銭納付可能額は相続財産だけでなく、納税者自身の固有の財産も含めて計算します。

このため延納ができる額が、納付すべき相続税額に比べかなり少額になる傾向にあり、現在この制度はあまり利用されていません。
むしろ銀行等からの借り入れの方が多く利用されています。

物納が利用される財産の多くは不動産と非上場株式と思われますが、一般に不動産は物納するより市場で売却した方が高く売れるので、底地などのようにすぐには売却できないものでない限り損をしてしまいます。
また、非上場株式に至っては買い手を見つけてこない限り認めてもらえないのが実情です。

相続税の延納・物納いずれも実際に利用するのは結構難しく、最近はあまり利用されていないのが実情です。

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