居住用建物と消費税

改正の背景

住宅家賃は非課税であることから、居住用賃貸建物の取得に係る消費税は、本来は非課税売上対応課税仕入となって仕入税額控除の対象にはなりません。ところが、建物にかかる消費税は、金額も大きいことからいろいろなスキームが考えられてきました。当局もその都度、税制改正で「ふた」をしてきました。

直近では金地金(きんじがね)還付スキームというのがありました。これは課税仕入れを行った課税期間開始の日から3年間において、課税売上割合が著しく変動した場合には適用される「調整対象固定資産に関する課税仕入に係る消費税の調整」を回避するために、意図的に課税取引である金地金の売買を繰り返すことにより、課税売上割合を調整するというものでした。


改正の概要と調整方法

事業者が、国内において行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないこととされました。

この場合の居住用賃貸建物とは、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産※1又は調整対象自己建設高額資産※2に該当するものをいいます。

※1 高額特定資産とは、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が 1,000 万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。

※2 調整対象自己建設高額資産とは、棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額(税抜)の累計額が 1,000 万円以上となったものをいいます。

この改正により、居住用賃貸建物に係る消費税は、端(はな)から仕入税額控除できないことになりました。ただし、これでは中古マンションの転売業者などの場合、取得時には居住用賃貸建物として仕入税額控除ができず、マンションを売った場合にだけ消費税が課税される結果になってしまいます。

上記の「居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限」の適用を受けた「居住用賃貸建物」について、次のいずれかに該当する場合には、仕入控除税額を調整することとされました。

(1)第三年度の課税期間※1の末日にその居住用賃貸建物を有しており、かつ、その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間※2に課税賃貸用※3に供した場合

次の算式で計算した消費税額を第三年度の課税期間の仕入控除税額に加算
加算する消費税額 = イ × (ハ / ロ)  

.居住用賃貸建物課税仕入れ等に係る消費税額
.調整期間に行った居住用賃貸建物貸付けの対価の額の合計額※4
.ロのうち課税賃貸用に供したものに係る金額

(2)その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間※2に他の者に譲渡した場合

次の算式で計算した消費税額を譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算
加算する消費税額 = イ × {(ハ+ニ)/(ロ+ニ)}  

イ.居住用賃貸建物課税仕入れ等に係る消費税額
.課税譲渡調整期間※5に行った居住用賃貸建物貸付けの対価の額の合計額※4
.居住用賃貸建物の譲渡の対価の額※4
.ロのうち課税賃貸用に供したものに係る金額

※1 第三年度の課税期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間をいいます。

※2 調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第三年度の課税期間の末日までの間をいいます。

※3 課税賃貸用とは、非課税とされる住宅の貸付け以外の貸付けの用をいいます。

※4 対価の額は税抜き金額で、この対価の額について値引き等(対価の返還等)がある場合には、その金額を控除した 残額で計算します。

※5 課税譲渡等調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日からその居住用賃貸建物を他の者に譲渡した日までの間をいいます。

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