Archive for the ‘相続税’ Category
【相続税・贈与税】結婚子育て資金の一括贈与の非課税制度
-制度の概要-
<贈与時>
贈与者である直系尊属(父母・祖父母など)から、20歳以上50歳未満の受贈者(子・孫など)が、結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との契約に基づき、①信託受益権を付与された場合、②書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合又は③書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合(以下、結婚・子育て資金口座の開設等)には、信託受益権又は金銭等の価額のうち1,000万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります。
<贈与者が死亡した場合>
契約期間中に贈与者が死亡した場合には、死亡日における非課税拠出額※1から結婚・子育て資金支出額※2(結婚に際して支払う金銭については、300万円を限度とします。)を控除した残額(以下、管理残額)を、贈与者から相続等により取得したこととされます。
※1「非課税拠出額」とは、結婚・子育て資金非課税申告書等にこの制度の適用を受けるものとして記載された金額の合計額(1,000万円を限度とします。)をいいます。
※2「結婚・子育て資金支出額」とは、金融機関等の営業所等において、結婚・子育て資金の支払の事実を証する書類(領収書等)により結婚・子育て資金の支払の事実が確認され、かつ、記録された金額の合計額をいいます。
<終了した場合>
つぎの事由により結婚・子育て口座に係る契約が終了した場合には、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除(管理残額がある場合には、管理残額も控除します。)した残額があるときは、つぎの(2)の場合を除きその残額はその契約終了時に贈与があったこととされます。
(1) 受贈者が50歳に達したこと
(2) 受贈者が死亡したこと
(3) 口座の残高が0(ゼロ)になり、かつ、その口座に係る契約を終了させる合意があったこと
-結婚子育て資金-
(1) 結婚に際して支払う次のような金銭(300万円限度)をいいます。
① 挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)
② 家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの)
(2) 妊娠、出産及び育児に要する次のような金銭をいいます。
③ 不妊治療・妊婦健診に要する費用
④ 分べん費等・産後ケアに要する費用
⑤ 子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など
-口座開設-
結婚・子育て資金口座の開設等を行った上で、結婚・子育て資金非課税申告書をその口座の開設等を行った金融機関等の営業所等を経由して、信託や預入などをする日までに、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
なお、結婚・子育て資金非課税申告書は、原則として、受贈者が既に結婚・子育て資金非課税申告書を提出している場合には提出することができません。
-支払い-
結婚・子育て資金口座からの払出し及び結婚・子育て資金の支払を行った場合には、その支払に充てた金銭に係る領収書などを、次の(1)又は(2)の提出期限までにその金融機関等の営業所等に提出する必要があります。
(1) 結婚・子育て資金を支払った後にその実際に支払った金額を口座から払い出す方法を選択した場合
領収書等に記載された支払年月日から1年を経過する日
(2) (1)以外の方法を選択した場合
領収書等に記載された支払年月日の属する年の翌年3月15日
詳しくは国税庁HPをご参照下さい。
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【相続税・贈与税】教育資金の一括贈与の非課税制度と相続税対策
祖父母が孫に教育資金を贈与したからといって必ずしも贈与税がかかるわけではありません。
民法では、「直系血族」と「兄弟姉妹」は原則として扶養義務があり,特別な事情がある場合には「3親等内の親族」も扶養義務を負うとされています。
相続(贈与)税法でも、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は、贈与税は非課税と定められています。
この非課税の規定と教育資金の一括贈与の非課税の規定と何が違うかというと、前者は教育費を支出の都度贈与した場合であり、後者は将来の教育費までも一括して贈与した場合です。
したがって、教育費をその都度贈与する限り非課税なので贈与税の基礎控除110万円も関係ありません。また、通常必要な範囲の教育費なら金額の上限があるわけでもありません。
この制度創設の趣旨が、高齢者の資産を若い世代に移転させるとともに、その資金を教育資金として有効に活用してもらい経済を活性化の一助にしようというものです。
この制度は、相続開始前3年以内の贈与財産の相続税の課税価格の加算の適用がありません。さらに、贈与者が死亡した場合で未使用の教育資金が残ったとしても相続税の対象とはなりませんので、相続税対策としても有効です。
-制度の概要-
<教育資金の一括贈与時>
30歳未満の受贈者が、教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、祖父母など直系尊属から①信託受益権を付与された場合、②書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合又は③書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合(以下「教育資金口座の開設等」といいます。)には、信託受益権又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります。
<教育資金口座の契約終了時>
教育資金口座の契約が終了※した場合には、非課税拠出額((1,500万円が限度)から教育資金支出額(学校等以外に支払う金銭については、500万円が限度)を控除した残額があるときは、その残額はその契約終了時に贈与があったものとされます。
※教育資金口座に係る契約は、つぎのときに終了します。
①受贈者が30歳に達したこと
②受贈者が死亡したこと
③口座の残高が0(ゼロ)になり、かつ、その口座に係る契約を終了させる合意があったこと
-教育資金とは-
(1) 学校等に対して直接支払われる次のような金銭をいいます。
① 入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
② 学用品の購入費や修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
(注) 「学校等」とは、学校教育法で定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学(院)、
専修学校及び各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園又は保育所などをいいます。
(2) 学校等以外に対して直接支払われる次のような金銭で教育を受けるために支払われるものとして社会通念上相当と認められるものをいいます。
<イ 役務提供又は指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの>
③ 教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
④ スポーツ(水泳、野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など
⑤ ③の役務の提供又は④の指導で使用する物品の購入に要する金銭
<ロ イ以外(物品の販売店など)に支払われるもの>
⑥ ②に充てるための金銭であって、学校等が必要と認めたもの
⑦ 通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費
-教育資金口座の開設の手続き-
この非課税制度の適用を受けるためには、教育資金口座の開設等を行った上で、教育資金非課税申告書をその口座の開設等を行った金融機関等の営業所等を経由して、信託や預入などをする日までに、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。なお、教育資金非課税申告書は、金融機関等の営業所等が受理した日に税務署長に提出されたものとみなされます。
-支払い-
教育資金口座からの払出し及び教育資金の支払を行った場合には、その支払に充てた金銭に係る領収書などを、次の(1)又は(2)の提出期限までに金融機関等の営業所等に提出する必要があります。
(1) 教育資金を支払った後にその実際に支払った金額を口座から払い出す方法を選択した場合
領収書等に記載された支払年月日から1年を経過する日
(2) (1)以外の方法を選択した場合
領収書等に記載された支払年月日の属する年の翌年3月15日
詳しくは国税庁HPをご参照下さい。
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【相続税・贈与税】住宅取得等資金の贈与の非課税制度と相続税対策
父母や祖父母など直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合で、つぎの要件を満たすときは非課税限度額までの金額について贈与税がかかりません。この制度は暦年課税(基礎控除110万円)の場合だけでなく、相続時精算課税(特別控除額2,500万円)の場合にも適用があります。
例えば、平成29年の契約で省エネ等住宅以外の場合非課税限度額は700万円ですから、暦年課税810万円(700万円+110万円)まで、相続時精算課税3,200万円(700万円+2,500万円)まで、無税で子や孫に金銭を移転させることができます。
この制度は平成21年度の経済危機対策の一環として創設されたもので、高齢者の資産を活用して子や孫の世代の住宅取得支援をしてもらおうという趣旨です。
この制度は大変使い勝手がよく、まとまった金額を子・孫世代へ金銭を無税で移転させることとができるとともに、相続開始前3年以内の贈与財産の相続税の課税価格の加算の適用がないので、相続税対策としても有効です。
非課税限度額は契約締結の日で判定され、贈与の日ではないので注意が必要です。
また、非課税限度額の②が適用されるのは、契約締結日が平成 31 年4月1日から平成 33 年 12 月 31 日までの間の契約で、かつ、消費税率が 10%であるときに限られます。
-非課税限度額-
①下記②以外
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅※ | 左記以外の住宅 |
~平成27年12月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成28年1月1日~平成32年3月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
平成32年4月1日~平成33年3月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
平成33年4月1日~平成33年12月31日 | 800万円 | 300万円 |
②消費税等の税率が10%である場合
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅※ | 左記以外の住宅 |
平成31年4月1日~平成32年3月31日 | 3,000万円 | 2,500万円 |
平成32年4月1日~平成33年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成33年4月1日~平成33年12月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
※省エネ等住宅とは、省エネ等基準(断熱等性能等級4若しくは一次エネルギー消費量等級4以上であること、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上若しくは免震建築物であること又は高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること)に適合する住宅用の家屋であることにつき、一定の書類により証明されたものをいいます。
-要件のフローチャート-
①受贈者は贈与時に国内に住所がある等
↓YES
②父母や祖父母など直系尊属からの贈与か
↓YES
③受贈者は贈与の年の1月1日で20歳以上か
↓YES
④合計所得が2,000万円以下か
↓YES
⑤贈与を受けた金銭を翌年3月15日までに資金の全額を住宅取得等に利用か
↓YES
⑥贈与を受けた翌年3月15日までに居住(又は居住が確実な見込み)か
↓YES
⑦床面積の1/2以上が居住用か
↓YES
⑧床面積が50㎡以上240㎡未満か
↓YES
⑨新築住宅又は一定の中古住宅か
↓YES
⑩住宅取得資金の贈与の特例の適用あり
贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日までに贈与税の申告が必要
-手続き-
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書につぎの書類を添付する必要があります。
・戸籍の謄本
・登記事項証明書
・新築や取得の契約書の写しなど
詳しくは国税庁HPをご参照下さい。
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【相続税・贈与税】配偶者に対する贈与税の非課税
-相続対策-
相続対策としての暦年贈与には、暦年贈与課税の基礎控除110万円を利用する、相続税の限界税率をみながら贈与を行う、そして贈与税の非課税の規定を活用するほ方法があります。
配偶者に対する贈与税の非課税の規定は、相続対策にもなりますが、通常受贈者は贈与者と同世代にあると思われるので、二次相続(贈与を受けた配偶者の相続)も視野に入れて検討する必要があります。
-制度の趣旨-
この制度は大変古く、昭和41年に創設されました。その趣旨は、親子相互間の扶養義務感の変化に伴い、残された妻の生活保障だとされています。昭和41年頃には既に核家族化の傾向が出始めていたということでしょう。
-特例の内容-
贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上である配偶者から「居住用不動産」又は「居住用不動産を取得するための金銭」を取得した場合に、課税価格から2,000万円までが控除される特例です。別途贈与税の基礎控除110万円ありますので、最大2,110万円万円まで無税で配偶者に財産を移転することができます。
(計算方法)
贈与税の課税価格 - 2,000万円(最大)- 贈与税の基礎控除額(110万円) × 贈与税の税率
-適用要件-
・婚姻期間が20年以上であること。
婚姻の届出があった日から贈与の日までの期間で判定します。なお、婚姻期間に1年未満の端数があるときは、その端数は切り捨てます。
・「居住用不動産」であること
「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地等や家屋で贈与を受けた年の翌年3月15日までに受贈者の居住の用に供し、かつ、その後も引き続いて居住の用に供する見込みであるものをいいます。
・又は「居住用不動産を取得するための金銭」であること
「居住用不動産を取得するための金銭」とは、居住用不動産を取得するための金銭でその金銭の贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住用不動産の取得にあて、かつ、その取得した居住用不動産を3月15日までに受贈者の居住の用に供し、その後も引き続いて居住の用に供する見込みであるものをいいます。
・同じ配偶者からは、一生に一度しかこの特例を受けることはできません。
・相続開始前3年以内であっても加算の対象とはなりません。
-手続き-
贈与税の申告書につぎの書類を添付して提出しなければなりません。
・ 受贈者の戸籍の謄本又は抄本(居住用不動産又は金銭の贈与を受けた日から 10 日を経過した日以後に作成されたものに限ります。)
・受贈者の戸籍の附票の写し(居住用不動産又は金銭の贈与を受けた日から 10 日を経過した日以後に作成されたものに限ります。)
・ 登記事項証明書などで受贈者が控除の対象となった居住用不動産を取得したことを証する書類
-計算例-
土地 3,000万円(相続税評価額)、建物 2,000万円(相続税評価額) の1/2を配偶者に贈与し、配偶者控除の特例の適用を受けた。
(※2,500万円―※※2,000万円―110万円)× 20%―25万円 = 53万円(贈与税額)
※ 2,500万円 → (土地3,000万円+建物2,000万円)×1/2
※※ 2,000万円 → 2,500万円>2,000万円 ∴2,000万円
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【相続税・贈与税】相続対策としての暦年贈与の考え方
-相続対策としての暦年贈与の考え方-
相続対策としての暦年贈与には、つぎの3つの方法があります。
①暦年贈与課税の基礎控除110万円を利用しながら時間をかけて計画的に贈与を行っていく。
②相続税の限界税率と贈与税の実効税率を比較しながら計画的に贈与を行っていく。
③贈与税の非課税の規定を利用する。
-限界税率と実効税率-
相続税も贈与税もその税率構造は、財産の額が増えれば増えるほど高い税率が適用される、いわゆる超過累進税率です。
相続税の税率⇒こちらをクリックして下さい。
贈与税の税率⇒こちらをクリックして下さい。
限界税率とは、相続財産の額又は贈与財産の額に適用される最も高い税率をいいます。
実効税率とは、相続財産の額又は贈与財産の額に占める相続税額又は贈与税額の割合をいいます。
-事例-
父とその子供が2人の場合で、父の財産の額が3億円だととします。
相続税の限界税率
相続人1人当たりに適用される限界税率:3億円×法定相続分1/2=1.5億円 ⇒ 1億円超2億円以下の場合に適用される40%
贈与税の実効税率
特例贈与(直系尊属からの20歳以上の者への贈与)の場合、贈与財産の額が4,500万円だと贈与税額はつぎのようになります。
(4,500万円-110万円)×50%-415万円=1,780万円
実効税率=1,780万円/4,500万円=39.6%
以上により、事例の場合では生前に約4,500以下の贈与をすれば相続税の節税につながります。
-留意点-
相続税の節税になるからといって、何でもかんでも生前に贈与すればよいわけではありません。
まずは、自身の老後の十分な生活資金が確保できていなければなりません。さらに相続税の納税資金をどうするかも考慮しておかなければなりません。
また、不公平な贈与は往々にして相続時のもめ事の原因になり、相続税の節税が徒になってしまいかねません。
相続税の節税対策は、専門家に財産評価を依頼し、意見を聞き、その対策のメリット・デメリットを見極めた上で計画的に実行した方がよいでしょう。
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【相続税・贈与税】非上場株式の評価方法の見直し
-財産評価基本通達-
相続税や贈与税は、相続開始時や贈与時の財産の評価額を基に税額を計算します。
上場株式等のように日々の取引価格が公表されているものは、その評価額を計算することは容易です。
土地などの不動産はどうでしょうか。不動産はおおよその取引相場価額は判るかも知れませんが、実際にその価額で売れるかどうかは売りに出してみなければわかりません。売りに出せば直ぐに買い手が付くものもありますが、なかなか買い手が付かないものも少なくありません。
では、日本の会社の99%を占める非上場株式はどうでしょう。非上場株式のことを相続(贈与)税法では取引相場のない株式等といいます。取引相場がないといっても全く価値がないというわけではありません。会社を解散して残余財産があれば株主に分配されます。探せば株式を買い取って会社を経営してもよいという人が出てくるかもしれません。
このように考えると非上場株式も何らかの方法で評価をしなければなりません。
また、相続・贈与財産の評価額が、評価する人によってバラバラだと有利不利が生じて不公平になります。
そこで、すべての相続・贈与財産の評価方法を画一的に定めたのが「財産評価基本通達」です。
-非上場株式の評価方法の見直し-
平成29年度税制改正大綱では、つぎのようになっていました。
(6)相続税等の財産評価の適正化
相続税法の時価主義の下、実態を踏まえて、次の見直しを行う。
① 取引相場のない株式の評価の見直し
イ 類似業種比準方式について、次の見直しを行う。
(イ)類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均を加える。
(ロ)類似業種の上場会社の配当金額、利益金額及び簿価純資産価額について、連結決算を反映させたものとする。
(ハ)配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、1:1:1とする。
ロ 評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大する。
また、現在「財産評価基本通達」の一部改正(案)のパブリックコメントが募集されています。改正案の内容を知りたい方はここをクリックして下さい。
ここで注目されているのは、配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重についてです。
従前は、配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重が1:3:1だったのが、改正案では1:1:1となっています。
つまり、利益金額が比重が従前3/(1+3+1)=60%だったのが、改正案では1/(1++1+1)=33%となっていて、類似業種比準価額における利益の占める割合が半減しています。その分、配当金額と簿価純資産価額は1/(1++3+1)=20%から改正案では1/(1++1+1)=33%となり1.5倍となっています。
評価方法の見直しにより、例えば社歴が古く過去の利益の蓄積が多額 (簿価純資産価額⇒大) だけれども最近はあまり儲かっていない (利益金額⇒小) 会社の株式の評価額は、上昇することが見込まれます。
一方、社歴が浅く過去の利益の蓄積は十分ではない (簿価純資産価額⇒小) けれども高収益 (利益金額⇒大) の会社は、逆に下落することが見込まれます。
なお、この改正は、平成29年1月1日以後の相続・贈与から適用される予定です。
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【相続税・贈与税】暦年贈与による相続税対策・保険料贈与スキーム
贈与税の基礎控除110万円を利用した、保険料贈与スキーム(保険料贈与プランともいいます。)というのがあります。
仕組みはさほど難しいものではなく、祖父母から孫に保険料相当額の贈与をするというものです。
-具体例-
・保険契約の締結
例えば、孫は生命保険会社とつぎの保険契約を結びます。
保険契約者 | :孫 |
被保険者 | :長男 |
保険料負担者 | :孫 |
保険金受取人 | :孫 |
・祖父は孫が支払う毎年の保険料に見合う金銭を孫に贈与します。
・孫は祖父から贈与を受けた金銭を原資に、毎年生命保険料を保険会社社に支払います。
-スキームの効果-
・孫は祖父から受けた贈与については、贈与税の基礎控除があるので贈与税がかからないか、かかっても少額の負担ですむ。
・保険事故(保険の満期や被保険者の死亡)により受け取る保険金は、孫の一時所得になり2分の1課税で有利である。
(保険金額-払込保険料-特別控除額:最高50万円)×1/2 |
・孫は代襲相続人なる場合や養子縁組をしている場合を除き、通常祖父母の相続人とはならないので、相続開始前3年以内の贈与加算はない。
・子ではなく孫とすることにより、子より1世代先なので、相続税対策としてはより有効である。
-スキームの問題点-
・贈与は贈与契約の成立とその履行が原則です。したがって、祖父と孫との間で毎年贈与契約を結び、祖父の口座から孫の口座に毎年実際に金銭の振り込みなされていなければならず、実務的な困難をともないます。
・さらに毎年保険料相当額の贈与がなされる結果、連年贈与の問題が生じます。つまり、祖父と孫との間で保険料の総額を贈与する契約が成立し、これを毎年分割して孫に渡していると認定されると、毎年の保険料に対してではなく、保険料の総額に対して贈与税が課税されてしまう可能性があります。
・かつて国税庁には下記の事務連絡が存在していましたので、参考までに掲げておきます。
国税庁の事務連絡(昭和58年9月)
(1)被相続人の死亡又は生命保険契約の満期により保険金等を取得した場合若しくは保険事故は発生していないが保険料の負担者が死亡した場合において、当該生命保険又は当該生命保険に関する権利の課税に当たっては、それぞれの保険料の負担者からそれらを相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなして、相続税又は贈与税を課税することとしている。
(注) 生命保険金を受け取った者が保険料を負担している場合には、所得税(一時所得又は雑所得)が課税される。
(2) 生命保険契約の締結に当たっては、生計を維持している父親等が契約者となり被保険者は父親等、受取人は子供等として、その保険料の支払いは父親等が負担しているというのが通例である。 このような場合には、保険料の支払いについて、父親等と子供達との間に贈与関係は生じないとして、相続税法の規定に基づき、保険事故発生時を課税時期としてとらえ、保険金を受け取った子供等に対して相続税又は贈与税を課税することとしている。
(3)ところが、最近、保険料支払い能力のない子供等を契約者及び受取人として生命保険契約を父親等が締結し、その支払保険料については、父親等が子供等に現金を贈与し、その現金を保険料の支払いに充てるという事例が見受けられるようになった。
(4)この場合の支払保険料の負担者の判定については、過去の保険料の支払資金は父親等から贈与を受けた現金を充てていた旨、子供等(納税者)から主張があった場合は、事実関係を検討の上、例えば、①毎年の贈与契約書、②過去の贈与税の申告書、③所得税の確定申告等における生命保険料控除の状況、④その他贈与の事実が認定できるものなどから贈与事実の心証が得られたものは、これを認めることとする。
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【相続税・贈与税】暦年贈与による相続税対策・その留意点
民法では、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」(民法549条)と 定められています。
これにより、贈与者だけが財産を引き渡す義務を負い(片務)、ただで(無償)、合意するだけで成立する(諾成)契約といわれています。
さらに、「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」(民法550条)とされていています。
つまり、贈与契約は必ずしも書面によらなくても成立しますが、贈与が履行されたものを除き、書面によらない贈与はいつでも撤回できることになります。
-贈与の履行-
贈与税は、贈与契約の成立とその履行に基づいて課される税金です。
例えば、父は子に100万円をあげますといい、子は父に100万円もらいますといえば贈与契約は成立しますが、これだけでは贈与税は課税されません。実際に親から子に100万円渡されることにより贈与税が課税されます。
祖父が子や孫のために預金通帳をつくり自分の預金から一定金額を毎年移しておいたとしても、その通帳や印鑑を祖父が管理していれば贈与の履行がなされていません。したがって、その預金は祖父の預金(名義預金)となってしまいます。
-連年贈与-
国税庁のHPにつぎのQ&Aがあります。
毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合
Q1
親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A1
定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、各年の受贈額が110万円以下の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります。
なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。
したがって、贈与契約をまとめて行ってしまうと、上記Q&Aのような問題が出てきます。贈与契約は毎年行い、税務署に誤解されないように、できれば一定額でない方が望ましいでしょう。
-贈与契約書の作成-
贈与契約は必ずしも書面によらなくても成立しますが、できれば確定日付のある贈与契約書を作成した方が望ましいでしょう。
-あえて贈与税の申告-
よく行われている方法として、贈与を基礎控除の110万円を少し超える金額で行い、あえて贈与税の申告をして実績をのこすやり方があります。ただし、贈与税の申告をしたからといって必ずしも贈与契約の成立と履行が行われた証明にはなりません。あくまでも、贈与の事実を補完するものです。
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【相続税・贈与税】暦年贈与による相続税対策
多くの方が実行されている相続税の節税対策の一つに、暦年贈与課税の基礎控除110万円を使うものがあります。
年間110万円と聞くとたいしたことないと思われるかも知れませんが、10年かけて行えば基礎控除額の累計は1,100万円になります。
さらに子だけでなく血のつながった孫までを想定すれば、結構な金額になります。例えば子が2人として孫まで数えると、子1人当たりに孫が2人で3人、これが2世帯なので、基礎控除の10年間の総額は1,100万円×6人=6,600万円となり、無税で6,600万円の相続財産を減らすことができます。
-相続開始前3年以内の贈与-
ただし、相続で財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときには、原則として、その人が相続した財産にその贈与を受けた財産が贈与の時の価額で加算されてしまいます。
この加算される財産は贈与税がかかっていたかどうかは関係ないので、毎年贈与していて10年目に亡くなったとしたら、7年間は相続対策としては有効ですが、残りの3年間は無駄になってしまいます。
ただ、相続財産に加算された贈与財産につき支払った贈与税がある場合は相続税から控除されますので、金銭の様に贈与の時と相続の時とで財産の価額が変わらなければ、損をするわけではありません。
例外として、つぎの贈与については相続開始前3年以内であっても加算の対象とはなりません。
・贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けた配偶者控除額に相当する金額
・直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
・直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
・直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
∞∞ 吉岡 ∞∞
【相続税】災害を受けたときの相続税・贈与税の減免の計算
災害により相続財産全体の10分の1以上の被害を受けたり、相続財産のうちの住宅や家財等についてその10分の1以上の被害をうけたりした場合は、被害が受けたのが申告期限前であれば、「災害減免法」によりその被害額は相続財産の価額から減額されます。
この場合の、被害額の具体的な計算方法はつぎのとおりです。
-被害を受けた部分の価額の計算方法-
被害を受けた個々の相続財産の価額ごとに、被害割合を乗じて計算します。
〔被害を受けた相続財産の価額×被害割合= 被害を受けた部分の価額〕
-被害割合の計算方法-
①被害額が明らかな場合
被害額(保険金控除後)/その財産が被害を受ける直前の時価=被害割合
②被害額が明らかでない場合
イ.保険金の補填がない場合 ・・・ 住宅・家財について国税庁が公表している「別表1被害割合表」による
ロ.保険金の補填がある場合 ・・・
{被害を受ける直前の建物・家庭用動産・車両の時価×「別表1被害割合表」による被害割合-保険金の補填額}/{被害を受ける直前の建物・家庭用動産・車両の時価}=被害割合
-贈与税-
上記相続税に準じます
詳しくは国税庁HPをご参照下さい
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