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【所得税】上場株式等の譲渡と配当:配偶者控除が受けられなくなるケース
所得控除には、その適用要件に合計所得金額で判定するものがあります。具体的には配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除などです。
例えば、配偶者控除の対象となる控除対象配偶者はつぎのようになっています。
-配偶者のうち、次のいずれにも該当する方-
・平成○○年12月31日(年の中途で死亡した場合には、その死亡の日)の現況において、あなたと生計を一にしている。
・平成○○年分の合計所得金額が38万円以下である。
・青色事業専従者や白色事業専従者でない。
この場合の合計所得とは、つぎの①と②の合計額に、退職所得金額、山林所得金額を加算した金額です。また、申告分離課税の所得がある場合には、それらの所得金額(不動産の譲渡所得がある場合は特別控除前の金額)の合計額を加算した金額です。
① 事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
② 総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の2分の1の金額
ただし、つぎの繰越控除を受けている場合は、その適用前の金額をいいます。
・純損失や雑損失の繰越控除
・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除
・特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
・上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
・特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除
・ 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
上場株式の配当金を受け取った場合、申告不要とするか、あえて総合課税の確定申告して源泉徴収された税金の還付を受けるか、他の株式の譲渡損失と損益通算するために申告分離で確定申告するかといった選択肢があります。
ところが、申告してしまったために合計所得が38万円を超えてしまい、あなたの配偶者が配偶者控除や配偶者特別控除などの所得控除が受けられず、還付額よりも配偶者の納税額が増えてしまたったということが起こり得ます。
同様のことが源泉有りの特定口座で上場株式を譲渡した場合にも起こり得ます。さらに、収入が増えてしまったために後期高齢者の窓口1割負担が3割負担になったり、保険料の所得割が増えてしまったということが起こります。
【所得税】上場株式等の譲渡と配当:申告の留意点
-配当等の申告不要について-
上場株式等の配当については申告不要の制度があります。申告不要の選択するにあたって、配当等ごとに申告不要とするか否かを選択することができます。例えば、夫の配偶者控除を受けるために所得を38万円以下におさえる必要がありますが、その範囲で確定申告をして源泉税の還付を受けるといったことがあげられます。ただし、源泉徴収ありの特定口座で受け入れた配当等については、特定口座ごとに選択する必要があります。
-配当等の申告分離について-
上場株式等の配当を申告する場合は、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択することができます。この場合、申告する上場株式等の配当等全てについて、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択する必要があります。例えば、一部の配当等については総合課税しておき、一部の配当等については上場株式の譲渡損と損益通算するために申告分離課税を選択するといったことはできません。
-損益通算及び繰越控除-
確定申告により、上場株式等の譲渡損失の金額は、上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算することができますが、この場合の上場株式等の配当等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。
-源泉徴収ありの特定口座-
①口座ごとに申告の選択が可
上場株式等の譲渡による所得又はその源泉徴収ありの口座に受け入れた上場株式等の配当等に係る配当所得等を申告するかどうかは口座ごとに選択できます。
②同一口座内の譲渡、配当いずれかを選択しての申告が原則可
源泉徴収ありの口座における上場株式等の譲渡による所得とその源泉徴収ありの口座に受け入れた上場株式等の配当等に係る配当所得等のいずれかのみを申告することができます。ただし、源泉徴収ありの口座における上場株式等を譲渡したことにより生じた譲渡損失の金額を申告する場合には、その源泉徴収口座に受け入れた上場株式等の配当等に係る配当所得等も併せて申告しなければなりません。
③申告後の変更は不可
一旦、源泉徴収ありの口座における上場株式等の譲渡による所得又は上場株式等の配当等に係る配当所得等を申告すると、その後は変更はできません。また、源泉徴収ありの口座における上場株式等の譲渡による所得の金額又は上場株式等の配当等に係る配当所得等の金額を含めないで申告した後は、申告することに変更もできません。
【所得税】上場株式等の譲渡・配当と証券会社の口座
上場株式の売買をするにあたっては、証券会社に口座を設ける必要があります。口座の種類には、①一般口座、②源泉徴収なしの特定口座、③源泉徴収ありの特定口座の3つがあります。
①一般口座
自分自身で売買記録にもとづき〔譲渡所得の金額=総収入金額-(取得費+譲渡費用)〕を計算することになります。売買の回数が多い場合は、相当煩雑になるので、通常は特定口座を選択します。
②源泉徴収なしの特定口座
特定口座内における上場株式等の譲渡所得等の金額については、証券会社において一般口座で譲渡した他の株式等の譲渡による所得と区分して計算します。証券会社から送られる特定口座年間取引報告書に基づいて自分で確定申告します。なお、給与所得者で給与以外の所得が20万円以下の場合は確定申告しなくてもよいときがあります。詳しくは国税庁HPをご参照下さい。
③源泉徴収ありの特定口座
上場株式等の配当金は、源泉徴収ありの特定口座で受け入れることができます。上場株式等の配当所得は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)源泉徴収され、特定口座内で年間の配当所得が計算されます。この配当所得と上場株式等の譲渡損は損益通算が行われ、源泉徴収税額の過納分が還付されます。特定口座内で損益通算が行われるため、原則として確定申告は不要になります。ただし、他の口座での譲渡損益と相殺する場合や上場株式等に係る譲渡損失を繰越控除する特例の適用を受ける場合には、確定申告をする必要があります。
【所得税】上場株式の譲渡と配当
株式には、大きく分けて一般株式等※と上場株式等があり、それぞれ課税方法がことなります。※一般株式等とはいわゆる非上場株式のことです。
-上場株式等-
①譲渡した場合
〔譲渡所得の金額=総収入金額-(取得費+譲渡費用)〕
上場株式等の譲渡所得が黒字の場合は20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税金が課されます。上場株式等の譲渡所得の金額が赤字の場合は、他の上場株式等に係る譲渡所得の黒字の金額と通算することができます。
一般株式等の場合と異なるのは、上場株式等の譲渡損益を通算した結果赤字になった場合には、上場株式等の配当所得と通算できることと、赤字の3年間の繰越控除が認められている点です。
②配当金を受け取った場合
受け取った配当金は、つぎの三つの方法の中から選択することになります。
イ.総合課税 ・・・ 給与所得など他の各種所得と合算することにより所得税の累進税率が適用されるとともに、配当控除による税額控除が受けられます。配当所得には20.315%源泉徴収されているため、比較的所得が少ない方は確定申告で総合課税を選択することにより源泉徴収された税金を返してもらうことができます。課税総所得金額(所得控除後の金額)が695万円以下がその目安となっています。
ロ.申告不要 ・・・ 上場株式等の配当の場合20.315%が源泉徴収されていますが、確定申告をしなければそれで納税が終了します。比較的所得が多い方は税率が高いため総合課税を選択するとさらに税金を追加課税されてしまいます。その目安は課税総所得金額が695万円超の方は申告不要を選択した方が有利となります。
ハ.申告分離 ・・・ 上場株式等の譲渡所得が赤字の場合や赤字の3年間の繰越控除をしてもなお控除しきれない場合は、上場株式の配当所得を申告分離課税として確定申告することにより損益通算することができます。結果として、配当金について源泉徴収された税金の全部又は一部を返してもらうことができます。
詳しくは国税庁HPをご参照下さい。
【所得税】非上場株式の譲渡と配当
株式には、大きく分けて一般株式等※と上場株式等があり、それぞれ課税方法がことなります。※一般株式等とはいわゆる非上場株式のことで日本の株式会社の99%以上がこれに該当します。
-非上場株式-
非上場株式は売買そのものが行われることは希ですが、配当は行われることがあります。これらの場合の課税方法はつぎのとおりです。
①譲渡した場合
〔譲渡所得の金額=総収入金額-(取得費+譲渡費用)〕
この譲渡所得が黒字の場合は20.42%(所得税20%、復興特別所得税0.42%)の税金が課されます。譲渡所得の金額が赤字の金額の場合は、他に一般株式等に係る譲渡所得の黒字の金額があるときはこれから控除することができます。つまり、一般株式等のくくり中で黒字と赤字を通算することができ、通算後の金額が黒字の場合は20.42%の税金が課され、赤字の場合は切り捨てられます。
②配当金を受け取った場合
受け取った配当金は、給与所得など他の各種所得と合算するいわゆる総合課税となり、累進税率が適用されとともに、配当控除による税額控除が受けられます。なお、1回に支払を受けるべき配当等の金額が、10万円※以下である少額配当については申告不要とすることができます。少額配当について申告するかしないかの目安は、課税総所得金額(所得控除後の金額)が900万円以下ならば申告した方が有利、これを超えるなら申告しない方が有利となっています。
※複数回配当がある場合は、「10万円×配当計算期間の月数(最高12か月)÷12」となります。
【所得税】雑損控除における「損失額の合理的な計算方法」
国税庁において、雑損控除における「損失額の合理的な計算方法」として、住宅、家財、車両についてその計算の仕方が公表されています。その概要は次のとおりです。
-住宅の損失額の計算-
①取得価額が明らかな場合
被災直前の時価を、その住宅を取得したときの価額と考えます。ただし、取得してから日数が経過していますので、その分の価値の減少額を計算し、これを差し引いた価額が被災直前の時価と考えます。
損失額=(取得価額-減価償却費(注1))×被害割合(注2)
(注1) 減価償却費=取得価額×0.9×償却率×経過年数(1年未満の端数については6月以上は1年、6月未満は切り捨て)
(注2) 全壊、半壊、一部損壊や浸水の場合の床上の程度に応じた被災割合が国税庁の雑損控除における「損失額の合理的な計算方法」において公表されています。
②取得価額が不明な場合
旧い住宅や新しい住宅であっても被災したことにより取得価額がわかる書類が流失等していて不明な場合があります。この場合は、各国税局において、地域別・構造別の1㎡当たりの工事費用が公表されています。取得価額に代えてこれにより被害直前の時価を求めることができます。
損失額=〔(1平方メートル当たりの工事費用×総床面積)-減価償却費〕×被害割合
-家財の場合-
①取得価額が明らかな場合
損失額=(取得価額-減価償却費)×被害割合
②取得価額が不明な場合
国税庁の雑損控除における「損失額の合理的な計算方法」において、家族構成別家財評価額が公表されています。これを被災直前の時価としてこれに被害割合を乗じて損失額を求めます。
損失額=家族構成別家財評価額×被害割合
-車両の場合-
雑損控除の対象となる資産は、生活に通常必要な資産に限られます。したがって、もっぱら通勤に使用しているなど、車両の保有目的、使用状況等を総合勘案して判断することになります。スポーツカーなどの高級車は一般には対象とはなりません。
損失額=(取得価額-減価償却費)×被害割合
【所得税】雑損控除の損失額
雑損控除は、住宅及び家財を含む生活に通常必要な資産について災害等により損失額が生じた場合、つぎのうちいずれか多い方の金額を所得控除できる制度です。
①損失額-所得金額の10分の1
②災害関連支出の金額-5万円
この場合の損失額は、資産そのものの損失額と災害関連支出の金額との合計です。災害関連支出の金額は、現に支払った金額なので容易に把握できます。
一方資産そのものの損失額は、原則として次のように計算します。
・損失発生直前時価-損失発生直後時価
又は
・(取得価額-減価償却費)-損失発生直後時価
しかし、例えば住宅の場合、全壊、半壊、一部破損の場合もありそれをどのように判断するのか迷ってしまいます。そもそも損失発生直前の時価や直後の時価をどのようにして把握すればよいのでしょうか。
国税庁において、雑損控除における「損失額の合理的な計算方法」として、住宅、家財、車両についてその計算の仕方が公表されています。例えば、住宅については次のようにして計算します。
-取得価額が明らかな場合-
損失額=(取得価額-減価償却費)×被害割合
-取得価額が不明な場合-
損失額=〔(1平方メートル当たりの工事費用×総床面積)-減価償却費〕×被害割合
【所得税】災害関連支出
住宅家財等が災害等により深刻な被害を受けた場合、その後片付けなどの支出が発生することがありますが、これを災害関連支出といいます。なお、災害関連支出のうち保険金等で補てんされた場合にはこれを控除した金額になります。具体的には、以下のような支出となります。
-取壊し・除去のための支出-
被災したことにより住めなくなった住宅や使えなくなった家財等は取壊し・除去することになりますが、そのための支出をいいます。
-被災から1年以内の支出-
被災したことによりその住宅家財等を使用することが困難となった場合において、その災害のやんだ日の翌日から1年(大規模災害の場合は3年)以内の次の支出をいいます。
・土砂その他の障害物を除去するための支出
・住宅家財等について受ける損失の金額に相当する部分を除く原状回復のための支出
・その住宅家財等の損壊又はその価値の減少を防止するための支出
-緊急措置のための支出-
住宅家財等の被害の拡大又は発生を防止するための緊急に必要な措置を講ずるための支出をいいます。例えば豪雪地帯の家屋倒壊防止のための緊急措置としての雪下ろし費用や崖崩れの危険があり緊急措置として家財等を運び出すための費用などがこれにあたります。なお、災害等により長期的に避難する場合、災害等がなければ本来必要のない交通費や生活品の購入費用は、災害関連支出費用にはなりません。
-盗難・横領等の原状回復費-
盗難又は横領による損失が生じた住宅家財等の原状回復のための支出をいいます。
【所得税】雑損控除の対象となる損失、資産の範囲
-対象となる損失の範囲-
雑損控除は下記の原因による損失が対象となります。
・震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
・火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
・害虫、害獣その他の生物による異常な災害
・盗難、横領(詐欺や恐喝は対象となりませんのでご注意下さい。)
-資産の所有者の範囲-
・納税者(申告をする人)
・その納税者と生計を一※にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が38万円以下の者
※「生計を一にする」とは、概ね同居をしている人といえますが、それ以外でも例えば勤務、修学、療養費等の都合上やむを得ず別居しているなどで一定の場合には生計を一にしているとされます。
-対象となる資産の範囲-
次のいずれにも該当しない資産をいいます。したがって、家屋や家財なの生活に通常必要な資産が対象となりなります。
・事業を行っている方の棚卸資産や事業用固定資産等
・生活に通常必要でない資産※
※「生活に通常必要でない資産」とは、次のものをいいます。
・競走馬、その他射こう的行為の手段となる動産
・主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産
・主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権等)
・生活の用に供する動産で、1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とう等
【所得税】雑損控除と災害減免法
災害により住宅や家財に被害を受けた場合、つぎのうちいずれか多い方の金額について確定申告により雑損控除することができます。
①損失額-所得金額の10分の1
②災害関連支出の金額-5万円
また、その年に控除しきれない金額がある場合には、翌年以後3年間繰越控除することができます。
この雑損控除に代えて災害減免法により所得税額を軽減・免除する方法があります。
損失の原因 |
災害による損失 |
|
対象となる資産の範囲 |
住宅及び家財 損害金額が住宅又は家財の価額の2分の1以上であること。 |
|
控除額の計算 |
その年の所得金額 |
所得税の軽減額 |
500万円以下 |
全額免除 |
|
500万円超 750万円以下 |
2分の1の軽減 |
|
750万円超 1,000万円以下 |
4分の1の軽減 |
|
その他の事項 |
損害を受けた年分の所得金額が1,000万円以下であること。 |
確定申告書にこの規定の適用を受ける旨、被害の状況及び損害金額を記載する必要があります。
※留意点
・雑損控除の場合の損失の原因は災害・盗難・横領ですが、災害減免法では災害による損失に限られます。
・災害免除法では、住宅又は家財の価額の2分の1以上の被害を受けている場合に適用があります。
・災害免除法では所得金額が1,000万円以下の人しか適用がありません。
・雑損控除の対象となる資産の範囲は住宅及び家財を含む生活に通常必要な資産でしたが、災害減免法では住宅及び家財に限られます。
・雑損控除は所得控除ですが、災害減免法は所得税額の軽減・免除となります。
・雑損控除は3年間の繰越控除がありますが、災害減免法の適用は災害を受けた年に限られます。
・雑損控除と災害減免法の適用は、どちらかしか一方しか適用できませんので、有利な方を選択することになります。
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