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【贈与税】住宅取得資金の贈与の申告期限は3月15日(水)までです

2017-03-12

父母や祖父母など直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合で、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について贈与税が非課税となります。なお、非課税限度額は契約締結の日で判定され、贈与の日ではないので注意が必要です。

(事 例)
私は、35歳で日本に住所があり、平成28年の合計所得が500万円です。平成28年中に父から住宅取得資金として1,000万円の金銭の贈与をうけました。これと住宅ローン3,000万円で4,500万円の一般の住宅(新築マンション、専ら居住用、床面積70㎡)をマンション業者から購入し、28年中に既に住んでいます。いつまでにどんな申告をすればよいでしょうか。

-要件のチェック-
①受贈者は贈与時に国内に住所があるか ⇒ YES

②直系尊属からの贈与か ⇒ YES (父からの贈与)

③受贈者は贈与の年の1月1日で20歳以上か ⇒ YES (35歳)

④合計所得が2,000万円以下か ⇒ YES (500万円<2,000万円)

⑤贈与を受けた金銭を翌年3月15日までに資金の全額を住宅取得等に利用か ⇒ YES

⑥贈与を受けた翌年3月15日までに居住(又は居住が確実な見込み)か ⇒ YES

⑦床面積の1/2以上が居住用か ⇒ YES  (100%居住用)

⑧床面積が50㎡以上240㎡未満か ⇒ YES  (50㎡<70㎡<240㎡)

⑨新築住宅又は一定の中古住宅か ⇒ YES (新築住宅)

⑩以上により、住宅取得資金の贈与の特例の適用あり ⇒ 平成29年2月1日~3月15日までに贈与税の申告が必要です。

-贈与税額の計算-
平成28年中に契約した場合で省エネ等住宅以外の一般の住宅の非課税限度額は700万円です。したがって、住宅取得等資金の贈与の非課税制度を使った場合の贈与税額はつぎのようになります。
税額(贈与額1,000万円-非課税限度額700万円-基礎控除額110万円)×税率10%=19万円
贈与税の申告書に一定の書類を添付して3月15日までに申告する必要があります。

-期限後申告は不可-
忙しくて期限までに申告が間に合わなかった、贈与額が非課税枠(700万円+110万円)の範囲だった、などの理由で3月15日までに一定の種類を添付した贈与税の申告をしなかった場合は、通常の贈与の扱いになります。
20歳以上の者が直系尊属から1,000万円の贈与を受けた場合の贈与税額はつぎのようになります。
税額(贈与額1,000万円-基礎控除額110万円)×税率30%-90万円=177万円

 

 

【所得税】特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

2017-03-08

不動産を譲渡して生じた譲渡損失は他の不動産の譲渡益からは控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、原則として他の所得と損益通算することができずに切り捨てになってしまいます。
ただし、例外として、長期譲渡所得に該当する場合で居住用財産を譲渡した結果譲渡損失が生じた場合に、買換資産を住宅ローで購入したときには、その年の他の所得(不動産所得、事業所得、給与所得など)との損益通算や控除しきれない損失の金額の3年間の繰越控除の制度があります。
さらにもう一つ、住宅ローンが残っているマイホームを譲渡して譲渡損失が生じた場合に、その損失の金額のうち下記の要件を満たすものについては、買換資産を取得しなくてもその損失と他の所得との損益通算や3年間の繰越控除ができる制度があります。
この制度の趣旨は、マイホームを住宅ローンで買ったものの、その後値下がりしてマイホームを売っても住宅ローンの弁済がしきれない場合に、そのしきれない額について税制で一部救済しようというものです。

-特例の内容-
①損益通算
所有期間※が5年を超える住宅ローンのある居住用財産を、住宅ローンの残高を下回る価額で売却して譲渡損失が生じたときは、その譲渡損失は他の所得と損益通算することができます。この場合の損失の金額は売買契約日の前日における住宅ローンの残高から売却価額を差し引いた残りの金額が、損益通算の限度額となります
※所有期間は、資産を取得した日から譲渡する年の1月1日までの期間で計算します。

②繰越控除
益通算してもなお譲渡損失の金額がある場合には、翌年以降3年間の繰越控除が認められます。ただし、繰越控除をする各年の合計所得金額が3,000万円以下※であることが条件となります。
※合計所得金額が3,000万円以下とは、所得が給与所得のみである場合は、給与の収入金額が3,230万円以下です。

-適用がある居住用財産-
①居住用家屋(譲渡する年から過去3年以内に居住の用に供しなくなった家屋を含みます)
②上記①の敷地だった土地等
③災害で滅失した居住用家屋の敷地だった土地等で、滅失した家屋を引続き所有していれば、所有期間が5年を超えるもの(災害があった日から3年経過する年の年末までに譲渡する場合に限られます)

-住宅ローンとは-
居住用財産を取得等するために、銀行等の金融機関などから借り入れたローンで、10年以上の割賦償還の方法で返済が行なわれるものです。

-適用できない場合-
・譲渡した居住用財産にかかる住宅ローンが、譲渡契約締結の日の前日に残っていない場合または譲渡の収入金額に満たない場合
・配偶者、直系血族、生計を一にする親族などに対して譲渡等する場合
・譲渡する年の前年・前々年に居住用財産の特別控除・軽減税率の特例、特定の居住用財産の買換え・交換の特例を適用していた場合
・譲渡する年もしくは譲渡する年の前年以前3年内に「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例」を適用している場合
・譲渡する年の前年以前3年内に既にこの特例を適用している場合

-手続き-
①損益通算
所得税の確定申告書につぎの書類の添付が必要です。
・特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書《確定申告書付表》
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書【租税特別措置法第41条の5の2用】
・売却した居住用財産の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
・譲渡をした時において、住民票に記載されていた住所と売却した居住用財産の所在地とが異なる場合は、戸籍の附票の写しなど
・譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書(譲渡契約締結日の前日のもの) 

②繰越控除
・繰越控除 損益通算の特例の適用を受けた年分の所得税につき期限内申告書を提出した場合であって、その後において連続して確定申告書を提出し、かつ、繰越控除の特例の適用を受ける年分の確定申告書を提出する必要があります。

【所得税】居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

2017-03-05

不動産を譲渡して生じた譲渡損失は他の不動産の譲渡益からは控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、原則として他の所得と損益通算することができずに切り捨てになってしまいます。
ただし例外として、長期譲渡所得に該当する場合で居住用財産を譲渡したときに生じた譲渡損失の金額のうち、下記の要件を満たすものについては、その年の他の所得(不動産所得、事業所得、給与所得など)との損益通算をすることが認められています。さらに、これらの通算を行ってもなお控除しきれない損失の金額については、その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます。
なお、この制度は住宅借入金等特別控除(いわゆるローン控除)との併用ができます。

-特例の内容-
①損益通算
所有期間※が5年を超える居住用財産を譲渡して損失が発生し、買換資産を住宅ローンなどで購入した場合には、その損失の金額を他の所得と損益通算することができます。ただし、買換資産を取得した年の年末に、買換資産にかかる住宅ローンが残っていることが条件となります。
※所有期間は、資産を取得した日から譲渡する年の1月1日までの期間で計算します。

②繰越控除
損益通算してもなお譲渡損失の金額がある場合には、つぎの場合を除き翌年以降3年間の繰越控除が認められます。
・譲渡した居住用財産の敷地の面積が500㎡を超える場合は、500㎡を超える部分に対応する譲渡損失の金額については適用できません。
・繰越控除をする各年の年末に買換不動産にかかる住宅ローンが残っていること、各年の合計所得金額が3,000万円以下※であることが条件となります。
※合計所得金額が3,000万円以下とは、所得が給与所得のみである場合は、給与の収入金額が3,230万円以下です。

-適用がある居住用財産の範囲-
①居住用家屋(譲渡する年から過去3年以内に居住の用に供しなくなった家屋を含みます)
②上記①の敷地だった土地等
③災害で滅失した居住用家屋の敷地だった土地等で、滅失した家屋を引続き所有していれば、所有期間が5年を超えるもの(災害があった日から3年経過する年の年末までに譲渡する場合に限られます)

-買換資産の範囲-
譲渡する年の前年から譲渡する年の翌年の年末までの間に取得し、かつ、取得した年の翌年の年末までに居住した又は居住することが見込まれる不動産で、床面積が50㎡以上の家屋やその敷地である土地等です。

-住宅ローンとは-
居住用財産を取得等するために、銀行等の金融機関などから借り入れたローンで、10年以上の割賦償還の方法で返済が行なわれるものです。

-適用できない場合-
・配偶者、直系血族、生計を一にする親族などに対して譲渡等する場合
・買換資産を贈与などにより取得した場合
・譲渡する年の前年・前々年に居住用財産の特別控除・軽減税率の特例、特定の居住用財産の買換え・交換の特例を適用していた場合
・譲渡する年もしくは譲渡する年の前年以前3年内に「特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例」を適用している場合
・譲渡する年の前年以前3年内に既にこの特例を適用している場合

-手続き-
①損益通算
所得税の確定申告書につぎの書類の添付が必要です。
・居住用財産の譲渡損失の金額の明細書《確定申告書付表》
・居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書【租税特別措置法第41条の5用】
・売却した居住用財産の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
・譲渡をした時において、住民票に記載されていた住所と売却した居住用財産の所在地とが異なる場合は、戸籍の附票の写しなど
・買い換えた居住用財産の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
・買い換えた居住用財産の住宅借入金等の残高証明書

②繰越控除
・適用を受ける場合には、居住用財産の譲渡損失が生じた年分の確定申告書を提出期限までに提出し、かつ、その後も連続して買換資産に係る住宅借入金等の残高証明書を添付した確定申告書を提出することが必要です。

 

【所得税】居住用財産の特例の有利不利

2017-03-04

居住用財産を譲渡して買い換える場合において、居住用財産の譲渡益がでるときは、①3,000万円の特別控除と軽減税率の特例を選択する方法と、②居住用財産の買い換え特例を選択方法のどちらかを選択することになります。
①と②のいずれの適用要件も満たす場合、両方の税額を計算してみて有利な方を選択することになります。
この場合において注意しなければならないのは、買い換えた居住用財産の取得費の計算が異なる点です。買い換えた居住用財産の取得価額が、例えば5,000万円なら①の場合は5,000万円ですが、②の場合は譲渡した資産の取得費を原則として引き継ぎます。その結果①と②では将来新たに取得した居住用財産を譲渡するときの譲渡所得に差が出てきます。
したがって、居住用の特例の適用を検討するにあたっては、当面の税金の有利不利だけでなく、買い換えた居住用財産を将来譲渡する可能性がある場合は、その点も考慮して有利不利を検討した方がよいでしょう。


-買い換え特例を使った場合の取得費の計算-
この特例の適用を受けた買換資産をその後譲渡した場合における譲渡所得を計算するにあたって譲渡収入から控除する取得費は、実際の取得価額を基にするのではなく、つぎの金額を基に計算します。
買換資産を譲渡した場合の譲渡収入から控除する取得費:P
譲渡資産の収入金額:A
譲渡資産の取得価額:B
譲渡資産の譲渡費用:C
買換資産の取得価額:D

(1) A = B の場合
(B + C) を P がそのまま引き継ぐと考え、つぎのようになります。
P = B + C

(2)  A < D の場合
A を D に充ててもなお不足が生じているため、P は (B + C) にその不足部分  (D - A) を加算すると考え、つぎのようになります。
P = (B + C) + (D - A)

(3)  A > D の場合
(B + C) のうち、買換資産の取得に充てた D に対応する部分を P が引き継ぐと考え、つぎのようになります。
P = (B + C)  ×  D / A


- A > D の具体例-
買換資産を譲渡した場合の譲渡収入から控除する取得費:P
譲渡資産の収入金額:A:8,000万円
譲渡資産の取得価額:B:2,000万円
譲渡資産の譲渡費用:C:400万円
買換資産の取得価額:D:6,000万円

P = (2,000万円 + 400万円) × 6,000万円 / 8,000万円 = 1,800万円

-買換資産を譲渡した場合-
買換資産を譲渡した場合の譲渡収金額:8,000万円
買換資産を譲渡した場合の譲渡費用:200万円
なお、適用要件は全て満たすものとし、買換資産の減価償却費相当額は考慮しないものとします。

<特定の居住用の買換特例を適用した場合の譲渡所得>
8,000万円-(P:1,800万円+200万円)=6,000万円

<特定の居住用の買換特例を適用しなかった場合の譲渡所得>
8,000万円-(6,000万円+200万円)=1,800万円

 

【所得税】特定居住用財産を買い換えた場合の特例

2017-03-03

居住用財産を譲渡して譲渡益がでた場合に、3,000万円の特別控除と軽減税率の特例を使う方法があります。居住用財産を譲渡して買い換える場合には、これに代えて下記の要件を満たしていれば買い換え特例が使えます。この特例では、買換資産の取得価額に相当する金額は譲渡収入がなかったものとして譲渡所得を計算ます。
現在では譲渡収入が1億円以下でなければならないなど、だんだん要件が厳しくなってきています。

-買換えの特例の計算方法
所有期間※が10年を超え、かつ、居住期間が10年以上の居住用財産を譲渡し、買換資産を取得したときは以下のように取り扱われます。

(1)『譲渡資産の収入金額≦買換資産の取得価額』の場合
譲渡資産の譲渡はなかったものとみなされ課税されません。

(2)『譲渡資産の収入金額>買換資産の取得価額』の場合
譲渡資産の収入金額のうち、買換資産の取得に充てられなかった部分だけ課税します。計算式は次のとおりです。
①譲渡収入=譲渡資産の収入金額A-買換資産の取得価額B
②必要経費=(譲渡資産の取得費+譲渡費用) × (A-B)/A
③長期譲渡所得の金額=①-②

※所有期間は、資産を取得した日から譲渡する年の1月1日までの期間で計算します。

-譲渡資産の範囲-
①居住用家屋(譲渡する年から過去3年以内に居住の用に供しなくなった家屋を含みます)
②上記①の敷地だった土地等
③災害で滅失した居住用家屋の敷地だった土地等で、滅失した家屋を引続き所有していれば、譲渡する年の1月1日に所有期間が10年を超える土地等(災害があった日から3年経過する年の年末までに譲渡する場合に限られます)

-買換資産の範囲-
譲渡年の前年か譲渡年に取得した場合は、譲渡年の翌年12月31日までに居住、譲渡年の翌年に取得する場合は、譲渡年の翌々年12月31日まで居住することが見込まれる次の不動産です。
①家屋で床面積が50㎡以上のもの
(注)マンション等の中古耐火建築物である場合には、建築後25年以内又は一定の耐震基準が証明されているものに限ります。
②上記①の敷地の用に供される土地等で面積が500㎡以下のもの

-適用できない場合-
・譲渡対価の額が1億円を超えるもの
・配偶者、直系血族、生計を一にする親族などに対して譲渡等する場合
・買換資産を贈与などにより取得した場合
・居住用財産の譲渡について、固定資産の交換の特例や収用交換等の場合の特別控除の特例などを適用する場合
・譲渡する年、譲渡する年の前年・前々年に居住用財産の特別控除・軽減税率の特例、居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例、特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例などを適用する又は適用していた場合

-手続き-
所得税の確定申告書につぎの書類の添付が必要です。
①譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
②売却した居住用財産の登記事項証明書など
③譲渡契約締結日の前日において住民票に記載されていた住所と売却した居住用財産の所在地とが異なる場合や、譲渡日前10年内において住民票に記載されていた住所を異動したことがある場合は、戸籍の附票の写しなど
④売却した居住用財産に係る売買契約書の写しなどで、その譲渡価額が1億円以下であることを明らかにするもの
⑤ 買い換えた居住用財産の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
⑥買換資産が築25年を超える中古の耐火建築物の場合は、耐震基準適合証明書、住宅性能評価書の写し又は既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約(一定の要件に適合する保険契約で、買換資産である家屋の取得の日前2年以内に締結されたもの)が締結されていることを証する書類
⑦譲渡年の翌年に買換資産を取得する見込みである場合は、⑤・⑥に代えて「買換(代替)資産の明細書」(この場合、⑤・⑥は、取得をした日から4か月以内に提出が必要です。)

 

【所得税】居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例

2017-03-02

居住用財産を譲渡して譲渡益がでた場合に、下記の要件を満たしていれば、6,000万円まで通常よりも低い税率で税金を計算することができる制度です。
この制度は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」との併用が可能です。例えば、親から相続した住宅を譲渡したような場合、その後の地価の値上がりで多額の譲渡益が出てしまう場合があります※。このような場合、譲渡益についてまず居住用財産の3,000万円の控除を使い、なお残額があるときはさらに6,000万円まで通常より低い税率のこの制度を使うことができます。
※相続の場合、原則として被相続人の取得時期と取得価額は相続人が引き継ぎます。

-特例の取扱い-
所有期間※が10年を超える居住用財産を譲渡した場合に適用があります。また、軽減税率の内容はつぎのとおりです。

課税長期譲渡所得の金額 所得税(復興特別所得税を含む) 住民税
6,000万円以下の部分 10.21%   4%
6,000万円を超える部分  15.315%  5%

※この場合の所有期間は、資産を取得した日から譲渡する年の1月1日までの期間で計算します。

-居住用財産の範囲-
この特例が適用できる居住用財産は、つぎの財産です。
①居住用家屋(譲渡する年から過去3年以内に居住の用に供しなくなった家屋を含みます)
②上記①の敷地だった土地等
③災害で滅失した居住用家屋の敷地だった土地等で、滅失した家屋を引続き所有していれば、所有期間が10年を超えるもの(災害があった日から3年経過する年の年末までに譲渡する場合に限られます)

-適用できない場合-
・配偶者、直系血族、生計を一にする親族などに対して譲渡する場合
・譲渡する年の前年・前々年に譲渡した居住用財産について、既にこの特例を適用していた場合
・3,000万円の特別控除の特例を除き、固定資産の交換の特例、収用等に伴い代替資産を取得した場合の特例、特定の居住用財産の買換え・交換の特例などを適用する場合

-手続き-
所得税の確定申告書につぎの書類の添付が必要です。
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
・譲渡契約締結日の前日において、住民票に記載されていた住所と売却した居住用財産の所在地とが異なる場合は、戸籍の附票の写しなど
・売却した居住用財産の登記事項証明書


-計算例-
居住用家屋とその敷地の売却代金   3億5,000万円
売却に際し支払った譲渡費用     2,000万円
上記家屋と敷地の取得費         2億円

このときの所得税・住民税は次のとおりです。
所得税:
3億5,000万円-(2億円+2,000万円)=1億3,000万円
1億3,000万円-3,000万円(居住用財産の特別控除)=1億円
6,000万円×10.21%+(1億円-6,000万円)×15.315%
= 1,225.2万円

住民税:
3億5,000万円-(2億円+2,000万円)=1億3,000万円
1億3,000万円-3,000万円(居住用財産の特別控除)=1億円
6,000万円×4%+(1億円-6,000万円)×5%= 440万円

【所得税】居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

2017-02-28

居住用財産を譲渡して譲渡益がでた場合に、下記の要件を満たしていれば、譲渡益から3,000万円を控除できる特例です。この特例は、居住用財産の保有期間や居住期間の要件がないため大変使い勝手のよいものとなっています。なお、譲渡益の金額が3,000万円に満たない場合には、譲渡益の金額が限度となります。

-居住用財産の範囲- 
この特例が適用できる居住用財産は、次の財産です。
①居住用家屋(譲渡する年から過去3年以内(注1)に居住の用に供しなくなった家屋を含みます)
②上記①の敷地だった土地等
③災害で滅失した居住用家屋の敷地だった土地等(譲渡する年から過去3年以内に居住の用に供しなくなったものに限られます)

(注1)過去3年以内とは、例えば平成28年中にに譲渡した場合は、つぎのようにななります。

譲渡した年 居住の用に供さなくなった日 特例の適用
平成28年中 平成25年1月2日以後 有り
平成25年1月1日以前 無し


-適用できない場合-

・配偶者、直系血族、生計を一にする親族などに対して譲渡する場合
・譲渡する年の前年・前々年に譲渡した居住用財産について一定の譲渡所得の課税の特例(注2)を既に適用していた場合
・居住用財産の軽減税率の特例を除き、固定資産の交換の特例や収用交換等の場合の特別控除の特例などを適用する場合

(注2)一定の譲渡所得の課税の特例(具体例)
・居住用財産の特別控除の特例
・居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
・特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例など

-手続き-
確定申告書に、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】 と 譲渡契約締結日の前日において、住民票に記載されていた住所と売却した居住用財産の所在地とが異なる場合は、戸籍の附票の写しなどを添付する必要です。

 

【所得税】マイホームを譲渡した場合

2017-02-27

マイホームを譲渡した場合において、譲渡益がでれば原則として所得税や住民税がかかります。
しかしながら、マイホームを譲渡して税金がかかってしまったのでは、住宅の住み替えに支障が出てしまいます。例えば、子供が大きくなってきたのでもう少し広いマンションに買い換えようとしてたとしても、譲渡益に税金がかかってしまうと思ったような住宅が取得できなくなるおそれがあります。そこで、マイホームの譲渡益については様々な政策的な特例が設けられています。また、マイホームを譲渡して譲渡損がでた場合についても、給与所得や事業所得の黒字と通算できたり、通算しきれない金額が生じた場合は損失を繰り越せる特例もあります。


-譲渡益の場合の特例-
・居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
・居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
・特定居住用財産を買い換えた場合の特例

-譲渡損の場合の特例-
・居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例


-譲渡損益と税金の計算方法(特例を考慮しない場合)-
マイホームを譲渡したときの譲渡損益と所得税(復興特別所得税を含みます)・住民税は、つぎのとおりです。

計算式 譲渡益
長期
譲渡益
短期
所得税: 収入金額 - 必要経費(取得費+譲渡費用) ×15.315% ×30.63%
住民税: 収入金額 - 必要経費(取得費+譲渡費用) × 5%  ×9%

収入金額
譲渡代金の総額になります。

必要経費
①取得費
土地・・・購入代金
建物・・・購入(建築)代金 -(注1)償却費相当額

(注1)償却費相当額
建物などは期間が経過すると価値が減少すると考えられるため、以下の算式により価値の減少額を計算します。
購入(建築)代金 × 0.9 ×(注2)償却率×(注3)経過年数

(注2)償却率

区 分 木造住宅 木骨モルタル (鉄筋)鉄骨
コンクリート
償却率 0.031 0.034 0.015

(注3)経過年数
6ヶ月以上の端数は1年とし、6ヶ月未満の端数は切り捨てます。

②譲渡費用
仲介手数料、収入印紙代など資産を譲渡するために直接必要な費用をいいます。

長期譲渡と短期譲渡の区分
譲渡した年の1月1日までの所有期間が5年を超えている場合を長期譲渡といい、所有期間が5年以下の場合を短期譲渡といいます。例えば、平成28年8月31日に譲渡したとすると、譲渡した年の1月1日は28年1月1日ですから、22年12月31日以前に取得した場合は長期譲渡、23年1月1日以後に取得した場合は短期譲渡となります。
長期譲渡と短期譲渡では税率が大きく異なるため注意が必要です。


-計算例-
土地 購入代金3,500万円
建物 購入代金2,000万円(木造住宅)
のマイホームを20年経過後に総額5,000万円で譲渡をした場合、所得税及び住民税はいくらになりますか(特例制度の適用はないこととします)。なお、譲渡時に仲介手数料(156万円)を仲介業者に支払っています。

5,000万円-(3,500万円+(*)884万円+156万円)= 460万円
収入金額  土地取得費  建物取得費  譲渡費用

(*)2,000万円-(2,000万円×0.9×0.031×20年)=884万円

所得税 : 460万円 × 15.315% = 約70.4万円
住民税 : 460万円 × 5% = 23万円  合計約93.4万円

 

【所得税】資本的支出をした場合の減価償却の方法

2017-02-26

-減価償却方法の変遷-
平成10年4月1日以後に取得した建物の減価償却方法が、それまでの定額法又は定率法からの選択方式から、定額法のみになりました。
平成19年4月1日から減価償却方法が変更されました。従来の減価償却方法を「旧定額法」・「旧定率法」とし、新たな償却方法を「定額法」・「定率法」としました。
平成24年4月1日から定率法が、「250%定率法」から「200%定率法」に変更されました。
平成28年4月1日以後は、建物附属設備と構築物がそれまでは定額法と定率法の選択方式から、定額法のみになりました。

 

減価償却資産を修繕する場合おいて、資産の使用可能期間を延長させたり、資産の価値を高める修繕をした部分については資本的支出として必要経費に算入することができません。一旦資産に計上し使用可能期間に分割して減価償却することになります。

平成19年3月31日以前の取得で、すでに「旧定額法」・「旧定率法」により毎年減価償却をしている資産について資本的支出があった場合、その減価償却はどのように計算するのでしょうか。

-原則的取扱い-
既存の本体部分と別個に管理するのが原則となります。具体的には、既存の本体減価償却資産に対して平成19年4月1日以後に資本的支出をした場合は、その支出金額を固有の取得価額として、既存の減価償却資産と種類及び耐用年数を同じ減価償却資産を新たに取得したものとして、「(新)定額法」・「(新)定率法」で償却することになります。
なお、既存の減価償却資産本体については、この資本的支出を行った後においても、現に採用されている「旧定額法」・「旧定率法」の償却方法により、償却を継続して行うこととなります。

-特例(加算方式)-
平成19年3月31日以前に取得した既存の減価償却資産に資本的支出を行った場合、資本的支出を行った年に、資本的支出の対象資産である既存の本体減価償却資産の取得価額に、この資本的支出の金額を加算することができます。
この加算を行った場合は、平成19年3月31日以前に取得をされた既存の減価償却資産の種類、耐用年数及び償却方法に基づいて、加算を行った資本的支出部分も含めた減価償却資産全体の償却を行っていくこととなります。
ただし、一度この方法を選択した場合は、その後の年において変更することはできないので注意が必要です。

 

原則的取扱いを選択した場合、資本的支出をした翌年から固定資産の管理台帳が本体部分と資本的支出部分と別々になります。したがって、将来除却などの場合うっかり忘れるといった弊害があります。しかし、一方では何時資本的支出をしたかが一目でわかるというメリットもあります。一般的に個人の場合は減価償却資産のあまり多くないと思われますので、減価償却費にあまり大きな差がない場合は原則的取扱いの方がおすすめです。

【所得税】建物以外の減価償却費

2017-02-24

建物以外についても、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産の償却方法である定額法や定率法のことを「旧定額法」や「旧定率法」とすることとし、平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産の償却方法のことを「定額法」や「定率法」として、減価償却費の計算の方法が変わりました。

また、平成28年3月31日以前に取得した建物附属設備及び構築物は定額法又は定率法のいずれかを選択することができましたが、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物の償却方法は定額法のみとなりました。

なお、これらの場合の取得には、購入や自己の建設によるもののほか、相続、遺贈又は贈与によるものも含まれますので注意が必要です。

建物以外※の償却方法について

※賃貸物件の場合の代表的な資産はつぎのとおりです。
建物付属設備・・・電気設備、給排水衛生設備、冷暖房・ボイラー設備、エレベーター・エスカレータ、消火設備など
構築物・・・門塀・外構、駐車場のアスファルト舗装など
工具器具備品・・・家具、エアコン、備え付けの冷蔵庫、その他電化製品など
その他

資産の種類 建物附属設備
及び構築物
その他
取得時期  償却方法 償却方法 法定償却方法
平成19年3月31日以前 旧定額法  旧定率法  旧定額法 旧定率法 旧定率法
平成19年4月1日

平成24年3月31日
定額法 250%
定率法
定額法 250%
定率法
 定率法
 平成24年4月1日

平成28年3月31日
 200%
定率法
 200%
定率法
 平成28年4月1日以降  定額法  ×  定額法  定率法  定率法


-旧定額法の計算方法-

旧定額法の償却限度額= (取得価額 - 取得価額×10%) × 旧定額法の償却率

-旧定率法の計算方法-

未償却残高×旧定率法の償却率
未償却残高とは取得価額から前年までの償却費の合計額を差し引いた金額をいいます。

平成20年分からは、取得価額の95%相当額まで償却した年分の翌年分以後は、期首帳簿価額から1円を控除した金額を5で除した金額が償却費の額となります。
詳しくは国税庁HPをご参照下さい。

 

-定額法の計算方法-

定額法の償却限度額=取得価額×定額法の償却率
なお、この場合は備忘価額1円まで償却されます。

-定率法の計算方法-

step1:調整前償却額=未償却残高×定率法の償却率
     ↓
step2:調整前償却額<償却保証額(取得価額×保証率)となった年
償却費=改定取得価額※×改定償却率

    ※改訂取得価額とは調整前償却額<償却保証額となる最初の年初未償却残高

詳しくは国税庁HPをご参照下さい。

 

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