【所得税】居住用財産の特例の有利不利

居住用財産を譲渡して買い換える場合において、居住用財産の譲渡益がでるときは、①3,000万円の特別控除と軽減税率の特例を選択する方法と、②居住用財産の買い換え特例を選択方法のどちらかを選択することになります。
①と②のいずれの適用要件も満たす場合、両方の税額を計算してみて有利な方を選択することになります。
この場合において注意しなければならないのは、買い換えた居住用財産の取得費の計算が異なる点です。買い換えた居住用財産の取得価額が、例えば5,000万円なら①の場合は5,000万円ですが、②の場合は譲渡した資産の取得費を原則として引き継ぎます。その結果①と②では将来新たに取得した居住用財産を譲渡するときの譲渡所得に差が出てきます。
したがって、居住用の特例の適用を検討するにあたっては、当面の税金の有利不利だけでなく、買い換えた居住用財産を将来譲渡する可能性がある場合は、その点も考慮して有利不利を検討した方がよいでしょう。


-買い換え特例を使った場合の取得費の計算-
この特例の適用を受けた買換資産をその後譲渡した場合における譲渡所得を計算するにあたって譲渡収入から控除する取得費は、実際の取得価額を基にするのではなく、つぎの金額を基に計算します。
買換資産を譲渡した場合の譲渡収入から控除する取得費:P
譲渡資産の収入金額:A
譲渡資産の取得価額:B
譲渡資産の譲渡費用:C
買換資産の取得価額:D

(1) A = B の場合
(B + C) を P がそのまま引き継ぐと考え、つぎのようになります。
P = B + C

(2)  A < D の場合
A を D に充ててもなお不足が生じているため、P は (B + C) にその不足部分  (D - A) を加算すると考え、つぎのようになります。
P = (B + C) + (D - A)

(3)  A > D の場合
(B + C) のうち、買換資産の取得に充てた D に対応する部分を P が引き継ぐと考え、つぎのようになります。
P = (B + C)  ×  D / A


- A > D の具体例-
買換資産を譲渡した場合の譲渡収入から控除する取得費:P
譲渡資産の収入金額:A:8,000万円
譲渡資産の取得価額:B:2,000万円
譲渡資産の譲渡費用:C:400万円
買換資産の取得価額:D:6,000万円

P = (2,000万円 + 400万円) × 6,000万円 / 8,000万円 = 1,800万円

-買換資産を譲渡した場合-
買換資産を譲渡した場合の譲渡収金額:8,000万円
買換資産を譲渡した場合の譲渡費用:200万円
なお、適用要件は全て満たすものとし、買換資産の減価償却費相当額は考慮しないものとします。

<特定の居住用の買換特例を適用した場合の譲渡所得>
8,000万円-(P:1,800万円+200万円)=6,000万円

<特定の居住用の買換特例を適用しなかった場合の譲渡所得>
8,000万円-(6,000万円+200万円)=1,800万円

 

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