所得税

【相続税・贈与税・所得税】死亡保険金の課税関係

2020-08-26

生命保険契約には、保険契約者、保険料負担者、被保険者、保険金受取人がいます。
被保険者が亡くなった場合、保険金受取人が保険請求をすることにより、生命保険会社から死亡保険金が支払われます。

この場合の死亡保険金は、保険契約に基づき保険金受取人が受け取るものでああるため、保険金受取人の固有の財産であって、相続財産にはあたらないとされています。

相続財産ではないので、受け取った死亡保険金は遺産分割の必要はなく、遺産分割協議書への記載も不要ということになります。

死亡保険金が相続財産ではないから相続税はかからないかというと、「みなし相続財産」として相続税の課税の対象になります(相続税法3①一)。

もし仮に死亡保険金に相続税がかからないとしたら、預貯金で相続財産として残した場合とで平仄が取れないことになってしまいます。


死亡保険金は、被保険者、保険料の負担者及び保険金受取人の組み合わせにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税の対象になります。

被保険者 保険料負担者 保険金受取人 税 目
相続税
所得税
子供 贈与税

①は、夫が保険料を負担していたので、保険料が生命保険金に化体したイメージでしょうか、これを妻は夫から相続するので、相続税が課税されます。

②は、妻が自分で保険料を支払っていたので、受け取った生命保険金が支払った保険料を上回る場合には、その上回る部分に所得税が課税されます。

③は、②の妻が受け取れば所得税でしたが、保険料を負担していない子が生命保険金を受け取るので、妻から子への贈与となり、贈与税が課税されます。

 

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【所得税・相続税】高度障害保険金等と課税

2020-08-24

生命保険契約に基づき支払われる死亡保険金は、被保険者・保険料負担者・保険金受取人の組み合わせにより、所得税、相続税または贈与税が課税されます。

ところが、生命保険契約に基づき支払われる高度障害保険金や入院給付金などは、死亡保険金の場合とはちがって非課税の扱いになります。

これは、損害保険契約や生命保険契約に基づく保険金や給付金で、身体の傷害に基因して支払を受けるものは、所得税法において非課税の扱いになっているからです。(所令30①、所基通9-21)

では、高度障害保険金や入院給付金などの保険金受取人が被保険者本人ではなく、その家族であった場合はどうでしょうか?
この場合も、非課税として取り扱うとしています。


所基通9-20 令第30条第1号の規定により非課税とされる「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」は、自己の身体の傷害に基因して支払を受けるものをいうのであるが、その支払を受ける者と身体に傷害を受けた者とが異なる場合であっても、その支払を受ける者がその身体に傷害を受けた者の配偶者若しくは直系血族又は生計を一にするその他の親族であるときは、当該保険金又は給付金についても同号の規定の適用があるものとする。


相続の際にみかけるケースとして、入院給付金の受取人が被保険者となっていて、被保険者が亡くなってから遺族が保険金請求をして入金されることがあります。
この場合の入院給付金は被相続人の所得税としては非課税ですが、相続財産としては未収保険金になりますので、本来の相続財産になります。

 

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【所得税】会計検査院とローン控除の改正

2020-08-21

税制における優遇措置は、原則として重複適用は認められない造りになっています。
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」と「住宅借入金等特別控除(ローン控除)」の併用適用も、本来重複適用は認められていませんでした。

ただし、極めて稀なケースですが、両規定の重複適用が認められる場合があり、会計検査院よりその点を指摘されました。

会計検査院の指摘されるまでもなく、財務省も当然その点は承知していたと思いますが、あまりにも稀なケースなのであえて条文の手直しはしてこなかったのではないかと思います。

実際、会計検査院の報告では、平成28年又は29年に譲渡の特例を受けたもののうち、ローン控除との併用適用を受けたものが37名であったとされています。


1.「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」
この特例は、居住している住宅と敷地が前提ですが、住まなくなった場合であっても住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すれば適用が認められます。

2.住宅借入金等特別控除(ローン控除)について
この特例の適用にあたっては、他の優遇措置との重複適用を排除するために、居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産の3,000万円控除を含む他の特例の適用を受けていないことが条件となっていました。

3.会計検査院の指摘事項
新しく住居を取得して「住宅借入金等特別控除(ローン控除)」を適用し始めた場合で、旧住宅を※3年目に譲渡すれば、新住宅のローン控除も旧住宅の3,000万円控除も両方適用できてしまうではないかという指摘です。(会計検査院「平成30年度決算検査報告の概要」p385👈クリック)

※旧住宅については、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの用途は問いませんが、建物を取壊した場合は用途等が問われますのでご注意ください。(国税庁HP👈クリック)

4.令和2年の税制改正
住宅借入金等特別控除(ローン控除)の規定で、改正前は「前後の2年ずつ」であったのが、改正後は「入居した年又はその年の前2年若しくは後3年」とされました。(国税庁HP👈クリック)

 

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【所得税】譲渡所得の取得費

2020-08-20

譲渡所得金額は、つぎのように計算します。
収入金額  -  (取得費 + 譲渡費用) = 譲渡所得金額


マンション売却などの場合で、買った値段で売れたから、税金はかからないと思ってる人がいます。
ところが実際に計算をしてみると、所得金額がでる場合があります。

理由は、マンションの建物部分の減価償却費相当額を考慮に入れていなかったためです。

まず、不動産賃貸業などでマンションを事業の用に供していた場合は、減価償却費は毎年の費用に算入されていますので、取得費は譲渡直前の帳簿価額となります。

一方、居住用などで事業の用に供していなかった場合は、建物の本来の耐用年数の1.5倍の年数(1年未満の端数は切り捨てます。)の償却率を用います。これは業務用より非業務用の方が耐用年数が長いと見ているのだと思います。

また、償却方法は旧定額法で1年当たりの減価償却費相当額を求めます。その減価償却費相当額に建物を取得してから売るまでの経過年数を乗じて、取得費から控除する減価償却費相当額を求めます。(国税庁HP👈クリック)


もっとも、居住用のマンションを譲渡した場合は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」(国税庁HP👈クリック)があるので、ほとんどの場合は税額はでません。

テーマから外れますが、この居住用の3,000万円控除の適用を受けるためには、確定申告をしなければなりません。
また、配偶者控除や扶養控除の判定の対象となる合計所得金額は、この居住用の3,000万円控除を適用する前の金額になりますのでご留意ください。(国税庁HP👈クリック)

 

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【法人税・所得税・消費税】コロナにおけるやむを得ない理由

2020-08-18

問4‐2 青色申告の承認申請の取扱い

※ 個別の期限延長の取扱いは、申告や申請等をすることができないやむを得ない理由がある場合に認められるものです(国税通則法11条、国税通則法施行令3条3項)。
したがって、例えば、令和2年4月17日(金)以後に修正申告や更正の請求などの手続を行った後、別の日に青色申告の承認申請を行う場合には、その申請をすることができないやむを得ない理由があったとは認められず、令和2年分の所得税から青色申告をすることはできませんので、ご注意ください。(国税庁HP👈クリック)


新型コロナウイルス感染症に起因する申告等の個別延長は、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」の提出は必要なく、申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延⻑申請」と記載すればよいことになったいます。

注意しなければならないのは、何でもかんでも申告書の余白に「新型コロナ・・・」記載すればよいというわけではないようです。
上述の国税庁のHPの※では、修正申告や更正の請求などの手続きができたのなら、青色申告の承認申請書の提出ができなかったということはないはずだから、青色申告の承認申請は認められないとしています。

この他にも、例えば所得税の確定申告をコロナの影響で4月に提出したが、消費税は納税資金が足りないことから6月に申告をしたという場合には、消費税の申告は期限内の申告とは認められないのではないかと思います。

つまり、所得税の確定申告ができるのなら、消費税の確定申告もできたでしょう、ということです。
このような場合は、所得税の確定申告と共に消費税の申告をすませ、別途「納税の猶予の特例(特例猶予)」(国税庁HP👈クリック)を利用することになります。

 

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【所得税・相続税】老人ホームへの入居と特例適用

2020-08-06

住宅の取得、譲渡、保有、相続については、様々な税務上有利な特例があります。

住宅借入金等特別控除(ローン控除)
マイホームを売ったときの3,000万円の特別控特例
マイホームを譲渡した場合の軽減税率の特例
特定のマイホームを買い換えたときの特例
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
小規模居住用宅地等の特例
・その他、不動産取得税、固定資産税、登録免許税 等々

住宅について税金を優遇するのは、仮に住宅を売って利益が出たからといってストレートに課税してしまうと、つぎに住む住宅が買えなくなってしまいます。相続が発生したからといって相続税をまるまるかけてしまうと相続人の住む家がなくなってしまいます。

この他住宅関連産業は裾野が広いことから、景気対策として税制が利用されて来た面もあります。


このような住宅にかかる税務上の特例は、原則として住宅に実際に住んでいることが条件です。例外的にやむを得ない理由により、実際に住んでいなくても特例が受けられる場合があります。

例えば、住宅借入金等特別控除(ローン控除)は転勤等で住宅に住めなくなった場合であっても、家族が引き続き住んでいればローン控除が受けられます。

また、被相続人の居住用財産を売ったときの特例や小規模居住用宅地等の特例では、介護等が必要になったため老人ホーム等に入居した場合であっても、特例の適用が可能となっています。


ところで、被相続人の居住用財産を売ったときの特例と小規模居住用宅地等の特例老人ホーム等への入居の場合では、両者は微妙に取り扱いがことなるので注意が必要です。

-被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例-
自宅から老人ホーム等に移るときには要介護等の認定をうけていなければなりません。

被相続人が、・・・要介護認定若しくは要支援認定又は・・・障害支援区分の認定を受けていたかどうかは、特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなる直前において、被相続人がその認定を受けていたかにより判定します。国税庁HP(👈クリック)

-小規模居住用宅地等の特例-
必ずしも自宅から老人ホーム等に移るときには要介護等の認定を受けている必要はなく、相続時に要介護等の認定を受けていれば適用があります。

「被相続人の居住の用」には、被相続人の居住の用に供されていた宅地等が、養護老人ホームへの入所など被相続人が居住の用に供することができない一定の事由(次の(1)又は(2)の事由に限ります。)により相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合(省略)におけるその事由により居住の用に供されなくなる直前の被相続人の居住の用を含みます。国税庁HP(👈クリック)

(1) 介護保険法第19条第1項に規定する要介護認定若しくは同条第2項に規定する要支援認定を受けていた被相続人又は介護保険法施行規則第140条の62の4第2号に該当していた被相続人が次に掲げる住居又は施設に入居又は入所をしていたこと。

 

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【所得税】空き家特例の留意点

2020-07-13

空き家特例は、相続を契機として空き家が発生するのを税制面から抑制しようという趣旨の制度です。

相続開始から3年目の12月31日までの間に、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたもの)とその敷地、又は家屋を取壊してその敷地を譲渡した場合には、居住用財産の譲渡の場合と同様に譲渡所得から3,000万円の特別控除が認められます。

この場合の被相続人が居住の用に供していた家屋について、つぎのように規定されています。


(所得税施行令23条第7項)
一 特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなつた時から・・・相続の開始の直前まで引き続き当該被相続人居住用家屋が当該被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと。
二 特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなつた時から・・・相続の開始の直前まで当該被相続人居住用家屋が事業の用、貸付けの用又は当該被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと
三 省略


最近は相続税のご相談と共に、この空き家特例を使いたいという税務相談が増えてきています。
ただ、上記赤字の「当該被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。」という要件があることから、残念ながらこの制度が使えないケースがあります。

事例として多いのは、ご主人がこの特例の適用要件を満たす老人ホームに入居しましたが、奥様はしばらくはそのご自宅で生活を続けていました。その後、奥様自身も介護が必要になり老人ホームに入居したため、ご自宅が空き家になった場合です。

この状態でご主人に相続が発生しますと、ご主人が老人ホームに入居して以降も奥様が住んでいたことから、「当該被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。」の要件を満たさないため空き家特例の適用がないことになります。

なお、ご主人が老人ホームに入居して以降も奥様がずっとご自宅に住んでいて、奥様がご自宅を相続した場合には、通常の居住用財産の3000万円控除の特例を使うことができます。

 

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【所得税】空き家特例とは

2020-07-10

今、日本全国で放置された空き家が問題となっています。都内の住宅地区でも、ハクビシンやアライグマが出没しています。少し古いデータですが、2018年の空き家率は日本全体で13.6%だそうです。

いろいろな原因があるようです。
住宅を買うなら新築とい思いが強く、特に中古の戸建住宅のニーズ低いようです。
税金面でも、住宅の敷地については固定資産税が減額(敷地200㎡まで1/6)になります。
また、いざ取り壊すとなると結構な金額の解体費用がかかります。

こうしたなか、2015年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)が施行されています。

税制面でも空き家対策として、2014年に空き家特例が創設されています。この制度は、相続を原因として生じた空き家及びその敷地について、利用可能な空き家は取り壊さずにそのままで、利用不可な空き家は取り壊して更地にして売却しやすくしようというものです。

具体的には、相続開始から3年目の12月31日までの間に、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたもの)とその敷地、又は家屋を取壊してその敷地を譲渡した場合には、これらの譲渡所得から3,000万円の特別控除を認めようというものです。

2019年4月1日以後の譲渡については、相続時には老人ホームに入居していて被相続人が自宅に住んでいなくても、この制度を適用することができるようになりました。

 

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【所得税法・相続税法】生計を一とは

2020-07-09

税金の世界では、「生計を一にする」という用語が出てきます。

例えば、青色事業専従者給与は生計を一にする配偶者その他の親族に対してでなければなりません。所得控除である配偶者控除扶養控除は納税者と生計を一にしていることが要件です。相続税の小規模居住用他宅地等の特例が適用できる場合の一つに被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等があります。

生計を一という解釈は、各種通達で課税庁の解釈※が明らかにされています。
これらを総合すると、同居していれば原則として生計を一していると判断される。ただし、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合は別生計であるされます。

この「明らかに互いに独立した生活」について興味ある最高裁判決があります。


妻と納税者とは、納税者の肩書住所地の自宅で同居し、食事も共にしており、食費、長男及び二男の学費並びに旅行の費用等の家計は、その都度話し合って、おおよそ妻が4、納税者が6の割合で負担している事実が認められるため、妻は、納税者と生計を一にする配偶者であり、所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)所定の「居住者と生計を一にする配偶者」に該当するとされた事例(高裁 平成16年6月9日 TAINZ  Z254-9665  最高裁も高裁判決を支持)


つまり、家計費を夫婦が取り決めをして一定の割合で負担しているような場合であっても別生計とはならない。むしろ、家計費を夫婦が負担しあっていることは逆に生計を一にしていることの裏付けであるとしています。

この文脈で考えれば、同居しているが別生計であると主張するのは、税務の世界では意外とハードルが高いように思います。

 

※以下は、生計一の通達で備忘的に載せておきます。


国税通則法基本通達46条間系
9(生計を一にする)この条第2項第2号の「生計を一にする」とは、納税者と有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいい、納税者がその親族と起居を共にしていない場合においても、常に生活費、学資金、療養費等を支出して扶養している場合が含まれる。
なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。


所得税基本通達2-47( 生計を一にするの意義)
法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。


法人税基本通達(1-3-4 生計を一にすること)
令第4条第1項第5号《同族関係者の範囲》に規定する「生計を一にする」こととは、有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいうのであるから、必ずしも同居していることを必要としない。


 

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【所得税】個人株主から法人への非上場株式の低額譲渡

2020-07-08

非上場株式(取引相場のない株式)の多くは、相続や贈与を原因として移転します。
まれにですが売買されるケースもあります。そのパターンは次のとおりです。
①個人 ⇒ 個人
②個人 ⇒ 法人
③法人 ⇒ 個人
④法人 ⇒ 法人

今回の話は、上記②のパターンについてです。
個人から法人へ資産の移転があった場合ですが、その移転が贈与であったり、時価よりも著しく低い価額(時価の2分の1未満)で譲渡したりすると、時価で譲渡したものとみなされます(所得税法59条)。

その趣旨は、「・・・譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税する趣旨のものである(昭和43年10月31日第一小法廷判決ほか)。」とされています。

例えば、A社のオーナー創業者甲は、今後の取引の安定を図って大口取引先であるB社にA社株式を少し持ってもらうことにしたとします。
さて、甲はA社株式をB社に一株あたりいくらで買ってもらえばよいでしょうか。

この場合は甲とB社の第三者間の取引ですから、双方合意した価額で売買すればよいと思います。一般的には、配当還元価額や旧額面価額でしょうか。

問題は、甲の譲渡所得の計算です。
上記のとおり所得税法では、法人に著しく低い価額で譲渡した場合には時価で譲渡したものとみなして譲渡所得を計算することになっています。

所得税法における非上場株式の算定は、多くの場合は相続税や贈与税の場合に用いる財産評価基本通達を準用します(所得税基本通達59-6)。
その財産評価基本通達では、会社の支配株主である場合は「原則的評価方法」、少数株主である場合は「配当還元方式」で計算します。

そうすると、売り主である甲はA社の支配株主であり、売買後は買い主であるB社はA社の少数株主になります。
A社株式の売買価額を、原則的評価方式で評価するのか配当還元方式で評価するのかが問題になります。

この場合は、売り主である甲の立場で株式を評価すべきと課税庁はしており、その取扱について上記通達で明らかにしています。
現在、この通達をさらに明確化するための改正のパブリックコメントが出ています。

 

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