Author Archive
【相続税・贈与税】配偶者に対する贈与税の非課税
-相続対策-
相続対策としての暦年贈与には、暦年贈与課税の基礎控除110万円を利用する、相続税の限界税率をみながら贈与を行う、そして贈与税の非課税の規定を活用するほ方法があります。
配偶者に対する贈与税の非課税の規定は、相続対策にもなりますが、通常受贈者は贈与者と同世代にあると思われるので、二次相続(贈与を受けた配偶者の相続)も視野に入れて検討する必要があります。
-制度の趣旨-
この制度は大変古く、昭和41年に創設されました。その趣旨は、親子相互間の扶養義務感の変化に伴い、残された妻の生活保障だとされています。昭和41年頃には既に核家族化の傾向が出始めていたということでしょう。
-特例の内容-
贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上である配偶者から「居住用不動産」又は「居住用不動産を取得するための金銭」を取得した場合に、課税価格から2,000万円までが控除される特例です。別途贈与税の基礎控除110万円ありますので、最大2,110万円万円まで無税で配偶者に財産を移転することができます。
(計算方法)
贈与税の課税価格 - 2,000万円(最大)- 贈与税の基礎控除額(110万円) × 贈与税の税率
-適用要件-
・婚姻期間が20年以上であること。
婚姻の届出があった日から贈与の日までの期間で判定します。なお、婚姻期間に1年未満の端数があるときは、その端数は切り捨てます。
・「居住用不動産」であること
「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地等や家屋で贈与を受けた年の翌年3月15日までに受贈者の居住の用に供し、かつ、その後も引き続いて居住の用に供する見込みであるものをいいます。
・又は「居住用不動産を取得するための金銭」であること
「居住用不動産を取得するための金銭」とは、居住用不動産を取得するための金銭でその金銭の贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住用不動産の取得にあて、かつ、その取得した居住用不動産を3月15日までに受贈者の居住の用に供し、その後も引き続いて居住の用に供する見込みであるものをいいます。
・同じ配偶者からは、一生に一度しかこの特例を受けることはできません。
・相続開始前3年以内であっても加算の対象とはなりません。
-手続き-
贈与税の申告書につぎの書類を添付して提出しなければなりません。
・ 受贈者の戸籍の謄本又は抄本(居住用不動産又は金銭の贈与を受けた日から 10 日を経過した日以後に作成されたものに限ります。)
・受贈者の戸籍の附票の写し(居住用不動産又は金銭の贈与を受けた日から 10 日を経過した日以後に作成されたものに限ります。)
・ 登記事項証明書などで受贈者が控除の対象となった居住用不動産を取得したことを証する書類
-計算例-
土地 3,000万円(相続税評価額)、建物 2,000万円(相続税評価額) の1/2を配偶者に贈与し、配偶者控除の特例の適用を受けた。
(※2,500万円―※※2,000万円―110万円)× 20%―25万円 = 53万円(贈与税額)
※ 2,500万円 → (土地3,000万円+建物2,000万円)×1/2
※※ 2,000万円 → 2,500万円>2,000万円 ∴2,000万円
∞∞ 吉岡 ∞∞

税理士法人熊谷事務所は、東京都千代田区神保町を拠点に、東京都区部や多摩地域はもちろん、埼玉県・千葉県・神奈川県まで幅広く対応しています。遠方の方にはリモートでのご相談も可能です。
法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
【相続税・贈与税】相続対策としての暦年贈与の考え方
-相続対策としての暦年贈与の考え方-
相続対策としての暦年贈与には、つぎの3つの方法があります。
①暦年贈与課税の基礎控除110万円を利用しながら時間をかけて計画的に贈与を行っていく。
②相続税の限界税率と贈与税の実効税率を比較しながら計画的に贈与を行っていく。
③贈与税の非課税の規定を利用する。
-限界税率と実効税率-
相続税も贈与税もその税率構造は、財産の額が増えれば増えるほど高い税率が適用される、いわゆる超過累進税率です。
相続税の税率⇒こちらをクリックして下さい。
贈与税の税率⇒こちらをクリックして下さい。
限界税率とは、相続財産の額又は贈与財産の額に適用される最も高い税率をいいます。
実効税率とは、相続財産の額又は贈与財産の額に占める相続税額又は贈与税額の割合をいいます。
-事例-
父とその子供が2人の場合で、父の財産の額が3億円だととします。
相続税の限界税率
相続人1人当たりに適用される限界税率:3億円×法定相続分1/2=1.5億円 ⇒ 1億円超2億円以下の場合に適用される40%
贈与税の実効税率
特例贈与(直系尊属からの20歳以上の者への贈与)の場合、贈与財産の額が4,500万円だと贈与税額はつぎのようになります。
(4,500万円-110万円)×50%-415万円=1,780万円
実効税率=1,780万円/4,500万円=39.6%
以上により、事例の場合では生前に約4,500以下の贈与をすれば相続税の節税につながります。
-留意点-
相続税の節税になるからといって、何でもかんでも生前に贈与すればよいわけではありません。
まずは、自身の老後の十分な生活資金が確保できていなければなりません。さらに相続税の納税資金をどうするかも考慮しておかなければなりません。
また、不公平な贈与は往々にして相続時のもめ事の原因になり、相続税の節税が徒になってしまいかねません。
相続税の節税対策は、専門家に財産評価を依頼し、意見を聞き、その対策のメリット・デメリットを見極めた上で計画的に実行した方がよいでしょう。
∞∞ 吉岡 ∞∞

税理士法人熊谷事務所は、東京都千代田区神保町を拠点に、東京都区部や多摩地域はもちろん、埼玉県・千葉県・神奈川県まで幅広く対応しています。遠方の方にはリモートでのご相談も可能です。
法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
【相続税・贈与税】非上場株式の評価方法の見直し
-財産評価基本通達-
相続税や贈与税は、相続開始時や贈与時の財産の評価額を基に税額を計算します。
上場株式等のように日々の取引価格が公表されているものは、その評価額を計算することは容易です。
土地などの不動産はどうでしょうか。不動産はおおよその取引相場価額は判るかも知れませんが、実際にその価額で売れるかどうかは売りに出してみなければわかりません。売りに出せば直ぐに買い手が付くものもありますが、なかなか買い手が付かないものも少なくありません。
では、日本の会社の99%を占める非上場株式はどうでしょう。非上場株式のことを相続(贈与)税法では取引相場のない株式等といいます。取引相場がないといっても全く価値がないというわけではありません。会社を解散して残余財産があれば株主に分配されます。探せば株式を買い取って会社を経営してもよいという人が出てくるかもしれません。
このように考えると非上場株式も何らかの方法で評価をしなければなりません。
また、相続・贈与財産の評価額が、評価する人によってバラバラだと有利不利が生じて不公平になります。
そこで、すべての相続・贈与財産の評価方法を画一的に定めたのが「財産評価基本通達」です。
-非上場株式の評価方法の見直し-
平成29年度税制改正大綱では、つぎのようになっていました。
(6)相続税等の財産評価の適正化
相続税法の時価主義の下、実態を踏まえて、次の見直しを行う。
① 取引相場のない株式の評価の見直し
イ 類似業種比準方式について、次の見直しを行う。
(イ)類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均を加える。
(ロ)類似業種の上場会社の配当金額、利益金額及び簿価純資産価額について、連結決算を反映させたものとする。
(ハ)配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、1:1:1とする。
ロ 評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大する。
また、現在「財産評価基本通達」の一部改正(案)のパブリックコメントが募集されています。改正案の内容を知りたい方はここをクリックして下さい。
ここで注目されているのは、配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重についてです。
従前は、配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重が1:3:1だったのが、改正案では1:1:1となっています。
つまり、利益金額が比重が従前3/(1+3+1)=60%だったのが、改正案では1/(1++1+1)=33%となっていて、類似業種比準価額における利益の占める割合が半減しています。その分、配当金額と簿価純資産価額は1/(1++3+1)=20%から改正案では1/(1++1+1)=33%となり1.5倍となっています。
評価方法の見直しにより、例えば社歴が古く過去の利益の蓄積が多額 (簿価純資産価額⇒大) だけれども最近はあまり儲かっていない (利益金額⇒小) 会社の株式の評価額は、上昇することが見込まれます。
一方、社歴が浅く過去の利益の蓄積は十分ではない (簿価純資産価額⇒小) けれども高収益 (利益金額⇒大) の会社は、逆に下落することが見込まれます。
なお、この改正は、平成29年1月1日以後の相続・贈与から適用される予定です。
∞∞ 吉岡 ∞∞

税理士法人熊谷事務所は、東京都千代田区神保町を拠点に、東京都区部や多摩地域はもちろん、埼玉県・千葉県・神奈川県まで幅広く対応しています。遠方の方にはリモートでのご相談も可能です。
法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
【相続税・贈与税】暦年贈与による相続税対策・保険料贈与スキーム
贈与税の基礎控除110万円を利用した、保険料贈与スキーム(保険料贈与プランともいいます。)というのがあります。
仕組みはさほど難しいものではなく、祖父母から孫に保険料相当額の贈与をするというものです。
-具体例-
・保険契約の締結
例えば、孫は生命保険会社とつぎの保険契約を結びます。
保険契約者 | :孫 |
被保険者 | :長男 |
保険料負担者 | :孫 |
保険金受取人 | :孫 |
・祖父は孫が支払う毎年の保険料に見合う金銭を孫に贈与します。
・孫は祖父から贈与を受けた金銭を原資に、毎年生命保険料を保険会社社に支払います。
-スキームの効果-
・孫は祖父から受けた贈与については、贈与税の基礎控除があるので贈与税がかからないか、かかっても少額の負担ですむ。
・保険事故(保険の満期や被保険者の死亡)により受け取る保険金は、孫の一時所得になり2分の1課税で有利である。
(保険金額-払込保険料-特別控除額:最高50万円)×1/2 |
・孫は代襲相続人なる場合や養子縁組をしている場合を除き、通常祖父母の相続人とはならないので、相続開始前3年以内の贈与加算はない。
・子ではなく孫とすることにより、子より1世代先なので、相続税対策としてはより有効である。
-スキームの問題点-
・贈与は贈与契約の成立とその履行が原則です。したがって、祖父と孫との間で毎年贈与契約を結び、祖父の口座から孫の口座に毎年実際に金銭の振り込みなされていなければならず、実務的な困難をともないます。
・さらに毎年保険料相当額の贈与がなされる結果、連年贈与の問題が生じます。つまり、祖父と孫との間で保険料の総額を贈与する契約が成立し、これを毎年分割して孫に渡していると認定されると、毎年の保険料に対してではなく、保険料の総額に対して贈与税が課税されてしまう可能性があります。
・かつて国税庁には下記の事務連絡が存在していましたので、参考までに掲げておきます。
国税庁の事務連絡(昭和58年9月)
(1)被相続人の死亡又は生命保険契約の満期により保険金等を取得した場合若しくは保険事故は発生していないが保険料の負担者が死亡した場合において、当該生命保険又は当該生命保険に関する権利の課税に当たっては、それぞれの保険料の負担者からそれらを相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなして、相続税又は贈与税を課税することとしている。
(注) 生命保険金を受け取った者が保険料を負担している場合には、所得税(一時所得又は雑所得)が課税される。
(2) 生命保険契約の締結に当たっては、生計を維持している父親等が契約者となり被保険者は父親等、受取人は子供等として、その保険料の支払いは父親等が負担しているというのが通例である。 このような場合には、保険料の支払いについて、父親等と子供達との間に贈与関係は生じないとして、相続税法の規定に基づき、保険事故発生時を課税時期としてとらえ、保険金を受け取った子供等に対して相続税又は贈与税を課税することとしている。
(3)ところが、最近、保険料支払い能力のない子供等を契約者及び受取人として生命保険契約を父親等が締結し、その支払保険料については、父親等が子供等に現金を贈与し、その現金を保険料の支払いに充てるという事例が見受けられるようになった。
(4)この場合の支払保険料の負担者の判定については、過去の保険料の支払資金は父親等から贈与を受けた現金を充てていた旨、子供等(納税者)から主張があった場合は、事実関係を検討の上、例えば、①毎年の贈与契約書、②過去の贈与税の申告書、③所得税の確定申告等における生命保険料控除の状況、④その他贈与の事実が認定できるものなどから贈与事実の心証が得られたものは、これを認めることとする。
∞∞ 吉岡 ∞∞

税理士法人熊谷事務所は、東京都千代田区神保町を拠点に、東京都区部や多摩地域はもちろん、埼玉県・千葉県・神奈川県まで幅広く対応しています。遠方の方にはリモートでのご相談も可能です。
法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
【相続税・贈与税】暦年贈与による相続税対策・その留意点
民法では、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」(民法549条)と 定められています。
これにより、贈与者だけが財産を引き渡す義務を負い(片務)、ただで(無償)、合意するだけで成立する(諾成)契約といわれています。
さらに、「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」(民法550条)とされていています。
つまり、贈与契約は必ずしも書面によらなくても成立しますが、贈与が履行されたものを除き、書面によらない贈与はいつでも撤回できることになります。
-贈与の履行-
贈与税は、贈与契約の成立とその履行に基づいて課される税金です。
例えば、父は子に100万円をあげますといい、子は父に100万円もらいますといえば贈与契約は成立しますが、これだけでは贈与税は課税されません。実際に親から子に100万円渡されることにより贈与税が課税されます。
祖父が子や孫のために預金通帳をつくり自分の預金から一定金額を毎年移しておいたとしても、その通帳や印鑑を祖父が管理していれば贈与の履行がなされていません。したがって、その預金は祖父の預金(名義預金)となってしまいます。
-連年贈与-
国税庁のHPにつぎのQ&Aがあります。
毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合
Q1
親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A1
定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、各年の受贈額が110万円以下の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります。
なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。
したがって、贈与契約をまとめて行ってしまうと、上記Q&Aのような問題が出てきます。贈与契約は毎年行い、税務署に誤解されないように、できれば一定額でない方が望ましいでしょう。
-贈与契約書の作成-
贈与契約は必ずしも書面によらなくても成立しますが、できれば確定日付のある贈与契約書を作成した方が望ましいでしょう。
-あえて贈与税の申告-
よく行われている方法として、贈与を基礎控除の110万円を少し超える金額で行い、あえて贈与税の申告をして実績をのこすやり方があります。ただし、贈与税の申告をしたからといって必ずしも贈与契約の成立と履行が行われた証明にはなりません。あくまでも、贈与の事実を補完するものです。
∞∞ 吉岡 ∞∞

税理士法人熊谷事務所は、東京都千代田区神保町を拠点に、東京都区部や多摩地域はもちろん、埼玉県・千葉県・神奈川県まで幅広く対応しています。遠方の方にはリモートでのご相談も可能です。
法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
【相続税・贈与税】暦年贈与による相続税対策
多くの方が実行されている相続税の節税対策の一つに、暦年贈与課税の基礎控除110万円を使うものがあります。
年間110万円と聞くとたいしたことないと思われるかも知れませんが、10年かけて行えば基礎控除額の累計は1,100万円になります。
さらに子だけでなく血のつながった孫までを想定すれば、結構な金額になります。例えば子が2人として孫まで数えると、子1人当たりに孫が2人で3人、これが2世帯なので、基礎控除の10年間の総額は1,100万円×6人=6,600万円となり、無税で6,600万円の相続財産を減らすことができます。
-相続開始前3年以内の贈与-
ただし、相続で財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときには、原則として、その人が相続した財産にその贈与を受けた財産が贈与の時の価額で加算されてしまいます。
この加算される財産は贈与税がかかっていたかどうかは関係ないので、毎年贈与していて10年目に亡くなったとしたら、7年間は相続対策としては有効ですが、残りの3年間は無駄になってしまいます。
ただ、相続財産に加算された贈与財産につき支払った贈与税がある場合は相続税から控除されますので、金銭の様に贈与の時と相続の時とで財産の価額が変わらなければ、損をするわけではありません。
例外として、つぎの贈与については相続開始前3年以内であっても加算の対象とはなりません。
・贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けた配偶者控除額に相当する金額
・直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
・直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
・直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
∞∞ 吉岡 ∞∞

税理士法人熊谷事務所は、東京都千代田区神保町を拠点に、東京都区部や多摩地域はもちろん、埼玉県・千葉県・神奈川県まで幅広く対応しています。遠方の方にはリモートでのご相談も可能です。
法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
【贈与税】暦年課税による贈与
贈与税には、暦年(1月1日~12月31日)に受けた贈与について課税する暦年課税という方法と、生前に受けた贈与について相続時に精算する相続時精算課税という方法があります。いずれの方法も贈与により財産を受け取った人にかかる税金で、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に申告しなければなりません。
また、平成27年の贈与からは、つぎのように区分され、特例贈与の方が若干優遇されることになりました。具体的な税率については、国税庁HPでご確認下さい。
一般贈与 | 「特例贈与」に該当しない場合の贈与をいいます。例えば、兄弟姉妹間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などが該当します。 |
特例贈与 | 直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与をいいます。なお、義母や義父などは直系尊属に該当しないのでご注意下さい。 |
-暦年課税の計算例-
・一般贈与
私は、平成29年に妻の父から410万円、妻の母から300万円の贈与を受けました。
課税標準額:710万円-基礎控除110万円=600万円
贈与税額 :600万円×贈与税率30%-65万円=115万円・・・平成30年2月1日~3月15日の間で贈与税の申告が必要です。
・特例贈与
私(20歳以上)は、平成29年に私の父から410万円、妻の母から300万円の贈与を受けました。
課税標準額:710万円-基礎控除110万円=600万円
贈与税額 :600万円×贈与税率20%-30万円=90万円・・・平成30年2月1日~3月15日の間で贈与税の申告が必要です。なお、特例贈与の要件(20歳以上、直系卑属)を満たしていることを明らかにするために、はじめて申告する場合は戸籍謄本等を添付する必要があります。

税理士法人熊谷事務所は、東京都千代田区神保町を拠点に、東京都区部や多摩地域はもちろん、埼玉県・千葉県・神奈川県まで幅広く対応しています。遠方の方にはリモートでのご相談も可能です。
法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
【贈与税】住宅取得資金の贈与の申告期限は3月15日(水)までです
父母や祖父母など直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合で、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について贈与税が非課税となります。なお、非課税限度額は契約締結の日で判定され、贈与の日ではないので注意が必要です。
(事 例)
私は、35歳で日本に住所があり、平成28年の合計所得が500万円です。平成28年中に父から住宅取得資金として1,000万円の金銭の贈与をうけました。これと住宅ローン3,000万円で4,500万円の一般の住宅(新築マンション、専ら居住用、床面積70㎡)をマンション業者から購入し、28年中に既に住んでいます。いつまでにどんな申告をすればよいでしょうか。
-要件のチェック-
①受贈者は贈与時に国内に住所があるか ⇒ YES
②直系尊属からの贈与か ⇒ YES (父からの贈与)
③受贈者は贈与の年の1月1日で20歳以上か ⇒ YES (35歳)
④合計所得が2,000万円以下か ⇒ YES (500万円<2,000万円)
⑤贈与を受けた金銭を翌年3月15日までに資金の全額を住宅取得等に利用か ⇒ YES
⑥贈与を受けた翌年3月15日までに居住(又は居住が確実な見込み)か ⇒ YES
⑦床面積の1/2以上が居住用か ⇒ YES (100%居住用)
⑧床面積が50㎡以上240㎡未満か ⇒ YES (50㎡<70㎡<240㎡)
⑨新築住宅又は一定の中古住宅か ⇒ YES (新築住宅)
⑩以上により、住宅取得資金の贈与の特例の適用あり ⇒ 平成29年2月1日~3月15日までに贈与税の申告が必要です。
-贈与税額の計算-
平成28年中に契約した場合で省エネ等住宅以外の一般の住宅の非課税限度額は700万円です。したがって、住宅取得等資金の贈与の非課税制度を使った場合の贈与税額はつぎのようになります。
税額(贈与額1,000万円-非課税限度額700万円-基礎控除額110万円)×税率10%=19万円
贈与税の申告書に一定の書類を添付して3月15日までに申告する必要があります。
-期限後申告は不可-
忙しくて期限までに申告が間に合わなかった、贈与額が非課税枠(700万円+110万円)の範囲だった、などの理由で3月15日までに一定の種類を添付した贈与税の申告をしなかった場合は、通常の贈与の扱いになります。
20歳以上の者が直系尊属から1,000万円の贈与を受けた場合の贈与税額はつぎのようになります。
税額(贈与額1,000万円-基礎控除額110万円)×税率30%-90万円=177万円

税理士法人熊谷事務所は、東京都千代田区神保町を拠点に、東京都区部や多摩地域はもちろん、埼玉県・千葉県・神奈川県まで幅広く対応しています。遠方の方にはリモートでのご相談も可能です。
法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
【所得税】特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
不動産を譲渡して生じた譲渡損失は他の不動産の譲渡益からは控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、原則として他の所得と損益通算することができずに切り捨てになってしまいます。
ただし、例外として、長期譲渡所得に該当する場合で居住用財産を譲渡した結果譲渡損失が生じた場合に、買換資産を住宅ローで購入したときには、その年の他の所得(不動産所得、事業所得、給与所得など)との損益通算や控除しきれない損失の金額の3年間の繰越控除の制度があります。
さらにもう一つ、住宅ローンが残っているマイホームを譲渡して譲渡損失が生じた場合に、その損失の金額のうち下記の要件を満たすものについては、買換資産を取得しなくてもその損失と他の所得との損益通算や3年間の繰越控除ができる制度があります。
この制度の趣旨は、マイホームを住宅ローンで買ったものの、その後値下がりしてマイホームを売っても住宅ローンの弁済がしきれない場合に、そのしきれない額について税制で一部救済しようというものです。
-特例の内容-
①損益通算
所有期間※が5年を超える住宅ローンのある居住用財産を、住宅ローンの残高を下回る価額で売却して譲渡損失が生じたときは、その譲渡損失は他の所得と損益通算することができます。この場合の損失の金額は売買契約日の前日における住宅ローンの残高から売却価額を差し引いた残りの金額が、損益通算の限度額となります
※所有期間は、資産を取得した日から譲渡する年の1月1日までの期間で計算します。
②繰越控除
益通算してもなお譲渡損失の金額がある場合には、翌年以降3年間の繰越控除が認められます。ただし、繰越控除をする各年の合計所得金額が3,000万円以下※であることが条件となります。
※合計所得金額が3,000万円以下とは、所得が給与所得のみである場合は、給与の収入金額が3,230万円以下です。
-適用がある居住用財産-
①居住用家屋(譲渡する年から過去3年以内に居住の用に供しなくなった家屋を含みます)
②上記①の敷地だった土地等
③災害で滅失した居住用家屋の敷地だった土地等で、滅失した家屋を引続き所有していれば、所有期間が5年を超えるもの(災害があった日から3年経過する年の年末までに譲渡する場合に限られます)
-住宅ローンとは-
居住用財産を取得等するために、銀行等の金融機関などから借り入れたローンで、10年以上の割賦償還の方法で返済が行なわれるものです。
-適用できない場合-
・譲渡した居住用財産にかかる住宅ローンが、譲渡契約締結の日の前日に残っていない場合または譲渡の収入金額に満たない場合
・配偶者、直系血族、生計を一にする親族などに対して譲渡等する場合
・譲渡する年の前年・前々年に居住用財産の特別控除・軽減税率の特例、特定の居住用財産の買換え・交換の特例を適用していた場合
・譲渡する年もしくは譲渡する年の前年以前3年内に「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例」を適用している場合
・譲渡する年の前年以前3年内に既にこの特例を適用している場合
-手続き-
①損益通算
所得税の確定申告書につぎの書類の添付が必要です。
・特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書《確定申告書付表》
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書【租税特別措置法第41条の5の2用】
・売却した居住用財産の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
・譲渡をした時において、住民票に記載されていた住所と売却した居住用財産の所在地とが異なる場合は、戸籍の附票の写しなど
・譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書(譲渡契約締結日の前日のもの)
②繰越控除
・繰越控除 損益通算の特例の適用を受けた年分の所得税につき期限内申告書を提出した場合であって、その後において連続して確定申告書を提出し、かつ、繰越控除の特例の適用を受ける年分の確定申告書を提出する必要があります。

税理士法人熊谷事務所は、東京都千代田区神保町を拠点に、東京都区部や多摩地域はもちろん、埼玉県・千葉県・神奈川県まで幅広く対応しています。遠方の方にはリモートでのご相談も可能です。
法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
【所得税】居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
不動産を譲渡して生じた譲渡損失は他の不動産の譲渡益からは控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、原則として他の所得と損益通算することができずに切り捨てになってしまいます。
ただし例外として、長期譲渡所得に該当する場合で居住用財産を譲渡したときに生じた譲渡損失の金額のうち、下記の要件を満たすものについては、その年の他の所得(不動産所得、事業所得、給与所得など)との損益通算をすることが認められています。さらに、これらの通算を行ってもなお控除しきれない損失の金額については、その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます。
なお、この制度は住宅借入金等特別控除(いわゆるローン控除)との併用ができます。
-特例の内容-
①損益通算
所有期間※が5年を超える居住用財産を譲渡して損失が発生し、買換資産を住宅ローンなどで購入した場合には、その損失の金額を他の所得と損益通算することができます。ただし、買換資産を取得した年の年末に、買換資産にかかる住宅ローンが残っていることが条件となります。
※所有期間は、資産を取得した日から譲渡する年の1月1日までの期間で計算します。
②繰越控除
損益通算してもなお譲渡損失の金額がある場合には、つぎの場合を除き翌年以降3年間の繰越控除が認められます。
・譲渡した居住用財産の敷地の面積が500㎡を超える場合は、500㎡を超える部分に対応する譲渡損失の金額については適用できません。
・繰越控除をする各年の年末に買換不動産にかかる住宅ローンが残っていること、各年の合計所得金額が3,000万円以下※であることが条件となります。
※合計所得金額が3,000万円以下とは、所得が給与所得のみである場合は、給与の収入金額が3,230万円以下です。
-適用がある居住用財産の範囲-
①居住用家屋(譲渡する年から過去3年以内に居住の用に供しなくなった家屋を含みます)
②上記①の敷地だった土地等
③災害で滅失した居住用家屋の敷地だった土地等で、滅失した家屋を引続き所有していれば、所有期間が5年を超えるもの(災害があった日から3年経過する年の年末までに譲渡する場合に限られます)
-買換資産の範囲-
譲渡する年の前年から譲渡する年の翌年の年末までの間に取得し、かつ、取得した年の翌年の年末までに居住した又は居住することが見込まれる不動産で、床面積が50㎡以上の家屋やその敷地である土地等です。
-住宅ローンとは-
居住用財産を取得等するために、銀行等の金融機関などから借り入れたローンで、10年以上の割賦償還の方法で返済が行なわれるものです。
-適用できない場合-
・配偶者、直系血族、生計を一にする親族などに対して譲渡等する場合
・買換資産を贈与などにより取得した場合
・譲渡する年の前年・前々年に居住用財産の特別控除・軽減税率の特例、特定の居住用財産の買換え・交換の特例を適用していた場合
・譲渡する年もしくは譲渡する年の前年以前3年内に「特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例」を適用している場合
・譲渡する年の前年以前3年内に既にこの特例を適用している場合
-手続き-
①損益通算
所得税の確定申告書につぎの書類の添付が必要です。
・居住用財産の譲渡損失の金額の明細書《確定申告書付表》
・居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書【租税特別措置法第41条の5用】
・売却した居住用財産の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
・譲渡をした時において、住民票に記載されていた住所と売却した居住用財産の所在地とが異なる場合は、戸籍の附票の写しなど
・買い換えた居住用財産の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
・買い換えた居住用財産の住宅借入金等の残高証明書
②繰越控除
・適用を受ける場合には、居住用財産の譲渡損失が生じた年分の確定申告書を提出期限までに提出し、かつ、その後も連続して買換資産に係る住宅借入金等の残高証明書を添付した確定申告書を提出することが必要です。

税理士法人熊谷事務所は、東京都千代田区神保町を拠点に、東京都区部や多摩地域はもちろん、埼玉県・千葉県・神奈川県まで幅広く対応しています。遠方の方にはリモートでのご相談も可能です。
法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。