Archive for the ‘相続税’ Category
【相続税・贈与税】事業承継税制の変遷
非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予は、平成21年度の税制改正で創設されました。その後、平成30年度の税制改正において10年間限定でその要件が緩和された制度が創設されました。
もともあった制度を「一般措置」、10年間限定の要件が緩和された制度を「特別措置」とよばれています。
「特例措置」は、事前に承継計画※を策定し、所轄する都道府県に提出して認定を受ける必要がありますが、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や納税猶予割合の引上げ(80%から100%)がされているなどの使い勝手がよくなっています。一般措置と特例措置の違いは国税庁HPをご参照下さい。
※「承継計画」は、後継者や承継時までの経営見通し等が記載されたもので認定支援機関となっている税理士等の所見の記載が必要です。
平成21年度に創設された事業承継制度(一般措置)は、安定的な経営の承継確保するとの考え方に基づき制定されたものですが、あまり利用されていませんでした。そこで平成30年度に要件を緩和した事業承継制度(特別措置)を創設したわけですが、この点について中小企業庁では、下記のようにコメントしています。
事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する「法人向け事業承継税制」を、平成30年度の税制改正で抜本的に拡充。
拡充前は、年間400件程度の申請であったが、拡充後は足元の申請件数は年間6000件に迫る勢いであり、爆発的に伸びている。
この制度は、あくまでも納税を猶予する制度です。したがって、事業を承継した後継者は、原則として対象となる株式を保有し続けなければならず、結果として後継者を縛ることになってしまい制度の適用を躊躇されるケースが少なくありません。
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【相続税・贈与税】7月1日に公表される路線価
令和2年の路線価等は、例年どおり公表される見込みです。
令和2年5月 国 税 庁 令和2年分の路線価図等の公開予定日について
令和2年分の路線価図等は、7月1日(水)11 時に公開することを予定していますのでお知らせいたします。
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路線価は「・・・毎年1月1日を評価時点として、地価公示価格、売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として算定した価格の80%により評価しています。(国税庁HP)」とされていてます。
新型コロナウイルスの感染拡大は地域によって差がありますが、感染が急速に拡大したのは3月以降だろうと思います。感染拡大に伴い、地価は下落傾向にります。
仮に令和2年6月に相続があったとすると、1月より6月の方が地価が下落している可能性が高いにもかかわらず、令和2年1月1日現在の路線価で相続税の計算をすることに不公平感が生じる思います。
課税庁の理屈としては時価の80%が路線価なので、20%以上下落ない限り対応は必要ないということになります。
そうはいっても国民感情を鑑みてということで課税庁が何らかの対応をするとしたら、下記のいずれかではないでしょうか。
1.政府が新型コロナウイルスの感染拡大を特定非常災害として指定する
特定非常災害に指定されると、租税特別措置法69の6,7,8の適用をうけることができます。
例えば、令和元年の台風19号により被害を受けた方で特定の地域の土地等を相続等により取得した場合は、令和元年の路線価の80%で評価されました。
(参考)令和元年台風第19号に係る特定土地等の評価方法等の概要 参照
2.国税庁から、かつて平成4年4月にでた事務連絡に準じたものが公表され、個別対応する
(参考)
国税庁 平成4年4月事務連絡「路線価に基づく評価額が「時価」を上回った場合の対応等について」
①路線価等に基づく評価額が、その土地の課税時期の「時価」を上回ることについて、申告や更正の請求の相談があった場合、路線価等に基づく評価額での申告等でなければ受け付けないなどという事のないように留意する。
②路線価を下回る価額で、申告や更正の請求があった場合には、相続税法上の「時価」として適切であるか否かについて適正な判断を行うこと。
具体的には、各種地価動向調査等による当該土地周辺の地価動向を把握し、例えば、当該土地が売却され、その売買価額を根拠として申告等がなされた場合には、他の売買事例との比較から当該土地の売買が適正な価格での取引といえるかどうか判断する。あるいは精通者(不動産鑑定士等)への意見聴取を行うなどして、当該土地の課税時期における時価の把握を行う事とする。
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【相続税】新型コロナウイルスと相続税の申告期限の延長
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う申告期限の延長は、個人の確定申告や法人の決算・申告の期限だけでなく、相続税の申告期限も対象となっています。
【相続税の申告・納付期限に係る個別指定による期限延長手続に関するFAQ】
問2.個別延長の場合の申告・納付期限はいつになりますか。
○ 新型コロナウイルス感染症の影響により、期限内に申告・納付することが困難な相続人等については、申告・納付ができないやむを得ない理由がやんだ日から2か月以内の日を指定して申告・納付期限が延長されることになります。
しかしながら、相続税の申告は、税理士に依頼すればすぐにできるものではありません。今は新型コロナウイルスという非常事態ですが平時の場合は、相続が開始すると、財産と債務を調査し債務超過が判明し相続したくないなどの場合は、3ヶ月以内に家庭裁判所で相続を放棄の手続きをしなければなりません。
また、4ヶ月以内に被相続人の準確定申告をしなければなりません。そして、相続開始後10ヶ月後には相続税の申告・納付をしなければなりません。配偶者の税額の軽減の特例、小規模宅地等の特例などの適用を受けるためには、申告期限までに遺産分割協議書の作成を済ませておかなければなりません。
新型コロナウイルス感染症の影響により、相続人等が期限までに申告・納付ができないやむを得ない理由があるとしても、「やむを得ない理由がやんだ日から2か月以内」でこれらの相続税の申告手続きを行うのは困難です。また、事情によっては弁護士や司法書士の力を借りなければならない局面も出てくるかもしれません。
相続が発生したら、新型コロナウイルスの問題はあるにしても早めに専門家にコンタクトをとることをすすめします。
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【相続税・贈与税】新型コロナウイルスと同族株式の評価
まずは、今週水曜日の日経新聞から。
【トヨタ、8割減益】
トヨタ自動車は12日、2021年3月期の連結営業利益(国際会計基準)が前期比80%減の5000億円になりそうだと発表した。販売の正常化は年末以降との見通しを前提に、世界販売台数の計画を前期比15%減の890万台とした。
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同日発表した20年3月期の連結決算(米国会計基準)は、純利益が前の期比10%増の2兆761億円、売上高は1%減の29兆9299億円だった。新型コロナの影響が営業利益を1600億円押し下げた。1~3月期では営業利益は前年同期に比べて27%減った。
規模は違うとしても、トヨタのような決算を迎える会社は多いのではないでしょうか。
3月期決算の会社で、第4四半期(2020年/1~3月)は新型コロナウイルスの影響を受けて失速したが、それまでの蓄積で、今期はそれなりの利益が出たという会社です。
法人の納税の問題はさておき、ここではその会社の株主に相続が発生した場合についてです。
※このような非上場株式を、取引相場のない株式(出資)といいますが、ここでは同族株式ということにします。
仮に3月決算の会社で4月以降に相続が発生した場合、その亡くなった方(被相続人)がその会社の株主だったとしたら、その同族株式は比較的好調だった2020年3月期の決算をもとに評価することになります。
同族株式の評価では、その会社を親族で支配している場合は原則的評価方法となります。この原則的評価方法には類似業種比準方式と純資産価額方式とがあります。
-純資産価額-
純資産価額方式では、会社の資産・負債のすべてを相続税評価して一株あたりの純資産価額を計算する方式ですが、原則として課税時期における金額(相続開始時点での仮決算に基づく金額)によることとされています。
ただし、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるときは、直前期末の決算の金額に基づいて算定してもよいとされています。
新型コロナウイルスの影響で、会社の財務内容が急速に悪化しているような場合は、会社の事務コストがかかりますが、仮決算に基づいて純資産価額を計算した方が有利になります。
-類似業種比準価額-
問題は、類似業種比準価額です。類似業種比準方式は、財産評価基本通達180より、直前期の数値を用いる旨が規定されています。したがって、2020年4月以降は急速に業績が悪化しているにも関わらず、比較的好調だった2020年3月期の決算数字(配当、利益、純資産)を基に同族株式の評価をせざるを得ません。
新型コロナウイルス感染拡大という、一企業の個別事情ではなく、日本全体が非常事態下にあるわけですから、会社の実態にあった何らかの同族株式の評価方法が認められることを期待したいと思います。
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【相続税・贈与税】新型コロナウイルスと路線価
新型コロナウイルスは地価にも影響を与えそうです。
(日経新聞 朝刊より)
・・・だがテレワークが機能すると確認したスタートアップなど新興勢は、事業環境の悪化に備えオフィスを解約し始めた。都心部のオフィス利用に依存する不動産会社は、成長戦略の見直しを迫られる可能性がある。
かつて平成バブルが崩壊し、株も土地もものすごい勢いで下落したことがあります。その頃耳にしたのが、買値と比較して「半値、8掛け、2割引き」でした。もともとは、「天井を付けた後下落局面に入った時に、底の水準を判断する目安とされる相場の格言。高値×0.5×0.8×0.8=0.32で1/3程度まで下げるというもの。(野村證券、証券用語解説集より)」だそうです。
今回の新型コロナウイルスがどの程度地価に影響を及ぼすかわかりませんが、仮に一時的であったにせよ土地の需要が下がるでしょうから、下落要因であることは間違いないと思います。
そこで気になるのが、国税庁が公表する2020年度の路線価です。路線価は「路線価及び評価倍率は、毎年1月1日を評価時点として、地価公示価格、売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として算定した価格の80%により評価しています。(国税庁HP)」とされていて、例年7月1日に公表されています。
今年の路線価は、新型コロナウイルスの感染が拡大し始める前の1月1日現在の土地の価格が基礎となってしまいます。したがって、2020年に相続が発生した場合の多くは、新型コロナウイルスの影響を受けていない路線価で土地の相続税評価をすることになってしまいます。
路線価は評価の安全を見ていわゆる時価の80%により評価されていますので、理屈の上では20%の下落なら時価よりも路線価の方が有利ということになっていまします。しかしながら、相続税は、相続開始から10ヶ月後に申告納税しますので、納税時にはさらに地価が下がっている場合も考えられます。
国税庁は、2020年の路線価についてどのように対応するのか注視したいと思います。
(参考1)
国税庁 平成4年4月事務連絡「路線価に基づく評価額が「時価」を上回った場合の対応等について」より
①路線価等に基づく評価額が、その土地の課税時期の「時価」を上回ることについて、申告や更正の請求の相談があった場合、路線価等に基づく評価額での申告等でなければ受け付けないなどという事のないように留意する。
②路線価を下回る価額で、申告や更正の請求があった場合には、相続税法上の「時価」として適切であるか否かについて適正な判断を行うこと。
具体的には、各種地価動向調査等による当該土地周辺の地価動向を把握し、例えば、当該土地が売却され、その売買価額を根拠として申告等がなされた場合には、他の売買事例との比較から当該土地の売買が適正な価格での取引といえるかどうか判断する。あるいは精通者(不動産鑑定士等)への意見聴取を行うなどして、当該土地の課税時期における時価の把握を行う事とする。
(参考2)
地価下落時の時点修正に係る裁決
(平15.9.2裁決、裁決事例集No.66 265頁)より
(ロ)路線価の時点修正について
請求人らは、P市宅地及びQ市宅地の評価について、路線価を本件相続開始日に時点修正した価格に基づき評価すべきである旨主張する。
しかしながら、路線価は評価の安全性の観点から評価割合を公示価格の80%程度として算定しているところ、いずれの宅地についても、請求人らが算定した時点修正率(平成8年1月1日から本件相続開始日までの地価の変動)は20%を超えるものではないことから、P市宅地及びQ市宅地に付されている路線価は本件相続開始日において時価を下回るものであるので、路線価に基づき算定したP市宅地及びQ市宅地の価額は適正である。
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【国税】国税の納税猶予
令和2年4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(案)」で、国税の納税猶予制度の特例が掲げられています。
現行でも国税の猶予制度はありますが、担保を必要とする場合があったり、外出自粛に伴い収入が大幅に減少したような場合であっても、猶予期間中の延滞税が免除されないことがあるなどから、制度の緩和が予定されています。
対象となるのは、令和2年 2 ⽉以降の任意の期間(1か⽉以上)において、事業等に係る収⼊が前年同期に⽐べて概ね20%以上減少している法人又は個人です。
対象期間は、1年間で、 担保の提供は不要、延滞税もかかりません。
申請手続き等は、納期限(申告納付期限が延⻑された場合は延⻑後の期限)までに申請が必要となります。
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【相続税】申告期限延長
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。また、遺言書がない場合は、相続人間で遺産分割協議を行うことになります。遺産分割協議が整わないと、法定相続分での申告になりますが、配偶者の税額軽減や、小規模宅地等の評価減は遺産分割が前提となっていますので、期限内申告の段階では適用できないことになります。また、金銭で一時に納付することが困難な場合は、延納や物納の制度がありますが、この制度を利用するためには期限内に申告しなければなりません。
しかしながら、政府より緊急事態宣言が出され不要不急の外出は制限されている現況では、相続税の申告や分割協議が申告期限までに終わらないことも考えられるます。
このような状況を鑑み、国税庁は、相続税の申告納付にかかる期限延長について、国税庁ホームページFAQ形式で公表しています。
問1.どのような場合に個別延長が認められますか。
問2.個別延長の場合の申告・納付期限はいつになりますか。
問3.申請や届出など、申告以外の手続も個別延長の対象となりますか。
問4.個別延長する場合には、どのような手続が必要となりますか。
その問4で、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出しなくても、申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記すればよいとしています。なお、相続人全員が延長申請する場合は全員の氏名は書かないようです。つまり、一部の相続人の氏名だけを記載してしまいますと、その方だけの延長申請になってしまいますのでご注意下さい。
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【相続税】遺言の有無と相続登記
遺産分割協議、遺言、いずれの場合も不動産登記にあたっては戸籍謄本や住民票が必要になります。
1.被相続人の戸籍謄本
遺産分割協議の場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本及び改製原戸籍(除籍謄本)が必要です。
これは、被相続人の相続人を特定するために被相続人の全ての戸籍を調べる必要があるからです。
一方、遺言の場合は、被相続人が亡くなった事実さえ確認できればよいため出生から死亡までは必要ないことになっています。
2.相続人の戸籍謄本等
遺産分割協議の場合は、相続人全員の戸籍謄本と相続人全員の住⺠票の写しが必要です。
一方、遺言の場合は、遺言によって相続をする相続人の戸籍謄本と住⺠票の写しがあればよいことになっています。
なお、遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言があり、自筆証書遺言には検認※という手続があります。
公正証書遺言だとこの検認も不要なので、相続人の中に相続登記に非協力的な者がいても、相続財産を相続する者が自分のペースで不動産登記をすることができます。
※裁判所HPより
検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
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【贈与税】教育資金の一括贈与の非課税制度の見直し
日経の記事によると、教育資金の一括贈与の非課税制度が2018年末で期限が切れることから、次のような点について見直しが議論されるとのことです。
・贈与を受ける子・孫に所得制限を付ける
・非課税の対象金額を縮小する
・贈与を受ける子・孫の年齢制限をつける
この制度は、祖父母などから孫への贈与を促すことを趣旨として、直系尊属(祖父母や父母)から子や孫が贈与を受けて教育資金口座を開設した場合には、受贈者一人につき1,500万円を限度※として贈与税を非課税とするという制度です。
※習い事など学校等以外に支払う金銭については、500万円が限度となります。
しかしながら、扶養義務者相互間(祖父母や父母から子や孫へ)で教育費又は生活費で通常必要と認められる金額を、その必要の都度贈与する場合は、その贈与により取得した金銭は贈与税が非課税となっています。(扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A 国税庁)
この制度の最大の長所は、直前の相続税の節税対策に使えることです。
相続開始前3年以内に贈与を受けた財産についっては、相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算しなければならないことになっています。
しかし、この教育資金の一括贈与の非課税制度を適用した贈与については、相続開始前3年以内であっても加算しなくてもよいことになっています。(No.4161 贈与財産の加算と税額控除 国税庁)
なお、受贈者が30歳に達した等で教育資金口座に係る契約が終了した場合において、贈与を受けた教育資金のうち使い切れず残額が残った場合にはその年において、贈与税贈与税が課税されます。
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【相続税】認知症となった創業者への退職金の支払い
認知症は、高齢者になればいつ発症してもおかしくない病気です。
創業者である会長が、認知症になってしまった事例です。
計画では、会長への退職金は、死亡退職金として相続税の納税資金に充てることになっていました。
死亡退職金だと、被相続人である会長には所得税・住民税がかかりません。
また、相続税を計算する上において死亡退職金はみなし相続財産となりますが、生命保険金と同様に次のような非課税枠があります。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額 |
しかし、このまま会長職にとどまったままだと、業務への支障が懸念されます。やむなく、死亡時ではなく生前に退職してもらうことになりました。
未だ認知症の初期症状で日常生活に大きな支障はないものの、先々のことを考えると金銭管理の面で多額の退職金の支払いは躊躇します。
このような場合は、存命中は生活費として会長に退職年金で支払い、相続後は相続人に年金又は一時金で支払う方法があります。
退職年金で支払う方法は、死亡退職金と比較して税務面では必ずしも有利ではありません。
しかし、これから進行するであろう認知症の人の生活資金の確保、多額の金銭を持たせるリスクの回避、さらに将来の納税資金という観点から検討に値するものと思われます。
退職年金の場合の課税関係は以下のとおりです。
-会長存命中-
退職年金は公的年金等として会長の雑所得になる。
所得税法35条2項
二 恩給(一時恩給を除く。)及び過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給される年金
-会長死亡時-
定期金に関する権利としてみなし相続財産になる(上記非課税の適用はない。)
相続税法3条1項
六 被相続人の死亡により相続人その他の者が定期金(これに係る一時金を含む。)に関する権利で契約に基づくもの以外のもの(略)を取得した場合においては、当該定期金に関する権利を取得した者について、当該定期金に関する権利(第2号に掲げる給与に該当するものを除く。)
-相続人が年金形式受け取った場合-
遺族年金となり所得税は非課税
所得税法9条1項三号
ロ 遺族の受ける恩給及び年金(死亡した者の勤務に基 づいて支給されるものに限る。)
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