【相続税・贈与税】新型コロナウイルスと同族株式の評価

まずは、今週水曜日の日経新聞から。


【トヨタ、8割減益】
トヨタ自動車は12日、2021年3月期の連結営業利益(国際会計基準)が前期比80%減の5000億円になりそうだと発表した。販売の正常化は年末以降との見通しを前提に、世界販売台数の計画を前期比15%減の890万台とした。
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同日発表した20年3月期の連結決算(米国会計基準)は、純利益が前の期比10%増の2兆761億円、売上高は1%減の29兆9299億円だった。新型コロナの影響が営業利益を1600億円押し下げた。1~3月期では営業利益は前年同期に比べて27%減った。


規模は違うとしても、トヨタのような決算を迎える会社は多いのではないでしょうか。
3月期決算の会社で、第4四半期(2020年/1~3月)は新型コロナウイルスの影響を受けて失速したが、それまでの蓄積で、今期はそれなりの利益が出たという会社です。

法人の納税の問題はさておき、ここではその会社の株主に相続が発生した場合についてです。
※このような非上場株式を、取引相場のない株式(出資)といいますが、ここでは同族株式ということにします。

仮に3月決算の会社で4月以降に相続が発生した場合、その亡くなった方(被相続人)がその会社の株主だったとしたら、その同族株式は比較的好調だった2020年3月期の決算をもとに評価することになります。

同族株式の評価では、その会社を親族で支配している場合は原則的評価方法となります。この原則的評価方法には類似業種比準方式と純資産価額方式とがあります。

-純資産価額-
純資産価額方式では、会社の資産・負債のすべてを相続税評価して一株あたりの純資産価額を計算する方式ですが、原則として課税時期における金額(相続開始時点での仮決算に基づく金額)によることとされています。
ただし、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるときは、直前期末の決算の金額に基づいて算定してもよいとされています。

新型コロナウイルスの影響で、会社の財務内容が急速に悪化しているような場合は、会社の事務コストがかかりますが、仮決算に基づいて純資産価額を計算した方が有利になります。

-類似業種比準価額-
問題は、類似業種比準価額です。類似業種比準方式は、財産評価基本通達180より、直前期の数値を用いる旨が規定されています。したがって、2020年4月以降は急速に業績が悪化しているにも関わらず、比較的好調だった2020年3月期の決算数字(配当、利益、純資産)を基に同族株式の評価をせざるを得ません。

新型コロナウイルス感染拡大という、一企業の個別事情ではなく、日本全体が非常事態下にあるわけですから、会社の実態にあった何らかの同族株式の評価方法が認められることを期待したいと思います。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

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