Archive for the ‘相続税’ Category

【贈与税・相続税】住宅の使用貸借

2020-07-31

無償で物を貸し借りすることを、使用貸借といいます。
では、子や孫に住宅を買ってタダで住まわしてあげたらどうでしょう?

民法では、夫婦、直系血族、兄弟姉妹などは互いに扶養義務があると定められています。
税務ではこの民法における扶養義務の履行について、原則として贈与税は課税しないことになっています。

扶養義務の履行のうち住宅については、国税庁よりつぎのとおり取り扱うことが明らかにされています。


[Q5-1] 子が居住する賃貸住宅の家賃等を親が負担した場合、贈与税の課税対象となりますか。

[A] 扶養義務者相互間において生活費に充てるために贈与を受けた場合に、贈与税の課税対象とならない「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除きます。)をいい、通常の日常生活を営むのに必要な費用に該当するかどうかは、贈与を受けた者(被扶養者)の需要と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲かどうかで判断することとなります。
したがって、子が自らの資力によって居住する賃貸住宅の家賃等を負担し得ないなどの事情を勘案し、社会通念上適当と認められる範囲の家賃等を親が負担している場合には、贈与税の課税対象となりません。国税庁HP(👈クリック)


「子や孫に住宅を用意してあげる」というのは、二重の意味で節税効果があります。
東京の場合、都心の職場に近い家族向けの住宅というと25万円/月くらいはでしょうか。

更新料などの諸費用を加味すれば年間300万円以上、10年なら3000万円以上を、贈与税の基礎控除とは別に無税で子や孫に実質的に移転させることができます。

さらに、その住宅を相続まで保有していても構いませんし、途中で子や孫に贈与する選択肢もあります。
住宅は、土地は路線価(公示地価の80%)、建物は固定資産税評価額(建築価格の半分程度の価額)なので、キャッシュで持っているよりも相続税や贈与税において節税効果があります。

 

 

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【贈与税】親子間での使用貸借

2020-07-30

無償で物を貸し借りすることを、使用貸借といいます。
他人との間での使用貸借は、本やボールペンなどの筆記具ぐらいでしょうか、あまり思いつくものはありません。

これが親族、特に親子となると使用貸借の範囲はグッと広がります。
そもそも物の貸し借りで、親子間でお金を払う(賃貸借)ことの方が少ないかもしれません。

親子間での使用貸借の典型例は、住宅の敷地でしょう。
東京でも郊外に行けば、親の自宅の敷地に子供が結婚をして家を建てるといったことはさほど珍しくありません。

ご注意いただきたいのは、親子間で地代(借地料)の授受があった場合です。
ただで土地を利用しているのだから固定資産税ぐらいはらいなさい、ということはあるかもしれません。
この程度の地代なら問題ないのですが、親子間で近隣相場並みの地代の授受をしてしまうと土地の賃貸借となって子に借地権が発生してしまいます。

この場合の借地権の価額はつぎになります。
路線価等で評価した更地の価額 ☓ 借地権割合※

※借地権割合は、路線価図や評価倍率表に表示されていて、国税庁HP(👈クリック)で見ることができます。

借地権が発生しているにも関わらず借地権の対価の授受がない場合は、親から子へ借地権の贈与があったものとされますので、ご注意ください。

 

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【相続税】相続時精算課税適用者が先に亡くなったら

2020-07-27

相続時精算課税制度(👈国税庁HPクリック)を適用した贈与財産は、贈与者である父母又は祖父母の相続において、相続財産に加算して相続税を計算します。この場合のその贈与財産にかかる相続税はその贈与を受けた者に納税の義務があります。

相続時精算課税制度においては、財産を贈与した父母や祖父母を特定贈与者といい、財産の贈与を受けた子や孫を相続時精算課税適用者といいます。

昨今の高齢化に伴い、父母が100歳、子が70歳などという家族構成は決して珍しくなくなりました。このような高齢化の中では、相続時精算課税適用者である子の方が先に亡くなり、特定贈与者である父母が後に残るということも十分ありえます。

「逆縁」は考えたくないことですが、相続時精算課税制度の適用がどうなるかは、念のため一応検討しておいた方がよいと思います。


相続時精算課税適用者が先に亡くなった場合には、その相続人が法定相続分に応じて相続時精算課税にかかる相続税の納税義務を承継します(相続税法第21条の17 )。

(例1)相続時精算課税適用者の妻と子が相続時精算課税の納税義務の承継を承継する場合
甲:特定贈与者
乙:相続時精算課税適用者
丙:乙の配偶者
丁:乙の子供
乙の相続時精算課税の納税義務の承継は相続人である丙と丁が承継する
丙:2分の1
丁:2分の1
※甲の孫丁は甲の相続にあたっては乙の代襲相続人となる

 

(例2)相続時精算課税適用者の母が相続時精算課税の納税義務の承継を承継する場合
P:特定贈与者
Q:Pの妻
R:相続時精算課税適用者
Rの相続時精算課税の納税義務の承継はR相続人である母Qが承継する

なお、次の場合の納税義務は消滅することになります。
相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者のみである場合(👈国税庁HPクリック)(相続税法第21条の17① )。
相続時精算課税適用者の相続人の相続人(再承継相続人)が特定贈与者より先に死亡した場合(👈国税庁HPクリック)(相続税法基本通達21の17-1)。

 

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【相続税・贈与税】相続時精算課税のメリット・デメリット

2020-07-22

相続時精算課税の制度とは(👈国税庁HPクリック)、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において、2500万円までは無税、2500万円を超えると一律20%の税率で贈与税が課税される制度です。

また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、この制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

この制度は一度選択すると、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、一般の暦年課税に戻ることはできません。
そのメリット・デメリットはつぎのとおりです。


-メリット-
・この制度の趣旨は、高齢者に偏っているとされる金融資産や不動産などの資産を、相続を待たずに早期に次世代に移転させようというものです。たとえば、「住宅取得資金の贈与の特例」(👈国税庁HPクリック)と併用すれば、今なら最高3700万円まで無税で贈与することができます。

・相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は将来の相続財産に加算しますが、加算する価額は贈与時の価額です。たとえば将来値上がりが見込まれる財産を生前に贈与しておけば値上がりした分だけ相続税の節税になります。

非上場株式の納税猶予制度(👈国税庁HPクリック)と相続時精算課税制度を併用しておけば、万一納税猶予の要件を満たさなくなっても2割の納税で済ますことができ、リスクヘッジになります。

・高収益の賃貸物件などを次世代に早期に移転させることで、所得分散ができ、所得税や将来の相続税の節税につながります。


-デメリット-
・上述のとおり一度この制度を選択すると一般の暦年贈与に戻れません。一般の暦年贈与では基礎控除110万円がありますが、相続時精算課税制度を選択した後は適用できなくなります。したがって、2500万円の特別控除を使い切ると、贈与が110万円以下であっても20%の贈与税が課税されます。

ただし、、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度なので、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与については、一般の暦年贈与の適用をうけることができます。

・相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は将来の相続財産に加算しますが、加算する価額は贈与時の価額です。贈与した財産が将来値下がりすると相続時精算課税制度を選択しなければよかったということになりかねません。

小規模宅地等の特例とは(👈国税庁HPクリック)、一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度ですが、この特例は相続又は遺贈により取得した財産が前提となっています。相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産は対象とはなりません。

・相続税には物納という制度がありますが、物納財産から相続時精算課税制度の適用を受けた財産は除外されています(👈国税庁HPクリック)ので、物納に充てることはできません(相続税法41②本文)。

 

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【相続税・贈与税】相続時精算課税制度

2020-07-21

相続や贈与のお話をうかがっていますと、たまに「すでに相続時精算課税を選択して実行しました。」という方がいます。

もちろん、ご本人がよく理解した上で実行されている分には何ら問題はありません。
なかには、業者さんに勧められてとか、2500万円まで贈与税がかからないからといった理由の場合があります。

この相続時精算課税制度で一番こわいのは、一度選択をすると後戻りできないことです。
この制度には、メリット・デメリットがありますが、これについては次回以降にあらためてコメントします。


まずは、制度の概要です。

・60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫への贈与が対象です。
・贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要です。
・この制度を選択した年分以降、暦年課税※への変更は不可です。
・贈与者が亡くなった場合の相続税の計算は、相続時精算課税を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

※暦年贈与とは、一般贈与のことで、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。

上述のとおり、相続時精算課税は贈与者が生前に贈与した財産は相続時にあるものと仮定して相続税を計算します。
つまり、贈与者に相続が発生した際に相続税がかかる場合で、贈与した財産の価額が贈与時と相続時で変わらないときは、将来の相続税においては損も得もないというわけです。


-贈与時の贈与税額の計算-
(贈与財産の価額の合計額 - ※特別控除額)☓ 一律20%
※限度額は2500万円。ただし、既にこの特別控除額を控除している場合は、その残額が限度額となります。

-相続時の相続税額の計算-
すでに述べたように、相続時精算課税における贈与者が亡くなった時に、それまで相続時精算課税の適用を受けた贈与財産の価額を相続財産に加算して相続税額を計算します。

その計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税額がある場合は、その贈与税額を控除します。控除しきれない場合は還付を受けることができます。
なお、相続財産に加算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。

 

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【相続税・贈与税】マンション敷地の評価

2020-07-16

相続財産の中にマンションがある、あるいはマンションを贈与するといった場合には、相続税や贈与税の計算においてマンションの評価をしなければなりません。

マンションは、建物部分と土地等(借地権を含む)からなっています。
建物の評価は簡単です。
自分で利用している場合は固定資産税評価額がそのまま建物の評価になります。

土地等の評価は少し面倒です。
まず、マンションが所在する地域に路線価※が定められている場合は路線価で評価します。
路線価が定められていない場合は、土地等の固定資産税評価額に地域ごとに定められている倍率乗じて計算します。

令和2年分の路線価図・評価倍率表(👈国税庁HPクリック)

なお、路線価で評価する場合は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率(👈国税庁HPクリック)で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。
この場合の乗じる面積ですが、マンションの場合は敷地全体のうちの評価するマンションの持分割合になります。

平成29年までのマンション敷地は「広大地の評価」ではありませんでした。
ところが、「広大地の評価」が改められ「地積規模の大きな宅地(👈国税庁HPクリック)となったことにより、敷地規模の大きいマンションにも要件を満たせば評価減が認められることになりました。

「地積規模の大きな宅地」では、マンションのような敷地の持ち分は小さくても、敷地全体で判断するためです。


地積規模の大きな宅地の評価-共有地の場合の地積規模の判定(👈国税庁HPクリック)
【照会要旨】
複数の者に共有されている宅地の場合、地積規模の要件を満たすかどうかは、共有者の持分に応じてあん分した後の地積により判定するのでしょうか。

【回答要旨】
複数の者に共有されている宅地については、共有者の持分に応じてあん分する前の共有地全体の地積により地積規模を判定します。


評価対象となるマンションの

・敷地の面積が、三大都市圏では500㎡以上、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上であること
・敷地を評価する路線価の地区が普通商業・併用住宅地区又は普通住宅地区であること
・敷地の容積率が400%(東京都の特別区においては300%)未満であること

他にも要件はありますが、適用を受けることができるとなると少なくとも2割は評価額を減額することができます。

 

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【相続税】地積規模の大きな宅地の評価

2020-07-14

相続税や贈与税で土地の評価が必要になる場合があります。
比較的大きな宅地を評価する場合は、平成29年までは「広大地の評価」という方法がありました。


通達改正の趣旨
この従来の広大地の評価に係る広大地補正率は、個別の土地の形状等とは関係なく面積に応じて比例的に減額するものであるため、社会経済情勢の変化に伴い、広大地の形状によっては、それを加味して決まる取引価額と相続税評価額が乖離する場合が生じていた。
また、従来の広大地の評価の適用要件は、・・・「定性的(相対的)」なものであったことから、広大地に該当するか否かの判断に苦慮するなどの問題が生じていた。


広大地評価の適用の有無の判断や減額の程度が、評価する税理士によってバラツキがありました。ここに目をつけて、税理士が不動産鑑定士と組んで「見直し税理士」なるものが出現し、多額の成功報酬を請求するようなことがあったそうです。

この広大地の評価方法に代わって、平成30年1月1日以降の相続・贈与税からは、「地積規模の大きな宅地の評価」という方法になりました。

・地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500平方メートル以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000平方メートル以上の地積の宅地をいいます。
・路線価地域に所在するものについては、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在するものとなります。
・指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地が対象から除かれます。

・地積規模の大きな宅地の評価を算式で示せば次です。

評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率などの各種画地補正率 × 規模格差補正率 × 地積(㎡)

規模格差補正率 ={(Ⓐ × Ⓑ + Ⓒ)/(地積規模の大きな宅地の地積(Ⓐ))} × 0.8

※Ⓑ Ⓒは、三大都市圏、三大都市圏以外の地域ごとに定められています。
※詳しくは国税庁HPパンフレット👈(クリック)を参照ください

上記の規模格差補正率は「1」を超えることはないため、地積規模の大きな宅地に該当すれば、2割以上の減額になります。

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【所得税法・相続税法】生計を一とは

2020-07-09

税金の世界では、「生計を一にする」という用語が出てきます。

例えば、青色事業専従者給与は生計を一にする配偶者その他の親族に対してでなければなりません。所得控除である配偶者控除扶養控除は納税者と生計を一にしていることが要件です。相続税の小規模居住用他宅地等の特例が適用できる場合の一つに被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等があります。

生計を一という解釈は、各種通達で課税庁の解釈※が明らかにされています。
これらを総合すると、同居していれば原則として生計を一していると判断される。ただし、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合は別生計であるされます。

この「明らかに互いに独立した生活」について興味ある最高裁判決があります。


妻と納税者とは、納税者の肩書住所地の自宅で同居し、食事も共にしており、食費、長男及び二男の学費並びに旅行の費用等の家計は、その都度話し合って、おおよそ妻が4、納税者が6の割合で負担している事実が認められるため、妻は、納税者と生計を一にする配偶者であり、所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)所定の「居住者と生計を一にする配偶者」に該当するとされた事例(高裁 平成16年6月9日 TAINZ  Z254-9665  最高裁も高裁判決を支持)


つまり、家計費を夫婦が取り決めをして一定の割合で負担しているような場合であっても別生計とはならない。むしろ、家計費を夫婦が負担しあっていることは逆に生計を一にしていることの裏付けであるとしています。

この文脈で考えれば、同居しているが別生計であると主張するのは、税務の世界では意外とハードルが高いように思います。

 

※以下は、生計一の通達で備忘的に載せておきます。


国税通則法基本通達46条間系
9(生計を一にする)この条第2項第2号の「生計を一にする」とは、納税者と有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいい、納税者がその親族と起居を共にしていない場合においても、常に生活費、学資金、療養費等を支出して扶養している場合が含まれる。
なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。


所得税基本通達2-47( 生計を一にするの意義)
法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。


法人税基本通達(1-3-4 生計を一にすること)
令第4条第1項第5号《同族関係者の範囲》に規定する「生計を一にする」こととは、有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいうのであるから、必ずしも同居していることを必要としない。


 

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【相続税】相続税の修正申告と税額の影響

2020-07-01

相続税の申告書を期限内に提出したが、その後新たな財産が出てきた、財産の評価額を誤ったなどして、当初提出した申告書の税額が少なすぎたというケースです。

当然申告の是正しなければならないわけですが、是正が期限内ならば「訂正申告書」です。期限後なら「修正申告書」になります。

修正申告書の提出には税務調査による場合もあります。調査の結果、税務署の指摘に従ったというケースです。どちらかといえばこちらの方が多いでしょうか。

ところで、相続財産の申告漏れがあったことに後で気がついたとします。相続人が兄と弟だとします。その財産について兄弟で再度遺産分割協議を行いその相続財産を兄が取得したとします。

この場合において、兄の相続税額が増加するのはご理解いただけると思います。実は弟にも相続税額に影響が出てしまいます。なぜでしょう。

これは、現行の相続税の計算方式が法定相続分遺産取得者課税方式を採用しているからです。

相続財産の合計から債務と葬式費用を差し引いた純資産価額を計算し、これから基礎控除額を引いた後の金額を課税遺産総額といいます。

この課税遺産総額を法定相続分で取得したものと仮定して各相続人の相続税額を計算します。この合計額を相続税の総額といいます。

この相続税の総額を実際に各相続人が取得した財産の割合で按分して、各相続人の納付すべき税額となります。

つまり、法定相続分で相続したと仮定して相続税の総額を求めるので、どのような遺産分割をしても相続税の総額は変わらない仕組みになっています。

このような計算の仕組みのため、後で相続財産が増えると相続税の総額が増え、増えた税額を各人の財産の取得割合で按分するので、上記のように兄だけでなく弟の税額にも影響が出てしまうのです。


(参考)相続税の具体的な手順は、下記1~4になります。

1 まず、各人の課税価格を計算する
・相続又は遺贈により取得した財産の価格 − 債務及び葬式費用の額=純資産価格(赤字のときは0)

・純資産価格 + 相続開始前3年以内の贈与財産の価格 =各人の課税価格

2 相続税の総額の計算
・各相続人の課税価格の合計 = 課税価格の合計額

・課税価格の合計額 - 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)
= 課税遺産総額

法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額 × 税率 = 算出税額

各法定相続人ごとの算出税額の合計=相続税の総額

3 各人ごとの相続税額の計算
上記2で計算した相続税の総額を、財産を取得した人の課税価格に応じて割り振って、財産を取得した人ごとの税額を計算します。

相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額 = 各相続人等の税額

4 各人の納付税額の計算
上記3で計算した各相続人等の税額から各種の税額控除額を差し引いた残りの額が各人の納付税額になります。


 

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【相続税】遺産分割協議後に新たな財産が出てきたら

2020-06-30

相続が発生し、10ヶ月以内に遺産分割協議を終え、相続税の申告・納税は無事終えました。
相続税の税務調査がなければ無事終了という中で、遺品の整理をしていたら一万円の札束がいくつも出てきたケースです。

まず、この現金はだれのものになるでしょうか?
これは遺産分割協議書の記載次第です。

遺産分割協議書に被相続人の財産のすべてを記載することは事実上困難です。

家の中にある家財等でしたら「その他家財道具一式」などと表現しますが、例えば他人にお金を貸していたことを証する金銭消費貸借が出てきたとか、実は被相続人が親から相続していた非上場株式があったとか、遺産分割時には想定されていなかった財産が遺産分割後に出てくることがあります。

このような場合には、遺産分割協議書に「この余の財産は〇〇が取得する。」と記載をしておけば財産の帰属で問題になることはありませんが、一方では先の事例のように多額の金銭が出てきたような場合は後で揉めるかもしれません。

揉めたからといっても「この余の財産は〇〇が取得する。」と遺産分割協議書に財産の帰属の合意がなされている以上、新たに出てきた財産を再度分割協議すると相続人間での贈与の問題が生じてしまいます。

再度分割協議が必要になる財産が出てくることが少しでも懸念される場合は、遺産分割協議書に「この余の財産は〇〇が取得する。」とは記載はしないで、再度遺産分割協議書を作成する方がよいでしょう。

 

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