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【所得税】国外転出(相続)課税制度
国外転出時課税制度、国外転出(贈与)時課税制度の他にもう一つ、国外転出(相続時)時課税制度があります。
国外転出(相続)時課税は、相続開始の時点で1億円以上の対象資産を所有等している居住者が亡くなり、非居住者である相続人等がその相続又は遺贈により対象資産を取得した場合に、その相続開始の時に、相続対象資産の譲渡等があったものとみなして、その相続対象資産の含み益に対して被相続人に所得税が課税される制度です。また、国外転出(相続)時課税においても、国外転出時課税や国外転出(贈与)時課税制度と同様に、納税猶予制度やこの制度の適用がなかったものとされる等の減額措置を受けることができます。
【所得税】国外転出(贈与)時課税制度の軽減措置
国外転出(贈与)時課税制度も、国外転出時課税制と同様に軽減措置があります。
-納税猶予-
国外転出時までに納税管理人を選任しその届出をしたうえで、つぎの要件を満たせば5年間(最長10年間)納税が猶予されることになっています。
確定申告時 | 一定の書類を添付した確定申告書を提出し、かつ、納税猶予分の所得税額及び利子税額に相当する担保を提供する必要がります。 |
納税猶予期間中 | 納税猶予期間中の各年12月31日に所有している対象資産について、継続適用届出書を、翌年3月15日の提出期限までに、所轄税務署に提出する必要があります。なお、提出期限までに提出がなかった場合は、その期限から4か月を経過する日に納税猶予期限が確定し、納税が猶予されていた所得税及び利子税を納付することとなります。 |
期限延長 | 納税猶予期限を5年延長することができます。延長するためには、国外転出の日から5年を経過する日までに、延長届出書を所轄税務署に提出する必要があります。延長後の納税猶予期限は国外転出の日から10年を経過する日となります。 |
-適用がなかったものとされる場合-
贈与等の日から5年を経過する日(期限延長をしている場合は10年)までにつぎの場合に該当するときは、帰国などをした日から4か月以内に、国外転出をした年分の所得税について更正の請求によ国外転出(贈与)時課税の適用がなかったものとすることができます。
① 帰国(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有することとなることをいいます。)をした場合
② 対象資産を居住者に贈与した場合
③国外転出時課税の申告をした方が亡くなり、その国外転出の時において有していた対象資産を相続(限定承認に係るものを除きます。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除きます。)により取得した相続人及び受遺者の全員が居住者となった場合
なお、対象資産の所得の計算につき、その計算の基礎となるべき事実の全部又は一部について、隠蔽又は仮装があった場合には、その隠蔽又は仮装があった事実に基づく所得については、課税取消しは認められません。
【所得税】国外転出(贈与)時課税制度とその対象者
国外転出時課税制度は、有価証券などの対象資産を1億円以上有している方が、国外転出(国内に住所及び居所を有しなくなること)すると、その時に譲渡があったものとみなされ、その含み益に対して譲渡所得税が課されてしまう制度でした。
またこの制度は、国外転出時だけでなく非居住者に対象資産を贈与した場合や非居住者が対象資産を相続した場合にも、国外転出時課税と同様にその含み益に対して譲渡所得税が課されてしまいます。
ここでは、国外転出(贈与)時課税制度について説明します。
-対象者-
贈与の時において、次の①及び②のいずれにも該当する居住者である贈与者が、国外転出(贈与)時課税の対象者となります。なお、贈与をした居住に譲渡所得が課税される点にご留意下さい。
① 贈与者が所有等している対象資産(注1)の贈与の時の価額の合計額が1億円以上(注2)であること。
② 贈与の日前10年以内において贈与者が国内に5年を超えて住所又は居所を有していること。
(注1)対象資産
・有価証券等(株式や投資信託等、 匿名組合契約の出資の持分の価額に相当する金額)
・未決済信用取引等(未決済の信用取引、未決済の発行日取引)
・未決済デリバティブ取引
(注2)1億円以上
この場合の1億円以上については、非居住者へ贈与した贈与対象資産のみで判定するのではなく、その贈与対象資産を含めてた贈与の時に贈与者が所有等していた対象資産の全ての合計額が1億円以上となるかどうかで判定します。
【所得税】国外転出時課税制度の適用がなかったものとされる場合
国外転出時課税制度は、有価証券などの対象資産を1億円以上有している方が、国外転出(国内に住所及び居所を有しなくなること)すると、その時に譲渡があったものとみなされ、その含み益に対して譲渡所得税が課されてしまう制度です。
しかし、国外転出の日から5年を経過する日(期限延長をしている場合は10年)までにつぎの場合に該当するときは、帰国などをした日から4か月以内に、国外転出をした年分の所得税について更正の請求によ国外転出時課税の適用がなかったものとすることができます。
① 帰国(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有することとなることをいいます。)をした場合
② 対象資産を居住者に贈与した場合
③国外転出時課税の申告をした方が亡くなり、その国外転出の時において有していた対象資産を相続(限定承認に係るものを除きます。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除きます。)により取得した相続人及び受遺者の全員が居住者となった場合
なお、対象資産の所得の計算につき、その計算の基礎となるべき事実の全部又は一部について、隠蔽又は仮装があった場合には、その隠蔽又は仮装があった事実に基づく所得については、課税取消しは認められません。
【所得税】国外転出時課税制度における納税猶予制度
国外転出時課税制度は、有価証券などの対象資産を1億円以上有している方が、国外転出(国内に住所及び居所を有しなくなること)すると、その時に譲渡があったものとみなされ、その含み益に対して譲渡所得税が課されてしまう制度です。
しかし、売ってもいないのに税金が課税されると納税ができないこともあります。そこで、国外転出時までに納税管理人を選任しその届出をしたうえで、つぎの要件を満たせば5年間(最長10年間)納税が猶予されることになっています。
確定申告時 | 一定の書類を添付した確定申告書を提出し、かつ、納税猶予分の所得税額及び利子税額に相当する担保を提供する必要がります。 |
納税猶予期間中 | 納税猶予期間中の各年12月31日に所有している対象資産について、継続適用届出書を、翌年3月15日の提出期限までに、所轄税務署に提出する必要があります。なお、提出期限までに提出がなかった場合は、その期限から4か月を経過する日に納税猶予期限が確定し、納税が猶予されていた所得税及び利子税を納付することとなります。 |
期限延長 | 納税猶予期限を5年延長することができます。延長するためには、国外転出の日から5年を経過する日までに、延長届出書を所轄税務署に提出する必要があります。延長後の納税猶予期限は国外転出の日から10年を経過する日となります。 |
【所得税】国外転出時課税制度の対象者
国外転出時価税制度の創設により、平成27年7月1日以後居住者(国内に住所を有し、又は、現在まで引き続き1年以上居所を有する個人)から非居住者(居住者以外の個人)になった時点で、保有する株式などの含み益に所得税が課税されることになりましたが、その対象者はつぎの①及び②のいずれにも該当する方です。
① 所有等している対象資産(注1)の金額の合計額が1億円以上(注2)であること。
② 国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を有していること。
(注1)対象資産
・有価証券等(株式や投資信託等、 匿名組合契約の出資の持分の価額に相当する金額)
・未決済信用取引等(未決済の信用取引、未決済の発行日取引)
・未決済デリバティブ取引
(注2)1億円以上
対象資産については、含み益があるかどうかにかかわらず、全ての対象資産の価額の合計額が1億円以上となるかで判定します。
【所得税】国外転出時課税制度の概要
日本に住所がある方が、例えば1,000円で買った株式が売却時点では3,000円だったとします。儲けは2,000円(3,000円-1,000円)となります。売るときまでずっと日本に住んでいれば、この2,000円に対して日本の所得税などの税金が課されます。
仮に、この方が日本で株式は買ったもののこの株式の株価が2,000円となった時点で、海外に居住することになったとします。しかし、売る時点では海外に居住していますので、日本での値上がり益1,000円(2,000円-1,000円)と海外での値上がり益1,000円(3,000円-2,000円)の合計2,000円に対して、現地の法律に基づき海外で課税されることになります。そうすると、日本に居住していた期間の値上がり益1,000円に対して、わが国は税金を取り損ねてしまします。
また、シンガポールや香港などのように、国によってはキャピタルゲインに対して課税されない国もあります。そうすると、儲け2,000円に対して合法的に租税回避が出来てしまうことになります。
このようなBEPS(税源浸食と利益移転)に対応するために、わが国においても平成27年度の税制改正において国外転出時課税制度なるものが創設されました。この制度創設の趣旨の中で財務省は「主要国の多くが国外転出時点の未実現の所得(含み益)を国外転出前の居住地国で課税するようになってきています。」(平成27年度税制改正の解説)と説明しています。
しかしながら、売ってもいない、つまり実現もしていない所得に対して税金を課税してしまう、ある意味怖い制度でもあります。
【所得税】退職給付を一時金で受け取った場合の申告の要否
-申告の概要-
退職給付を一時金で受け取った場合は退職所得となり、原則として他の所得と分離して所得税額や住民税額の計算をします。
①退職金等の支払者に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合
退職金等の支払者が所得税額・復興特別所得税額及び住民税を計算し源泉徴収するため、原則として確定申告は必要ありません。
②退職金等の支払者に「退職所得の受給に関する申告書」の提出していない場合
退職金等の支払者により、退職手当等の支払金額の20.42%の所得税・復興特別所得税と10%の住民税が源泉徴収されます。退職所得の受給者本人が確定申告を行うことにより所得税額及び復興特別所得税額の精算をすることになります。
-確定申告をする場合-
「退職所得の受給に関する申告書」の提出していない場合の他に、つぎのような場合は確定申告をした方が有利になります。
・年の途中で退職したが再就職しなかったため給与収入がすくなく、給与所得から医療費控除や社会保険料控除等の所得控除が引き切れないといった場合があります。退職金等から所得税等が源泉徴収されていることが前提ですが、このような場合は確定申告することにより、源泉徴収された所得税額等が還付されます。
・退職者がアパート経営などをしていてた、退職してから事業を始めた等の場合で、退職した年の不動産所得や事業所得が赤字になったといったときは、確定申告することにより退職所得と損益通算できます。
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【法人税・所得税】退職給付制度
人事院の民間の企業年金及び退職金の調査結果によりますと、 企業規模50人以上の民間企業では退職給付制度を有する企業 は9割をこえているそうです。この退職給付制度ですが、そのスタートは江戸時代の「のれん分け」にあるとされています。
わが国における退職給付制度の源流は、江戸時代の商家で使用人の独立時などに行われた「のれん分け」にあるといわれている。明治期以降、熟練労働者の足止め策の一つとして定年退職時に一時金を支給する退職一時金制度が普及・慣行化していった。
しかし、戦後の高度経済成長に伴い退職者数・退職金額が急速に増加したことにより、退職金の支払負担を平準化することが企業経営上の課題として注目されるようになった。
このような状況を背景に、昭和37年に法人税法および所得税法に基づく適格退職年金制度が、昭和40年に厚生年金保険法に基づく厚生年金基金制度が創設された。(企業年金連合会のHPより)
退職給付の支給形態には、一時金で支給する場合と年金で支給する場合があります。後者の場合はさらに、将来の給付額をあらかじめ決められている確定給付型と拠出額(掛金)をあらかじめ決めておき、将来の給付額は拠出額とその運用実績によって決まる確定拠出型ああります。各制度の概要はつぎのとおりです。
支給形態 | 種 類 | 説 明 | |
一時金 | 退職一時金 | 退職により勤務先から一時に受ける退職手当などの給与等をいいます。 | |
年金 | 確定給付型 | 厚生年金基金 | 企業が従業員と給付の内容を約束し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができる確定給付型の企業年金制度の一つ。企業や業界団体等が厚生労働大臣の認可を受けて設立する法人である厚生年金基金が、年金資産を管理・運用して年金給付を行う。国の年金給付のうち老齢厚生年金の一部を代行するとともに、厚生年金基金独自の上乗せ(プラスアルファ)を行うもの。(注) |
確定給付企業年金 | 企業が従業員と給付の内容を約束し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができる確定給付型の企業年金制度であり、企業等が厚生労働大臣の認可を受けて法人(企業年金基金)を設立する「基金型」と、労使合意の年金規約を企業等が作成し、厚生労働大臣の承認を受けて実施する「規約型」がある。基金型は企業年金基金、規約型は企業等が、年金資産を管理・運用して年金給付を行う。(注) | ||
自社年金 | 企業が独自に行う従業員のための退職年金で、税制上の優遇措置はないが、法令による規制もないので、企業は独自の制度設計をすることができる。 | ||
確定拠出型 | 日本版401k | 企業等・個人が拠出した掛金は個人ごとに明確に区分され、掛金と個人の運用指図による運用収益との合計額が給付額となる企業年金制度であり、従業員のために企業等が規約を作成し、厚生労働大臣の承認を受けて実施する「企業型」がある。この他に、会社員に限らず、自営業者や専業主婦等でも加入できる「個人型」(国民年金基金連合会が実施)がある(平成29年1月より改正)。(注) |
(注)企業年金連合会のHPより
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【所得税】副業の確定申告
ちょっと前までは、会社員や公務員の副業といえば、「隠れてこっそり」というイメージでした。
ところが、平成19年12月に政府、地方公共団体、経済界、労働界の合意により、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定され、現在、官民を挙げて様々な取組が進められているそうです。
内閣府HPによると、ワーク・ライフ・バランスとはつぎのような社会だとしています。
①就労による経済的自立が可能な社会
②健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
③多様な働き方・生き方が選択できる社会
企業の中には、少数ながら副業を認める企業を出てきています。副業解禁は、社員の視野や人脈が広がる、やりがいや年功序列の給与体系に対する不満の解消といったメリットがありますが、一方では本業がおろそかになる、企業情報の漏洩のリスクといったデメリットもあります。今後どのような形で広がってい行くかわかりませんが、副業を認めている会社であっても今のところほとんどの会社において、申請による承諾が原則のようです。
-給与所得か否か-
当然のことながら副業であっても所得が生じれば、原則として確定申告をしなければなりません。この場合受ける収入が個人の事業なのか給与なのか判断に迷うことがあります。
一つの判断材料として、仕事の依頼者との間で雇用契約があるかどうかを掲げることができます。雇用契約があれば給与所得、なければ事業所得又は雑所得となります。実務的には仕事の依頼者から年末に「給与所得の源泉徴収票」が交付されていれば原則として給与所得となります。必ずしも交付されるとは限りませんが「報酬・料金・契約金及び賞金の支払調書」ならば事業所得又は雑所得となります。
詳しくは国税庁HPを参照下さい。
-事業所得か雑所得か-
事業所得と雑所得の明確な区分はありませんが、サラリーマン等の給与所得者が行う副業は、勤務先での職務の遂行が本業でしょうから、そのほとんどが雑所得なるものと思われます。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。 |
雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。 |
なお、事業所得も雑所得も所得の計算方法はおなじです。
総収入金額 – 必要経費 |
しかし、事業所得には、赤字の場合に給与所得等との損益通算ができる、最大65万円の青色申告特別控除がある、純損失の繰り越しと繰り戻しがあるなど、雑所得にはないメリットがあります。
-確定申告義務-
給与所得が20万円を超える所得がある場合は、確定申告をしなければなりません。具体的にはつぎのとおりです。
給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える場合 |
給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える場合 |
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