Archive for the ‘所得税’ Category
【所得税】医療費控除と領収書
今回の確定申告(平成29年分)から、医療費控除の適用を受ける際の医療費の領収書について、確定申告書に添付又は確定申告書を提出する際の提示が不要となります。
平成 29 年分以後は、医療費の領収書に基づいて必要事項を記載した「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付すればよくなります。ただし、医療費の領収書は確定申告期限から5年間自分で保存しなければなりません。
また、医療保険者(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険組合、健康保険組合など)が発行するもので次の①から⑥の記載がある「医療費通知」を確定申告書に添付する場合は、「医療費控除の明細書」の記載を簡略化することができ、医療費の領収書の保存も不要となります。
① 被保険者等の氏名
② 療養を受けた年月
③ 療養を受けた者
④ 療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
⑤ 被保険者等が支払った医療費の額
⑥ 保険者等の名称
経過措置として、平成 29 年から平成 31 年までについては、従来どおりでも構わないことになっています。この場合は、医療費控除の適用を受ける医療費全てについていずれかを選択しなければならないことになっています。
詳しくは国税庁のHP「医療費控除に関する手続について(Q&A)」を参照下さい。
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【所得税】中古住宅の取得と共に増改築等をした場合のローン控除
一戸建やマンションで新築物件を取得するには資金的に厳しい、あるいは、中古物件だけれどとても気に入ったというケースがあります。
このような場合、住み始める前に程度の差こそあれ、増改築や修繕をすることになります。
住宅ローンで取得した場合は中古物件であっても、借入限度額、控除期間、控除率は新築物件と変わることなく適用を受けることができます。ただし、築25年(耐火建築物)又は築20年(非耐火建築物)であることが必要で、この期間を過ぎた中古住宅については耐震性の証明が必要となります。
では、住宅ローンで中古住宅の取得と同時に増改築や修繕をした場合はどうでしょうか。
この増改築や修繕には、住宅の取得の対価となるものと家屋の室内の模様替えやガス設備等の取り替えやその修繕に要する費用とがあります。
後者の場合は住「住宅の取得に係るローン控除」の対象とはなりません。
しかしながら、住宅ローン控除制度に定めるところの住宅の増改築等が該当すれば、「住宅の増改築等に係るローン控除」の適用を受けることができます。この場合には、建築士事務所に所属する建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人による「増改築等工事証明書」が必要となります。
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【所得税】出国と国外転出
出国とは、読んで字のごとく「国を出る」ことですが、所得税法では少し意味合いが違ってきます。
居住者※の出国とは、「納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう」とされています。したがって、納税管理人の届出をした上で転勤などで長期間海外に出る場合は、所得税法では出国とはいわないことになります。
※居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、非居住者とは、居住者以外の個人をいうとされています。
※※納税管理人とは、確定申告書の提出や税金の納付などを非居住者に代わってする人(法人又は個人)のことです。
一方、国外転出課税制度※※※における国外転出とは、「国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう」とされていて、納税管理人の有無を問わないことになっています。
こちらの方が、一般の感覚に近いものとなっています。
※※※国外転出課税制度とは、平成27年7月1日以後に国外転出をする一定の居住者が1億円以上の有価証券等を所有等している場合には、国外転出の時に、その対象資産について譲渡等があったものとみなして、対象資産の含み益に所得税が課税される制度です。
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【所得税】サラリーマンの海外転勤その4
海外勤務等により非居住者となる人が、海外に出発する日までに一定の所得がある場合や、海外に出発した後国内にある不動産の貸付けなどにより日本国内で所得(国内源泉所得)がある場合は、日本で確定申告をする必要があります。
このような場合には、納税管理人を定める必要がありますが、年の中途で海外勤務となった年の確定申告書の提出期限は、出国の時までに納税管理人の届出書を提出したかどうかによって、次のようになります。
① 海外に出国の日までに納税管理人の届出をした場合
その年1月1日から出国の日までに生じた全ての所得及び出国の日の翌日からその年12月31日までの間に生じた国内源泉所得の合計額について、翌年の2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通して確定申告をする必要があります。
②上記以外の場合
イ所得が出国の日までの場合・・・その年1月1日から出国する日までの間に生じた全ての所得について、その出国の時までに確定申告(準確定申告)をする必要があります。
なお、海外に出発する日までの所得が給与のみで勤務先において年末調整が行われる場合は、確定申告(準確定申告)や納税管理人の届出をする必要はありません。
ロ出国後にも国内源泉所得がある場合
上記イの確定申告書(準確定申告)を提出した場合であっても、その年1月1日から出国する日までの間に生じた全ての所得及び出国した日の翌日からその年12月31日までの間に生じた国内源泉所得について、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をする必要があります。
この場合の納付すべき税額は、すでに納付した上記イの税額を控除した残額となります。また、控除しても控除しきれない場合は還付となります。
なお、海外勤務となった年の翌年以後も、日本国内で国内源泉所得が生じるときは、日本で確定申告が必要になる場合があります。この場合は、翌年の2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通して確定申告をすることになります。
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【所得税】サラリーマンの海外転勤その3
サラリーマンの方でも、親からアパートなどを相続したりしていると、不動産所得が生じるため毎年確定申告していると思いますが、もしこの方が海外転勤するとどうなるでしょうか。
海外勤務等により非居住者となる人は、海外に出発する日までに既に一定の所得があるときは、日本で確定申告をする必要があります。
では、例えば海外転勤で家族も帯同するたことになったため、空き家になった自宅を賃貸に出すような場合はどうでしょうか。
海外に出発した後で国内にある不動産の貸付けによる所得が生じた場合でも、日本国内で生じた所得(国内源泉所得)に対してはやはり日本で確定申告が必要になります。
このように海外勤務等により非居住者となる人で確定申告が必要となる場合には、納税管理人※を定めなければならないことになっています。納税管理人は、「所得税の納税管理人の届出書」を税務署に提出します。
※納税管理人とは、確定申告書の提出や税金の納付などを非居住者に代わってする人(法人又は個人)のことです。
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【所得税】サラリーマンの海外転勤その2
海外転勤して非居住者になると、以後は海外の勤務に対して給料が支払われることになりますから、その転勤先の国でその国の税金が課されます。
ただし、日本で役員のまま海外転勤した場合には注意が必要です。
海外勤務に対する報酬であっても、日本の法人の役員として受ける報酬については国内源泉所得となり、20.42%の税率で源泉徴収されます。この場合、その役員は日本と転勤先の国で二重に課税されますので、転勤先の国で日本で源泉徴収された税額は控除(外国税額控除)されます。
ただし、その役員が、例えば取締役兼ニューヨーク支店長などのように、海外支店・駐在所等で使用人としての立場で勤する場合には、一般の使用人と変わらないこととから日本で源泉徴収の必要はないことになっています。
また、海外の子会社に勤務する場合であっても、次のいずれの要件を満たす場合は同様に海外支店長等とのバランスを考慮して、源泉徴収しなくてもよいことになっています。
・その子会社の設置が現地の特殊事情に基づくものであって、その子会社の実態が内国法人の支店、出張所と異ならないものであること。
・その役員の子会社における勤務が内国法人の命令に基づくものであって、その内国法人の使用人としての勤務であると認められること。
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【所得税】サラリーマンの海外転勤その1
企業の役員や使用人が海外転勤する場合で、海外勤務の予定期間が1年以上ならば、その者は所得税法では非居住者※扱いになります。
※居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、非居住者とは、居住者以外の個人をいうとされています。 |
年末調整は通常その年の12月に行われますが、次の方は出国の時に日本で支払われた給与等について年末調整を行うことにより所得税の精算を行います。
・扶養控除等(異動)申告書を提出していること
・その年に支払われたた給与等の支給額が2,000万円以下であること
-留意点-
・社会保険料や生命保険料などの控除は、出国する日までに支払われたものに限られます。
・扶養控除や配偶者控除などは、出国の時の現況により判断し、該当する場合は1年分全額控除の対象になります。
生計を一にしていたかどうかや親族関係にあったかどうかは、出国の時の現況によります。 |
合計所得金額は出国の時の現況により見積もったその年の1月1日から12月31日までの金額となります。 |
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【相続税・国外転出時課税】相続人に非居住者いたら国外転出(相続時)課税に注意!
相続財産に1億円以上の株式や投資信託などの有価証券等があって、相続人に非居住者がいる場合は要注意です。非居住者である相続人が有価証券等を相続すると国外転出(相続時)課税を受けしまうからです。
この場合、相続税は相続人に課税されますが、非居住者が相続した有価証券等は、被相続人が有価証券等を譲渡したものとみなして所得税が課税されます。被相続人の所得税はその相続人がなくなった日から4か月以内に被相続人の準確定申告をして、所得税の納税義務を負います。
国外転出時課税の場合の有価証券等は、上場有価証券等に限られません。非上場株式も対象となります。
例えば、中小企業の後継者が海外の製造子会社に出向していていた最中、創業者である社長が急死したような場合では、後継者が非上場株式を相続することになると思います。
この場合、後継者を含め相続人は亡くなった創業者の相続税の他に、創業者の国外転出(相続)時課税に係る譲渡所得税も負担しなければなりません。
相続が発生した場合、相続人に非居住者いたら相続税だけでなく、国外転出(相続時)課税も考慮して遺産分割協議を進めることになります。
【所得税・国外転出時課税】多額の有価証券をもっている人が海外勤務になったら!!
多額の株式や投資信託などの有価証券をお持ちの方が海外勤務となったら国外転出時課税で大変だといわれています。
1億円以上の有価証券を持っている人が国外転出(国内に住所等を有しなくなることをいいます。)すると、その時に持っていた有価証券を一旦譲渡してこれを同時に買い戻したものとみなされる「国外転出時課税」の適用を受けることになっています。
つまり、売ってもいないのに国外転出時の譲渡益の20.315%が所得税課税を受けてしまうということです。
この場合の1億円の判定にあたっては、未決済の信用取引等やデリバティブ取引の含み損益も加減することになっています。
しかし、海外勤務のように長期間日本から離れるよう場合には信用取引やデリバティブ取引は手仕舞いをするでしょうから、国外転出時に未決済のままということは通常ないだろうと思われます。
また、上場有価証券ですが、そもそも非居住者になっても日本の証券会社に口座を持ち続けることができるのでしょうか。どうも現状では、非居住者は証券口座をもてないようです。非居住者となった時点で口座を解約するか休眠口座にせざるを得ないようです。
そうすると国外転出時課税の適用を受けるのは、事実上証券会社の休眠口座に保管されている上場株式か非上場株式ということになるのではないしょうか。
この制度で怖いのは、非上場株式をお持ちの方が国外転出する場合だと考えています。例えば、ある程度事業承継が進み後継者に株式が移転しているような場合で、後継者が海外の生産拠点にしばらく赴任するといったケースです。
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【所得税】国外転出時課税制度/非上場株式の時価に注意
国外転出時課税、国外転出(贈与)時課税及び国外転出(相続)時課税のいずれの場合も、有価証券等の時価からその取得価額を控除した含み益に対して所得税等が課税されます。
この場合において有価証券等が上場していて時価が判る場合の含み益は比較的容易に計算することができます。
ところが、非上場株式の場合は時価そのものを自らが求めなくてはなりません。その計算方法の詳細はここでは割愛しますが、基本的には相続税や贈与税の場合の非上場株式の評価方法に準じて計算します。
しかし、その者が25%以上持つ大株主グループに属している場合は、相続税法の評価方法とはつぎの点で異なります。
・評価する会社の規模に関係なく常に「小会社」に該当するものとします。つまり、「純資産価額」か「類似業種比準価額×0.5+純資産価額×0.5」のいずれか低い価額での評価となります。
・土地等の評価額は路線価等の評価額ではなく時価で評価します。
・上場有価証券はその時の時価で評価します。
・純資産価額の計算においては、評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しません。
その結果、非上場株式の評価額が相続(贈与)税評価額の何倍にもなってしまうこともあります。
(例)
会社規模は大会社、類似業種比準価額は500円/株、純資産価額8,000円/株(土地及び上場有価証券は時価、評価差額に対する法人税額等控除なし)
居住者である祖父が、非居住者である孫に6,000株贈与した場合の、孫の贈与税額はつぎのとおりです。
1株あたりの価格=500円
500円/株×6,000株=3,000,000円
贈与税額=(3,000,000円-基礎控除1,100,000円)×贈与税率10%=190,000円
この場合において、祖父は有価証券等を1億円以上有しているなど国外転出(贈与)時課税制度の条件を満たしているとした場合の祖父が負担する所得税等はつぎのとおりです。
1株あたりの価格=500円×0.5+8,000円×0.5=4,250円
1株あたりの含み益=4,250円-500円※=3,750円 ※1株あたり取得価額を500円とします。
譲渡所得金額=3,750円×6,000株=22,500,000円
所得税等=22,500,000円×税率15.315%(復興特別所得税を含む)=3,445,800円(100円未満切り捨て)
国外転出時課税制度における非上場株式の含み益を計算する場合は、相続(贈与)税の評価額を用いるのではなく、所得税における評価額を用いる点に留意する必要があります。
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