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【相続税】相続時精算課税適用者が先に亡くなったら
相続時精算課税制度(👈国税庁HPクリック)を適用した贈与財産は、贈与者である父母又は祖父母の相続において、相続財産に加算して相続税を計算します。この場合のその贈与財産にかかる相続税はその贈与を受けた者に納税の義務があります。
相続時精算課税制度においては、財産を贈与した父母や祖父母を特定贈与者といい、財産の贈与を受けた子や孫を相続時精算課税適用者といいます。
昨今の高齢化に伴い、父母が100歳、子が70歳などという家族構成は決して珍しくなくなりました。このような高齢化の中では、相続時精算課税適用者である子の方が先に亡くなり、特定贈与者である父母が後に残るということも十分ありえます。
「逆縁」は考えたくないことですが、相続時精算課税制度の適用がどうなるかは、念のため一応検討しておいた方がよいと思います。
相続時精算課税適用者が先に亡くなった場合には、その相続人が法定相続分に応じて相続時精算課税にかかる相続税の納税義務を承継します(相続税法第21条の17 )。
(例1)相続時精算課税適用者の妻と子が相続時精算課税の納税義務の承継を承継する場合 | |
甲:特定贈与者 乙:相続時精算課税適用者 丙:乙の配偶者 丁:乙の子供 |
乙の相続時精算課税の納税義務の承継は相続人である丙と丁が承継する 丙:2分の1 丁:2分の1 ※甲の孫丁は甲の相続にあたっては乙の代襲相続人となる |
(例2)相続時精算課税適用者の母が相続時精算課税の納税義務の承継を承継する場合 | |
P:特定贈与者 Q:Pの妻 R:相続時精算課税適用者 |
Rの相続時精算課税の納税義務の承継はR相続人である母Qが承継する |
なお、次の場合の納税義務は消滅することになります。
・相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者のみである場合(👈国税庁HPクリック)(相続税法第21条の17① )。
・相続時精算課税適用者の相続人の相続人(再承継相続人)が特定贈与者より先に死亡した場合(👈国税庁HPクリック)(相続税法基本通達21の17-1)。
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法人の決算申告や個人の確定申告、相続税・贈与税の申告、事業承継や株価対策など、幅広い内容に日常的に対応。学校法人や宗教法人の申告、組織再編、セカンドオピニオンのご相談も承ります。
すべてのお客様に担当者とリーダーの二名体制で対応し、ご相談内容をしっかり共有。急なご連絡にも柔軟にお応えできる体制を整えています。
税金や経営に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
【相続税・贈与税】相続時精算課税のメリット・デメリット
相続時精算課税の制度とは(👈国税庁HPクリック)、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において、2500万円までは無税、2500万円を超えると一律20%の税率で贈与税が課税される制度です。
また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、この制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。
この制度は一度選択すると、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、一般の暦年課税に戻ることはできません。
そのメリット・デメリットはつぎのとおりです。
-メリット-
・この制度の趣旨は、高齢者に偏っているとされる金融資産や不動産などの資産を、相続を待たずに早期に次世代に移転させようというものです。たとえば、「住宅取得資金の贈与の特例」(👈国税庁HPクリック)と併用すれば、今なら最高3700万円まで無税で贈与することができます。
・相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は将来の相続財産に加算しますが、加算する価額は贈与時の価額です。たとえば将来値上がりが見込まれる財産を生前に贈与しておけば値上がりした分だけ相続税の節税になります。
・非上場株式の納税猶予制度(👈国税庁HPクリック)と相続時精算課税制度を併用しておけば、万一納税猶予の要件を満たさなくなっても2割の納税で済ますことができ、リスクヘッジになります。
・高収益の賃貸物件などを次世代に早期に移転させることで、所得分散ができ、所得税や将来の相続税の節税につながります。
-デメリット-
・上述のとおり一度この制度を選択すると一般の暦年贈与に戻れません。一般の暦年贈与では基礎控除110万円がありますが、相続時精算課税制度を選択した後は適用できなくなります。したがって、2500万円の特別控除を使い切ると、贈与が110万円以下であっても20%の贈与税が課税されます。
ただし、、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度なので、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与については、一般の暦年贈与の適用をうけることができます。
・相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は将来の相続財産に加算しますが、加算する価額は贈与時の価額です。贈与した財産が将来値下がりすると相続時精算課税制度を選択しなければよかったということになりかねません。
・小規模宅地等の特例とは(👈国税庁HPクリック)、一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度ですが、この特例は相続又は遺贈により取得した財産が前提となっています。相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産は対象とはなりません。
・相続税には物納という制度がありますが、物納財産から相続時精算課税制度の適用を受けた財産は除外されています(👈国税庁HPクリック)ので、物納に充てることはできません(相続税法41②本文)。
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【相続税・贈与税】相続時精算課税制度
相続や贈与のお話をうかがっていますと、たまに「すでに相続時精算課税を選択して実行しました。」という方がいます。
もちろん、ご本人がよく理解した上で実行されている分には何ら問題はありません。
なかには、業者さんに勧められてとか、2500万円まで贈与税がかからないからといった理由の場合があります。
この相続時精算課税制度で一番こわいのは、一度選択をすると後戻りできないことです。
この制度には、メリット・デメリットがありますが、これについては次回以降にあらためてコメントします。
まずは、制度の概要です。
・60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫への贈与が対象です。
・贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要です。
・この制度を選択した年分以降、暦年課税※への変更は不可です。
・贈与者が亡くなった場合の相続税の計算は、相続時精算課税を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。
※暦年贈与とは、一般贈与のことで、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。
上述のとおり、相続時精算課税は贈与者が生前に贈与した財産は相続時にあるものと仮定して相続税を計算します。
つまり、贈与者に相続が発生した際に相続税がかかる場合で、贈与した財産の価額が贈与時と相続時で変わらないときは、将来の相続税においては損も得もないというわけです。
-贈与時の贈与税額の計算-
(贈与財産の価額の合計額 - ※特別控除額)☓ 一律20%
※限度額は2500万円。ただし、既にこの特別控除額を控除している場合は、その残額が限度額となります。
-相続時の相続税額の計算-
すでに述べたように、相続時精算課税における贈与者が亡くなった時に、それまで相続時精算課税の適用を受けた贈与財産の価額を相続財産に加算して相続税額を計算します。
その計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税額がある場合は、その贈与税額を控除します。控除しきれない場合は還付を受けることができます。
なお、相続財産に加算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。
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【コラム】総則6項
相続税や贈与税の計算にあたって財産を評価する場合は、財産評価基本通達(👈国税庁HPクリック)に従います。
土地等や建物、上場株式や非上場株式、ゴルフ会員権、書画骨とう品等々、すべてです。
相続税や贈与税は、時価を超えて課税すをることは許されません。したがって、例えば土地等の評価に使われる路線価は安全を見て地価公示価格等の80%程度(👈国税庁HPクリック)で設定されています。
また、建物の評価は固定資産税評価額で評価することになっていますが、この評価額だと実態は建築価額の半分以下になるようです。
つまり、被相続人名義で借金をして不動産を購入すれば、不動産の評価額の方が借入金の額よりも小さくなり、他の相続財産を圧縮することができます。
このことを利用して相続税をゼロにまで圧縮した申告事例があります。
課税庁がこの申告を認めなかったことから訴訟に至りました。
B銀行からの各借入れ及び各不動産の購入がなければ、本件相続に係る課税価格は、6億円を超えるものであったにもかかわらず、各借入れ及び各不動産の購入がされたことにより、相続税の申告による課税価格は、2826万1000円にとどまるものとされ、基礎控除(1億円)により、本件相続に係る相続税は課されないこととされたものである。
:
以上にみた事実関係の下では、本件相続における各不動産については、評価通達の定める評価方法を形式的に全ての納税者に係る全ての財産の価額の評価において用いるという形式的な平等を貫くと、各不動産の購入及び各借入れに相当する行為を行わなかった他の納税者との間で、かえって租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかというべきであり、評価通達の定める評価方法以外の評価方法によって評価することが許されるというべきである。
(TAINZ:判決年月日 R01-08-27国税庁訴資 Z888-2271)
実は、財産評価基本通達には、俗に総則6項と呼ばれる規定があり、過度な節税には時価で課税できるようになっています。
第1章総則 : 6 この通達の定めにより難い場合の評価 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。 |
そもそも不動産を保有することは、その管理や価額下落のリスクを負います。
節税のために管理しきれない不動産を所有したり、財産を失っては元も子もありません。
ある程度の節税は必要と考えますが、バランス感覚が大切かと思います。
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【法人税】中古車節税
中古資産を取得した場合には、法定耐用年数か見積もり耐用年数で減価償却費を計算します。
通常、耐用年数の見積もることは困難な場合がほとんどです。
そこで、実務ではつぎの簡便法(👈国税庁HPクリック)による耐用年数の算定方法を利用します。
・取得した中古資産が法定耐用年数の全部を経過している場合
その資産の法定耐用年数の20%に相当する年数※
・取得した中古資産が法定耐用年数の一部を経過している場合
その資産の法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数※
※1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。
その年数が2年に満たない場合には2年とします。
この簡便法による耐用年数を利用して、海外中古不動産による節税スキームが盛んに行われました。
海外不動産は土地よりも建物に価値があるため、耐用年数をある程度経過していても建物の価値が下がりません。
一方、上記簡便法による耐用年数を用いれば多額の償却費を計上することができます。
例えば、木造建物の耐用年数は22年ですが、築年数が22年を超えた建物を取得すれば、22年×20%=4年(1年未満切り捨て)なので、4年で減価償却できてしまいます。
もっとも2020年度の税制改正でこのスキームは蓋をされたので、今は節税メリットはなくなっています。
この外でこの中古資産の耐用年数を利用した節税スキームとしては、海外不動産に比べれば小ぶりになりますが、中古車の節税スキームがあります。
新車時の価額が1千万円を超えるような高級車の中には、走行距離も少なく程度のよいものがたまに見かけます。
例えば、法人が期首に新車を1,300万円で購入すると、初年度の減価償却費はつぎです。
1,300万円×0.333(法定耐用年数:6年定率法)=4,329,000円
一方、同じ車種を4年落ちの中古車で800万円で購入した場合の減価償却費はつぎになります。
800万円×1.000(簡便法による耐用年数:1年定率法)=8,000,000円
これは、(法定耐用年数6年−経過年数4年)+4年×20% =2.8年 → 2年
2年の定率法の償却率は1.000であるためです。
ただし、前提条件が期首に取得となっています。
期の途中で取得した場合は月数按分になりますのでご注意ください。
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【相続税・贈与税】マンション敷地の評価
相続財産の中にマンションがある、あるいはマンションを贈与するといった場合には、相続税や贈与税の計算においてマンションの評価をしなければなりません。
マンションは、建物部分と土地等(借地権を含む)からなっています。
建物の評価は簡単です。
自分で利用している場合は固定資産税評価額がそのまま建物の評価になります。
土地等の評価は少し面倒です。
まず、マンションが所在する地域に路線価※が定められている場合は路線価で評価します。
路線価が定められていない場合は、土地等の固定資産税評価額に地域ごとに定められている倍率を乗じて計算します。
※令和2年分の路線価図・評価倍率表(👈国税庁HPクリック)
なお、路線価で評価する場合は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率(👈国税庁HPクリック)で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。
この場合の乗じる面積ですが、マンションの場合は敷地全体のうちの評価するマンションの持分割合になります。
平成29年までのマンション敷地は「広大地の評価」ではありませんでした。
ところが、「広大地の評価」が改められ「地積規模の大きな宅地」(👈国税庁HPクリック)となったことにより、敷地規模の大きいマンションにも要件を満たせば評価減が認められることになりました。
「地積規模の大きな宅地」では、マンションのような敷地の持ち分は小さくても、敷地全体で判断するためです。
地積規模の大きな宅地の評価-共有地の場合の地積規模の判定(👈国税庁HPクリック)
【照会要旨】
複数の者に共有されている宅地の場合、地積規模の要件を満たすかどうかは、共有者の持分に応じてあん分した後の地積により判定するのでしょうか。
【回答要旨】
複数の者に共有されている宅地については、共有者の持分に応じてあん分する前の共有地全体の地積により地積規模を判定します。
評価対象となるマンションの
・敷地の面積が、三大都市圏では500㎡以上、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上であること
・敷地を評価する路線価の地区が普通商業・併用住宅地区又は普通住宅地区であること
・敷地の容積率が400%(東京都の特別区においては300%)未満であること
他にも要件はありますが、適用を受けることができるとなると少なくとも2割は評価額を減額することができます。
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【相続税】地積規模の大きな宅地の評価
相続税や贈与税で土地の評価が必要になる場合があります。
比較的大きな宅地を評価する場合は、平成29年までは「広大地の評価」という方法がありました。
通達改正の趣旨
この従来の広大地の評価に係る広大地補正率は、個別の土地の形状等とは関係なく面積に応じて比例的に減額するものであるため、社会経済情勢の変化に伴い、広大地の形状によっては、それを加味して決まる取引価額と相続税評価額が乖離する場合が生じていた。
また、従来の広大地の評価の適用要件は、・・・「定性的(相対的)」なものであったことから、広大地に該当するか否かの判断に苦慮するなどの問題が生じていた。
広大地評価の適用の有無の判断や減額の程度が、評価する税理士によってバラツキがありました。ここに目をつけて、税理士が不動産鑑定士と組んで「見直し税理士」なるものが出現し、多額の成功報酬を請求するようなことがあったそうです。
この広大地の評価方法に代わって、平成30年1月1日以降の相続・贈与税からは、「地積規模の大きな宅地の評価」という方法になりました。
・地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500平方メートル以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000平方メートル以上の地積の宅地をいいます。
・路線価地域に所在するものについては、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在するものとなります。
・指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地が対象から除かれます。
・地積規模の大きな宅地の評価を算式で示せば次です。
評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率などの各種画地補正率 × 規模格差補正率 × 地積(㎡)
規模格差補正率 ={(Ⓐ × Ⓑ + Ⓒ)/(地積規模の大きな宅地の地積(Ⓐ))} × 0.8 ※Ⓑ Ⓒは、三大都市圏、三大都市圏以外の地域ごとに定められています。 |
上記の規模格差補正率は「1」を超えることはないため、地積規模の大きな宅地に該当すれば、2割以上の減額になります。
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【所得税】空き家特例の留意点
空き家特例は、相続を契機として空き家が発生するのを税制面から抑制しようという趣旨の制度です。
相続開始から3年目の12月31日までの間に、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたもの)とその敷地、又は家屋を取壊してその敷地を譲渡した場合には、居住用財産の譲渡の場合と同様に譲渡所得から3,000万円の特別控除が認められます。
この場合の被相続人が居住の用に供していた家屋について、つぎのように規定されています。
(所得税施行令23条第7項)
一 特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなつた時から・・・相続の開始の直前まで引き続き当該被相続人居住用家屋が当該被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと。
二 特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなつた時から・・・相続の開始の直前まで当該被相続人居住用家屋が事業の用、貸付けの用又は当該被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。
三 省略
最近は相続税のご相談と共に、この空き家特例を使いたいという税務相談が増えてきています。
ただ、上記赤字の「当該被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。」という要件があることから、残念ながらこの制度が使えないケースがあります。
事例として多いのは、ご主人がこの特例の適用要件を満たす老人ホームに入居しましたが、奥様はしばらくはそのご自宅で生活を続けていました。その後、奥様自身も介護が必要になり老人ホームに入居したため、ご自宅が空き家になった場合です。
この状態でご主人に相続が発生しますと、ご主人が老人ホームに入居して以降も奥様が住んでいたことから、「当該被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。」の要件を満たさないため空き家特例の適用がないことになります。
なお、ご主人が老人ホームに入居して以降も奥様がずっとご自宅に住んでいて、奥様がご自宅を相続した場合には、通常の居住用財産の3000万円控除の特例を使うことができます。
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【所得税】空き家特例とは
今、日本全国で放置された空き家が問題となっています。都内の住宅地区でも、ハクビシンやアライグマが出没しています。少し古いデータですが、2018年の空き家率は日本全体で13.6%だそうです。
いろいろな原因があるようです。
住宅を買うなら新築とい思いが強く、特に中古の戸建住宅のニーズ低いようです。
税金面でも、住宅の敷地については固定資産税が減額(敷地200㎡まで1/6)になります。
また、いざ取り壊すとなると結構な金額の解体費用がかかります。
こうしたなか、2015年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)が施行されています。
税制面でも空き家対策として、2014年に空き家特例が創設されています。この制度は、相続を原因として生じた空き家及びその敷地について、利用可能な空き家は取り壊さずにそのままで、利用不可な空き家は取り壊して更地にして売却しやすくしようというものです。
具体的には、相続開始から3年目の12月31日までの間に、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたもの)とその敷地、又は家屋を取壊してその敷地を譲渡した場合には、これらの譲渡所得から3,000万円の特別控除を認めようというものです。
2019年4月1日以後の譲渡については、相続時には老人ホームに入居していて被相続人が自宅に住んでいなくても、この制度を適用することができるようになりました。
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【所得税法・相続税法】生計を一とは
税金の世界では、「生計を一にする」という用語が出てきます。
例えば、青色事業専従者給与は生計を一にする配偶者その他の親族に対してでなければなりません。所得控除である配偶者控除や扶養控除は納税者と生計を一にしていることが要件です。相続税の小規模居住用他宅地等の特例が適用できる場合の一つに被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等があります。
生計を一という解釈は、各種通達で課税庁の解釈※が明らかにされています。
これらを総合すると、同居していれば原則として生計を一していると判断される。ただし、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合は別生計であるされます。
この「明らかに互いに独立した生活」について興味ある最高裁判決があります。
妻と納税者とは、納税者の肩書住所地の自宅で同居し、食事も共にしており、食費、長男及び二男の学費並びに旅行の費用等の家計は、その都度話し合って、おおよそ妻が4、納税者が6の割合で負担している事実が認められるため、妻は、納税者と生計を一にする配偶者であり、所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)所定の「居住者と生計を一にする配偶者」に該当するとされた事例(高裁 平成16年6月9日 TAINZ Z254-9665 最高裁も高裁判決を支持)
つまり、家計費を夫婦が取り決めをして一定の割合で負担しているような場合であっても別生計とはならない。むしろ、家計費を夫婦が負担しあっていることは逆に生計を一にしていることの裏付けであるとしています。
この文脈で考えれば、同居しているが別生計であると主張するのは、税務の世界では意外とハードルが高いように思います。
※以下は、生計一の通達で備忘的に載せておきます。
国税通則法基本通達46条間系
9(生計を一にする)この条第2項第2号の「生計を一にする」とは、納税者と有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいい、納税者がその親族と起居を共にしていない場合においても、常に生活費、学資金、療養費等を支出して扶養している場合が含まれる。
なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
所得税基本通達2-47( 生計を一にするの意義)
法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
法人税基本通達(1-3-4 生計を一にすること)
令第4条第1項第5号《同族関係者の範囲》に規定する「生計を一にする」こととは、有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいうのであるから、必ずしも同居していることを必要としない。
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