日本に住所がある方が、例えば1,000円で買った株式が売却時点では3,000円だったとします。儲けは2,000円(3,000円-1,000円)となります。売るときまでずっと日本に住んでいれば、この2,000円に対して日本の所得税などの税金が課されます。
仮に、この方が日本で株式は買ったもののこの株式の株価が2,000円となった時点で、海外に居住することになったとします。しかし、売る時点では海外に居住していますので、日本での値上がり益1,000円(2,000円-1,000円)と海外での値上がり益1,000円(3,000円-2,000円)の合計2,000円に対して、現地の法律に基づき海外で課税されることになります。そうすると、日本に居住していた期間の値上がり益1,000円に対して、わが国は税金を取り損ねてしまします。
また、シンガポールや香港などのように、国によってはキャピタルゲインに対して課税されない国もあります。そうすると、儲け2,000円に対して合法的に租税回避が出来てしまうことになります。
このようなBEPS(税源浸食と利益移転)に対応するために、わが国においても平成27年度の税制改正において国外転出時課税制度なるものが創設されました。この制度創設の趣旨の中で財務省は「主要国の多くが国外転出時点の未実現の所得(含み益)を国外転出前の居住地国で課税するようになってきています。」(平成27年度税制改正の解説)と説明しています。
しかしながら、売ってもいない、つまり実現もしていない所得に対して税金を課税してしまう、ある意味怖い制度でもあります。