不動産所得の損失は、原則として他の黒字の所得と損益通算できます。(所法69①)
ただし、不動産所得の場合の損失については次の点について留意が必要です。
■生活に通常必要でない資産から生じる損失は原則としてなかったものとされます。(所法69②、法令200)
したがって、別荘等のように主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係るものの損失は損益通算の対象とはなりません。
■不動産所得の損失の額のうち、必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額は損益通算の対象とはなりません。(措法41の4)
土地の取得に要した借入金の額の計算 | 借入金額 ・・・5,000万円 建物の取得価額 ・・・ 3,000万円 5,000万円-3,000万円=2,000万円 ※まず、建物の取得の対価に充てられ、残額が土地の取得の対価に充てられたものとして計算します。 |
土地の取得に要した借入金の利子の額の計算 | 借入金の利子を100万円だとします。 100万円 × 2000万円 /5,000万円= 40万円 |
損益通算の対象とならない不動産所得の損失 | 不動産所得の損失が100万円だとします。 100万円 > 40万円 ∴40万円が損益通算の対象となりません。 |
不動産所得の損失が20万円だとします。 20万円 < 40万円 ∴20万円が損益通算の対象となりません。 |
これは、平成4年に導入された制度で、銀行借入れで不動産を取得し、不動産所得の赤字と給与所得などの他の所得と損益通算するという節税策を規制したもので、不動産バブルの頃の名残です。
■その他にあまり事例としては多くないと思いますが、下記のものがありますが、いずれも過度な節税策を着せしたものです。(措法41の4の2、国税庁HP👈クリック参照)
・不動産所得を生ずべき事業を行う民法組合等の特定組合員(個人組合員のうち、組合事業に係る重要な業務の執行の決定に関与し、かつ、契約を締結するための交渉等を自ら執行する組合員以外のもの)である個人が、組合事業から生じた不動産所得の損失については、損益通算の対象にもなりません。(財務省HP:平成17年度 税制改正の解説)
・特定受益者に該当する個人が、信託から生ずる不動産所得を有する場合において不動産所得の損失の金額があるときは、損益通算の対象とはなりません。(財務省HP:平成19年度 税制改正の解)
なお、国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例(第41条の4の3 )については、2021年(令和3年分)の国外不動産所得の損失からの適用となります。
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