税理士法では、申告書と共に次の2つの書類を提出している場合は、税務調査の通知前に、その税理士に、添付書面に記載された事項に関する意見を述べる機会を与えなければならないとされています。
■税理士に申告を依頼した場合に申告書と一緒に提出する「税務代理権限証書」
■申告書の作成に関し、計算し・整理し・相談に応じた事項を記載した「一定の書面」
これを総称して書面添付制度と言います。
平成13年の税理士法改正で、事前通知前の意見聴取制度が創設されましたが、次のとおりあまり普及していません。
(単位:%)
年 度 | 平成26年度 | 27年度 | 28年度 | 29年度 | 30年度 |
所得税 | 1.1 | 1.2 | 1.3 | 1.3 | 1.4 |
相続税 | 11.8 | 13.6 | 15.6 | 18.2 | 20.1 |
法人税 | 8.4 | 8.6 | 8.8 | 9.1 | 9.5 |
-財務省HPより-
所得税の書面添付の割合が低いのは、確定申告期限(2月16日~3月15日)が区切られているため税理士もそこまで手が回らないといった事情があるのだと思います。
一方、相続税では5件に1件は書面添付がなされていますが、これはお亡くなりになられてから申告まで10ヶ月あり、財産調査など余裕をもって取り組めるからだと思います。
法人税は申告の件数も多いですが、申告業務だけの場合から、毎月訪問して会社の資料を詳しく見ている場合まで、法人の規模や経理体制によって関与の仕方にバラツキがあることがこの数字に現れていると思います。
納税者にとって、この書面添付制度のメリットは次の2つだと思います。
■調査省略について
記載内容が良好で、税理士に対しての意見聴取の結果、疑義が解消し、結果として調査の必要性がないと認められた場合には、納税者の事務所等に臨場して行う帳簿書類の調査が省略されることがあります。
■過少申告加算税について
税務署の調査を受けた後の修正申告では、過少申告加算税(追徴税額の10%又は50万円のいずれか多い方)がかかります。
一方、自主的に修正申告をした場合は、この過少申告加算税が課されません。
この書面添付制度に基づく税理士からの意見聴取後、自主的に修正申告書が提出された場合、原則加算税は課さない取扱になっています。
国税当局では、意見聴取の機会の積極的な活用に努めることとされており、個別・具体的な非違事項の指摘に至る場合もあるものと考えられます。 なお、意見聴取が行われ、その後に修正申告書を提出したとしても、原則として、加算税は賦課されませんが、当該修正申告書を意見聴取の際の個別具体的な非違事項の指摘に基づいて提出するなど、「更正の予知」があったと認められる場合には、加算税が賦課されることになります。(国税庁HP 👈クリック) |
書面添付制度にはこのようなメリットがあるのに何故普及が進まないのでしょうか。
おそらく税理士が申告書の作成に関し、計算・整理・相談に応じた事項を記載した書面を作成するためには、納税者と常日頃から相当突っ込んだ情報共有をしている必要があるからだと思います。
次は、日本税理士連合会が公表している「良好ではない添付書面の記載」です。
①空欄が多いもの
②「特になし」や「特段なし」などの記載が多いもの
③毎期ほとんど定型的な文章が記載されているもの
④どの関与先についても記載内容がほぼ同一のようなもの
⑤その関与先固有の内容が記載されていないもの
⑥業種、業態、経営状況の中味を評価、分析していないもの
⑦決算の修正事項に関し全く記載がないもの
⑧記載している項目について明らかに不備があるもの
⑨記載内容が具体的でないもの
∞∞ 吉岡 ∞∞