所得税法の特徴的な規定として、個人が法人に資産を贈与又は著しく低い価額(時価の2分の1未満)で譲渡した場合には、時価で譲渡したものとみなすという規定があります。(所得税法59①)
この規定の適用にあたっては、法人に贈与又は著しく低い価額で譲渡する資産の時価が問題になるわけですが、これが非上場株式であった場合、時価をどのようにして計算するのかという問題があります。
この場合の時価の算定については、相続税や贈与税で利用する財産評価基本通達178~(国税庁HP👈クリック)を準用する取り扱いになっています。(所基通59-6)
この度、この所得税基本通達59-6の適用にあたって最高裁判決が出て国の主張が認められたのですが、二人の裁判官から「59-6を分かりやすいものとするよう」とする指摘がありました。
この指摘を受けて国税庁は所得税基本通達59-6の改正を行ないました。(実質的な内容は変わっていません。)
通達改正にあたってはパブリックコメントを募集するのですが、専門家から意見に対しての国税庁の回答の中で、専門家の中で混乱のあった下記の2点について取り扱いが明らかになりました。
・御意見については、本件通達の(2)の文理上明らかであるため、通達の見直しの必要はないものと考えます。
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本件通達の(2)は、「財産評価基本通達179 の例により算定する場合において」としていることから、評基通 179 の適用に当たっての取扱いになります。したがって類似業種比準価額の計算上、乗じる斟酌割合(評基通 180)については、評価会社が大会社の場合は 0.7、中会社の場合は 0.6、小会社の場合は 0.5 になります。
・譲渡又は贈与に係る株式の発行会社の株式を純資産価額方式で評価する場合において、当該発行会社が子会社等の株式を有しており、当該発行会社が当該子会社等の「中心的な同族株主」に該当するときには、本件通達の(2)の取扱いに準じて、当該子会社等が評基通 178 に定める「小会社」に該当するものとしてその例により当該子会社等の株式を評価することを明らかにしていただきたい。
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御意見として承ります。
なお、本件通達の趣旨に鑑みると、御意見のとおり評価することになると考えます。
上記の内容は、ややマニアックな部分なので詳細については割愛しますが、一点目は、株価を評価する場合は小会社として評価するのだけれども類似業種比準価額の斟酌割合は会社の規模に応じて乗じる、二点目は評価する会社の子会社も小会社として評価するとうもので、実務家の中では混乱していた部分なのです。
国税庁のコメントとして「・・・文理上明らかであるため、明確化の必要はないものと考えます。」と言われてしまうと、税理士として立つ瀬がありません。
なお、これらについては「今後国税庁ホームページに上記取扱いの解説を掲載する予定です。」とコメントされています。
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