取引相場のない株式は、相続や贈与の場合、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主等か、それ以外の株主かの区分により、それぞれ原則的評価方式又は特例的な評価方式の配当還元方式により評価します。
会社の経営支配力を持っていない株主、つまり少数株主の場合だと配当還元方式により下記の算式で計算します。
例えば、資本金等の額が1,000万円、発行済株式数が200株(1株あたりの資本金等の額50,000円)、配当金額が100万円だとします。
・上記算式の適用にあたっては、まず1株あたりの資本金等の額を50円とした場合の発行済株式数を求めます。
200株 ☓ (50,000円/50円) = 200,000株
・つぎに、200,000株の場合の1株あたりの配当金額を求めます。
1,000,000円 / 200,000株 = 5円/株
これを上記算式に当てはめます。
5円※/10% ☓ 50,000円/50円 = 50,000円
※2円50銭未満であったり無配の場合は2円50銭とします。
今、仮にA社の経営支配力を持っている同族株主等である創業社長から後継者の長男に10株、同族株主等でない古参の社員に10株、A社株式を贈与したとします。例えばA社株式の1株あたりの評価額は下記とします。
原則的評価額 : 500,000円
配当還元価額 : 50,000円
配当還元価額 : 50,000円
長男の贈与税額:(500,000円☓10株 - 110万円)☓15% - 10万円 = 48.5万円 (親子なので特例贈与、税額の計算については国税庁HPを参照ください。)
社員の贈与税額: 50,000☓10株 < 110万円(基礎控除額) ∴0
同じ同族株式でも贈与で受け取る相手が経営支配力を持っている同族株主等か、それ以外の株主かで評価額が変わってきます。
創業者の相続対策の一環で、同族株式を従業員などに贈与してしまいますと、将来困ったことが生じます。
上記の例では古参の社員が退職するので後継者である長男がA社株を買い取るといった場合です。
この場合、長男は経営支配力を持っている同族株主等なので、50万円ではなく500万円で買い取らなければ、長男はその差額450万円について贈与税の問題が出てまいります。
∞∞ 吉岡 ∞∞