税金の世界では、「生計を一にする」という用語が出てきます。
例えば、青色事業専従者給与は生計を一にする配偶者その他の親族に対してでなければなりません。所得控除である配偶者控除や扶養控除は納税者と生計を一にしていることが要件です。相続税の小規模居住用他宅地等の特例が適用できる場合の一つに被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等があります。
生計を一という解釈は、各種通達で課税庁の解釈※が明らかにされています。
これらを総合すると、同居していれば原則として生計を一していると判断される。ただし、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合は別生計であるされます。
この「明らかに互いに独立した生活」について興味ある最高裁判決があります。
妻と納税者とは、納税者の肩書住所地の自宅で同居し、食事も共にしており、食費、長男及び二男の学費並びに旅行の費用等の家計は、その都度話し合って、おおよそ妻が4、納税者が6の割合で負担している事実が認められるため、妻は、納税者と生計を一にする配偶者であり、所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)所定の「居住者と生計を一にする配偶者」に該当するとされた事例(高裁 平成16年6月9日 TAINZ Z254-9665 最高裁も高裁判決を支持)
つまり、家計費を夫婦が取り決めをして一定の割合で負担しているような場合であっても別生計とはならない。むしろ、家計費を夫婦が負担しあっていることは逆に生計を一にしていることの裏付けであるとしています。
この文脈で考えれば、同居しているが別生計であると主張するのは、税務の世界では意外とハードルが高いように思います。
※以下は、生計一の通達で備忘的に載せておきます。
国税通則法基本通達46条間系
9(生計を一にする)この条第2項第2号の「生計を一にする」とは、納税者と有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいい、納税者がその親族と起居を共にしていない場合においても、常に生活費、学資金、療養費等を支出して扶養している場合が含まれる。
なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
所得税基本通達2-47( 生計を一にするの意義)
法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
法人税基本通達(1-3-4 生計を一にすること)
令第4条第1項第5号《同族関係者の範囲》に規定する「生計を一にする」こととは、有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいうのであるから、必ずしも同居していることを必要としない。
∞∞ 吉岡 ∞∞