税金を扱う者にとっては当然と思っていても、普通の人から見たら「へぇ~!」とうことがあります。
~以下の事例はfictionです~
Aという会社があります。株主は、創業者甲とその長男乙です。
A社は、例えば新型コロナウイルスの影響で今期は大幅な赤字の見込みです。
甲は、自身の相続対策と会社の財務基盤強化を兼ねて、個人で保有しているオフィスビルを会社に贈与しました。
今期は大赤字なので、会社はオフィスビルのもらって受贈益が計上されても赤字と相殺され、大した税額にはなりません。
この場合、実はビルをもらったA 社の法人税だけでなく、贈与した甲の所得税、甲から長男乙への贈与税について、事前にタックスプランニングしておく必要があります。
-A社-
A社はオフィスビルをただでもらったわけですから、その時価相当額は特別利益になります。その特別利益と今期の赤字は相殺され、その差額が法人税の課税対象となります。
もっとも法人税は課税されますが、オフィスビルの賃料は今後の会社の安定収入になりますし、財務基盤は強化されます。
-創業者甲-
所得税には「みなし譲渡(所得税法59条)」という規定があります。これは、法人に対して贈与したり、時価の2分の1を未満の価額で譲渡した場合、その資産の時価を収入金額として譲渡所得課税するというものです。
もっとも一時的にはオフィスビルの贈与によって所得税が発生しますが、翌年以降の甲の所得税の節税にはなっています。
なお、この規定の適用を避けるためには、時価の2分の1以上で譲渡する必要がありますが、その場合も時価と譲渡価額に差額がある場合は、A社に対して受贈益が生じますので、注意が必要です。
-長男乙-
乙は関係ないだろうと思わるかもしれませんが、A社の株主は甲と乙です。A社に資産が贈与されたということは、A社の純資産が増加したということですから、A社の株式の価値が増加したということになります。
相続税法※9条(みなし贈与)という規定があり、このような事例の場合、A社株式の価値の増加分だけ甲から乙へ贈与したとみなされ、贈与税が課税されてしまいます。
したがって、会社に資産を贈与する場合は、会社の贈与前と贈与後の株式を評価して、贈与税の課税があるのかないのか、贈与税課税があるとしても創業者Aの将来の相続税の節税効果との比較などのタックスプランニングしておく必要があります。
※相続税法の中に、贈与税も定められています。
∞∞ 吉岡 ∞∞