非上場株式(取引相場のない株式)の多くは、相続や贈与を原因として移転します。
まれにですが売買されるケースもあります。そのパターンは次のとおりです。
①個人 ⇒ 個人
②個人 ⇒ 法人
③法人 ⇒ 個人
④法人 ⇒ 法人
今回の話は、上記②のパターンについてです。
個人から法人へ資産の移転があった場合ですが、その移転が贈与であったり、時価よりも著しく低い価額(時価の2分の1未満)で譲渡したりすると、時価で譲渡したものとみなされます(所得税法59条)。
その趣旨は、「・・・譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税する趣旨のものである(昭和43年10月31日第一小法廷判決ほか)。」とされています。
例えば、A社のオーナー創業者甲は、今後の取引の安定を図って大口取引先であるB社にA社株式を少し持ってもらうことにしたとします。
さて、甲はA社株式をB社に一株あたりいくらで買ってもらえばよいでしょうか。
この場合は甲とB社の第三者間の取引ですから、双方合意した価額で売買すればよいと思います。一般的には、配当還元価額や旧額面価額でしょうか。
問題は、甲の譲渡所得の計算です。
上記のとおり所得税法では、法人に著しく低い価額で譲渡した場合には時価で譲渡したものとみなして譲渡所得を計算することになっています。
所得税法における非上場株式の算定は、多くの場合は相続税や贈与税の場合に用いる財産評価基本通達を準用します(所得税基本通達59-6)。
その財産評価基本通達では、会社の支配株主である場合は「原則的評価方法」、少数株主である場合は「配当還元方式」で計算します。
そうすると、売り主である甲はA社の支配株主であり、売買後は買い主であるB社はA社の少数株主になります。
A社株式の売買価額を、原則的評価方式で評価するのか配当還元方式で評価するのかが問題になります。
この場合は、売り主である甲の立場で株式を評価すべきと課税庁はしており、その取扱について上記通達で明らかにしています。
現在、この通達をさらに明確化するための改正のパブリックコメントが出ています。
∞∞ 吉岡 ∞∞

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