遺言書の作成と遺言執行

遺言書の作成には三種類あります

自筆証書遺言

民法及び家事事件手続法が改正されました。

改正前までは、遺言者は、遺言書の全文、日付、氏名を自書して、これに印を押さなければならないものとなっていました。今回の改正により、自筆証書に相続財産の財産目録を添付するときは、その目録についてはパソコンで作成することも可能となりました。

この改正は、平成31年1月13日に施行され、同日よりも前にの自筆証書遺言には適用されないの注意が必要です。

自筆証書遺言は、費用がかからず、手軽に作成することができます。
その後事情が変わっても比較的容易に書き直すこともできますし、遺言書の存在を秘密にしておくこともできるというメリットがあります。

しかし、一方では自筆証書遺言は、偽造、変造、破棄などの危険があるというデメリットがあります。また、遺言書の存在を内緒にしておくと、せっかく書いた遺言書が発見されないといったことも起こり得ます。なお、自筆証書遺言は裁判所の検認手続きが必要となります。

なお、令和2年7月から法務局が自筆証書遺言を保管してくれる「遺言書保管制度」が始まっています。管轄の法務局で保管の申請が必要で、保管の手数料は3,900円です。

この制度のメリットは、家庭裁判所での検認が不要、紛失や隠匿、破棄などのリスクがない、死後に相続人などに通知してもらえるが挙げられます。デメリットは、法務局は遺言書の内容に関する質問や相談には一切応じてくれない、本人が自筆できないと作成できない、本人が法務局に行かねばならないといった点が挙げられます。

公正証書遺言

公正証書遺言は、2人以上の証人の立会いのもとに、公証人に作ってもらう遺言です。

公証人が作成するため方式が不備で無効になるといった恐れはなく、原本が公証人役場に保管されますので、偽造、変造、破棄のおそれがないというメリットがあります。

しかし、証人を2人用意しなければならない、公証人との事前打ち合わせが必要などの煩わしさや、遺言の額に応じた公証人手数料など諸費用がかかるというデメリットがあります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言書の内容を秘密にしておきたいときにときにする遺言です。

遺言者が自ら作成した遺言書に封をして公証人役場に持参し、公証人に遺言者の遺言であることを公正証書の手続で公証してもらいます。

公証人役場には封紙の控えが保管されるだけで、遺言書の保管は遺言者にまかされ、公証人は保管しません。
公証人の手数料は一律11,000円です。

法定相続分や遺留分は民法で定められています

法定相続分

民法では、相続人が受け継ぐ財産の割合を定めています。

  • 配偶者と子供が相続人である場合
    配偶者1/2、子供(2人以上のときは全員で)1/2
  • 配偶者と直系尊属が相続人である場合
    配偶者2/3、直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
    配偶者3/4、兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
国税庁HPより

遺産をどのように分割するかは、遺言書で指定されていればそれに従いますが、遺言書がない場合は、法定相続分や各相続人の諸事情をもとに相続人間で話し合いをして、相続人全員の同意を得て決めていきます。
これが遺産分割協議です。

したがって、法定相続分どおり分割しなければならないというわけではありません。

遺留分

遺言書で、例えば相続人が子供二人で長男に財産の全てを相続させるとした場合でも、遺言が直ちに無効になるわけではありません。
この場合、もう一人の子から遺留分を侵害しているとして、遺留分減殺請求が行使されると遺留分の限度で遺言の効力がなくなります。

遺言を作成するにあたって、無用な争いを残したくない場合は、遺留分に配慮した遺言書の作成が望まれます。

なお、この遺留分は被相続人の死亡前でも、家庭裁判所の許可を受けたときに限り放棄することが可能です。
遺留分の割合はつぎのとおりです。

  • 直系尊属のみが相続人である場合
    相続財産の1/3
    (例)父母が相続人で、被相続人の遺産が6,000万円とした場合、遺産の1/3である2,000万円が遺留分となり、父・母それぞれが1,000万円(6,000万円×1/3×1/2)ずつとなります。
  • その他の場合
    相続財産の1/2
    (例)配偶者と子供二人が相続人で、被相続人の遺産が6,000万円とした場合、遺産の1/2の3,000万円が遺留分となり、配偶者はその1/2の1,500万円(6,000万円×1/2×1/2)、子供2人はそれぞれ750万円(6,000万円×1/2×1/2×1/2)ずつとなります。

遺言書には遺言執行者を指定しておきます

遺言は、その効力が生じるとその内容の実現をするための手続きが必要となります。
この手続きをする者を遺言執行者といいます。

遺言執行者は、遺言書に書かれている内容にしたがって、相続財産を管理し、不動産、有価証券、預貯金等の名義変更などの各種の手続を、単独であるいは相続人と共同して行います。

遺言によって遺言執行者を指定していないときや遺言執行者が亡くなったときは、家庭裁判所に遺言執行者を選任の申立をすることになります。

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