何もしないのも立派な不動産の有効活用です
親から受け継いだ土地が駐車場のままで十分に利用されていない、長年経営していた町工場を廃業したが敷地が遊休地となっているなど、土地が低・未利用のままになっているケースがあります。
例えば、借金をしてマンションを建てれば相続税対策にはなります。
しかし、多額の借金を背負いこれから長期にわたって返済していかなければなりません。
新築マンションも10年も経てば外見も内装はくたびれ入居率も落ちてきます。
家賃の滞納、大規模修繕など、マンションを持ったため煩わしいことも多々出てきます。
それくらいなら、いっそ何もしない、せいぜい駐車場ぐらいにしておいて、将来の相続税の納税用(売却、物納)にとっておくという選択肢もあります。
これも立派な不動産の有効活用です。
不動産管理会社には三つの類型がります
まだまだ自分には気力がある、収益物件(アパートやマンション、オフィスビルなど)を持つことのリスクや煩わしさがたとえあっても、積極的な不動産の有効活用をおこないたいという方も、もちろんいらっしゃいます
このような場合、不動産の管理をしながら、所得税や相続税の節税の効果がある不動産管理会社を設立するケースが見受けられます。
この不動産管理会社には、つぎの三つの類型があります。
管理料受けとり型
これは、個人の敷地の上に個人でマンションなどの収益物件を建て、不動産管理会社はその管理料を受け取る方式です。
管理業務としてはつぎのようなものが考えられます。
- 入居者の募集や契約書等の作成
- 家賃等の集金
- 賃料改定等の条件変更、更新、解約等の手続き
- 入居者の苦情処理
- 共有部分の清掃、消耗品等の交換
- 退去時の敷金等の精算、現状復帰のための業者の手配、など
メリットとして、個人が不動産管理会社に管理料を支払うことにより、所得の分散させることができ所得税の節税が計れます。
また、ご家族に管理会社の役員や従業員になってもらい不動産管理業務を担ってもらえば、ご家族に給与を支払うことができます。
デメリットとして、管理料の設定は外部に管理委託をするのと同等とせざるを得ません。
これより高額になると否認の対象となりますので注意が必要です。
また、管理業務をさらに外部に丸投げしているような場合も問題になると思われます。
サブリース型
これは、個人の敷地の上に個人でマンションなどの収益物件を建て、不動産管理会社はこれを一括借り上げし、物件所有者である個人に家賃を支払う方式です。
管理料受けとり型との違いは、物件の空室リスクを不動産管理会社が負う点にあります。
空室リスクを負う分、管理料受けとり方式より若干高めに設定できるといえますが、メリット・デメリットは基本的には管理料受取型と同じです。
建物所有型
これは、個人の敷地の上に不動産管理会社が資金を調達して会社が収益物件を建て、不動産管理をする方式です。
よく見かけるのは、ロードサイド型店舗での建築協力金方式とよばれるものです。
これは店舗の借り主が建築協力金の名目で一定額貸し出し、オーナー側(この場合は不動産管理会社)が建物を建築するというものです。
最近では、郊外の介護施設などでもよく見受けられます。
ここで注意をしなければならないのが、不動産管理会社が中途半端な地代を個人地主に支払うと権利金認定があり課税の問題が生じます。
このような場合の地代の設定は税理士などの専門家に相談されることをお勧めします。
不動産を取得すれば相続税対策になります
相続税対策
土地の相続税評価で用いる路線価は、時価(公示価額)の80%だといわれています。
また、建物の相続税評価は固定資産税評価をベースにおこないますが、固定資産税評価額は建築価額の40%~60%だといわれています。
賃貸物件の場合、借家権相当部分さらに土地や建物の減額があります。
不動産を手持ちの資金や借入金で取得すれば、その取得価額と相続税評価額の差額分だけ、相続税の節税効果があります。
ただし、何ごともバランスが大切で、相続税対策を打った後の土地の下落した、手持ちの資金をつぎ込んだためその後の生活が窮屈になった、あるいは相続税の納税資金が心配になった、などのことのないようにしなければなりません。
自社株式の引き下げ効果
自社株式は原則として、類似業種比準方式、純資産方式またはその併用方式で評価します。
法人が不動産を取得すれば上記と同様な効果で純資産方式による評価額の引き下げができます。
ただし、法人が不動産を取得した場合には3年間はその効果がありませんので注意が必要です。
相続税の納税対策
生前に相続財産の中に収益物件を組み込んでおけば、相続税の納税資金の不足が見込まれるような場合、納税方法として延納も選択肢に入れることができます。