Archive for the ‘相続税’ Category

【相続税】アパートを建てれば相続税の節税になる?

2017-04-07

-不動産の相続税評価方法-

評価方法 価格水準
建物 固定資産税評価額 建築家価額の50%~70%
土地 路線価 公示地価の80%


-貸家(入居率100%)の場合-

 評価方法
建物(貸家) 固定資産税評価額×(1-0.3:借家権割合)
土地(貸家建付地) 路線価×(1-借地権割合※×0.3:借家権割合)

※借地権割合は国税庁HPの路線価図に路線価と一緒に表示されています。
(例)当事務所の所在地(千代田区神田神保町2-14)だと路線価図で960Cとなっています。これは路線価960千円/㎡、借地権割合70%ということを表しています。

記号 A B C D E F G
借地権割合 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30%


-手持ち資金又は借入でアパートを建築-

(例)駐車場(相続税評価100)事業をやめて、その土地の上に手持ち資金100で賃貸アパート建築しアパート事業を開始しました。敷地の借地権割合はD(60%)とします。

現状 アパート建築 賃貸開始(入居率100%)
資金 100 建物 (仮)60 建物 60×(1-60×0.3)=42
駐車場 100 土地 100 土地 100×(1-0.6×0.3)=82
200 160 124

手持ち資金100、駐車場(更地)100のまま相続を迎える場合に比べて、資金100でアパートを建てたことにより、相続財産を△76(200-124)圧縮することができました。

-留意点-
・アパート事業には、入退去手続き、家賃の延滞、入居者同士のトラブル、建物の日常的な管理、所得税の申告等々を伴い、それなりの覚悟をもって始める必要があります。

・アパート事業は30年程度はつづきます。最初の10年くらいはよいのですが、つぎの10年になると屋根・外壁・鉄部の塗装などの大規模な修繕が必要となります。また、どうしても内装や外観が古くなり入居率も落ちてきます。さらにつぎの10年になると建物の老朽化に伴いメンテナンス費用の増加、入居率の低下、家賃の値下げなどが避けられなくなります。

・銀行借入でアパートを建てる場合は、入居率の低下や家賃の値下げなどに伴う収入の減少、建物の老朽化に伴う費用の増加を見込んだ将来キャッシュフローを計算し、借入の返済が十分可能かどうか検討しておく必要があります。

・不動産会社による一括借り上げもありますが、2年毎に家賃の見直しがあるなどの場合がありますので、条件をよく調べておくことが大切です。

∞∞ 吉岡 ∞∞

【相続税】不動産を買えば相続税の節税になる?

2017-04-06

-不動産の相続税評価方法-

評価方法 価格水準
土地 路線価 公示地価の80%
建物 固定資産税評価額 建築家価額の50%~70%


-手持ち資金又は借入で不動産を取得-

(例)手持資金200で、土地100、建物100の不動産を購入

資金 購入 相続税評価
200 土地 100 土地 80
建物 100 建物 (仮)60
計200 200 140

手持ち資金200保有したまま相続を迎える場合に比べて、資金を不動産に変えたことにより、△60(200-140)圧縮することができました。


-景観は不動産の相続税評価額に含まれない-

不動産の売買価額は、周囲の景観、騒音、駅までの距離、都心へのアクセス、近隣に公園や学校等の有無といった様々な要素が織り込まれて形成されています。しかし、相続税の評価ではこれらの価値を取り出して評価しているわけではありません。例えばタワーマンションのように土地の持分が少なく、上階いけば行くほど売買価額が高くなる不動産は、より相続税の節税効果があるといえます。

ただし、行き過ぎた節税対策は評価額が否認されるリスクを伴うので注意が必要です。

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【相続税】実勢価格、公示価格、基準地価、路線価、固定資産税評価額

2017-04-05

実勢価格、公示価格、基準地価、路線価、固定資産税評価額の意義と価格水準をはつぎのとおりです。

名   称 意     義  価格水準
実勢価格
(売買時価)
一般に売買されている価格
「時価」といえば、通常これを指す
http://tochi.mlit.go.jp/tochi-kakaku/
 100~125
公示価格 国土交通省の土地鑑定委員会が選定した標準地の毎年1月1日現在の価格
民間の土地取引の際に目安とされ、鑑定評価や公共用地の取得価格などの参考にされる
http://tochi.mlit.go.jp/tochi-kakaku/
 100
基準地価 都道府県知事が選定した基準地の毎年7月1日現在の価格公示価格と同様の目的に利用される
http://tochi.mlit.go.jp/tochi-kakaku/
 100
路線価 国税庁が路線ごとに評定する毎年1月1日現在の価格続税と贈与税の課税基準となる
http://www.rosenka.nta.go.jp/
 80
固定資産税
評価額
市町村(東京23区は都税事務所)が土地ごとに評定する毎年1月1日現在の評価額
固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税の課税基準となる
<東京都23区http://www.tax.metro.tokyo.jp/map/
 70

 

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【相続税】相続財産の評価方法

2017-04-03

相続財産の種類別評価方法の概要はつぎのとおりです。

財産の種類 評価方法
①土地 路線価地域
路線価×地積(㎡)
倍率地域
固定資産税評価額×評価倍率
②建物 固定資産税評価額
③有価証券 株価×株数
④現金・預貯金等 預入残高
⑤その他

①土地
土地は、路線価地域と倍率地域があります。いずれも国税庁のHPで公表されています。
-路線価-
例えば当事務所の所在地は東京都千代田区神田神保町2-14ですが、ここの路線価を見てみましょう。つぎの青い部分をクリックしてみて下さい。東京都千代田区神田神保町2-14
わかりにくいですが、左上の方に⑭となっている辺りがそうです。当事務所が入っているビルは白山通りには面していないので路線価は960千円/㎡となります。

-倍率地域-
例えば東京都西多摩郡檜原村大沢の都道沿いの地域の宅地なら、1.1倍となっています。仮に評価する土地の固定資産税評価額が300万円だとすると、330万円(300万円×1.1)となります。
固定資産税評価額は固定資産税の納税通知書に記載されています。参考までに東京都の納税通知書にリンクを貼っておきます。東京都の例では[ウラ]土地の価格が45,000,000円となっているところです。

②建物
建物は、固定資産税評価額となります。参考までに東京都の納税通知書にリンクを貼っておきます。東京都の例では[ウラ]建物の価格が6,000,000円となっているところです。

③有価証券
有価証券は、上場有価証券と非上場有価証券があります。
-上場株式等-
相続の場合は死亡の日、贈与の場合は贈与の日の最終価格に株数などの数量を乗じます。詳しいことは国税庁HPをご参照下さい。

-非上場株式等-
少数株主の場合は配当還元方式となります。支配株主の場合は原則方式(類似業種比準価額、純資産価額、その併用価額)となりますが、この評価は税理士などの専門家に依頼した方が無難です。

④現金・預貯金等
預入残高となります。定期預金等には既経過利子を計上することになっていますが、相続税の概算額を求める場合は無視してもよいでしょう。

⑤その他
相続税の概算額を求める場合は、ザックリ○○○円でもよいと思います。

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【相続税】相続税の申告状況

2017-04-02

国税庁が平成28年12月に公表した資料によりますと、相続税の申告状況はつぎのとおりです。
詳しくは国税庁HPをご参照下さい。

平成25年 平成26年 平成27年
①被相続人数
(死亡者数)
1,268,436人 1,273,004人  1,273,004人
②相続税の申告書の提出に係る被相続人数 54,421人 56,239人 103,043人
課税割合
(②/①)
 4.3% 4.4% 8.0%
相続財産の金額
の構成比の推移
 土地 41.5% 41.5% 38.0%
 建物 5.2% 5.4% 5.3%
 有価証券 16.5% 15.3% 14.9%
 現金・預貯金等 26.0% 26.6% 30.7%
 その他 10.8% 11.2% 11.0%

26年と27年で課税割合が4.4%から8.0%にほぼ倍増しています。
これは相続税の基礎控除額がそれまでの60%に引き下げられたことが主な原因と考えられます。

平成26年12月31日以前の相続
基礎控除:5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人の数
平成27年1月1日以後の相続
基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

また、相続財産のうち不動産(土地と建物)が約5割、次いで現金・預貯金等が約3割となって
います。


それでは、東京国税局管内ではどうなっているか見てみます。
詳しくは国税庁HPをご参照下さい。

平成25年 平成26年 平成27年
①被相続人数
(死亡者数)
246,521人 249,140人 253,150人
②相続税の申告書の提出に係る被相続人数 18,136人 18,608人 32,209人
課税割合
(②/①)
7.4% 7.5% 12.7%
相続財産の金額
の構成比の推移
 土地 45.8% 45.7% 41.1%
 建物 5.0% 5.1% 5.1%
 有価証券 15.2% 14.3% 15.0%
 現金・預貯金等 24.3% 25.4% 28.9%
 その他 9.7% 9.5% 9.9%

課税割合は全国レベル(国税庁H27、8.0%)よりも高い(東京国税局H27、12.7%)ですが、
その傾向は同様です。また財産の構成割合も、全国レベルと概ね同じです。


不動産(土地と建物)で相続財産の約5割、預貯金で約3割で、これらで相続財産の8割を占めています。

相続税の申告を自分で行うのはなかなか難しいと思いますが、土地の評価ができれば相続税の概算額を自分で求めることはさほど難しいことではありません。

∞∞ 吉岡 ∞∞

【相続税・贈与税】相続時精算課税制度を利用した相続税対策

2017-03-31

-概要-
相続時精算課税制度では、この制度を選択した後の贈与財産の額を累計し、累計額が2,500万円までは無税、2,500万円を超える場合には超える額に対して一律20%の税率で贈与税が課税されます。
さらに、贈与財産は全て相続税の課税対象となり贈与者の相続税の計算に取り込まれ、支払った贈与税は相続税から控除されます。その結果、不足があれば納付し、払い過ぎがあれば還付されます。

-相続税対策-
相続時精算課税制度において相続税の対象になるのは、贈与時の評価額です。将来値上がりする財産を贈与すれば節税対策になりますが、値上がりするか値下がりするかは誰にもわかりません。
例えば、土地についてみてみると、東京区部住宅地の平成12年3月(2000/3)の市街地価指数を100とした場合、昭和60年3月(1985/3)は100.5、バブルピークの平成2年9月(1990/9)は270.4、平成16年3月(2004/3)は91.2、平成28年3月(2016/3)は106.0となっています。つまり、バブルの頃の平成2~3年頃にピークを迎えた地価はその後一度下がって、再度平成12年頃に上昇して、もう一度下がって、また上がって今日に至るということです。(市街地価格指数、一般社団法人日本不動産研究所より)
贈与時の評価額が相続税の対象になるのことが、相続時精算課税制度を相続対策として利用することを難しくしています。

ただ、全く利用できないかというと、必ずしもそうではなりません。
よく行われているのが、収益物件を相続時精算課税制度を利用して子や孫に移転する方法です。
(例)
祖父所有土地の上の賃貸アパートを孫に贈与する。

建築家価額 5,000万円
固定資産税評価額 3,500万円 5,000万円×(仮)70%
相続税評価額(貸家) 2,450万円 3,500万円×(1-0.3:貸家割合)
賃料 1、500万円  年額
地代      - 祖父と孫との間の土地の利用は使用貸借

相続時精算課税制度を利用して賃貸アパートを贈与すれば、特別控除額の範囲内(2,450万円<2,500万円)なので、贈与時の税の負担はありません。
一方、祖父の相続時にアパートの贈与時の評価額2,450万円は相続税の計算に取り込まれ、孫は2割加算された相続税を負担しなければなりません。

しかし、孫にアパートの家賃が毎年入ってきますので、孫にアパートを贈与した方が有利になるケースがでてきます。

∞∞ 吉岡 ∞∞

 

【相続税・贈与税】相続時精算課税制度の留意点Ⅱ

2017-03-30

-概要-
相続時精算課税制度では、この制度を選択した後の贈与財産の額を累計し、累計額が2,500万円までは無税、2,500万円を超える場合には超える額に対して一律20%の税率で贈与税が課税されます。
さらに、贈与財産は全て相続税の課税対象となり贈与者の相続税の計算に取り込まれ、支払った贈与税は相続税から控除されます。その結果、不足があれば納付し、払い過ぎがあれば還付されます。
この制度を選択するに当たって特に注意すべき点は、つぎの3つです。

・選択後の撤回は不可
・受贈者は贈与者の孫でも可
・相続税の対象になるのは贈与時の評価額


-贈与者の孫でも可-

平成25年の税制改正により平成27年1月1日からは孫への贈与も相続時精算課税制度が適用できることになりました。この場合の注意点はつぎのとおりです。

・孫は、父母が亡くなるなどして代襲相続人となった場合や祖父母の養子となった場合を除き、祖父母の相続人ではありません。しかし、相続時精算課税制度を選択して贈与をすると、贈与者の相続時においてその相続人でるか否かに関わらず相続税の計算対象となってしまいます。したがって、祖父母の相続財産が多額であったりすると思わぬ税負担となってしまいます。

・相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含みます。)及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。

なお、この場合の孫は法定相続人ではないので相続税の基礎控除の人数にはカウントされません。

基礎控除の額=3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数


-相続税の対象になるのは贈与時の評価額-

ある意味、これが相続時精算課税制度を選択するにあたって最も重要なポイントかも知れません。
相続時精算課税制度を選択して贈与を受けた財産は贈与時の価額で相続税の課税価格に加算されます。この加算は、贈与を受けた財産の状態にかかわらず贈与時の価額とされていますので、贈与財産が相続時に値上がりしていたとしても、値下がりをしていたとしても、極端な場合無価値や存在しなくなっていたとしても、贈与時の価額となります。
したがって、金銭などの贈与時も相続時もその評価額が変わらないものはよいのですが、外貨、株式、土地などの価格変動があるものは、相続時において有利・不利が生じてしまいます。

(例)相続時精算課税制度を選択して土地を子供に贈与しました。

贈与時の価額 相続時の価額 相続税の課税
価格加算額
3,000万円 4,000万円 3,000万円
3,000万円 2,000万円 3,000万円

①の場合は、相続時精算課税制度により贈与したことによって、相続時まで所有していれば4,000万円であった土地が3,000万円で課税価格に加算されるので、1,000万円得をしました。

②の場合は、相続時精算課税制度により贈与したことによって、相続時まで所有していれば2,000万円であった土地が3,000万円で課税価格に加算されるので、1,000万円損をしました。

∞∞ 吉岡 ∞∞

【相続税・贈与税】相続時精算課税制度の留意点

2017-03-28

-概要-
相続時精算課税制度では、この制度を選択した後の贈与財産の額を累計し、累計額が2,500万円までは無税、2,500万円を超える場合には超える額に対して一律20%の税率で贈与税が課税されます。
さらに、贈与財産は全て相続税の課税対象となり贈与者の相続税の計算に取り込まれ、支払った贈与税は相続税から控除されます。その結果、不足があれば納付し、払い過ぎがあれば還付されます。

この制度を選択するに当たって特に注意すべき点は、つぎの3つです。
・選択後の撤回は不可
・受贈者は贈与者の孫でも可
・相続税の対象になるのは贈与時の評価額

-選択後の撤回は不可-
贈与者60歳以上、受贈者20歳以上の推定相続人又は孫ならば、いつでも相続時精算課税を選択することは可能です。
しかし、一度選択すると再度暦年課税に戻ることはできませんので、相続時精算課税制度のメリット・デメリットをよく検討する必要があります。
メリットはなんといっても、特別控除の2,500万円までならとりあえず無税で財産を贈与できるという点です。2,500万円を超えると超えた額に対して一律20%の比例税率が適用されます。
デメリットの一つは毎年ある110万円の基礎控除が使えなくなってしまう点です。

<<親の援助で子が住宅を購入した例>>
<住宅購入時>
子が自宅を購入するに当たって、父から住宅取得資金の贈与の非課税制度と相続時精算課税制度を利用して、資金援助をした。
・資金援助前の父の遺産の総額5億円(相続税評価額)
・住宅取得資金の贈与の非課税限度額700万円(29年度契約、良質な住宅以外の住宅)
・資金援助額3,200万円
・購入したマンション8,500万円(内訳:親からの資金援助3,200万円、自己資金800万円、住宅ローン4,500万円)

資金援助した3,200万円は、住宅取得等資金の贈与の住宅取得資金の贈与の非課税制度の限度額(700万円)と相続時精算課税制度の特別控除限度額(2,500万円)の合計3,200万円の範囲内なので、贈与税はかかりません。(贈与税の申告は必要です。)
また、住宅ローンが4,500万円あるので、ローン控除の要件を満たせば40万円(限度額4,000万円×1%)を10年間、合計400万円のローン控除が受けられます。

<(仮)10年後の父の相続時>
・資金援助後の父の遺産の総額5億円-3,200万円=46,800万円(遺産額は変わらないと仮定)
・父の相続財産に加算2,500万円(相続時精算課税制度を選択して贈与した額)

父の遺産の総額は、46,800万円+相続時精算課税制度による贈与2,500万円=49,300万円となり、住宅取得等資金の贈与700万円だけをした場合と遺産総額は同じ結果になります。

∞∞ 吉岡 ∞∞

【相続税・贈与税】相続時精算課税制度

2017-03-27

-概要-
暦年課税制度は、1年ごとに贈与税額を計算し、これにより原則として課税が完了する制度です。
これに対し相続時精算課税制度では、この制度を選択した後の贈与財産の額を累計し、累計額が2,500万円までは無税、2,500万円を超える場合には超える額に対して一律20%の税率で贈与税が課税されます。
さらに、この制度の下で受けた贈与財産は全て相続税の課税対象となり贈与者の相続税の計算に取り込まれ、支払った贈与税は相続税から控除されます。その結果、不足があれば納付し、払い過ぎがあれば還付されます。

-留意点-
・選択後の撤回は不可
・相続税の対象になるのは贈与時の評価額
・贈与者ごとに選択可能
・贈与者は60歳以上
・受贈者は贈与者の推定相続人又は孫
・受贈者は20歳以上
・年齢は、贈与の年の1月1日現在で判定

-暦年課税と相続時精算課税の比較-

暦年課税 相続時精算課税
贈与者の年齢 制限なし 60歳以上
対象受贈者 制限なし  推定相続人 + 孫
受贈者の年齢 制限なし 20歳以上
控除額 基礎控除:毎年110万円 特別控除:累計で2,500万円
税率 10%~55%の累進税率 一律20%
相続税の対象となる財産 相続開始前3年以内に贈与した財産 相続時精算課税制度を選択した後に贈与した財産全て
控除し切れなかった贈与税 切り捨て 還付


-孫が相続時精算課税制度を選択した場合-

相続時精算課税制度を選択すると、贈与者の相続時においてその相続人でるか否かに関わらず相続税の計算対象となってしまいます。
したがって、孫がこの制度を適用して贈与を受けると贈与者の相続の際に、孫は相続人ではないにもかかわらず相続税の課税を受けてしまいます。また、相続税額の2割加算の対象にもなります。


-受贈者が先に死亡した場合-

贈与者よりも先に受贈者が先に死亡した場合には、その受贈者の相続人がその権利・義務を承継します。


-計算例-

贈与額1,000万円(過去に相続時精算課税制度のもとで既に2,000万円の贈与を受けている。

課税標準額=(2,000万円+1,000万円)-2,500万円=500万円
贈与税額=500万円×20%=100万円

(参考)暦年課税(直系尊属→20歳以上)の場合
1,000万円-110万円=890万円
890万円×30%-90万円=177万円

∞∞ 吉岡 ∞∞

【相続税・贈与税】結婚子育て資金の一括贈与の非課税制度は相続税対策になる?

2017-03-26

-制度の概要-
20歳以上50歳未満の受贈者が、結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との契約に基づき、受贈者の直系尊属である贈与者から結婚・子育て資金口座の開設等をした場合には、1,000万円までの金額については、金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります。

契約期間中に贈与者が死亡した場合には、死亡日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額(結婚に際して支払う金銭については、300万円を限度とします。)を控除した残額(管理残額)を、贈与者から相続等により取得したとみなされます。

受贈者が50歳に達することなどにより、結婚・子育て口座に係る契約が終了した場合には、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額があるときは、その残額はその契約終了時に贈与があったこととされます。

-この制度は相続対策になり得るか-
<相続対策>
**祖父母から孫への贈与**
祖父母から挙式費用や不妊治療費用などの結婚・子育て資金をその都度贈与しても、扶養義務者間の贈与なので贈与税は課税されません。詳しくは、国税庁HPをご参照下さい。
贈与税の課税の問題が生じるのは、将来の結婚・子育て資金分までまとめて贈与した場合なので、ある程度まとまった金額となります。

ところで、厚生労働省によると平成27年度の平均初婚の年齢は、夫31.1歳、妻29.4歳で男女とも概ね30歳前後です。30歳の孫に祖父母が結婚・子育て資金を贈与する場合の祖父母の年齢は、80歳前後のケースが多いと思われます。
そうすると祖父母から贈与を受けた結婚・子育て資金を使い切る前に祖父母に相続が発生してしまうことが想定されます。

この制度は、贈与を受けた結婚・子育て資金を使い切らないうちに祖父母に相続が発生した場合には、その残額(管理残額)は2割加算の適用こそはありませんが、贈与者から相続等により取得したとみなされてしまいます。本来相続人ではない孫にも相続税が課税されてしまう可能性があるため、相続税対策としては利用しづらいといわざるを得ません。

**両親から子への贈与**
両親がその子に結婚費用や子育て資金の面倒をみてあげるのなら、必要に応じてその都度出してあげれば済む話です。
仮に両親から子へ結婚・子育て資金を一括贈与し、使い切らないうちに両親に相続が発生してしまうと結局その残額は相続等により取得したものとみなされてしまいます。それなら、必要に応じてその都度負担した場合と結果的に同じことになり、相続税対策にはならないだろうと思われます。

<相続対策>
相続対策にはならなくても、とりあえず無税で子や孫に結婚・子育て資金としてまとまった金額の援助をしてあげられるので、相続対策にはなるかもしれません。
例えば、遺言を書くほどのものではないけれど祖父母が孫のために何かしてあげたいという場合に、孫に結婚・子育て資金として生前に援助してあげるケースが考えられます。ただし、使い残した場合その残額が相続税の対象となるので、その相続税の負担を考慮してあげる必要があります。
あるいは、親が子供達にかけた教育費などのバランスを考え、その調整として結婚・子育て資金の一括贈与の制度を利用することが考えられます。

-教育資金の一括贈与との比較-
教育資金の一括贈与場合と結婚・子育て資金の一括贈与の場合とにおける、贈与者が死亡した場合の取扱いの違いはつぎのとおりです。

 教育資金の一括贈与  結婚・子育て資金の一括贈与
 贈与者の要件  贈者の直系尊属であること  贈者の直系尊属であること
 受贈者の要件  30歳未満である者  20歳以上50歳未満である者
期間中に贈与者が死亡した場合 贈与者の死亡による課税関係は生じない。 資金残額は相続又は遺贈により取得したものとみなされ、贈与者の死亡に係る相続税の課税対象となる。
・相続税額の2割加算は適用はない。
・他に相続税の課税対象となる取得財産がない場合には、相続開始前3年以内の贈与加算は適用はない。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

 

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