Archive for the ‘相続税’ Category
【所得税・相続税】暗号資産(仮想通貨)の低額譲渡と相続税・贈与税
所得税では暗号資産の譲渡は、不動産や有価証券等の譲渡とは異なり、棚卸資産に準ずる資産として扱われます。(所令87)
この暗号資産については、国税庁のHPに「暗号資産に関する税務上の取り扱いについて(情報)」として公表されています。
以下、説明がやや煩雑になるので個人間の税務の取り扱いとします。
7. 時価よりも著しく低い価額による譲渡があった場合(情報16)
<譲渡をした人>
■暗号資産を著しく低い価額(注)で譲渡した場合には、その対価の額だけでなく、その対価の額と譲渡の時における時価(注)との差額のうち実質的に贈与したと認められる金額も雑所得等の総収入金額に算入する必要があります。(所法40①二、所令87)
(注)著しく低い価額での譲渡とは、時価の70%未満か否かで判定すればよいことになっています。(所基通40-2)
<譲渡を受けた人>
■暗号資産を取得した人がその後譲渡する場合の雑所得の計算の基礎となる取得価額は、その支払った対価の額と贈与とされた金額の合計額になります。(所法40②)
■暗号資産を購入した時の時価と支払った対価との差額は贈与があったものとして贈与税が課税されます。なお、この場合の贈与税の計算における時価について明文規定がないため時価の70%相当額(所基通40-2)の適用はないものと思われます。
8. 贈与又は遺贈があった場合(情報4,情報16,情報26)
<贈与又は遺贈をした人>
■暗号資産の贈与(注1)又は遺贈(注2)があった場合は、その時における暗号資産の時価を雑所得の総収入金額に算入されます。(所法40①一、所令87)
(注1)相続人に対する死因贈与を除きます。
(注2)包括遺贈及び相続人に対する特定遺贈を除きます。
<贈与又は遺贈を受けた人>
■贈与を受けた場合には、その贈与を受けた時の暗号資産の時価に対して贈与税が課税されます。
■遺贈を受けた場合には、その遺贈に係る相続の時の暗号資産の時価に対して相続税が課税されます。
■上記贈与又は遺贈により暗号資産の取得をした個人が、その後暗号資産を譲渡した場合における雑所得等の計算の基礎となる暗号資産の取得価額は、その贈与又は遺贈の時における暗号資産の時価となります。
9. 相続等があった場合(情報4,情報26)
■被相続人等から暗号資産を相続又は遺贈(死因贈与を含む。)より取得した場合には、相続税が課税されます。
相続税法では、個人が、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には、相続税又は贈与税の課税対象となることとされています。
■暗号資産を、相続人に対する死因贈与、相続、包括遺贈又は相続人に対する特定遺贈により取得した場合における取得価額は、被相続人の死亡の時に、その被相続人が暗号資産について選択していた方法により評価した金額(被相続人が死亡時に保有する暗号資産の評価額)とされています。
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【相続税】相続登記の義務化
所有者不明土地がどのくらいあるかというと、最後の登記から50年以上経過している土地の割合が、大都市で約6.6% 、中小都市・中山間地域で約26.6%、
また、不動産登記簿のみでは所有者の所在が確認できない土地の割合が 約20.1%もあるそうです。👈法制審議会第183回会議配布資料より
その結果、公共事業の用地買収、災害の復旧・復興事業の実施や民間の土地取引の際に、所有者の探索に多大な時間と費用を要するなど、
国民経済にも著しい損失を生じさせています。
「所有者不明土地」対策のための民法、不動産登記法などの改正案が国会で4月21日に成立しました。
改正のポイントは次です。
①所有者の氏名・住所変更登記の義務化 | 所有者の氏名や住所が変わった場合、その変わった日から2年以内の変更登記の申請が義務化されました。違反者には5万円以下の過料が科されます。 |
②相続登記の義務化 | 相続があった場合、取得を知った日から3年以内の相続登記の申請が義務化されました。違反者には10万円以下の過料が科されます。 |
③相続人申告登記制度の創設 | 遺産分割でもめるなどして期限に間に合わない場合に、法務局において、自分が登記名義人の法定相続人である旨を申告することによって、相続登記の義務を履行をしたものとみなす制度 です。 ただし、持分等は登記されない報告的な登記なので、遺産分割が確定したら、遺産分割の日から3年以内に改めて相続登記をしなければなりません。 |
④相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属制度の創設 | 相続等により土地を取得した者がその所有権を放棄して、その土地を国庫へ帰属させることを可能とする制度です。
ただし、次のような土地は対象外となります。 また、審査手数料のほか、10年分の土地の管理費を納めなければなりません。 (参考) 柵を設け、看板を設置し、草刈・巡回費用として、200㎡の宅地の管理費用(10年分)は約80万円程度かかるとする例(👈法務省HP)が掲げられています。 |
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【相続税・贈与税】今が自社株贈与のチャンスかも
昨年来のコロナ禍の影響を受けて、多くの業種で業績が悪化しています。
今年に入ってからも3回目の緊急事態宣言が出されました。現時点では東京都、京都府、大阪府、兵庫県、愛知県、福岡県が対象となっています。また、まん延防止等重点措置も、埼玉県、千葉県、神奈川県など9県で出されています。
今のところ、コロナの急速な収束の見込みがなく、コロナワクチンの接種が進み、うまく集団免疫が獲得できることが唯一の希望でしょうか。
ところで、コロナ禍ではありますが、今が自社株(=取引相場のない株式)を後継者に贈与するチャンスかも知れません。
業績が悪化しているということは、自社株の評価額が下がっている、あるいは下がる可能性があるということです。
贈与などの場合の自社株の評価については、国税庁長官が定める財産評価基本通達に基づいて評価します。
自社株を支配株主が有する場合には、類似業種比準価額と純資産価額の二つの評価方法で計算します。さらにこの二つの価額を基に、会社の規模に応じて次の計算をします。
類似業種比準価額×L※+1株当たりの純資産価額×(1-L) |
※Lの割合は会社の規模(総資産価額、従業員数、取引金額)に応じて定められています。詳しくは国税庁HPをご参照ください。
このうち純資産価額の方は、多少赤字が出ても価額が大きく変わることはありません。
もう一方の類似業種比準価額ですが、こちらは評価しようとする会社の一株あたりの配当、利益、純資産の3要素と、国税庁が公表する業種ごとのこれら3要素(値類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等)とを比較して計算します。
したがって、配当や利益が小さくなればなるほど類似業種比準価額は低くなります。
ただし、この3要素のうち2要素がゼロにならないように注意する必要があります。もし、2要素がゼロになると、そのような会社は類似業種比準価額の適用が妥当でないとして、逆に株価が高くなってしまいます。
コロナ禍で前期が赤字だった、今期も厳しそうだという場合は、顧問税理士に依頼して株価を計算してもらってみてはいかがでしょうか。
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【相続税】一時相続・二次相続の有利不利(その2)
一次相続(父)と二次相続(母)における財産の分割の仕方によって税負担が変わってきますが、その具体例を検討してみたと思います。
- 前提 -
家族構成:父、母、兄、弟の4人家族
相続財産:1億5千万円
(注)一次相続(父)、二次相続(母)において財産の価額は変わらないものとします。また、小規模宅地等の特例は考慮しないものとします。
[パターンⅠ]
遺産分割の方法 | 相続税額 | コメント | |
一次相続 | 母が相続財産のすべてを相続 | 0円 | 配偶者は1億6千万円まで相続税が課税されない。(配偶者の税額の軽減) |
二次相続 | 兄弟が法定相続分で相続 | 1,840万円 | 相続人が2人なので基礎控除は42百万円となる。 |
Total税負担 | 1,840万円 |
[パターンⅡ]
遺産分割の方法 | 相続税額 | コメント | |
一次相続 | 母は相続せず、兄弟が全額2分の1ずつ相続 | 1,495万円 | ・相続人が3人なので基礎控除は48百万円となる。 ・法定相続分課税方式※なので低い相続税率が適用される。 |
二次相続 | 母は一次相続で相続しなかったのでなし | 0円 | |
Total税負担 | 1,495万円 |
※現行の相続税法は、相続人が法定相続分で遺産を取得したと仮定して相続税の総額を算出する遺産取得者課税方式を採用しています。
[パターンⅢ]
遺産分割の方法 | 相続税額 | コメント | |
一次相続 | 法定相続分(母1/2、兄弟各1/2ずつ)で相続 | 747.5万円 | ・配偶者は1億6千万円まで相続税が課税されない。(配偶者の税額の軽減) ・相続人が3人なので基礎控除は48百万円となる。 |
二次相続 | 母が相続した財産を法定相続分(兄弟各1/2ずつ)で相続 | 395.0万円 | 相続人が2人なので基礎控除は42百万円となる。 |
Total税負担 | 1,142.5万円 |
[検討]
・[パターンⅠ]と[パターンⅡ]では、一次相続と二次相続で法定相続人の数が異なるため基礎控除額分だけ課税遺産総額が異なり、Total税負担額に差が出ています。
・[パターンⅢ]がもっともTotal税負担額が小さくなっていますが、これは兄弟が一次相続、二次相続共に基礎控除額を有効に使えているためだと思われます。
相続税の負担の軽減も大切ですが、併せて考えてなければならないことがあります。
それは、一次相続で父が亡くなった後の母親の老後の生活です。
特に親が認知症になった場合、認知症になった母は次のような法律行為ができなくなります。
・預金口座の解約、引出し
・不動産の売買、賃貸契約
・遺言書の作成
・生前贈与
・介護施設の入所契約 等。
例えば母が自宅を相続し、将来介護が必要になったら自宅を売却して介護施設に入ろうとしても、その時に認知症になっていると売買契約そのものができない恐れがあります。
父の一次相続の遺産分割にあたっては、このような事態も想定しておくことが必要です。
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【相続税】一時相続・二次相続の有利不利(その1)
男性よりも女性の方が平均寿命が長いので、一時相続で父が亡くなり、次いで二次相続で母が亡くなるというのが相続の場合の典型例でしょう。
ほとんどの場合父と母は年齢も近く、父の一時相続の遺産分割を検討する際には、母の二次相続についても考慮することが望まれます。
これは相続税の負担ということだけでなく、年老いた母が自身の老後をどの様に過ごすか、あるいは子供からすればどのように過ごしてもらうかということでもあります。
[相続税額の負担]
一時相続と二次相続、財産の分割の仕方によって税負担が変わってきます。
要因(小規模宅地等の特例を除く※)
①配偶者の税額軽減 (国税庁HP👈クリック) |
配偶者が遺産分割により実際に取得した財産の額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからない。 ・1億6千万円 ・配偶者の法定相続分相当額 |
②基礎控除額 (国税庁HP👈クリック) |
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 |
③相続税の税率構造 (国税庁HP👈クリック) |
法定相続分に応ずる取得金額に応じて10%〜55%までの超過累進税率 |
※相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)(国税庁HP👈クリック)を配偶者が受けるか子が受けるかでも一次相続と二次相続で税負担が異なってきますが、複雑になりますのでここでは取り上げていません。 |
①配偶者の税額軽減
一次相続における遺産分割において、どの程度配偶者が相続財産を取得するかによって配偶者の税額が異なってきます。
②基礎控除
一時相続の場合、例えば相続人が母と子供二人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数:3)です。
一方、二次相続では子供二人なので基礎控除額は4,200万円になります。
③相続税の税率構造
現行の相続税の計算方式は法定相続分課税方式※(国税庁HPクリック)を採用しているため、一次相続、二次相続それぞれの相続においてどのような遺産分割をしても相続税の総額は変わりません。
しかし、一次相続で配偶者に多く財産を残せば、二次相続では法定相続人が二人なので法定相続人一人当たりの相続財産が大きくなり、その結果高いところの税率が適用されます。
※現行の相続税法は、相続人が法定相続分で遺産を取得したと仮定して相続税の総額を算出する遺産取得者課税方式を採用しています。
次回でその具体例を検討したいと思います。
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【相続税・贈与税】中立的な相続税・贈与税に向けた検討
ここ数年、税制改正大綱で「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税」が検討事項として挙げられています。
その中で、昨年(令和2年度)の税制改正大綱では、「・・・教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置及び結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置についても、次の適用期限の到来時に、その適用実態も検証した上で、両措置の必要性について改めて見直しを行うこととする。」とされていました。
これを受けて、今年(令和3年度)の税制改正で、教育資金の一括贈与は教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合には、23歳未満や在学中などの場合を除いて相続財産に取り込まれるなどとされた上で、2年延長されました。
また、結婚・子育て資金の一括贈与についても適用を厳しくした上で2年延長されますが、「利用件数が極めて少ないこと等を踏まえ、次の適用期限の到来時に、制度の廃止も含め、改めて検討する。」とされています。
ここで言いたいことは、税制改正大綱に記載されている「・・・検討する。」は本当に検討され、改正されるかもしれないと言うことです。
令和3年度の税制改正の「 資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」(税制改正大綱18頁)を改めてみてみると次のとおりです。
■経済の活性化対策の手段
高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた、経済の活性化が期待される。このため、資産の再分配機能の確保に留意しつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要な課題となっている。 |
高齢者が金融資産を保有していても消費に回らない、高齢者が不動産を保有していても有効活用しない。
そこで税制を利用して、これらの資産を早期に若年世代に移転させることができれば、経済の活性化につながるだろうということです。
■贈与税は相続税の補完税
わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。 |
相続税は、財産が多くなればなるほど税率が高くなる累進課税です。(相続税の税率国税庁HP👈クリック)
贈与税率が相続税率よりも低ければ、これを利用して相続税の回避ができてしましまいます。
現行では相続税も贈与税も最高税率は55%で変わらないのですが、贈与税率は移転する財産の価額が低い段階から急カーブで高くなる構造です。(贈与税の税率国税庁HP👈クリック)
■相続・贈与いずれであっても税負担が一定となる仕組みを検討
諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。 今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。 |
相続時精算課税を選択すると、その後の贈与税については贈与財産を累積し、特別控除額(2,500万円)までは無税、2,500万円を超えると一律20%の贈与税が課税されます。
ただしこの場合、その贈与者が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額に贈与した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。なお、相続時精算課税を一度選択すると、通常の暦年課税には戻れません。(詳しくは国税庁HP👈クリック)
今までは、基礎控除額110万円の贈与税の暦年課税が原則で、相続時精算課税はその例外として選択するという位置づけでした。
財産を生前に贈与しても、相続まで待っても税負担が一定という仕組みを想定するとなると、相続税の暦年課税から相続時精算課税のような課税の仕組みに、軸足が移るのかもしれません。
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【相続税】小規模宅地等の特例の適用対象地の合意(一部未分割の場合)
小規模宅地等の特例は、遺産分割が申告期限(10ヶ月)までに行われていない場合にはこの特例の適用を受けることはできません。
ただし、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」(国税庁HP👈クリック)を添付して提出しておき、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合には、適用を受けることができます。この場合、分割が行われた日の翌日から4か月以内に「更正の請求」を行うことになります。
また、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに訴えが提起されているなどのやむを得ない事情がある場合には、所定の手続き(国税庁HP👈クリック)をすることにより、判決等が確定するまで期限が延長されます。この場合は、その確定したした日の翌日から4か月以内までに「更正の請求」をすることになります。
ところで、小規模宅地等の特例は、対象となり得る宅地等を取得した全ての人の同意がなければ適用を受けることはできません。
では、小規模宅地等の特例の対象となり得る宅地等が複数あって、そのうち一部が未分割だった場合はどうなるでしょうか。
この場合にも、その宅地を相続する可能性が相続人全員にあることから、相続人全員の同意が必要とする下記裁決例があります。
平成21年4月相続開始に係る相続税について遺産が未分割であることにつきやむを得ない事由がある旨の各承認申請の各却下処分・棄却・平成26年6月2日裁決(国税不服審判所HP👈クリック) : 特例対象宅地等を取得した全ての個人とは、特例対象宅地等が未分割であることから共有で取得され、その後、当該特例対象宅地等が分割される際に、本件特例を適用する可能性のある者も含まれると解されるのであるから(・・・)、未分割である特例対象宅地等に該当するf市土地相続分を共有で取得している本件相続人ら全員の同意を証する書類を提出しなければならないこととなる。 : 特例対象宅地等を取得した全ての個人の同意を証する書類の添付が求められている趣旨は、上記・・・のとおり、同一の被相続人に係る相続人等が特例対象宅地等のうち、それぞれ異なる特例対象宅地等を選択して本件特例の適用を受けようとして、相続税の課税価格が確定できない結果となることがないようにすることにある。 : したがって、本件特例の趣旨等から、特例対象宅地等を取得した全ての個人の同意を証する書類の添付がなくとも本件特例の適用が認められるべきであるとする請求人の主張は採用できない |
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【相続税】小規模宅地等の特例の適用対象地の合意
相続財産のうちに小規模宅地等の特例(国税庁HP👈クリック)の対象となる宅地等がある場合は、減税効果が大きい※ので適用したい制度です。
※特定事業用宅地等(400㎡まで8割評価減)、 特定同族会社事業用宅地等(400㎡まで8割評価減)、特定居住用宅地等(330㎡まで8割評価減)、貸付事業用宅地等(200㎡まで5割評価減)
この小規模宅地等の特例の適用を受けるには、申告期限(10ヶ月以内)までに共同相続人間で対象となる宅地等が分割されていなければなりません。
ただし、申告期限から3年以内に分割されたときは分割が行われた日の翌日から4か月以内(裁判などでやむを得ない事情がある場合で税務署長の承認を受けたときは、分割できることとなった日の翌日から4ヶ月以内)に更正の請求を行うことができます。
この小規模宅地等の特例の適用対象となる宅地等が複数ある場合には、通常は、評価した宅地等の単価の高いものから順次適用します。
相続税を計算するにあたっては、全体の財産を価額の合計し、これを法定相続分で相続したものとして相続税の総額を算出するため、全体の財産の価額が低くなるように計算した方が有利だからです。(詳しくは国税庁HP👈クリック)
各相続人の相続税額は、この算出した相続税の総額を各相続人が実際に取得した財産の価額で按分計算して求めます。
その結果、相続人個々人では、自分が相続した宅地等について小規模宅地等の特例を受けた方が自身が負担する相続税額に限っては低くなる場合があります。
相続では遺産分割協議についつい目がいってしまいがちですが、小規模宅地等の特例の適用対象となる宅地等が複数ある場合には、誰のどの宅地等から小規模宅地等の特例の適用をうけるか、予め合意しておく必要があります。
なお、相続税の申告書に添付する「小規模宅地等についての課税価格の計算明細書」(国税庁HP👈クリック)には、下記の記載をしなければなりません。
1 特例の適用にあたっての同意 この欄は、小規模宅地等の特例の対象となり得る宅地等を取得した全ての人が次の内容に同意する場合に、その宅地等を取得した全ての人の氏名を記入します。 私(私たち)は、・・(略)・・その取得者が小規模宅地等の特例の適用を受けることに同意します
(注)1 小規模宅地等の特例の対象となり得る宅地等を取得した全ての人の同意がなければ、この特例の適用を受けることはできません。 |
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【相続税】小規模宅地等の継続保有要件
相続税の課税価格の算定にあたって、被相続人等(被相続人と生計を一にしていた親族を含む)の居住の用又は事業の用に供されていた宅地等については小規模宅地等の減額の特例の適用があります。その概要は下記のとおりです。(詳しくは国税庁HPをご参照ください)
利 用 区 分 | 項 目 | 面積 | 減額 | |||
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 | ① | 特定居住用宅地等 ■配偶者が相続等 ■同居親族が相続等 ■家なき子が相続等 ■生計一親族が相続等 |
330㎡ | 80% | ||
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 | 貸付事業以外の事業用の宅地等 | ② | 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% | |
貸付事業用の宅地等 | ③ | 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% | ||
④ | 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
この小規模宅地等の減額の特例の適用を受けるためには、それぞれについて要件が定められています。
この要件の中に、相続開始時から相続税の申告期限までこの特例の適用を受けた宅地等を引き続き保有していなければならない(保有継続要件)というのがあります。
そもそもこの制度の趣旨は、被相続人からの相続又は遺贈により取得した宅地等で相続人等の生活基盤となるものについては一定の配慮をするというものです。
この趣旨に照らせば、相続後直ちに売却できるような宅地等にまで配慮をする必要がないことになります。
ではいつまで保有し続ければよいのかということですが、相続後の家庭環境の変化があり得ることや課税庁での確認の限界から、おそらく一種の割り切りとして申告期限(相続開始後10ヶ月)までとしたのだろうと思います。
ただし、配偶者についてはこの保有継続要件がありません。
例えば、階段のある戸建住宅は大変なのでエレベータがあるマンションに移りたい、あるいは老人向けの施設に入りたいといった場合、配偶者は申告期限まで待たずに居住用宅地を売却することができます。
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【相続税・贈与税】路線価の時点修正はなし
・・・国税庁は、都道府県が不動産鑑定士の評価を基にまとめる基準地価(7月1日時点、毎年9月ごろに公表)が新型コロナの影響で、広範囲で大幅に下落した場合、その地域の路線価を減額修正できる措置の導入を検討している。(2020/6/24 日経)
上記新聞記事が掲載された5月、6月頃は、丸の内でさえ人影がまばらで、新幹線も乗客がほとんどいない有様でした。
路線価は、1月1日(コロナ前)を評価時点としているため、このような状況下では今年は路線価の見直しはあるだろうと思っていました。
ところが、日経平均株価をみると3月に今年の最安値1万6552円をつけた後は上昇し続け現在2万3000円前後となっています。
不動産についてもいろいろ話を聞くと、インバウンド需要は激減したものの、さほど不動産価額は下落していないという意外なものでした。
株価も不動産価額もおそらく背景にあるのは過剰流動性ではないかと思います。
政府はコロナショックを乗り越えるためにほぼ無利子で資金を供給し続け、一部行き場のない資金が株や不動産価額を下支えしているのではないかと思います。
新型コロナウイルスによる経済活動への影響から、国税庁が検討していた1~6月分の路線価の減額補正が28日見送られた。大部分の地域の地価(時価)が路線価を下回らなかったためだが、一部に15%以上下落した地域もあった。相続税などの算定基準だけに人々の関心は高く、同庁は「引き続き地価の動向を注視したい」としている。(2020/10/28 日経)
国税庁の案内文書はこちら(👈クリック)です。
上記日経新聞の記事で、15%以上下落した地域もあったとありますが、その地域だけでも路線価の減額補正すべきではないか思った方もいるかもしれません。
実は、路線価は時価の80%に設定していて20%のアローワンスを見ているという建前になっています。(国税庁HP)
そのため下落が2割の範囲なら見直す必要がないということになります。
今年発生した相続で、相続財産に2割以上下落している宅地等がある場合は、必要に応じて不動産鑑定士による鑑定評価をとるなどの対応が必要になると思われます。
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