Archive for the ‘所得税’ Category

【法人税・所得税】海外中古不動産を利用した節税規制

2019-12-01

日本では、中古の建物はあまり評価されません。
地価の高い地域では、建物は評価されず、多くは取壊しが前提になります。

一方、海外のリゾート地などの投資物件は、建物を修繕しながら使っていくため、建物込みの価額で取引されます。
ここに目を付けたのが、賃貸物件として海外の中古不動産を利用した節税です。

郊外のタウンハウスや一戸建ての木造だと、新築の耐用年数は22年ですが、耐用年数を超えたものは4年で償却できます。
これを利用して多額の減価償却費を計上することにより赤字を作り出し、日本国内の所得と通算して節税をはかるものです。

この耐用年数を利用した節税は、なにも海外の中古不動産投資ばかりではありません。
ちょっとした節税としては、自動車の耐用年数が5年と短いことから、中古の高級車を利用したものがあります。
商品としては航空機リーススキーム(オペレーティングリース)などがあります。

このうち海外中古不動産を利用した節税は、ここ数年毎年規制されるのではないかといわれ続けてきました。
先日の新聞報道によりますと、どうも来年の税制改正で規制されるようです。

今年は、所得層にかかわらず国民全員が負担する消費税が10月に10%に増税されました。
高額な海外中古不動産の投資が富裕層に多い節税であることを考えれば、規制のタイミングは今なのだと思います。

財務省主税局は、巷で行われている節税商品や手法は、すべて把握していると考えておくべきです。行き過ぎた節税が盛んになると、時期を見て税制改正や通達で蓋をします。

納税者は、節税商品に蓋をされた場合、どのように対応するかは、最初から考えておくべきです。節税は、常にリスクと隣り合わせだからです。

 

 

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【贈与・譲渡所得】贈与税の配偶者控除と居住用財産の3,000万円控除

2019-08-01

婚姻期間が20年以上の配偶者に居住用不動産を贈与した場合、贈与税の配偶者控除という特例があります。この特例は、贈与した居住用財産等から基礎控除額110万円の他に2,000万円、合計2,110万円まで控除できる制度です。

この特例は、金銭をの贈与を受けて居住用財産を取得しても、居住用不動産そのものの贈与を受けても適用があります。

一般的には金銭の贈与よりも居住用不動産の贈与の方が有利です。
なぜなら贈与された財産は財産評価基本通達により評価しますが、不動産は土地については路線価で、建物については固定資産税評価額で評価します。

路線価は時価の8割、建物の固定資産税評価額は建築価額の5〜6割と言われていますので、同じ2,000万円であっても、金銭よりも不動産で贈与する方がより多く贈与することができるからです。

ところで、この配偶者に対する贈与税の非課税規定は、居住用の家屋の敷地だけでもかまいません。通常、一戸建ての中古の不動産の売買では、建物が古いと建物には値が付かず土地だけの価額となってしまいます。ならば土地のみ贈与を受けた方が、将来売却した場合にはより売却代金を多く受け取れます。

しかし、これには落とし穴があります。
居住用財産を譲渡した場合で譲渡益が出ても、譲渡益が3,000万円までなら税金がかからない、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除という特例があります。この特例の対象となるのは居住用家屋又は居住用家屋とその敷地となっているため、敷地を譲渡だけでは適用ありません。

居住用財産を将来売る可能性がある場合は、敷地だけでなく土地と建物両方の贈与を受けておいた方がよいでしょう。

 

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【法人税・所得税】現物での支払い

2019-05-30

税法では現物での支払いをした場合には、その支払いの時の時価で譲渡があったものとされることがあります。

例えば、離婚にともなう財産分与で、金銭に代えて夫が妻に住宅を渡すような場合です。
これは夫から妻への「贈与」と思われるかも知れませんが、税務的に見れば財産分与請求権を対価とする「譲渡」になります。
譲渡ですから、渡したときの時価から住宅の取得費等を控除した金額がプラスであれば譲渡所得税がかかります。
もっとも、妻に渡した住宅が夫の居住用財産に該当する場合は、居住用の3,000万円控除の適用が可能ですので、確定申告をする必要がありますが実際に課税されることはあまりないでしょう。

他にも、例えば退職にあたって従業員が住んでいた会社所有の社宅を退職金代わりにその従業員にあげたとします。
これは法人からの不動産の贈与ではなく、退職金の請求権を対価とする法人からの「譲渡」になります。したがって、法人側で退職時の社宅の時価から帳簿価額を控除した差額が法人税の課税の対象となります。

法人の配当は決算をして利益が出た場合に株主に金銭で分配するのが一般的です。しかし、例えば子会社を清算するにあたって、清算時の債務を弁済してなお財産が残ったような場合において、子会社は残余財産を換金せずに親会社に現物を分配することもできます。この場合において財産を受けた親会社はその出資額以上の分配となれば、その差額は法人税法ではみなし配当となります。

 

 

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【所得税】31年度税制改正:住宅ローン控除改正(案)

2019-02-06

現在、国会で平成31年度の税制改正の審議がされています。

その中で、所得税法では「住宅ローン控除」の改正が予定されています。
これは、今年(平成31年)10月1日以降引渡された住宅から消費税率が2%引き上げられて10%(注)になります。

このため、住宅の駆け込み需要とその反動に対処するため、引き上げられた2%部分をローン控除に上乗せすることにより需要変動の平準化を図ろうというものです。

-改正内容-
・消費税率 10%が適用される住宅取得等について、住宅ローン控除の控除期間を3年延長(現行 10 年間⇒ 13 年間)する。
・ 11 年目以降の3年間については、消費税率2%引上げ分については、つぎのうちずれか少ない金額が限度額とする。
① 建物購入価格の 2/3% (つまり、3年間で消費税増税分にあたる「建物購入価格の2%(2/3%×3年))
② 住宅ローン年末残高の1%

制度の適用は、平成31年10月1日から平成32年12月31日までの間に居住の用に供した場合を予定しています。

(注)31年4月1日(指定日)の前日(31年3月31日)までに締結した請負契約については、31年10月1日以降の引渡であっても消費税率は8%とする経過措置が講じられています。

【所得税】生活に通常必要でない資産の災害による損失

2019-02-05

住宅や家財を含む生活に通常必要な資産の災害等による損失は、雑損控除の適用を受けることができます。
また、住宅及び家財について災害による損失を受けた場合は、上記雑損控除に代えて災害減免法の適用を受けることもできます。

では、生活に通常必要でない資産の災害による損失は、なんら救済されないのでしょうか?
例えば、別荘が風水害により被害を受けて損失が生じたような場合です。

このような場合は、その損失を受けた年分とその翌年分の譲渡所得の金額※から控除することができます。
(例)別荘の災害による損失が △1,000、ゴルフ会員券の譲渡益が 2,000 の場合、ゴルフ会員権の譲渡益は1,000(2,000-1,000)となります。

なお、雑損控除は時価を基に計算されますが、生活に通常必要でない資産の災害による損失は取得価額を基に計算され、損失の計算方法が異なりますのでご注意下さい。

※平成16年度の税制改正により、不動産等の分離課税の譲渡益からは控除できないと解されています。

不動産 動産 生活用動産
別荘等 競走馬、ゴルフ会員権等 貴金属、書画・骨とう等で1個又は一組が30万円超のもの

【所得税】生活用動産の譲渡

2019-02-04

昔なら不要品として人にあげるか廃棄していたものが、今では手間さえ惜しまなければ、ブックオフ、ハードオフ、ヤフーオークション、メルカリなどで売ることとができるようになりました。

例えば、給与所得者の場合、給与所得以外の所得が20万円を超えると確定申告をしなければならないことになっています(国税庁HP)。
そうすると、洋服、時計、アクセサリー、家具、小物などの生活用動産の譲渡収入が20万円を超えると確定申告しなければならないのでしょうか?

所得税法では、自己又はその配偶者その他の親族の生活用動産を譲渡し、譲渡益が生じても非課税とされています(所法9①九)。ただし、譲渡損がでてもなかったものとみなされます(所法9②)ので、他の所得との損益通算はできません。

非課税となる生活用動産の範囲

生活用動産
生活に通常必要でない動産 生活に通常必要な動産
スポーツカー、高額な楽器など趣味、娯楽性がつよいもの 貴金属等については1個又は1組の価額が30万円を超える下記のものは非課税となる生活用動産から除かれています(所令25)。
一 貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べつこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品
二 書画、こつとう及び美術工芸品
生活の用に供する家具、じゆう器、衣服、貴金属等です。
課税 課税 非課税

【所得税】生活に必要な資産と必要でない資産

2019-02-01

生活に必要な資産か必要でない資産かによって、所得税の取扱いが異なります。

個人が保有する資産は、まず不動産とそれ以外の動産等に区分します。
さらに、不動産、動産等にはそれぞれ生活に通常必要なものとそうでないものに区分します。

これらをまとめると、つぎの表になります。

個人の資産
不動産 動産等
生活に通常必要でない不動産 生活用不動産 生活に通常必要でない動産 生活用動産
別荘等 住宅 競走馬、ゴルフ会員権等 貴金属等、書画・こっとう等 家財
1個又は1組が30万円超 1個又は1組が30万円以下
(所令178) (所令178) (所令25、178)

 

資産を生活に通常必要な資産とそうでないものに分けるのには、理由があります。

・生活に通常必要な資産を売却してもその譲渡益は非課税となります。ただし、譲渡損が生じてもなかったものとみなされます・
(例)通勤用自動車の譲渡益

・生活に通常必要でない資産であっても災害等による損失は、その年とその翌年の譲渡所得の金額から控除することができます。
(例)別荘の火災による損失

・生活に通常必要でない資産から生じる損失は、原則として損益通算の対象となりません。
(例)ゴルフ会員権の譲渡による損失

・生活に通常必要な資産の災害等による損失は、雑損控除として所得控除の対象となります。
(例)台風による自宅の損失

【所得税】セルフメディケーション税制の利用状況

2018-06-30

平成29年度から定期健康診断、人間ドッグなどの「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組」をおこなって方が、自分や生計一の家族にスイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)購入しした場合には、1万2千円を超える部分の金額(8万8千円が上限)を所得から控除できることになっています。
ただし、この適用を受ける場合には、医療費控除の適用を受けることができないことになっています。

この制度をセルフメディケーション税制と呼んでいますが、知名度の低さや対象となる医薬品の種類が少ないこともあって、想定以上に利用頻度が低かったようです。


国税庁によると17年にこの税制を利用した人は2万6000人。確定申告をした2198万人の0.1%にすぎない。人口減少などを背景に大衆薬市場は縮小しており、医療市場調査のアンテリオ(東京・千代田)によると17年は1兆946億円で01年と比べ2400億円減った。(2018/6/27付 日本経済新聞より)


 

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【国民健康保険】退職後の健康保険の選択

2018-05-01

サラリーマンが定年退職するに当たって悩むのが、健康保険です。

選択肢としては特別な場合を除いて、「国民健康保険」か「会社の健康保険の任意継続」のいずれかだと思います。

-国民健康保険を選択した場合-
<概要>
・手続きは、退職日の翌日から14日以内に、国民健康保険課など自治体の担当窓口で行います。
・あまり知られていませんが、国民健康保険の保険料は、住む地域によってその負担に大きな違いがあります。
平均所得者の保険料水準を示す指標(標準化指数)をみると、最も高いのは徳島県で東京都の1.5倍となっています。市町村ではさらに大きな開きがあり、年によって変動がありますが、おおよそ4倍前後の格差があります。(厚生労働省のHPより
・保険料は、所得割と均等割からなっています。
所得割は1世帯全員について、各人ごとに前年の総所得金額等から33万円を控除した金額の合計額が基準となります。
均等割は1世帯あたりの加入者数と、介護保険料の対象(40歳~64歳)になる加入者数に応じて計算されます。
・ただし、上限額が定められていて、平成30年度の東京23区の場合、国民健康保険料の年間上限金額は930,000円となっています。

<留意点>
・退職金は総所得金額等に含まれないため、国民健康保険料には影響しません。
・定年後の再雇用制度の適用を受けていた場合は、給与水準は定年前の半分程度となっていることが多いためあまり大きな影響を受けないかもしれません。しかし、再雇用制度を利用しなかったり、早期退職制度を利用したような場合には退職した年の所得が大きいため国民健康保険を選択すると翌年の保険料が多額になる場合があります。
・また、国民健康保険料は主として前年の総所得金額等をもとに市区町村ごとに定められるため、退職した年に株式売却益や配当等を申告した場合は退職した翌年の国民健康保険料が増加します。場合によっては、源泉分離課税や申告不要制度を利用した方が有利となる場合があります。・・・・<続く>

 

 

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【所得税】セルフメディケーション税制の明細書が公表されました

2018-01-12

今年(平成29年分)から従来の医療費控除とセルフメディケーション税制による医療費控除とのいずれかを選択することができるようになりました。
この税制は、健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う場合において、その方や生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った特定一般用医薬品等購入費について医療費控除として所得金額から差し引くことができるものです。
国税庁のHPにセルフメディケーション税制の明細書が公表されています。

セルフメディケーション税制による医療費控除額
=(①-②)-1万2千円  ※(最高8万8千円)
①その年中に支払った特定一般用医薬品等購入費の総額
②保険金などで補塡される金額

セルフメディケーション税制による医療費控除の特例を受けるためには、確定申告書に「セルフメディケーション税制の明細書」を添付し、健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行っていることを明らかにする書類(注1)の添付又は提示をする必要があります。
なお、特定一般用医薬品等購入費(注2)の領収書の添付又は提示は必要ありませんが、確定申告期限から5年間自分で保存しなければなりません。

(注1)
一定の取組を明らかにする書類とは①氏名②取組を行った年③事業を行った保険者、事業者若しくは市区町村の名称、又は取組に係る診察を行った医療機関の名称・医師の氏名の記載がある例えば次の書類です。
・インフルエンザの予防接種又は定期予防接種(高齢者の肺炎球菌感染症等)の領収書又は予防接種済証
・市区町村のがん検診の領収書又は結果通知表
・職場で受けた定期健康診断の結果通知表
・特定健康診査(いわゆるメタボ健診)の領収書又は結果通知表
・人間ドックやがん検診を始めとする各種健診(検診)の領収書又は結果通知表

なお、経過措置により、平成29年分から平成31年分までの各年分の確定申告については明細書の添付に代えて、医薬品等の領収書の添付又は提示によることもできます

(注2)
特定一般用医薬品等購入費とは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から、薬局などで購入できるOTC医薬品に転用された医薬品の購入費をいいます。

 

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