贈与税

【相続税・贈与税】相続時精算課税のメリット・デメリット

2020-07-22

相続時精算課税の制度とは(👈国税庁HPクリック)、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において、2500万円までは無税、2500万円を超えると一律20%の税率で贈与税が課税される制度です。

また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、この制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

この制度は一度選択すると、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、一般の暦年課税に戻ることはできません。
そのメリット・デメリットはつぎのとおりです。


-メリット-
・この制度の趣旨は、高齢者に偏っているとされる金融資産や不動産などの資産を、相続を待たずに早期に次世代に移転させようというものです。たとえば、「住宅取得資金の贈与の特例」(👈国税庁HPクリック)と併用すれば、今なら最高3700万円まで無税で贈与することができます。

・相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は将来の相続財産に加算しますが、加算する価額は贈与時の価額です。たとえば将来値上がりが見込まれる財産を生前に贈与しておけば値上がりした分だけ相続税の節税になります。

非上場株式の納税猶予制度(👈国税庁HPクリック)と相続時精算課税制度を併用しておけば、万一納税猶予の要件を満たさなくなっても2割の納税で済ますことができ、リスクヘッジになります。

・高収益の賃貸物件などを次世代に早期に移転させることで、所得分散ができ、所得税や将来の相続税の節税につながります。


-デメリット-
・上述のとおり一度この制度を選択すると一般の暦年贈与に戻れません。一般の暦年贈与では基礎控除110万円がありますが、相続時精算課税制度を選択した後は適用できなくなります。したがって、2500万円の特別控除を使い切ると、贈与が110万円以下であっても20%の贈与税が課税されます。

ただし、、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度なので、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与については、一般の暦年贈与の適用をうけることができます。

・相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は将来の相続財産に加算しますが、加算する価額は贈与時の価額です。贈与した財産が将来値下がりすると相続時精算課税制度を選択しなければよかったということになりかねません。

小規模宅地等の特例とは(👈国税庁HPクリック)、一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度ですが、この特例は相続又は遺贈により取得した財産が前提となっています。相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産は対象とはなりません。

・相続税には物納という制度がありますが、物納財産から相続時精算課税制度の適用を受けた財産は除外されています(👈国税庁HPクリック)ので、物納に充てることはできません(相続税法41②本文)。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

【相続税・贈与税】相続時精算課税制度

2020-07-21

相続や贈与のお話をうかがっていますと、たまに「すでに相続時精算課税を選択して実行しました。」という方がいます。

もちろん、ご本人がよく理解した上で実行されている分には何ら問題はありません。
なかには、業者さんに勧められてとか、2500万円まで贈与税がかからないからといった理由の場合があります。

この相続時精算課税制度で一番こわいのは、一度選択をすると後戻りできないことです。
この制度には、メリット・デメリットがありますが、これについては次回以降にあらためてコメントします。


まずは、制度の概要です。

・60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫への贈与が対象です。
・贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要です。
・この制度を選択した年分以降、暦年課税※への変更は不可です。
・贈与者が亡くなった場合の相続税の計算は、相続時精算課税を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

※暦年贈与とは、一般贈与のことで、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。

上述のとおり、相続時精算課税は贈与者が生前に贈与した財産は相続時にあるものと仮定して相続税を計算します。
つまり、贈与者に相続が発生した際に相続税がかかる場合で、贈与した財産の価額が贈与時と相続時で変わらないときは、将来の相続税においては損も得もないというわけです。


-贈与時の贈与税額の計算-
(贈与財産の価額の合計額 - ※特別控除額)☓ 一律20%
※限度額は2500万円。ただし、既にこの特別控除額を控除している場合は、その残額が限度額となります。

-相続時の相続税額の計算-
すでに述べたように、相続時精算課税における贈与者が亡くなった時に、それまで相続時精算課税の適用を受けた贈与財産の価額を相続財産に加算して相続税額を計算します。

その計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税額がある場合は、その贈与税額を控除します。控除しきれない場合は還付を受けることができます。
なお、相続財産に加算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。

 

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【相続税・贈与税】マンション敷地の評価

2020-07-16

相続財産の中にマンションがある、あるいはマンションを贈与するといった場合には、相続税や贈与税の計算においてマンションの評価をしなければなりません。

マンションは、建物部分と土地等(借地権を含む)からなっています。
建物の評価は簡単です。
自分で利用している場合は固定資産税評価額がそのまま建物の評価になります。

土地等の評価は少し面倒です。
まず、マンションが所在する地域に路線価※が定められている場合は路線価で評価します。
路線価が定められていない場合は、土地等の固定資産税評価額に地域ごとに定められている倍率乗じて計算します。

令和2年分の路線価図・評価倍率表(👈国税庁HPクリック)

なお、路線価で評価する場合は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率(👈国税庁HPクリック)で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。
この場合の乗じる面積ですが、マンションの場合は敷地全体のうちの評価するマンションの持分割合になります。

平成29年までのマンション敷地は「広大地の評価」ではありませんでした。
ところが、「広大地の評価」が改められ「地積規模の大きな宅地(👈国税庁HPクリック)となったことにより、敷地規模の大きいマンションにも要件を満たせば評価減が認められることになりました。

「地積規模の大きな宅地」では、マンションのような敷地の持ち分は小さくても、敷地全体で判断するためです。


地積規模の大きな宅地の評価-共有地の場合の地積規模の判定(👈国税庁HPクリック)
【照会要旨】
複数の者に共有されている宅地の場合、地積規模の要件を満たすかどうかは、共有者の持分に応じてあん分した後の地積により判定するのでしょうか。

【回答要旨】
複数の者に共有されている宅地については、共有者の持分に応じてあん分する前の共有地全体の地積により地積規模を判定します。


評価対象となるマンションの

・敷地の面積が、三大都市圏では500㎡以上、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上であること
・敷地を評価する路線価の地区が普通商業・併用住宅地区又は普通住宅地区であること
・敷地の容積率が400%(東京都の特別区においては300%)未満であること

他にも要件はありますが、適用を受けることができるとなると少なくとも2割は評価額を減額することができます。

 

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【相続税】地積規模の大きな宅地の評価

2020-07-14

相続税や贈与税で土地の評価が必要になる場合があります。
比較的大きな宅地を評価する場合は、平成29年までは「広大地の評価」という方法がありました。


通達改正の趣旨
この従来の広大地の評価に係る広大地補正率は、個別の土地の形状等とは関係なく面積に応じて比例的に減額するものであるため、社会経済情勢の変化に伴い、広大地の形状によっては、それを加味して決まる取引価額と相続税評価額が乖離する場合が生じていた。
また、従来の広大地の評価の適用要件は、・・・「定性的(相対的)」なものであったことから、広大地に該当するか否かの判断に苦慮するなどの問題が生じていた。


広大地評価の適用の有無の判断や減額の程度が、評価する税理士によってバラツキがありました。ここに目をつけて、税理士が不動産鑑定士と組んで「見直し税理士」なるものが出現し、多額の成功報酬を請求するようなことがあったそうです。

この広大地の評価方法に代わって、平成30年1月1日以降の相続・贈与税からは、「地積規模の大きな宅地の評価」という方法になりました。

・地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500平方メートル以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000平方メートル以上の地積の宅地をいいます。
・路線価地域に所在するものについては、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在するものとなります。
・指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地が対象から除かれます。

・地積規模の大きな宅地の評価を算式で示せば次です。

評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率などの各種画地補正率 × 規模格差補正率 × 地積(㎡)

規模格差補正率 ={(Ⓐ × Ⓑ + Ⓒ)/(地積規模の大きな宅地の地積(Ⓐ))} × 0.8

※Ⓑ Ⓒは、三大都市圏、三大都市圏以外の地域ごとに定められています。
※詳しくは国税庁HPパンフレット👈(クリック)を参照ください

上記の規模格差補正率は「1」を超えることはないため、地積規模の大きな宅地に該当すれば、2割以上の減額になります。

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【相続税・贈与税】特例事業承継税制と特例承認計画

2020-06-29

事業承継税制には、従来からある一般措置(2009年度創設)と特例措置(2018年度創設)の2つがあります。現状ではこの二つの制度が走っていて特例措置は2027年12月31日までとなっています。

特例措置は一般措置よりもいろいろな点で優遇されていています。たとえば、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限の撤廃、相続の場合の納税猶予割合の引上げなどです。

事業承継税制は、2027年12月31日までなら特例措置の選択を検討することになります。

ただし、この特例措置を受けるためには、会社は認定支援機関※が所見を記載した「特例承継計画」を作成し、都道府県知事の承認を受けなければなりません。
注意しなければならないのは、この「特例承継計画」の都道府県知事による承認は、2023年3月31日までとなっています。

※認定支援機関とは、中小企業が安心して経営相談等が受けられるために専門知識や実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関です。具体的には、商工会や商工会議所などの中小企業支援者のほか、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等が主な認定支援機関として認定されています。

「特例承継計画」の作成はさほどハードルが高くはないので、事業承継税制を利用する可能性が少しでもあるのならとりあえず申請し、承認を受けておいたほうがよいでしょう。
なお、事業承継税制において贈与の場合は事前に、相続の場合は事前・事後どちらでもかまいません。

会社が特例承認計画に記載する内容は下記です。
1. 会社について
2. 特例代表者について
3. 特例後継者について
4. 特例代表者が有する株式等を特例後継者が取得するまでの期間における経営の計画について
5. 特例後継者が株式等を承継した後5年間の経営計画
特例後継者が実際に事業承継を行った後の5年間で、どのような経営を行っていく予定か、具体的な取組内容を記載。

特例承継計画に関する指導及び助言を行う機関における事務について(中小企業庁 財務課)参照

 

【相続税・贈与税】事業承継税制、納税猶予を受けた受贈者が死亡

2020-06-26

事業承継税制で、贈与税又は相続税の納税が猶予されるケースは、次の2つです。
・生前に自社株式を贈与をして贈与税の納税猶予を受ける
・先代の相続を期に相続税の納税猶予を受ける


事業承継には2つの課題があります。
一つ目の課題は、事業そのものの承継です。事業には取引先、仕入先、役員、従業員、金融機関、家族、親戚等々様々な関係者がいます。

事業承継をするにあたってこれら関係者との間の摩擦を極力小さくするには、ある程度の期間と準備が必要だろうと思います。

もう一つの課題は自社株式の承継です。同族会社の場合、後継者は少なくとも5割、できれば3分の2以上の筆頭株主であることが望まれます。

事業そのものの承継と自社株式の承継を先代と後継者がコントロールしながら実行しようとするなら、やはり生前に実行したほうがよいのだろうと思います。


生前に事業承継するとなると自社株式を贈与することになるので、贈与税の問題が生じます。納税資金をどのようにして捻出するかは税負担を考慮しながら個別に検討することになりますが、やむを得ない場合には事業承継税制を利用して納税の猶予を受けることになります。

ところで稀なケースだと思いますが、後継者が不慮の事故や不治の病で先代経営者よりも先に亡くなると、猶予を受けた贈与税はどうなるでしょうか。

この場合には、猶予されていた贈与税は免除されることになっています。もちろん、後継者が贈与を受けた自社株式は、後継者の相続財産になります。


租税特別措置法70条の7 第15項
・・・経営承継受贈者又は当該経営承継受贈者に係る贈与者が次の各号に掲げる場合のいずれかに該当することとなつた場合(省略)には、次の各号に定める贈与税を免除する。この場合において、当該経営承継受贈者又は当該経営承継受贈者の相続人は、その該当することとなつた日から同日(省略)以後6月(省略)を経過する日(省略)までに、政令で定めるところにより、財務省令で定める事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

一 当該贈与者の死亡の時以前に当該経営承継受贈者が死亡した場合 猶予中贈与税額に相当する贈与税


 

 

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【相続税・贈与税】民法特例

2020-06-25

創業社長の子供が長男と次男の2人、早めに後継者を決めておかないと将来後継者争いになりかねない。そこで、生前に後継者を長男にして社長を継がせ、併せて自社株式の贈与も行なった。多額の贈与税が発生したが事業承継税制を使って納税猶予を受けることにより当面の税金の問題は回避した。

この事案で将来創業社長に相続が発生した場合、次男が遺留分を主張したらどうなるでしょう?

話を簡単にするために相続人は長男と次男の2人だとします。次男の法定相続分は2分の1ですから遺留分はその半分の4分の1になります。

せっかく長男に自社株式を集中させたのに、次男が遺留分を侵害されたとして財産の返還請求すると、自社株式の一部が次男に行ってしまう可能性があります。


このような問題に対処するために、経営承継円滑化法では、「遺留分に関する民法の特例」(「民法特例」)という手続きを定めています。

民法特例にはつぎの二つがあります。
■除外合意・・・現経営者から後継者に贈与等された自社株式について、遺留分算定基礎財産から除外する合意です。

後継者が生前に贈与等によって取得した自社株式について、他の相続人は遺留分の主張ができなくなるので、相続に伴って自社株式が分散するのを防止できます。

■固定合意・・・遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価(※)に固定をする合意です。

後継者は、自分の努力で自社株式の価額を上昇させてもその上昇分は遺留分の額に影響させないことができます。

(※)固定する合意時の時価は、税理士、 公認会計士、弁護士等による証明が必要です。


この民法特例を利用するためには、現経営者の推定相続人全員及び後継者で合意をし、合意書を作成することが必要です。

後継者は、合意をした日から1ヶ月以内に「遺留分に関する民法の特例に係る確認申請書」に必要書類を添付して経済産業大臣に申請します。

さらに、その確認後1ヵ月以内に家庭裁判所に許可の申立てを行い、この家庭裁判所の許可を受けて、その効力を認められることになります。

 

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【相続税・贈与税】路線価の時点修正

2020-06-24

今朝の日経新聞によると、国税庁が7月1日に公表予定の路線価について、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い地価が下落している地域について何らかの調整を行うようです。


・・・国税庁は、都道府県が不動産鑑定士の評価を基にまとめる基準地価(7月1日時点、毎年9月ごろに公表)が新型コロナの影響で、広範囲で大幅に下落した場合、その地域の路線価を減額修正できる措置の導入を検討している。

路線価は通達に基づき国税局長が定めている。路線価を減額修正するための法改正は必要なく、国税庁長官が通達を出せば対応できる見通しだ。

地価がどの程度下がった場合に減額修正の措置を導入するのか、対象地域をどう決めるのかなど詳細は今後詰める。対象地域の路線価に1未満の係数を乗じ、減額できるようにする案が検討されているもようだ。(6/24 日経朝刊)


以前のコラムでも書きましたが、路線価を調整する方法は2つあります。
一つは、かつて国税庁から平成4年4月にでた事務連絡に準じる方法です。

この方法だと、路線価より低い価格を納税者が自ら算定して申告しなければならず、納税者にとっても課税庁にとっても煩雑です。

何よりも、路線価は「・・・毎年1月1日を評価時点として、地価公示価格、売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として算定した価格の80%により評価しています。(国税庁HP)」としている以上、20%以上下落していないと利用できないことになり、今の国民感情を鑑みるとちょっと具合が悪いのではないかと思います。

もう一つは、令和元年の台風19号により被害を受けた方で特定の地域の土地等を相続等により取得した場合は、令和元年の路線価の80%で評価されましたが、これに準じた方法をとるのではないでしょうか。

減額する地域と割合は、9月ごろに公表される基準地価(7月1日時点)に基づき決定するのではと思っています。

 

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【相続税・贈与税】事業承継税制は株価が固定

2020-06-22

現在、事業承継税制には、「一般措置」と「特例措置」の2つの制度がありますが、いずれの場合も認定が取り消されると猶予税額を納税しなければならないという大きなリスクがあります。

これ以外にもリスクや注意点がありますが、見過ごされがちな点として、贈与税の納税猶予を受けた場合には、将来の相続まで株価が固定するという点でがあります。


先代経営者等(贈与者)が死亡した場合には、「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除」の適用を受けた非上場株式等は、相続又は遺贈により取得したものとみなして、贈与の時の価額により他の相続財産と合算して相続税を計算します。(国税庁HPより)


これはメリットにもデメリットにもなります。

贈与を受けた時の株価よりも相続の時の株価が上昇していればメリットとなりますが、逆に業績が悪化し株価が下落していればデメリットとなります。

株価が下落しても贈与時の株価で相続税を計算しなければならないため、余計な税負担が生じてしまいます。贈与などせずそのまま相続までもっていればよかったということになってしまいます。

仮に、先代経営者が70歳、後継者が40歳だとして、非上場株式の贈与税の納税猶予制度を利用して事業承継したとします。先代経営者が90歳まで存命だとしたらこの間20年あります。20年先の自社株式が上がっているか下がっているかなど予測のつけようがありません。

この点を理解した上で、制度の適用を検討する必要があります。

 

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【相続税・贈与税】取得者によって異なる取引相場のない株式の価額

2020-06-12

取引相場のない株式は、相続や贈与の場合、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主等か、それ以外の株主かの区分により、それぞれ原則的評価方式又は特例的な評価方式の配当還元方式により評価します。

会社の経営支配力を持っていない株主、つまり少数株主の場合だと配当還元方式により下記の算式で計算します。

例えば、資本金等の額が1,000万円、発行済株式数が200株(1株あたりの資本金等の額50,000円)、配当金額が100万円だとします。
・上記算式の適用にあたっては、まず1株あたりの資本金等の額を50円とした場合の発行済株式数を求めます。
200株 ☓ (50,000円/50円) = 200,000株

・つぎに、200,000株の場合の1株あたりの配当金額を求めます。
1,000,000円 / 200,000株 = 5円/株

これを上記算式に当てはめます。
5円※/10% ☓ 50,000円/50円 = 50,000円
2円50銭未満であったり無配の場合は2円50銭とします。


今、仮にA社の経営支配力を持っている同族株主等である創業社長から後継者の長男に10株、同族株主等でない古参の社員に10株、A社株式を贈与したとします。例えばA社株式の1株あたりの評価額は下記とします。

原則的評価額 : 500,000円
配当還元価額 :   50,000円
長男の贈与税額:(500,000円☓10株 - 110万円)☓15% - 10万円 = 48.5万円 (親子なので特例贈与、税額の計算については国税庁HPを参照ください。)
社員の贈与税額: 50,000☓10株 < 110万円(基礎控除額) ∴0

同じ同族株式でも贈与で受け取る相手が経営支配力を持っている同族株主等か、それ以外の株主かで評価額が変わってきます。
創業者の相続対策の一環で、同族株式を従業員などに贈与してしまいますと、将来困ったことが生じます。
上記の例では古参の社員が退職するので後継者である長男がA社株を買い取るといった場合です。
この場合、長男は経営支配力を持っている同族株主等なので、50万円ではなく500万円で買い取らなければ、長男はその差額450万円について贈与税の問題が出てまいります。
∞∞ 吉岡 ∞∞
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