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【所得税】生活用動産の譲渡

2019-02-04

昔なら不要品として人にあげるか廃棄していたものが、今では手間さえ惜しまなければ、ブックオフ、ハードオフ、ヤフーオークション、メルカリなどで売ることとができるようになりました。

例えば、給与所得者の場合、給与所得以外の所得が20万円を超えると確定申告をしなければならないことになっています(国税庁HP)。
そうすると、洋服、時計、アクセサリー、家具、小物などの生活用動産の譲渡収入が20万円を超えると確定申告しなければならないのでしょうか?

所得税法では、自己又はその配偶者その他の親族の生活用動産を譲渡し、譲渡益が生じても非課税とされています(所法9①九)。ただし、譲渡損がでてもなかったものとみなされます(所法9②)ので、他の所得との損益通算はできません。

非課税となる生活用動産の範囲

生活用動産
生活に通常必要でない動産 生活に通常必要な動産
スポーツカー、高額な楽器など趣味、娯楽性がつよいもの 貴金属等については1個又は1組の価額が30万円を超える下記のものは非課税となる生活用動産から除かれています(所令25)。
一 貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べつこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品
二 書画、こつとう及び美術工芸品
生活の用に供する家具、じゆう器、衣服、貴金属等です。
課税 課税 非課税

【所得税】生活に必要な資産と必要でない資産

2019-02-01

生活に必要な資産か必要でない資産かによって、所得税の取扱いが異なります。

個人が保有する資産は、まず不動産とそれ以外の動産等に区分します。
さらに、不動産、動産等にはそれぞれ生活に通常必要なものとそうでないものに区分します。

これらをまとめると、つぎの表になります。

個人の資産
不動産 動産等
生活に通常必要でない不動産 生活用不動産 生活に通常必要でない動産 生活用動産
別荘等 住宅 競走馬、ゴルフ会員権等 貴金属等、書画・こっとう等 家財
1個又は1組が30万円超 1個又は1組が30万円以下
(所令178) (所令178) (所令25、178)

 

資産を生活に通常必要な資産とそうでないものに分けるのには、理由があります。

・生活に通常必要な資産を売却してもその譲渡益は非課税となります。ただし、譲渡損が生じてもなかったものとみなされます・
(例)通勤用自動車の譲渡益

・生活に通常必要でない資産であっても災害等による損失は、その年とその翌年の譲渡所得の金額から控除することができます。
(例)別荘の火災による損失

・生活に通常必要でない資産から生じる損失は、原則として損益通算の対象となりません。
(例)ゴルフ会員権の譲渡による損失

・生活に通常必要な資産の災害等による損失は、雑損控除として所得控除の対象となります。
(例)台風による自宅の損失

【贈与税】住宅取得資金贈与の非課税の注意点

2018-12-23

住宅取得資金贈与の非課税制度の適用要件に、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をするとともに、贈与を受けた年の翌年3月15日まで(遅くとも贈与を受けた年の翌年12月31日まで)までに居住しなければならない、という要件があります。

ここで注意しなければならない点は、まず、「住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をする」という点です。
たとえば、住宅ローンで住宅を取得し、その後親から金銭の贈与を受け住宅ローンの繰り上げ返済をしたというケースです。
繰り上げ返済はローンの返済であって、贈与を受けた金銭を住宅取得等資金に充てたことにはならないため、この制度の適用がありません。

もう一つは、「贈与を受けた年の翌年3月15日までに・・・住宅用の家屋の新築等をする」という点です。
不動産の場合、往々にして年度末の3月引き渡しというケースがあります。
そうすると、たとえばマンションで30年12月に贈与を受け、予定では翌年3月10日に引き渡しを受ける予定だったところ、天候のせいで3月末に引き渡しとなってしまうと、「贈与を受けた年の翌年3月15日までの新築等をする」に該当しないため制度の適用が受けられなくなってしまいます。

このような可能性がある場合は、贈与そのものを31年1月又は2月にして、その住宅の取得等をし、32年に贈与税の申告とすることをお勧めします。

【コラム】取締役が認知症になったら?

2018-11-07

日本はすでに高齢化社会だといわれていますが、戦後の第一次ベビーブーム世代、すなわち団塊の世代・・・1947年(昭和22)から1949年(昭和24年)生まれ・・・が、これから70歳(2020年)、75歳(2025年)にさしかかります。
さらなる高齢化にともなって、取締役在任中に認知症になってしまったというケースが今後増えることが予想されます。

-参考-
「厚労省が今回発表した推計によれば、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占める見込みです。」
認知症フォーラム.comより


認知症になれば、取締役としての職務執行が困難となります。取締役在任中に認知症が発症した取締役に退任してもらうには、つぎの三つの方法が考えられます。
①後見の開始、補佐の開始(会社法331条1項2号)
②任期満了(会社法332条1項)
③解任(会社法339条1項)

ところで、認知症と診断されてもその程度によって三の類型があり、法定後見はそれぞれに応じて「後見」「保佐」「補助」の三があります。

日常生活を営むことが困難な人で最も重い類型 成年後見
判断能力が相当程度低下してしまった人で中間に位置する類型 保佐
断能力がある程度低下してしまった人で最も軽い類型 補助

 


①後見の開始、補佐の開始について
会社法の定めにより、成年被後見人と被補佐人に該当する場合は、取締役としての資格喪失による退任ということになります。(被補助人は資格喪失による退任とはなりません。)

②任期満了について
認知症が発症した取締役の任期があと少しという場合は、任期満了まで待つという選択肢もあります。

③解任について
会社法では、取締役は、いつでも株主総会の決議によって解任することができるとされています。また、取締役の解任は、定款に別段の定めがない限り、株主総会の普通決議で可能です。
ただ、取締役本人が退任を拒む場合には、世間の目もあり、できれば避けたい方法です。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

 

 

 

 

【贈与税】教育資金の一括贈与の非課税制度の見直し

2018-11-01

日経の記事によると、教育資金の一括贈与の非課税制度が2018年末で期限が切れることから、次のような点について見直しが議論されるとのことです。

・贈与を受ける子・孫に所得制限を付ける
・非課税の対象金額を縮小する
・贈与を受ける子・孫の年齢制限をつける


この制度は、祖父母などから孫への贈与を促すことを趣旨として、直系尊属(祖父母や父母)から子や孫が贈与を受けて教育資金口座を開設した場合には、受贈者一人につき1,500万円を限度※として贈与税を非課税とするという制度です。

※習い事など学校等以外に支払う金銭については、500万円が限度となります。


しかしながら、扶養義務者相互間(祖父母や父母から子や孫へ)で教育費又は生活費で通常必要と認められる金額を、その必要の都度贈与する場合は、その贈与により取得した金銭は贈与税が非課税となっています。(扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A 国税庁


この制度の最大の長所は、直前の相続税の節税対策に使えることです。
相続開始前3年以内に贈与を受けた財産についっては、相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算しなければならないことになっています。
しかし、この教育資金の一括贈与の非課税制度を適用した贈与については、相続開始前3年以内であっても加算しなくてもよいことになっています。(No.4161 贈与財産の加算と税額控除 国税庁

なお、受贈者が30歳に達した等で教育資金口座に係る契約が終了した場合において、贈与を受けた教育資金のうち使い切れず残額が残った場合にはその年において、贈与税贈与税が課税されます。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

【相続税】認知症となった創業者への退職金の支払い

2018-10-30

認知症は、高齢者になればいつ発症してもおかしくない病気です。

創業者である会長が、認知症になってしまった事例です。
計画では、会長への退職金は、死亡退職金として相続税の納税資金に充てることになっていました。

死亡退職金だと、被相続人である会長には所得税・住民税がかかりません。
また、相続税を計算する上において死亡退職金はみなし相続財産となりますが、生命保険金と同様に次のような非課税枠があります。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

 

しかし、このまま会長職にとどまったままだと、業務への支障が懸念されます。やむなく、死亡時ではなく生前に退職してもらうことになりました。

未だ認知症の初期症状で日常生活に大きな支障はないものの、先々のことを考えると金銭管理の面で多額の退職金の支払いは躊躇します。
このような場合は、存命中は生活費として会長に退職年金で支払い、相続後は相続人に年金又は一時金で支払う方法があります。

退職年金で支払う方法は、死亡退職金と比較して税務面では必ずしも有利ではありません。
しかし、これから進行するであろう認知症の人の生活資金の確保、多額の金銭を持たせるリスクの回避、さらに将来の納税資金という観点から検討に値するものと思われます。

退職年金の場合の課税関係は以下のとおりです。
-会長存命中-
退職年金は公的年金等として会長の雑所得になる。

所得税法35条2項
二 恩給(一時恩給を除く。)及び過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給される年金

-会長死亡時-
定期金に関する権利としてみなし相続財産になる(上記非課税の適用はない。)

相続税法3条1項
六 被相続人の死亡により相続人その他の者が定期金(これに係る一時金を含む。)に関する権利で契約に基づくもの以外のもの(略)を取得した場合においては、当該定期金に関する権利を取得した者について、当該定期金に関する権利(第2号に掲げる給与に該当するものを除く。)

-相続人が年金形式受け取った場合-
遺族年金となり所得税は非課税

所得税法9条1項三号
ロ 遺族の受ける恩給及び年金(死亡した者の勤務に基 づいて支給されるものに限る。)

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

【コラム】どんな経営者でも認知症になるリスクはある

2018-10-20

同族会社の経営者は、「自分が死んだら、この会社はどうなる」といった心配はしますが、自分が認知症になったらどうなる、とはあまり考えません。

しかし、どんなに人格者であっても、どんな実力者であっても、人は歳を重ねれば認知症になるリスクが高まります。これは創業社長といえども例外ではありません。

-参考-
「厚労省が今回発表した推計によれば、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占める見込みです。」
認知症フォーラム.comより

やっかいなのは、認知症はいきなり認知になるのではなく徐々に進行していくことです。
物忘れの頻度が最近多くなってきた、単に固有名詞が出てこないだけではなく出来事そのものを忘れてしまう、突然感情的になってしまう、車庫入れで車をこすってしまうことが多くなった、などなど。

周囲が明らかに認知症と判断できれば、認知症を前提に対応できるのですが、認知症は徐々に進行し、しかも本人にその自覚がないためやっかいです。
家族なら本人に認知症と伝えることができますが、社長に向かって他の役員が認知症などといえるはずがありません。

不愉快かも知れませんが、社長自身も一定の確率で認知症になるという自覚が必要です。
65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になる時代がもうすぐ来ることを鑑みれば、おそくても70歳頃までには後継者を決め、事業承継の準備をしなければなりません。

 

∞∞吉岡∞∞

【国民健康保険料】国民健康保険あれこれ

2018-09-04

1.退職した場合の健康保険

現役のサラリーマンの頃は、各企業が運営する組合健保(健康保険組合)か協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入していたと思います。退職すると任意継続しない場合、国民健康保険に加入することになります。通常はこのパターンだと思いますが、退職してからもフリーランスで働く場合は、業種が限られていますが国民健康保険組合の加入という選択肢もあります。

国民健康保険法 市町村 各市町村(特別区を含む)が運営
国保組合 同種の事業又は業務に従事する者で組織する団体が運営
健康保険法 組合健保 大企業とそのグループ会社や子会社が運営
協会けんぽ 全国健康保険協会という団体が運営

 

2.国民健康保険料と保険税

ところで退職後に加入する国民健康保険ですが、お住まいの地域によって国民健康保険料となっていたり国民健康保険税となっていたりします。
たとえば東京都では、23区と立川市、西東京市が保険料、その他の市町村は保険税となっているようです。

国民健康保険法では、「・・・被保険者の属する世帯の世帯主から保険料を徴収しなければならない。」とされています。ただし、「地方税法の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りでない。」とされていて(国民健康保険法76条①、各市町村はどちらを選択してもよいとされています。
なお、被保険者が病気やケガをした際の保険給付に差はありません。

保険料と保険税、どちらであっても保険料(税)をきちんと納めている分には違いはないのですが、保険料(税)滞納したときに取り扱いに差が出てきます。

保険料の場合は国民健康保険法により時効が2年(国民健康保険法110)なのに対して、保険税の場合は地方税法により5年で時効となっています(地方税法18)。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

【相続税】配偶者居住権

2018-07-20

今年の民法の改正で、配偶者居住権が認められることになりました。
配偶者居住権とは、被相続人の所有していた住宅に住んでいた配偶者が、原則としてその配偶者が亡くなるまでの間、その住宅に賃料などを払うことなく利用し続けることを認める権利です。

日税連では、毎年「税制建議書」をとりまとめて公表していますが、この民法の改正を受けて、平成31年度の税制建議書の中で、配偶者居住権の評価方法の留意点をあげています。

・相続財産として何らかの評価が必要
・譲渡不可であるため、評価額の上限を設けることが必要
・制度の乱用による租税回避防止策が必要

なお、この制度の施行日についは周知に十分な時間が必要としているようですが、現時点では未定です。

(平成31年度税制改正に関する建議書より)
民法の改正により、配偶者の長期的な居住権と生活資金を確保するため、配偶者居住権制度が創設される。
その税務上の評価のあり方について、法制審議会「民法(相続関係)等の改正に関する要綱」では、配偶者が配偶者居住権を取得した場合には、その財産的価値に相当する価額を相続したものと扱うとしており、かつ相続税法第2条では「相続又は遺贈により取得した財産」に対して相続税を課税するとしていることからすれば、何らかの評価が必要であると考えられる。
他方、配偶者居住権の立法趣旨や法律上譲渡が禁止されていること等に鑑みれば、上限を設けること等も検討すべきである。この場合には、配偶者居住権は当事者が合意すれば容易に設定できることから、租税回避防止の観点も踏まえる必要がある。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

【相続税】小規模宅地等の特例の見直しの趣旨その2

2018-07-06

小規模宅地等の特例は、宅地等のうち80%減額できる「特定事業用宅地等である小規模宅地等」、「特定居住用宅地等である小規模宅地等」及び「特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等」と「貸付事業用宅地等である小規模宅地等」があります。

平成30年度改正で「特定居住用宅地等である小規模宅地等」のうち、いわゆる「家なき子」とともに、「貸付事業用宅地等である小規模宅地等」が見直されています。

その内容はつぎのとおりです。
・貸付事業用宅地等の範囲から,相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等を除外する。
・ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供しているものを除く
・平成30年4月1日前から貸付事業の用に供されている宅地等は従前の取扱いとする。

その趣旨はつぎのとおりです。

・・・また、貸付事業用宅地等の軽減措置については相続開始前に貸付用不動産を購入することにより金融資産を不動産に変換し、金融資産で保有する場合に比し、相続税評価額が圧縮され、かつ、小規模宅地等の特例も適用できるという節税策が雑誌などで盛んに紹介され、低金利も背景に賃貸アパートが増加する状況となっていました。特にタワーマンションでは、その減額効果が大きくなるといわれています。また、会計検査院による随時報告「租税特別措置(相続税関係)の適用状況等について」(平成29年11月)においては、申告期限経過後短期間で本特例の適用を受けた宅地等を譲渡している事例も多いこと、譲渡している事例のうち貸付用不動産が多数を占めることが指摘されていました。このような状況に対応するため、平成30年度税制改正では、相続開始前 3 年以内に貸付用不動産を取得した場合には、貸付事業用宅地等の特例は適用できないこととされました。ただし、3 年以上継続的に事業的規模で不動産貸付けを営んでいる場合は、金融資産を不動産に変換して節税策を講じるものともいえないことから、適用対象から除外されません。
財務省・平成30年度税制改正の解説 641頁より)
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