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【相続税・贈与税】非上場株式の納税猶予制度の適用ケース

2020-08-13

平成30年度の税制改正で、非上場株式の納税猶予制度は10年間の特例措置として、その要件が緩和されました。
特例措置を適用したとしても、つぎの事業承継者がこの制度を利用しない限り、原則としてその時点で納税しなければらなりません。

納税猶予を継続するには、創業者からその子供、さらにその子供と数十年に渡ってこの制度を利用していくことになります。
この制度には、長期間に渡って特定事由に該当しないか管理し続けられるのか、また継続届出書を失念せずに提出し続けられるのかのか、といった問題があります。


これらの問題点があったといても適用を検討してもよいケースがいくつか考えられますが、そのうちの一つがつぎです。

非上場株式の納税猶予の特例を利用するのは、非上場会社の株価が高く、贈与税や相続税が多額になってしまう場合です。

非上場株式の評価方法には、類義業種比準方式と純資産価額方式(国税庁HP👈クリック)がありますが、会社の規模が大きなればなるほど、類似業種比準価額のウエイトが高くなり、業績の影響を受けやすくなります。

「売上そのものは好調なのだが、これから数期に渡って設備の大規模更新をするため減価償却費が多額となり赤字が見込まれる。」
こういった場合は、一時的に株価が低くなることが見込まれます。

非上場株式等の贈与税の納税猶予の特例の適用を受けた非上場株式は、贈与者である先代経営者が死亡した場合には、その特例の適用を受けた非上場株式等は、相続又は遺贈により取得したものとみなして、贈与の時の価額により他の相続財産と合算して相続税を計算します(国税庁HP👈クリック)。

つまり、一時的に低いときの株価で将来相続税が計算できることになります。

∞∞ 吉岡 ∞∞

【相続税・贈与税】非上場株式の納税猶予制度のリスク

2020-08-12

平成30年度の税制改正で、非上場株式の納税猶予制度は10年間の特例措置として、その要件が緩和されました。
・猶予の対象となる株式が3分の2から100%
・相続の場合の納税猶予が80%から100% 等々
ですが、中小企業庁がいう「爆発的に伸びている(中小企業庁HP👈クリック)」という実感はありません。


特例措置になって相続税・贈与税が100%納税猶予(一般措置:相続80%、贈与100%)となっても、つぎの事業承継者がこの制度を利用しない限り、原則としてその時点で納税をしなければらないことに変わりはありません。

納税猶予を継続しようとすると、創業者からその子供である事業承継者、さらにその子供(創業者からみれば孫)と数十年に渡ってこの制度を利用し続けることになります。
数十年先に社会が、そして会社がどうなっているか想像もつきません。そもそも孫が事業を承継してくれるかどうかわかりません。

非上場株式の納税猶予制度の適用を検討しても、いざ実行となると躊躇されるのは、こういった点にあるのかもしれません。


非上場株式の納税猶予制度のリスクで意外と見逃される点が、税務署への継続届出書です。

継続届出書は、経営承継期間内は毎年、その後は3年ごとに提出しなければなりません。
もし、継続届出書の提出を怠ると、猶予されている相続税・贈与税の全額と利子税を納付しなければなりません。

非上場株式の納税猶予制度は複雑ですが、一つひとつの手続きはさほど難しいものではありませんから、税理士などの専門家ならその実行は可能です。

しかし、長期間に渡ってこの制度を管理していくとなると納税者も税理士もある程度のリスクを伴います。

なぜなら、会社が資産管理会社に該当しないかなどの特定事由に該当しないか、猶予期間中ずっと見ていかなければならないからです。
また、継続届出書の提出が毎年ならまだよいのですが、5年経過後は3年に一度となると、うっかり提出の失念ということがあり得るからです。

さらに、会社の経理担当者が代わった、顧問税理士が代わった、顧問税理士事務所の担当者が代わったという場合、継続届出書の提出などの引き継ぎが漏れてしまうおそれもあります。

非上場株式の納税猶予制度は、少なくとも贈与時や相続時に非上場株式にかかる税金を用意しなくてもよい制度ですから、魅力的な制度です。
実行にあたっては、顧問税理士とよく相談して実行することが望まれます。

その意味で、非上場株式の納税猶予制度の実行だけを高い報酬で請け負う専門家は避けたほうがよいと思っています。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

 

 

 

【相続税・贈与税】非上場株式の納税猶予制度の趣旨

2020-08-11

平成30年度の税制改正で、非上場株式の納税猶予制度は10年間の特例措置として、その要件が緩和されました。
・猶予の対象となる株式が3分の2から100%
・相続の場合の納税猶予が80%から100% 等々

これを受けて、所轄省庁である中小企業庁では下記のように評価しています。


・事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する「法人向け事業承継税制」を、平成30年度の 税制改正で抜本的に拡充。
・ 拡充前は、年間400件程度の申請であったが、拡充後は足元の申請件数は年間6000件に迫る 勢いであり、爆発的に伸びている。(中小企業庁HP👈クリック)


制度が緩和されて申請件数は増えていると思いますが、爆発的に伸びているという実感はありません。6000件という数字は30年12月の1ヶ月分の申請件数を12倍したもので、やや誇張ぎみの感がします。

制度そのものは依然として複雑ですし、事業承継者は贈与税や相続税という租税債務を長期間に渡って背負っていかなければならない、要件を満たさければ一度に課税という、本質的な部分は変わっていないからだと思います。

この制度は事業承継税制と位置付けられているにも関わらず、不動産や金融資産の塊のような会社(資産管理会社)は除外されています。また、贈与時や相続時の雇用の平均がやむ得ない場合を除いて8割維持しなければならないなどの要件が付されています。

これは、制度創設の趣旨が中小企業で働く従業員の雇用の確保だからです。
中小企業オーナーの相続税対策を前面に出してしまうと、金持ち優遇と言われてしまうからだと思います。

本当に中小企業の株式が次世代への事業承継のネックとなっているのなら、一定の要件に該当する中小企業は、(例えば)20年会社が存続したら、猶予されていた相続税や贈与税は免除とすればよいと思います。中小企業オーナの目の色が変わり、もっと申請件数が増えると思います。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

 

【法人税】中小法人と中小企業者

2020-08-07

そのときには何とか理解できても、しばらくして思い返すとこんがらがっているのが、この中小法人と中小企業者です。
なお、令和元年の税制改正で中小企業者が改正されています。

中小法人は、法人税法の本法に定義されていることから「法人税法上の中小法人」、中小企業者は租税特別措置法に定義されていることから「租税特別措置法上の中小企業者」といったりすることがあります。

しかし、法人税法上の中小法人は租税特別措置法の中でも使われていたりします。
中小法人、中小企業者が適用される主な税制は、末尾を参照ください。

まず、法人税法上の中小法人は下記です。

資本金の額が1億円以下であるものが中小法人となります。(法人税法66条2項、6項2号)

ただし、次に掲げる法人を除きます。
・大法人(資本金の額が5億円以上の法人)との間に完全支配関係(国税庁HP👈クリック)がある普通法人

一方、租税特別措置法上の中小企業者は下記です。

資本金の額が1億円以下であるものが中小企業者となります。(租税特別措置法42条の4第8項7号、同施行令27条の4第12項)

ただし、次に掲げる法人を除きます。
・2分の1以上を同一の大規模法人※に保有されている法人
・3分の2以上が複数の大規模法人※の所有に属している法人

※大規模法人とは、次に掲げる法人をいう。
・資本金の額が1億円超の法人
・大法人(資本金の額が5億円以上の法人)との完全支配関係(国税庁HP👈クリック)がある普通法人

※厳密な表現ではありませんのでご注意ください。

-中小企業者が適用される主な税制-

中小法人 中小企業者
法人税の軽減税率 (租税特別措置法42条の3の2第1項) 試験研究費の税額控除の特例 (租税特別措置法42条の4第4項)
欠損金の繰越控除制度の特例 (法人税法57条1項、11項) 機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除の特例 (租税特別措置法42条の6)
欠損金の繰戻還付 (法人税法80条1項、租税特別措置法66条の13第1項) 経営改善設備を取得した場合の特別償却または税額控除の特例 (租税特別措置法42条の12の3)
交際費等の損金不算入制度の特例 (租税特別措置法61条の4第2項) 特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却または税額控除の特例 (租税特別措置法42条の12の4)
特定同族会社の留保金課税の適用除外 (法人税法67条1項) 給与等の引上げおよび設備投資を行った場合等の税額控除の特例 (租税特別措置法42条の12の5②)
貸倒引当金の適用 (法人税法52条1項、2項) 特定事業継続力強化設備等の特別償却 (租税特別措置法44条の2)

 

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【所得税・相続税】老人ホームへの入居と特例適用

2020-08-06

住宅の取得、譲渡、保有、相続については、様々な税務上有利な特例があります。

住宅借入金等特別控除(ローン控除)
マイホームを売ったときの3,000万円の特別控特例
マイホームを譲渡した場合の軽減税率の特例
特定のマイホームを買い換えたときの特例
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
小規模居住用宅地等の特例
・その他、不動産取得税、固定資産税、登録免許税 等々

住宅について税金を優遇するのは、仮に住宅を売って利益が出たからといってストレートに課税してしまうと、つぎに住む住宅が買えなくなってしまいます。相続が発生したからといって相続税をまるまるかけてしまうと相続人の住む家がなくなってしまいます。

この他住宅関連産業は裾野が広いことから、景気対策として税制が利用されて来た面もあります。


このような住宅にかかる税務上の特例は、原則として住宅に実際に住んでいることが条件です。例外的にやむを得ない理由により、実際に住んでいなくても特例が受けられる場合があります。

例えば、住宅借入金等特別控除(ローン控除)は転勤等で住宅に住めなくなった場合であっても、家族が引き続き住んでいればローン控除が受けられます。

また、被相続人の居住用財産を売ったときの特例や小規模居住用宅地等の特例では、介護等が必要になったため老人ホーム等に入居した場合であっても、特例の適用が可能となっています。


ところで、被相続人の居住用財産を売ったときの特例と小規模居住用宅地等の特例老人ホーム等への入居の場合では、両者は微妙に取り扱いがことなるので注意が必要です。

-被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例-
自宅から老人ホーム等に移るときには要介護等の認定をうけていなければなりません。

被相続人が、・・・要介護認定若しくは要支援認定又は・・・障害支援区分の認定を受けていたかどうかは、特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなる直前において、被相続人がその認定を受けていたかにより判定します。国税庁HP(👈クリック)

-小規模居住用宅地等の特例-
必ずしも自宅から老人ホーム等に移るときには要介護等の認定を受けている必要はなく、相続時に要介護等の認定を受けていれば適用があります。

「被相続人の居住の用」には、被相続人の居住の用に供されていた宅地等が、養護老人ホームへの入所など被相続人が居住の用に供することができない一定の事由(次の(1)又は(2)の事由に限ります。)により相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合(省略)におけるその事由により居住の用に供されなくなる直前の被相続人の居住の用を含みます。国税庁HP(👈クリック)

(1) 介護保険法第19条第1項に規定する要介護認定若しくは同条第2項に規定する要支援認定を受けていた被相続人又は介護保険法施行規則第140条の62の4第2号に該当していた被相続人が次に掲げる住居又は施設に入居又は入所をしていたこと。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

【コラム】MMT(現代貨幣理論)

2020-08-04

「自国通貨建てで国債を発行できる国は財政赤字を心配せずに歳出を拡大できる」。1年ほど前、世界で論争が起きたMMT(現代貨幣理論)。主唱者の一人の米学者ステファニー・ケルトン氏は、昨年の来日時に「日本では財政赤字が自動的な金利上昇につながらず量的緩和も機能している」と述べ、すでにMMTを実践していると指摘した。当時、中央銀行や主流派学者は猛反発したが、コロナ禍を前に、今や先進国の多くが日本の後を追っている。
(2020/08/03 日経)


今回のコロナ禍にあたっては、10万円を一律給付する特別定額給付金が12.8兆円、Go Toキャンペーン事業が1.6兆円、家賃支援給付金2.0 兆円・・・、過去3度のコロナ対策と合わせた真水は計 61.6 兆円程度(第一生命経済研究所)とされています。

「コロナ禍にあたって各国は巨額の財政支出を迫られた。日本も66兆円の国債を増発した・・・(上記日経)」とのことです。

国債はいったん市中で消化された後、日銀が大量に購入しているそうです。その購入代金は、日銀が印刷する紙幣です。

これを複式簿記的な表現をすれば、国は国債を発行してお金を手に入れます。
日銀はその国債を市中から買い入れます。

結果として国は日銀からお金を借り入れ、日銀は国にお金を貸したことになります。
国債の買い入れ代金は日銀の負債側には「発行銀行券」として計上されますが、日銀がかかったのは紙代とインク代だけです。

財政規律など考えずそれが無制限に膨らんでもよいとするのがMMT(現代貨幣理論)なのではないでしょうか。


つまり国民が国家をの信頼する限り、諸外国がその国を信頼する限り、いくら財政支出しても問題ないということのようです。

逆に言えば、国民や諸外国がその国の通貨を信用しなくなればハイパー・インフレになり国が破綻します。

そうすると、やはり通貨の発行にあたっては、国が赤字でも国民には潤沢な預貯金がある、国民が勤勉である、技術力が優れている、豊かな観光資源がある、など国に何らかの裏付けがなければならないのだろうと思います。

国が多額の債務をおったままでは、国が国債を発行できる余力はそれだけ小さくなっているわけですから、今回のコロナ禍で膨れ上がった債務はやはり将来に渡って返済して行かなければならないものだと思います。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

 

 

 

【コラム】最低所得保障(べーシックインカム)

2020-08-03

最低所得保障(べーシックインカム)をはじめとした所得保障制度の導入論が先進国で再び勢いづいている。スペインが導入し、米国などでも実証実験が予定される。新型コロナウイルスが低所得層を直撃したことや、経済構造の急速な変化が雇用を不安定にしていることが背景にある。

ベーシックインカムは全国民に一律の金額を恒久的に支給し、必要最低限の生活を保障する仕組みを指すのが一般的だ。生活保護をはじめとする既存の所得再配分政策が貯金や自宅などの保有資産、収入によって受給対象を厳しく絞るのとは一線を画す。一国で導入した例はまだない。(2020/08/02 日経)


日本には生活保護や失業保険といった社会保障制度はありますが、ベーシックインカムは原則、年齢・性別・所得の有無を問わないとされています。

当然のことながら高所得者にも支払われるため、社会的に恵まれている人にまで支給するのは公平ではないという議論が出て来ます。
また、働かなくても生活ができるのとなると国民の勤労意欲を損なう懸念があります。

そもそも「全国民に一律の額を支払う場合、日本なら1人あたり月5万円で年70兆円以上かかる。(日経)」とする財源をどうするのかという問題があります。
ベーシックインカム導入に併せて社会保障全般の見直しをするにしても、70兆円をひねり出すことは困難でしょう。


一定水準以上の所得者に給付したベーシックインカムを、もう一度国が回収する方法はあります。所得税を課税してしまえばよいのです。

所得税・住民税を課税しても税引き後の金額が手元に残るというなら、一定水準を超えると給付したベーシックインカムに相当する税を上乗せすればよいのです。

しかし、それでもやはり問題があります。
不動産や預貯金等の金融資産をお多く持つ、資産リッチな人たちです。
この人たちは、固定資産税は払っているけれども所得税は多くは払っていません。

この人達から給付したベーシックインカムを回収するには、資産とマイナンバーを紐付けるしかないでしょう。

余談ですが、国民全員に一律10万円給付した「特別定額給付金」について所得課税の議論があってもよかったと思っています。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

【贈与税・相続税】住宅の使用貸借

2020-07-31

無償で物を貸し借りすることを、使用貸借といいます。
では、子や孫に住宅を買ってタダで住まわしてあげたらどうでしょう?

民法では、夫婦、直系血族、兄弟姉妹などは互いに扶養義務があると定められています。
税務ではこの民法における扶養義務の履行について、原則として贈与税は課税しないことになっています。

扶養義務の履行のうち住宅については、国税庁よりつぎのとおり取り扱うことが明らかにされています。


[Q5-1] 子が居住する賃貸住宅の家賃等を親が負担した場合、贈与税の課税対象となりますか。

[A] 扶養義務者相互間において生活費に充てるために贈与を受けた場合に、贈与税の課税対象とならない「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除きます。)をいい、通常の日常生活を営むのに必要な費用に該当するかどうかは、贈与を受けた者(被扶養者)の需要と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲かどうかで判断することとなります。
したがって、子が自らの資力によって居住する賃貸住宅の家賃等を負担し得ないなどの事情を勘案し、社会通念上適当と認められる範囲の家賃等を親が負担している場合には、贈与税の課税対象となりません。国税庁HP(👈クリック)


「子や孫に住宅を用意してあげる」というのは、二重の意味で節税効果があります。
東京の場合、都心の職場に近い家族向けの住宅というと25万円/月くらいはでしょうか。

更新料などの諸費用を加味すれば年間300万円以上、10年なら3000万円以上を、贈与税の基礎控除とは別に無税で子や孫に実質的に移転させることができます。

さらに、その住宅を相続まで保有していても構いませんし、途中で子や孫に贈与する選択肢もあります。
住宅は、土地は路線価(公示地価の80%)、建物は固定資産税評価額(建築価格の半分程度の価額)なので、キャッシュで持っているよりも相続税や贈与税において節税効果があります。

 

 

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【贈与税】親子間での使用貸借

2020-07-30

無償で物を貸し借りすることを、使用貸借といいます。
他人との間での使用貸借は、本やボールペンなどの筆記具ぐらいでしょうか、あまり思いつくものはありません。

これが親族、特に親子となると使用貸借の範囲はグッと広がります。
そもそも物の貸し借りで、親子間でお金を払う(賃貸借)ことの方が少ないかもしれません。

親子間での使用貸借の典型例は、住宅の敷地でしょう。
東京でも郊外に行けば、親の自宅の敷地に子供が結婚をして家を建てるといったことはさほど珍しくありません。

ご注意いただきたいのは、親子間で地代(借地料)の授受があった場合です。
ただで土地を利用しているのだから固定資産税ぐらいはらいなさい、ということはあるかもしれません。
この程度の地代なら問題ないのですが、親子間で近隣相場並みの地代の授受をしてしまうと土地の賃貸借となって子に借地権が発生してしまいます。

この場合の借地権の価額はつぎになります。
路線価等で評価した更地の価額 ☓ 借地権割合※

※借地権割合は、路線価図や評価倍率表に表示されていて、国税庁HP(👈クリック)で見ることができます。

借地権が発生しているにも関わらず借地権の対価の授受がない場合は、親から子へ借地権の贈与があったものとされますので、ご注意ください。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

【贈与税】贈与税の暦年課税による節税の検討

2020-07-28

暦年課税の贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。(国税庁HP👈クリック)


1年間にもらった財産の合計額ですから、父から200万円、母から100万円もらったとしても、基礎控除額は1年あたり110万円です。

この110万円をどうみるかですが、例えば1年あたり310万円を子や孫に贈与したとします。
贈与税額(310万円-110万円)☓10%=20万円※
※課税価格200万円までの贈与税率は10%

これを10年間続ければ合計3100万円の贈与となりますが、その贈与税額は合計200万円となります。

一方、3100万円を一度に贈与すると贈与税額は約1080万円※となります。
※(3100万円-110万円)☓45%-265万円=1080.5万円 (計算方法👈国税庁HPクリック)

税額の差が約880万円(1080万円-200万円)ありますが、これは基礎控除110万円が10回使えたことと、贈与税の税率は贈与する財産の額が増えれば増えるほど税率が高くなる(超過累進税率)であることによります。


孫が4人いれば、相続財産約1億2千万円(3100万円☓4人)を800万円(200万円☓4人)の贈与税の負担で孫(次の次の世代)に移転させることができます。

暦年贈与を使った相続税の節税の手順はつぎです。。

・相続財産を洗い出し、適用される相続税の税率の見当をつけます。
・{相続税の税率>贈与税の税率}で贈与する財産の総額と贈与の期間を決めます。
・他の相続人の遺留分に配慮します。
・相続後にもめることのいないように、例えば長男と次男の家族のバランスをとるなど公平に贈与します。
・子に贈与する場合は、3年以内の贈与財産の加算※に留意します。
・孫に贈与する場合は、孫は通常は相続人ではないので3年以内の贈与財産の加算※の適用がないので、一代飛ばしも検討します。

※相続などにより財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額が加算されます。贈与財産の加算👈国税庁HPクリック)

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

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