-概要-
相続時精算課税制度では、この制度を選択した後の贈与財産の額を累計し、累計額が2,500万円までは無税、2,500万円を超える場合には超える額に対して一律20%の税率で贈与税が課税されます。
さらに、贈与財産は全て相続税の課税対象となり贈与者の相続税の計算に取り込まれ、支払った贈与税は相続税から控除されます。その結果、不足があれば納付し、払い過ぎがあれば還付されます。
-相続税対策-
相続時精算課税制度において相続税の対象になるのは、贈与時の評価額です。将来値上がりする財産を贈与すれば節税対策になりますが、値上がりするか値下がりするかは誰にもわかりません。
例えば、土地についてみてみると、東京区部住宅地の平成12年3月(2000/3)の市街地価指数を100とした場合、昭和60年3月(1985/3)は100.5、バブルピークの平成2年9月(1990/9)は270.4、平成16年3月(2004/3)は91.2、平成28年3月(2016/3)は106.0となっています。つまり、バブルの頃の平成2~3年頃にピークを迎えた地価はその後一度下がって、再度平成12年頃に上昇して、もう一度下がって、また上がって今日に至るということです。(市街地価格指数、一般社団法人日本不動産研究所より)
贈与時の評価額が相続税の対象になるのことが、相続時精算課税制度を相続対策として利用することを難しくしています。
ただ、全く利用できないかというと、必ずしもそうではなりません。
よく行われているのが、収益物件を相続時精算課税制度を利用して子や孫に移転する方法です。
(例)
祖父所有土地の上の賃貸アパートを孫に贈与する。
建築家価額 | 5,000万円 | |
固定資産税評価額 | 3,500万円 | 5,000万円×(仮)70% |
相続税評価額(貸家) | 2,450万円 | 3,500万円×(1-0.3:貸家割合) |
賃料 | 1、500万円 | 年額 |
地代 | - | 祖父と孫との間の土地の利用は使用貸借 |
相続時精算課税制度を利用して賃貸アパートを贈与すれば、特別控除額の範囲内(2,450万円<2,500万円)なので、贈与時の税の負担はありません。
一方、祖父の相続時にアパートの贈与時の評価額2,450万円は相続税の計算に取り込まれ、孫は2割加算された相続税を負担しなければなりません。
しかし、孫にアパートの家賃が毎年入ってきますので、孫にアパートを贈与した方が有利になるケースがでてきます。
∞∞ 吉岡 ∞∞