民法では、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」(民法549条)と 定められています。
これにより、贈与者だけが財産を引き渡す義務を負い(片務)、ただで(無償)、合意するだけで成立する(諾成)契約といわれています。
さらに、「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」(民法550条)とされていています。
つまり、贈与契約は必ずしも書面によらなくても成立しますが、贈与が履行されたものを除き、書面によらない贈与はいつでも撤回できることになります。
-贈与の履行-
贈与税は、贈与契約の成立とその履行に基づいて課される税金です。
例えば、父は子に100万円をあげますといい、子は父に100万円もらいますといえば贈与契約は成立しますが、これだけでは贈与税は課税されません。実際に親から子に100万円渡されることにより贈与税が課税されます。
祖父が子や孫のために預金通帳をつくり自分の預金から一定金額を毎年移しておいたとしても、その通帳や印鑑を祖父が管理していれば贈与の履行がなされていません。したがって、その預金は祖父の預金(名義預金)となってしまいます。
-連年贈与-
国税庁のHPにつぎのQ&Aがあります。
毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合
Q1
親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A1
定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、各年の受贈額が110万円以下の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります。
なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。
したがって、贈与契約をまとめて行ってしまうと、上記Q&Aのような問題が出てきます。贈与契約は毎年行い、税務署に誤解されないように、できれば一定額でない方が望ましいでしょう。
-贈与契約書の作成-
贈与契約は必ずしも書面によらなくても成立しますが、できれば確定日付のある贈与契約書を作成した方が望ましいでしょう。
-あえて贈与税の申告-
よく行われている方法として、贈与を基礎控除の110万円を少し超える金額で行い、あえて贈与税の申告をして実績をのこすやり方があります。ただし、贈与税の申告をしたからといって必ずしも贈与契約の成立と履行が行われた証明にはなりません。あくまでも、贈与の事実を補完するものです。
∞∞ 吉岡 ∞∞