贈与とはどのような契約でしょうか
贈与とは、民法第549条において、「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方がそれを受諾することによってその効力を生ずる。」と定められています。
つまり、贈与が成立するには、あげる人(贈与者)の「あげます」という意志と、もらう人(受贈者)が「もらいます」という意志が合致していることが必要です。
名義預金などは贈与が成立してないといえます
贈与は贈与者と受贈者の意志が合致しないといけませんので、例えば、親が子供名義の預金通帳を作り、親の現金をその通帳へ入金し、子供がそれを知らなかった場合には、贈与は成立していないことになります。
贈与が成立していると説明できるようにしましょう
贈与は当事者間で契約が成立しますが、第三者にはわかりにくい場合があり得ます。贈与が成立していることの説明がしやすいように、次のようにしておくとよいでしょう。
・贈与契約書を作成し、署名押印しておく
・不動産は、速やかに所有権移転登記をする
・有価証券は、速やかに名義変更手続きをする
・現金の贈与の場合は、贈与者から受贈者への銀行口座へ振り込みにする
・贈与税の申告書を税務署へ提出する
贈与税が課税される財産と課税されない財産があります
贈与税の対象となる財産は、現金、預金、有価証券、土地、建物など財産的価値のあるものだけではなく、債務の免除を受けるなど経済的に贈与を受けたものと同様の効果を生ずるものも含まれます。
また、法人からの贈与により取得した財産や扶養義務者相互間の生活費や教育費などについては贈与税は非課税となっています。
贈与税の申告期限ギリギリは税務署が混み合います
贈与税は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに申告しなければなりません。
申告最終日は、所得税の確定申告期限と同じ日なので税務署が混雑しています。
贈与税の申告書は、受贈者の住所地の所轄税務署へ提出します。
贈与税の納税も3月15日が期限となります。
贈与税の申告を忘れた場合でも申告は可能です
贈与税の申告を期限までにするのを忘れた場合であっても、後日の申告(これを期限後申告といいます)を税務署は受け付けてくれます。
ただし、各種特例が使えない場合が多く、無用な加算税や延滞税がかかることがありますので申告を忘れないようにしましょう。
暦年課税には贈与税の110万円の基礎控除があります
贈与税の申告は、お小遣いのたぐいまでしなければならないわけではありません。
年間110万円までは贈与税は課税されないことになっており、この金額を贈与税の基礎控除といいます。
この基礎控除以下の贈与を受けた場合には、税務署へ贈与税の申告する必要はありません。
つまり、年間110万円以下の贈与を受けた場合には、結果的に贈与税がかからないというメリットがあります。
また、110万円を超える贈与を受けた場合でも110万円を控除(マイナス)して贈与税を計算することになります。
暦年課税による贈与税は超過累進税率です
受贈者が直系尊属かそれ以外かにより計算が変わってきます。
(1)下記(2)以外の場合
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円超 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
(2)直系尊属から20歳以上への贈与の場合
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円超 600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円超 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,000万円超 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
1,500万円超 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
3,000万円超 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
(具体的な計算)
例えば、20歳以上の人が直系尊属から500万円の贈与を受けた場合の贈与税は次のように計算します。
・500万円-110万円(基礎控除)=390万円 …課税される金額
・390万円×20%-30万円=48万円 …贈与税の金額
暦年課税方式を使う相続税の節税は基本中の基本です
暦年課税における年間110万円の基礎控除はそれほど多額ではないともいえますが、受贈者ごとに毎年110万円使えますので長期的に贈与すればメリットがあります。
例えば、110万円以内の金額又はそれを少し超える金額の財産を、複数の子に何年も贈与する方法があります。
そのようにすれば長期的には多額の財産を次の世代に移転する事ができるので、将来の相続税の節税をすることができます。
また、子だけではなく孫に対して贈与する方法もあります。
相続人でない孫へ贈与した場合、相続開始前3年以内の贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算する必要がなく、この点については子への贈与より有利となります。