平成22年度の税制改正により創設されたグループ法人税制により、完全支配関係がある法人間で支出した寄附金の額がある場合には、寄附をした法人の寄附金の額は全額を損金不算入になるとともに、寄附を受けた法人の受贈益の額についてはその全額を益金不算入とすることになりました(法 25 の2、37 ②)。
この場合においては、親法人による子法人の株式の寄附修正が必要となっています(法令9①七、119の3⑥)。
また、完全支配関係にある法人間で譲渡損益調整資産※を譲渡した場合には、その譲渡損益は繰り延べることとされました(法 61 の 13 ①)。
※譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産で次に掲げるもの以外のものをいいます。
・売買目的有価証券
・譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
・その譲渡の直前の帳簿価額が 1,000 万円に満たない資産
ところで、完全支配関係にある親法人から子法人へ譲渡損益調整資産を簿価で譲渡した場合はどうなるでしょうか。
(例)
親法人A社から100%子会社B社へ簿価1億円(時価3億円)の土地を簿価で譲渡した。
【寄附金部分について】
土地の簿価と時価との差額2億円については、親会社A者から子会社B社へ寄附をしたことになります。
グループ法人税制の適用により、親会社A社の寄附金2億円は全額損金不算入、子会社B社の受贈益2億円は全額益金不算入となります。
また、親会社A社においては、子会社株式の2億円を増額する寄附修正が必要となります。
【譲渡益部分の繰延について】
親会社A社の譲渡損益調整資産の譲渡益2億円は、グループ法人税制により繰り延べられることになり、譲渡損益調整勘定として子会社B社がその土地を譲渡等する時まで課税が留保されることになります。
-A社の仕訳-
現金 1億円//土地 1億円 寄付金 2億円//譲渡損益調整勘定2億円 |
寄付金2億円は全額損金不算入(法37②) 譲渡損益調整勘定による利益の繰り延べ (法 61 の 13 ②) |
子会社株式 2億円//利益積立金 2億円 | 寄附修正(法令9①七、法令119の3⑥) |
-B社の仕訳-
土地 1億円//現金 1億円 土地 2億円//受贈益 2億円 |
受贈益2億円は全額益金不算入(法25の2①) |
∞∞ 吉岡 ∞∞