法人税法における定期同額給与は、「臨時改定事由」か「業績悪化改定事由」に該当しないと、期中における改定は認められていません。
臨時改定事由 | 役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定 |
業績悪化改定事由 | 経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限る) |
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、業績が悪化した場合や業績悪化が見込まれることにより、期中に役員報酬を減額する場合があります。
国税庁では、このようなケースへの対応として「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」(国税庁HP👈クリック)を公表しています。
問6はイベント等の開催中止要請により、予定していた収入がなくなったので役員給与を減額するケースです。
問6-2は、外国からの入国制限が外出自粛要請により、主要な売上が減少し、今後さらに業績が悪化する見込みなので役員給与を減額するケースです。
FAQでは、問6の「業績が悪化した場合」、問6-2は「業績悪化が見込まれる場合」ですが、いずれの場合も業績悪化事由に該当するとしています。
テレビ報道などを見ていると、客層が家族連れに変わったがほぼコロナ前に戻った、テイクアウトが好調でコロナ前の8割り程度には回復したなどのコメントがあります。
緊急事態宣言解除を受け営業を再開、その後客足が戻りつつあるので期中に役員報酬を元に戻した、こういった場合はどうでしょうか。
これについては、一度業績悪化改定事由で減額をしたものを期中にもとに戻す法人税法の規定がないとして、定期同額給与とは認められないという見解が大勢のようです。
しかしながら、役員が病気が原因で職務執行ができない期間は減額し、職務執行が可能となったら従前の給与に水準に戻すのは臨時改定事由に該当するとする、下記Q&Aがあります。
今回の企業業績の悪化は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言など基づき、店舗の休業や国民の外出自粛をしたことによるものです。
下記Q&Aの役員の病気からの復帰がOKなら、企業が今回のコロナ禍での業績悪化から復帰するのも同様に考えてもよいのではないかと、個人的には思っています。
役員給与に関するQ&A (国税庁HP👈クリック)
(臨時改定事由の範囲-病気のため職務が執行できない場合)
[Q5]
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ご質問のように、役員が病気で入院したことにより当初予定されていた職務の執行が一部できないこととなった場合に、役員給与の額を減額することは臨時改定事由による改定と認められます。また、従前と同様の職務の執行が可能となった場合に、入院前の給与と同額の給与を支給することとする改定も臨時改定事由による改定と認められます。したがって、甲に支給する給与はいずれも定期同額給与に該当します。
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∞∞ 吉岡 ∞∞