同社は販売目的の仕入れであり、仕入れ時の消費税を全額差し引くことができると主張。一方、東京国税局は販売までの期間にマンション居住者から家賃を受け取っていると指摘し、「家賃収入も事業の目的の一つで、全額を差し引く処理はできない」として同社に申告漏れを指摘した。
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判決で清水裁判長は「仕入れの目的が不動産の売却にあることは明らか。賃料収入は不可避的に生じる副産物として位置づけられる」と指摘。賃料収入が見込まれるからといって全額を差し引けないとする国税の判断は「相当性を欠く」と結論づけた。(2020/09/04 日経)
消費税は、課税売上に係る消費税額から課税仕入に係る消費税額を控除して差額を納税し又は還付を受ける仕組みになっています。
ところが、課税仕入に係る消費税には、①課税売上のみに対応するもの、②非課税売上のみにに対応するもの、③課税売上と非課税売上に共通するものがあります。
事業者が個別対応方式を選択した場合は、控除する課税仕入に係る消費税額は原則としてつぎの算式により計算します。
課税仕入控除税額 = ①+ (③ × 課税売上割合)(国税庁HP👈クリック) |
この新聞記事だけでは十分わかりかねますが、おそらく国は個別対応方式における用途区分で、③課税売上と非課税売上に共通するものと主張し、納税者は①課税売上のみに対応するものと主張したものと思われます。
同様の裁判で国は、転売目的の中古不動産に係る消費税の課税仕入れの用途区分は共通仕入れとして主張して来たようです。
今回は国が敗訴しました。まだ地裁判決なので国が控訴すればどうなるかわかりませんが、本件は納税者の主張の方に分があるような気がします。
なお、記事にもありますが今年(令和2年)の税制改正で、居住用賃貸物件の取得等に係る消費税の仕入税額控除が改正されていますので、このような問題は生じなくなっています。
∞∞ 吉岡 ∞∞