先日、取引相場のない株式はそもそも取引相場がないわけですから、その評価額自体がいわばフィクションだとお話しましました。
では大雑把かといえば決してそうではなく、その評価方法は非常に精緻にできています。
精緻であるが故に、一般には理解し難いケースが生じてしまいます。
取引相場のない株式は、相続や贈与の場合、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主等か、それ以外の株主かの区分により、それぞれ原則的評価方式又は特例的な評価方式の配当還元方式により評価します。
この原則的評価方式ですが、大会社の場合は類似業種比準方式、小会社の場合は純資産価額方式、中会社の場合はこれらの併用方式で評価するのが基本になります。
併用方式は、さらに中会社の規模に応じ類似業種比準価額と純資産価額の割合が変わります。
3つに区分され、中の大は類似業種比準価額が0.9対純資産価額が0.1になります。以下、中の中は0.75対0.25,0.6対0.4と区分されています。
また、類似業種比準方式は国税庁が公表する類似業種株価に比準して計算します。その比準要素は評価する会社の一株当たりの「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」の3つです。
評価方法について詳しく知りたい方は、国税庁HP(←クリック)をご参照下さい。
非上場株式の相続や贈与の場合で大変なのは業績がよい会社です。さらに歴史があって過去の利益が蓄積され、不動産や上場株式の含み益が多額にある、そんな会社です。
このような会社の多くは【 類似業種比準方式 << 純資産価額 】となっています。そのため、純資産価額のウエイトが高くなればなるほど株式の評価額は高くなります。
先ほど類似業種株価に比準する要素は、一株当たりの「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」と申しましたが、このうち2要素がゼロの場合、つまり無配当で赤字決算になってしまったケースですが、この場合比準要素1の会社になってしまいます。
このような場合、中会社の規模にかかわらず、類似業種比準価額が0.25に対して純資産価額が0.75で評価することになっています。
例えば中の大の会社で今までは類似業種比準価額が0.9に対して純資産価額が0.1の割合だったとします。ところが、業績が悪化し赤字になったため配当をしませんでした。その結果、比準要素が1になってしまいましたといった場合、類似業種比準価額が0.25に対して純資産価額が0.75の割合になってしまいます。
つまり、業績が悪くなったのに、株価が上がってしまうという結果になってしまいます。長い間実務をやっていると、稀にこういうケースに遭遇します。
∞∞ 吉岡 ∞∞