平成元年、いわゆるバブルの最中に発遣された下記「負担付贈与通達」は現在も残っています。(国税庁HP👈クリック)
(趣旨)
最近における土地、家屋等の不動産の通常の取引価額と相続税評価額との開きに着目しての贈与税の税負担回避行為に対して、税負担の公平を図るため、所要の措置を講じるものである。
(本文)
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土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)のうち、負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得したものの価額は、当該取得時における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
負担付贈与とは、受贈者側に債務を負担させることを条件にした贈与です。
例えば、不動産を買った時の借金を引き継いでくれれば、この不動産あげるよ、というのが負担付き贈与です。
この通達が発遣されたバブルの頃は路線価は時価の30%~60%程度だったと思います。
(ちなみに、路線価は平成3年に公示価格の70%程度に引き上げ、さらに平成4年に今の80%程度に引き上げました。)
そうすると、仮に時価100土地を借金して購入し、借金を40返済した後子供にその借金とともに負担付き贈与すれば、子供は時価100の土地を60の債務で取得することができます。
売買も然りで、時価100の土地を子供と60で売買しても贈与税がかからないことになります。
上記通達は、その(趣旨)にもありますように、このような租税回避を対処したものでした。
現在は、路線価は時価(公示価格)の8割に設定され、地価もバブルの頃に比べれば安定しています。
実務では、不動産の売買においては路線価は一つの目安になっています。これは親族間や同族会社との間での売買でも同じで、ケースによりますが公示地価との2割程度の幅があるからといって、直ちに租税回避とはならないだろうと思います。
実際、訴訟で納税者が勝訴した事例もあります。
・・・。もっとも個々の事案に対してこの基準をそのまま硬直的に適用するならば、結果として違法な課税処分をもたらすことは十分考えられるのであり、本件はまさにそのような事例であると位置づけることができる。・・・
(東京地裁 平成19年8月23日判決〔確定〕〔納税者勝訴〕 TAINS Z888-1280)
例えば親から子へ路線価で不動産を移し、直ちに子供が不動産業者に譲渡する、こういった明らかに租税回避を狙ったもに対処するために、この通達を残しているのではないか思います。
∞∞ 吉岡 ∞∞