祖父母が孫に教育資金を贈与したからといって必ずしも贈与税がかかるわけではありません。
民法では、「直系血族」と「兄弟姉妹」は原則として扶養義務があり,特別な事情がある場合には「3親等内の親族」も扶養義務を負うとされています。
相続(贈与)税法でも、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は、贈与税は非課税と定められています。
この非課税の規定と教育資金の一括贈与の非課税の規定と何が違うかというと、前者は教育費を支出の都度贈与した場合であり、後者は将来の教育費までも一括して贈与した場合です。
したがって、教育費をその都度贈与する限り非課税なので贈与税の基礎控除110万円も関係ありません。また、通常必要な範囲の教育費なら金額の上限があるわけでもありません。
この制度創設の趣旨が、高齢者の資産を若い世代に移転させるとともに、その資金を教育資金として有効に活用してもらい経済を活性化の一助にしようというものです。
この制度は、相続開始前3年以内の贈与財産の相続税の課税価格の加算の適用がありません。さらに、贈与者が死亡した場合で未使用の教育資金が残ったとしても相続税の対象とはなりませんので、相続税対策としても有効です。
-制度の概要-
<教育資金の一括贈与時>
30歳未満の受贈者が、教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、祖父母など直系尊属から①信託受益権を付与された場合、②書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合又は③書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合(以下「教育資金口座の開設等」といいます。)には、信託受益権又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります。
<教育資金口座の契約終了時>
教育資金口座の契約が終了※した場合には、非課税拠出額((1,500万円が限度)から教育資金支出額(学校等以外に支払う金銭については、500万円が限度)を控除した残額があるときは、その残額はその契約終了時に贈与があったものとされます。
※教育資金口座に係る契約は、つぎのときに終了します。
①受贈者が30歳に達したこと
②受贈者が死亡したこと
③口座の残高が0(ゼロ)になり、かつ、その口座に係る契約を終了させる合意があったこと
-教育資金とは-
(1) 学校等に対して直接支払われる次のような金銭をいいます。
① 入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
② 学用品の購入費や修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
(注) 「学校等」とは、学校教育法で定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学(院)、
専修学校及び各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園又は保育所などをいいます。
(2) 学校等以外に対して直接支払われる次のような金銭で教育を受けるために支払われるものとして社会通念上相当と認められるものをいいます。
<イ 役務提供又は指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの>
③ 教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
④ スポーツ(水泳、野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など
⑤ ③の役務の提供又は④の指導で使用する物品の購入に要する金銭
<ロ イ以外(物品の販売店など)に支払われるもの>
⑥ ②に充てるための金銭であって、学校等が必要と認めたもの
⑦ 通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費
-教育資金口座の開設の手続き-
この非課税制度の適用を受けるためには、教育資金口座の開設等を行った上で、教育資金非課税申告書をその口座の開設等を行った金融機関等の営業所等を経由して、信託や預入などをする日までに、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。なお、教育資金非課税申告書は、金融機関等の営業所等が受理した日に税務署長に提出されたものとみなされます。
-支払い-
教育資金口座からの払出し及び教育資金の支払を行った場合には、その支払に充てた金銭に係る領収書などを、次の(1)又は(2)の提出期限までに金融機関等の営業所等に提出する必要があります。
(1) 教育資金を支払った後にその実際に支払った金額を口座から払い出す方法を選択した場合
領収書等に記載された支払年月日から1年を経過する日
(2) (1)以外の方法を選択した場合
領収書等に記載された支払年月日の属する年の翌年3月15日
詳しくは国税庁HPをご参照下さい。
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