【相続税】認知症となった創業者への退職金の支払い

認知症は、高齢者になればいつ発症してもおかしくない病気です。

創業者である会長が、認知症になってしまった事例です。
計画では、会長への退職金は、死亡退職金として相続税の納税資金に充てることになっていました。

死亡退職金だと、被相続人である会長には所得税・住民税がかかりません。
また、相続税を計算する上において死亡退職金はみなし相続財産となりますが、生命保険金と同様に次のような非課税枠があります。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

 

しかし、このまま会長職にとどまったままだと、業務への支障が懸念されます。やむなく、死亡時ではなく生前に退職してもらうことになりました。

未だ認知症の初期症状で日常生活に大きな支障はないものの、先々のことを考えると金銭管理の面で多額の退職金の支払いは躊躇します。
このような場合は、存命中は生活費として会長に退職年金で支払い、相続後は相続人に年金又は一時金で支払う方法があります。

退職年金で支払う方法は、死亡退職金と比較して税務面では必ずしも有利ではありません。
しかし、これから進行するであろう認知症の人の生活資金の確保、多額の金銭を持たせるリスクの回避、さらに将来の納税資金という観点から検討に値するものと思われます。

退職年金の場合の課税関係は以下のとおりです。
-会長存命中-
退職年金は公的年金等として会長の雑所得になる。

所得税法35条2項
二 恩給(一時恩給を除く。)及び過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給される年金

-会長死亡時-
定期金に関する権利としてみなし相続財産になる(上記非課税の適用はない。)

相続税法3条1項
六 被相続人の死亡により相続人その他の者が定期金(これに係る一時金を含む。)に関する権利で契約に基づくもの以外のもの(略)を取得した場合においては、当該定期金に関する権利を取得した者について、当該定期金に関する権利(第2号に掲げる給与に該当するものを除く。)

-相続人が年金形式受け取った場合-
遺族年金となり所得税は非課税

所得税法9条1項三号
ロ 遺族の受ける恩給及び年金(死亡した者の勤務に基 づいて支給されるものに限る。)

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

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