被相続人が消費税の課税事業者であった場合で、相続人がその事業を承継したときの消費税の納税義務の判定は次のとおりです。(消法10)
相続があった年 | 被相続人の基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超えるか否かで納税義務を判定します。 |
相続があった年の翌年又は翌々年 | 被相続人の基準期間の課税売上高と相続人の基準期間の課税売上高との合計額が1,000万円を超えるか否かで判定します。 |
相続人が2人以上いる場合で、被相続人の遺産が各相続人に分割されていない状態のことを共同相続といいます。
この共同相続の場合の消費税の納税義務は、どうなるでしょうか。
このような場合は、法定相続分で判断するとされています。
例えば、被相続人の基準期間の課税売上高が3,000万円だとして、共同相続人が配偶者と子供2人であったします。
この場合、納税義務の判定に用いる被相続人の基準期間における課税売上高は、配偶者は3,000万円×法定相続分1/2=1,500万円、子2人は各3,000万円×法定相続分1/4=750万円となります。
消基通1-5-5( 共同相続の場合の納税義務) 法第10条第1項又は第2項《相続があった場合の納税義務の免除の特例》の規定を適用する場合において、2以上の相続人があるときには、相続財産の分割が実行されるまでの間は被相続人の事業を承継する相続人は確定しないことから、各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱う。この場合において、各相続人のその課税期間に係る基準期間における課税売上高は、当該被相続人の基準期間における課税売上高に各相続人の民法第900条各号《法定相続分》(・・・)に規定する相続分に応じた割合を乗じた金額とする。 |
通常、相続財産の分割の実行は年の途中で行われます。
例えば、亡くなったのが2月で、その年中に遺産分割協議が整ったような場合、遺産の分割は相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法第909条:分割の遡及効)とされていることからどのように判断すればよいでしょうか?
相続財産の分割が年の途中で実行さた場合の扱いは、相続があった年、相続があった年の翌年又は翌々年のいずれも、法定相続分で消費税の納税義務を判断してもよいようです。
その根拠としては、東京国税局と大阪国税局の次の文書回答事例が参考になります。
東京国税局 (平成24年9月18日付) 前年に相続があった場合の共同相続人の消費税の納税義務の判定について |
(国税庁HP👈) | |
大阪国税局 (平成27年3月24日付) 相続があった年に遺産分割協議が行われた場合における共同相続人の消費税の納税義務の判定について |
(国税庁HP👈) |
なお、上記文書回答事例の中で、質問者は、納税義務の判定に用いる被相続人の基準期間における課税売上高を法定相続分で判定することについて、下記の点を掲げています。
■消費税は事業者が販売する商品やサービスの価格に含まれて転嫁していくものであることから、その課税期間が課税事業者に該当するかどうか、特に免税事業者から課税事業者となる場合には、事業者自身が事前に予知しておく必要があること
■課税事業者となる場合には、消費税法に規定する帳簿の記載などが必要となりますのでこれらに対する事前準備や簡易課税制度を選択する、あるいは免税事業者が課税事業者となることを選択する場合は、その課税期間の開始の日の前日までに所定の届出書を納税地の所轄税務署長に提出することなどからも、事前に予知しておく必要があること
■(相続があった年は)被相続人の基準期間における課税売上高だけで納税義務の有無を判定するものですが、相続があった年に、年の途中から、しかも相続の直後に煩雑な事務処理をしなければならないこと
■相続財産が未分割の場合における納税義務の判定方法が消基1-5-5に示されていること
遺産分割があった年の翌年の納税義務の判定については、下記の取扱の規定があります。
消令21( 相続があつた場合の納税義務の免除の特例) 相続により、2以上の事業場を有する被相続人の事業を2以上の相続人が当該2以上の事業場を事業場ごとに分割して承継した場合に・・・については、・・・被相続人の基準期間における課税売上高は、当該被相続人の当該基準期間における課税売上高のうち当該相続人が相続した事業場に係る部分の金額とする。 |
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