新型コロナウイルス感染の長期化でオフィス縮小や店舗閉鎖が相次ぐなか、退去時に支払う「原状回復」費用を過剰請求されるケースが多発している。オーナーが施工業者を指定するのが慣例で競争原理が働かず、適正金額より3~6割高く請求されることがある。第三者による査定が重要だ。(2020/09/06 日経)
オフィスビルでも住宅でも、入居のときはオーナー、入居者ともに前向きな状態で、あまり揉める場面は出てきません。
ところが、退去となるとオーナーサイドでは新たな入居者を募集しなければならず、その間空室になり減収になります。
入居者サイドでは、つぎのオフィスを契約、内装、引っ越し、保証金が戻ってくるまでのつなぎ資金の調達、従前のオフィスの原状回復など、後ろ向きの業務が続きます。
住宅の場合とちがってオフィスは、通常、契約期間終了前に退去して原状回復まで終わらせます。
原状回復工事が契約期間中に終わらない場合には、原状回復工事が終わるまでの賃料が継続します。
大企業であれば、総務部などの担当部署が事務的に進めてくれますが、中小企業だと社長自ら交渉に当たらなければならず、意外と面倒です。
ところで、オフィスの場合、ビルのオーナー側では相当額の保証金を預かっています。
原状回復工事をオーナー側で行う場合は、預かった保証金から差し引いて残額を入居者に返還するのが一般的です。
この保証金から差し引くこととなる原状回復工事に要した費用相当額は、仮に収入として経理していなくても、消費税の計算では課税売上になります。
また、費用として経理していなくても原状回復工事に要した費用は課税仕入となります。
ちなみに、退去に関連して、賃貸借の契約期間満了前の解約で違約金が発生する場合があります。
この場合の違約金は、オーナーが入居者から中途解約されたことに伴い生じる逸失利益を補填するために受け取るものですから、損害賠償金として消費税の課税の対象とはなりません。
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