法人税では、所得金額の計算において、損金として認められるためには、損金経理が要件となっている項目があります。
損金経理とは、「法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう。(法法2①二十五)」とされています。
つまり、この損金経理が要件となっている費用項目については、株主総会で承認された決算書において費用処理されていなけえばならない、言い換えれば申告調整(別表四での減算)は認められないということです。
例えば、減価償却費についてはつぎのように規定されています。
・・・損金の額に算入する金額は、・・・償却費として損金経理をした金額のうち、・・・「償却限度額」・・・に達するまでの金額とする。(法法31①) |
これは次のようになります。
損金経理した金額 ≧ 償却限度額 | ⇒ 償却限度額 |
損金経理した金額 < 償却限度額 | ⇒ 損金経理した金額 |
減価償却費の他に損金経理を要件とする主な項目はつぎのとおりです。
・繰延資産
・未払使用人賞与
・貸倒引当金
・貸倒損失
・圧縮記帳 等々
ところで役員退職給与の損金算入ですが、平成18年の税制改正までは損金経理が要件でした。
それまでは、役員に支給した退職給与は、職務執行の対価の後払いなのか利益処分なのかの判断を、会社に求めていました。
職務執行の対価の後払いならば損金となりますが、その意思表示として損金経理が必要でした。
平成18年に会社法が施行され、役員退職給与は役員の職務執行の対価であるとされ、利益処分による支給ができないことになりました。
これに伴い、それまで損金経理が損金算入の要件とされていましたが、損金経理要件が廃止され、次の取り扱いになっています。
法人税基本通達9-2-28( 役員に対する退職給与の損金算入の時期)
退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とする。 |
これにより、原則は株主総会の決議で役員退職給与としての債務の額が確定するため、そのタイミングで損金に算入されます。
なお、経理処理は問われていませんので、役員退職給与引当金の取り崩しであっても、仮払金経理であっても、申告調整(別表四での減算)が認められることになります。
ご注意いただきたいのは、上記通達のただし書きのケースです。
例えば、病気死亡などにより株主総会の決議前に役員退職給与を支払ったり、資金繰りの都合で株主総会後に支払ったりした場合には、損金経理が要件となっています。
∞∞ 吉岡 ∞∞