平成22年度の税制改正で、グルー法人税制ができましたが、完全支配関係にある企業グループには強制適用です。
制度創設の趣旨はつぎのとおりです。
グループ法人が一体的に経営されている実態に鑑みれば、グループ内法人間の資産の移転が行われた場合であっても実質的には資産に対する支配は継続していること、グループ内法人間の資産の移転の時点で課税関係を生じさせると円滑な経営資源再配置に対する阻害要因にもなりかねないことから、連結納税の選択の有無にかかわらず、その時点で課税関係を生じさせないことが実態に合った課税上の取扱いと考えられます。
このことから、完全支配関係(・・・)がある内国法人間の取引一般について、次の措置が講じられました。・・・(財務省HP 👈クリック)
このグループ法人税制の中に、譲渡損益調整資産※を100%グループ内の他の内国法人に譲渡した場合には、その譲渡損益を繰り延べるという規定があります。
繰り延べられた譲渡損益は、その譲渡を受けた他の内国法人がグループ外へ譲渡したり、減価償却費の計上に応じて戻し入るとされています。(法 61 の 13)(詳しくは国税庁HP 👈クリック)
※譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産で次に掲げるもの以外のもの。
・売買目的有価証券
・譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
・その譲渡の直前の帳簿価額 が 1,000 万円に満たない資産
「今期相当利益がでそうだ。」という場合に、会社の資産に含み損のあれば、グループ内の他の会社に譲渡して損失を実現させてしまうという節税が(ややグレーですが)行われて来ました。
ところが、グループ法人税制ができたことにより100%グループ内ではできなくなってしまいました。
そこで、総務経理部長に第三者割当増資をして、形式的に100%グループではなくしてしまうことにより、グループ法人税制を逃れた事例があります。
これに対し、課税庁は「 同族会社等の行為又は計算の否認同」(法第132)を適用し、更正処分をした事案があります。
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4 請求人は、本件割当増資によって請求人・A社間の完全支配関係を解消し、本件繰延制度の適用要件を不充足とすることにより、同制度の適用を免れ、本来、同制度の適用により繰り延べられるべき固定資産売却損を、各事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入し、法人税額を減少させたものと認められるから、本件割当増資によって「法人税の負担を・・・減少させる結果となる」ものと認めることができる。
5 以上によれば、本件各更正処分は適法である。
裁決年月日 H28-01-06 TAINSコード番号 F0-2-629
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