平成22年度改正でグループ法人税制が導入され、法人による完全支配関係にある法人間では、寄附金の額はその全額が損金不算入となり、受贈益の額はその全額が益金不算入とすることになりました(強制的用)。
この規定の適用は、法人による完全支配関係の場合に限られますが、その趣旨はつぎのように説明されています。
これが除外されているのは、例えば親が発行済株式の100%を保有する法人から子が発行済株式の100%を保有する法人への寄附について損金不算入かつ益金不算入とすると、親から子へ経済的価値の移転が無税で行われることとなり、相続税・贈与税の回避に利用されるおそれが強いことによります。(財務省HP 👈クリック) |
しかし、寄附をすることによって、寄附をする側から受ける側に何らかの資産が移転しています。
移転した財産に対応する分だけ、寄附をした法人の株式価値が減少し、受ける側の株式価値が増加することになります。
そこで、グループ法人税制においては、親法人において寄附をした側の法人の子会社株式の簿価を減額修正し、寄附を受けた側の子会社株式の簿価を増額修正することとしました。この寄附修正の相手勘定は利益積立金額となります。
この寄附修正の趣旨については、つぎのように説明さてれいます。
グループ法人間の寄附について課税関係を生じさせないこととなるため、これを利用した株式の価値の移転が容易となり、これにより子法人株式の譲渡損を作出する租 税回避が考えられることから、これを防止するために、子法人株式の帳簿価額を調整するものです。(財務省HP 👈クリック) |
例えば、A社がB社株式を100%保有する親子間で、A社がB社に資金援助として現金1億円を寄附したとします。
-A社の仕訳-
寄付金 1億円//現金 1億円 | 寄付金1億円は全額損金不算入(法37②) |
子会社株式 1億円//利益積立金 1億円 | 寄附修正(法令9①七、法令119の3⑥) |
-B社の仕訳-
現金 1億円//受贈益 1億円 | 受贈益1億円は全額益金不算入(法25の2①) |
上記の例で、寄附ではなく無利息貸付で、税務調査において2%の利息認定を受けたとしたらどうなるでしょうか。
-A社の仕訳-
貸付金 1億円//現金 1億円 | |
寄付金 200万円//受取利息 200万円 | 寄付金200万円は全額損金不算入(法37②) |
子会社株式 200万円//利益積立金 200万円 | 寄附修正(法令9①七、法令119の3⑥) |
-B社の仕訳-
支払利息 200万円//受贈益 200万円 | 受贈益200万は全額益金不算入(法25の2①) |
この場合、寄附金と認定されのは授受されるべき利息相当額の現金などの資産部分になります。
損益部分である受取利息についてはA社の益金、支払利息についてはB社の損金となります。
したがって、グループ全体では所得は変動しませんが、個別の会社でみると所得は変動します。
∞∞ 吉岡 ∞∞