厚生労働省の資料によると、平成29年の婚姻件数606,866組に対して、離婚件数は212,262組(2017年確定値)だそうです。当事者は大変でしょうが、単純に数だけ見れば今や離婚はさほど珍しくなくなってきています。
いざ離婚ということになると、解決しなければならないことが山積みだと思いますが、今回のテーマは今住んでいる住宅の話です。
例えば、離婚に伴い妻が子供の親権者となったため、夫は家を出て夫名義を自宅を妻に渡したとします。
この場合に妻に贈与税がかかるでしょうか。結論から申し上げればかかりません。
なぜなら、妻は夫に対して財産分与請求権があり、その権利を行使しただけだからです。
相続税基本通達 9-8 (婚姻の取消し又は離婚により財産の取得があった場合)
婚姻の取消し又は離婚による財産の分与によって取得した財産・・・については、贈与により取得した財産とはならないのであるから留意する。
ただし、その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分又は離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は、贈与によって取得した財産となるのであるから留意する。
一方夫ですが、実は夫側には譲渡所得課税の対象となります。
これは、税務的に見れば、夫側は財産分与義務の消滅という経済的利益を対価として自宅を時価で妻に譲渡したと考えるからです。
もっとも、離婚の場合は居住用の3000万円控除など譲渡所得の特例が使えますので、ほとんどの場合課税にまではいたらないと思われます。
所得税基本通達 33-1の4 (財産分与による資産の移転)
・・・の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。(以下、省略)
∞∞ 吉岡 ∞∞