賃貸住宅を借りるとき、おおむね関東では敷金、関西では保証金という名目で家賃の数ヶ月分を大家さんに支払います。いずれも部屋を借りた人が家賃の滞納したときに備えて、あるいは退去時の原状回復費用に充てるために大家さんが担保として預かっておく性格のものです。地域によって呼び方が異なりますが、その趣旨は同じで、家賃滞納や退去時に部屋の修繕費が発生しなかった場合は、原則として退去するときに返還される性格のものです。
しかしこの敷金や保証金につていは、敷金は「敷金償却」、保証金は「敷引き」として、その一定金額を賃借人に返還しなくてもよいとする特約がついていることが多いようです。
第8条 賃貸人は、賃借人使用居室に損害なく明け渡しの完了を認めたる時は、契約当時受領した敷金を賃借人に返却するものとする。
第9条 賃貸借契約を終了する場合(前条に該当する場合を除く)又は賃借人の都合により賃貸借契約を解除する場合は、賃貸人は、敷金のうち20%に相当する金額は、賃借人に対し返還を要しないものとする。
第8条は、一旦賃借人に部屋を貸したからには、明け渡し時に全く部屋に損害が発生しないということは非現実的な条項なので、事実上第9条が適用されると考えられます。
所得税法では、その年において「収入金額とすべき金額」は収入に計上しなければならない(権利確定主義)として、権利が確定した時に収入に計上することとされています。したがって、不動産所得の計算において、この返還を要しない敷金や保証金の収入計上時期は、その返還を要しないことが確定した年分の不動産所得の収入金額に計上します。
上記の例では敷金の20%はその契約をした日の属する年分の収入金額に計上することになります。
さらに、例えば償却について、つぎのようになっている場合はどうなるでしょうか。
第15条 入居から1年以内に解約する場合には保証金の60%を返還し、入居から1年を超え3年以内に解約する場合には保証金の40%を返還し、入居から3年を超え5年以内に解約する場合には保証金の20%%返還する。入居から5年を超えて解約する場合には保証金の全額を返還しない。
このような場合は、保証金の返還しないことが確定した日の属する年分で収入金額に計上します。
具体的には、契約時において40%返還されないことが確定しているので、契約の日の属する年分で40%償却して収入金額に計上します。次に1年経過時にさらに追加で20%(60%-償却済み40%)、さらに3年経過時に追加で20%{80%-償却済み(40%+20%)}返還しないことが確定してたので収入金額に計上します。5年を超えた時に残り全額20%{100%-償却済み(40%+20%+20%))}が償却の対象となります。