居住用財産を譲渡して譲渡益がでた場合に、下記の要件を満たしていれば、6,000万円まで通常よりも低い税率で税金を計算することができる制度です。
この制度は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」との併用が可能です。例えば、親から相続した住宅を譲渡したような場合、その後の地価の値上がりで多額の譲渡益が出てしまう場合があります※。このような場合、譲渡益についてまず居住用財産の3,000万円の控除を使い、なお残額があるときはさらに6,000万円まで通常より低い税率のこの制度を使うことができます。
※相続の場合、原則として被相続人の取得時期と取得価額は相続人が引き継ぎます。
-特例の取扱い-
所有期間※が10年を超える居住用財産を譲渡した場合に適用があります。また、軽減税率の内容はつぎのとおりです。
課税長期譲渡所得の金額 | 所得税(復興特別所得税を含む) | 住民税 |
6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% |
6,000万円を超える部分 | 15.315% | 5% |
※この場合の所有期間は、資産を取得した日から譲渡する年の1月1日までの期間で計算します。
-居住用財産の範囲-
この特例が適用できる居住用財産は、つぎの財産です。
①居住用家屋(譲渡する年から過去3年以内に居住の用に供しなくなった家屋を含みます)
②上記①の敷地だった土地等
③災害で滅失した居住用家屋の敷地だった土地等で、滅失した家屋を引続き所有していれば、所有期間が10年を超えるもの(災害があった日から3年経過する年の年末までに譲渡する場合に限られます)
-適用できない場合-
・配偶者、直系血族、生計を一にする親族などに対して譲渡する場合
・譲渡する年の前年・前々年に譲渡した居住用財産について、既にこの特例を適用していた場合
・3,000万円の特別控除の特例を除き、固定資産の交換の特例、収用等に伴い代替資産を取得した場合の特例、特定の居住用財産の買換え・交換の特例などを適用する場合
-手続き-
所得税の確定申告書につぎの書類の添付が必要です。
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
・譲渡契約締結日の前日において、住民票に記載されていた住所と売却した居住用財産の所在地とが異なる場合は、戸籍の附票の写しなど
・売却した居住用財産の登記事項証明書
-計算例-
居住用家屋とその敷地の売却代金 3億5,000万円
売却に際し支払った譲渡費用 2,000万円
上記家屋と敷地の取得費 2億円
このときの所得税・住民税は次のとおりです。
所得税:
3億5,000万円-(2億円+2,000万円)=1億3,000万円
1億3,000万円-3,000万円(居住用財産の特別控除)=1億円
6,000万円×10.21%+(1億円-6,000万円)×15.315%
= 1,225.2万円
住民税:
3億5,000万円-(2億円+2,000万円)=1億3,000万円
1億3,000万円-3,000万円(居住用財産の特別控除)=1億円
6,000万円×4%+(1億円-6,000万円)×5%= 440万円