会社は誰のものかという議論があります。資本と経営が分離された大企業では、会社は株主のもので、株主である投資家はリスクと引き換えにより多くのリターンを求めます。この要請に応えることこそが、株主から経営を委任された取締役の責務とされてきました。
しかし、すべての大企業がそうだともいえません。広く知られていますが、ジョンソン&ジョンソン社の企業哲学に「我が信条」というのがあります。そこでは、まず顧客、次に従業員、そして社会、最後が株主となっています。株主が第一とはなっていません。
・我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、全ての顧客に対するものであると確信する。
・我々の第二の責任は全社員--世界中で共に働く男性も女性も--に対するものである。
・我々の第三の責任は、我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の共同社会に対するものである。
・我々の第四の、そして最後の責任は、会社の株主に対するものである。
このような企業哲学を持つ企業は少数派で、大多数の企業はより多くの利益を上げることが、株主の期待に応えることとされてきました。そこでは環境、貧困、教育といった問題よりも企業利益が優先されてきました。
しかし21世紀に入り、従来の伝統的な投資である「リスク」・「リターン」という二元の世界から、SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」という新たな視点が生まれてきました。この視点は、企業への投資にも反映され、ESG「環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)」という投資手法が生まれ、世界中の政府系ファンドや年金基金などに採用されています。
∞∞ 吉岡 ∞∞